婚約者の家に行ったら幼馴染がいた。彼と親密すぎて婚約破棄したい。

第25話

「占い師の先生とはもう決して関わりを持ちませんから……」
「この期に及んで遅い！」
「あなた許して……」
「エリザベスも君のせいで今は心の洗濯をしてるところなんだよ」
「あの子には一生かけて償いますから……」
「それに君が占い師にうつつを抜かしてる時に支えてくれた女性がいるんだ」
「あなた！浮気してたの！」
「そうだよ」
「信じられないわ！相手は誰なの！」
「いずれ分かることだから言うけど……クロエだ」
「ジャックちゃんの彼女じゃないの！何考えてるの？頭大丈夫？」
「ジャックには誠意を尽くすよ。きちんと話せば分かってくれる」
「一体どこで知り合ったのよ！」
「エリザベスが迷惑をかけたことで私のほうから謝罪に行った時に初めて会った。太陽みたいな眩しい笑顔にすさんで疲労していた心を和らげてくれた」

エリザベスの父親カインと母親ヴィクトリアの不協和音が生じて何年も続いた夫婦関係が容易に幕を閉じようとしていた。

ヴィクトリアは最後まで頑固に首を振って同情せずにいられないほど懸命に粘っていましたが、カインは揺らぐことのない離婚の固い決意をもって臨む。

話し合いの中で現在付き合っている女性はジャックの恋人のクロエだと真意を打ち明ける。即座に噛みつくように非難するヴィクトリアだがカインはクールな姿勢を保ちジャックなら理解してくれると漏らす。

別れるのが悲しくて頭が割れるように痛い日々に終止符を打つ。ヴィクトリアは離婚の心理的なショックでノイローゼになってしまったらしい。

「幸せにしてください」
「もちろんだよ。クロエに一生の愛を誓う」

クロエはカインの家に嫁入りして静かで平穏な日々を過ごしていた。ところが結婚から半年経った頃にクロエは置き手紙を残して谷の底に突き落とされたような悲痛の顔をして逃げ出したのです。

夫婦仲はとても良好な関係で余すところなく順調に結婚生活を送っていた。いがみ合って言い争いをすることもなく二人は相性が良くて心がいつも通じ合う理想のパートナー。

「クロエ様はヴィクトリア様と違って可愛げがない」
「ヴィクトリア様を追い出すなんてカイン様もひどい！」
「二人の仲を引き裂きましょう！」

二度と家に戻ってこないような勢いでクロエが飛び出した理由はメイド達でした。以外にメイド達から慕われていたヴィクトリア夫人。クロエに対して怒りに満ちた瞳で睨みつけたり愚痴のような小言を吐くのは至極当然のことだった。

「いつも密着できて幸せ！」
「病気は直ってないの？」
「病気って何？私はクロエお母様と片時も離れません！」
「お母様って……」
「お父様と結婚されたから私がお母様と呼ぶのも間違いはございませんよ」
「そうだけどさ……」

加えて静養の効果は毛ほどもなかったエリザベス。精神は全く以前と変わっておらず、それどころかクロエに会ったことで恋心が加速し徹底的につきまとわれてしまう。

クロエはカインと結婚したので当然ながら一緒に暮らしている。前のようにエリザベスはジャックの家にも行く必要がなくなり、毎日子供みたいにクロエに甘え放題。

四六時中べったりされて疲れ果てたクロエは精神状態が悪化する寸前で逃げ出した。