婚約者の家に行ったら幼馴染がいた。彼と親密すぎて婚約破棄したい。

佐藤 美奈

文字の大きさ
24 / 44

第24話

しおりを挟む
「ジャック私達もう別れましょう」
「どうして?」

クロエから別れ話を切り出されたジャックはパニック状態になる。人生を仕切り直したいらしい。

「僕のどこが駄目なんだ?」
「色々あって疲れちゃったから」
「エリザベスの事なら大丈夫。今は療養してるそうだよ」
「そう…」

投げやりのような態度のクロエにジャックは自分の至らない点を教えてほしいと詰め寄るが、少し寂しそうな表情をして悲しい響きの声で答える。

クロエは居直ってる態度で根底からな誠意を感じない印象をジャックは抱く。

「僕はクロエとの子供を作りたいと考えていたよ」
「そういうのは授かりものだし…」
「今からでも…」
「悪いけどもうそんな気分じゃないの」

二人は週に一度は会ってはいたが体の関係はここしばらくない。クロエは体調が優れないと理由を付けて拒んでいた。

「少し前からジャックのことを恋しく思う気持ちが消えてた」
「そんなことない!」
「もう無理…」
「やり直そう!」
「片方が嫌がってる場合は恋愛は成立しないんだよ」
「僕の家が借金があるから?」
「それもあるかな」

今までは愛していたけど、今は一緒にいるのも精神的に苦痛だと言う。ジャックが鈍感だから彼女の気持ちに気がつかなかったのか?どっちにしろもう遅くクロエの中では結論が出ている。

だが、まだ話し合いはできるのでジャックは最後まで諦めたくない。彼女の心情が自分から離れていてもほれ込んでいるので嫌われても別れる選択はしたくない。

「私はあなたの顔を見るだけでも不愉快なの!はっきり言わないと分からないの?」
「クロエひどいよ…僕を捨てないで…」

凝視され瞳をしっかり見つめられながら聞き取りやすい口調で決意した顔で言い放つ。その直後に体が崩れて膝をつき最後のあがきなのかドレスの裾を引っ張り泣いてすがりつく捨てられた美青年の紳士。

「離してよ!みっともない男ね!」
「何とでも言ってくれ…この手は離さないからな」
「叩かれなきゃ分からないの?」
「嫌だーーーー!別れたくないーーーー!」

抵抗する彼女に恥晒しと罵られてもその手を離さない。ジャックは蛇のように執念深い一面を見せて捨てられたペットみたいな屈辱感を味わう。

部屋中に響き渡るほどの悲痛な叫びを上げて懸命に拝み倒す。もう自分には失うものは何もないので捨て身の覚悟でクロエのほっそりとした美しい足にしがみつく。

パチーン!

平手打ちをされた。後ろに反り返ったが動じることなく腫れた顔で歯を食いしばって耐える。矢継ぎ早に彼女の大振りのビンタが飛んでくるが何度叩かれても是が非でも離れない。

「他に男ができたのか!」
「そうよ。私は好意を寄せている人がいるの。その人のためになら何でもしたいくらい夢中なの!」
「クロエをそれほどまでに狂わせた男は誰なんだ!教えろ!」
「カイン様よ!」
「えっ……」

その恋に自分の全てを賭けている口ぶりにジャックは、立ち上がり真正面でクロエの顔を食い入るように見つめる。好きな異性ができた彼女に怒りに震えた声で誰なのか追い詰めるような視線で問いただす。

クロエが恋情を抱いている名前を発言して聞いた瞬間ジャックは気絶した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

恋人に夢中な婚約者に一泡吹かせてやりたかっただけ

恋愛
伯爵令嬢ラフレーズ=ベリーシュは、王国の王太子ヒンメルの婚約者。 王家の忠臣と名高い父を持ち、更に隣国の姫を母に持つが故に結ばれた完全なる政略結婚。 長年の片思い相手であり、婚約者であるヒンメルの隣には常に恋人の公爵令嬢がいる。 婚約者には愛を示さず、恋人に夢中な彼にいつか捨てられるくらいなら、こちらも恋人を作って一泡吹かせてやろうと友達の羊の精霊メリー君の妙案を受けて実行することに。 ラフレーズが恋人役を頼んだのは、人外の魔術師・魔王公爵と名高い王国最強の男――クイーン=ホーエンハイム。 濡れた色香を放つクイーンからの、本気か嘘かも分からない行動に涙目になっていると恋人に夢中だった王太子が……。 ※小説家になろう・カクヨム様にも公開しています

婚約者は幼馴染みを選ぶようです。

香取鞠里
恋愛
婚約者のハクトには過去に怪我を負わせたことで体が不自由になってしまった幼馴染がいる。 結婚式が近づいたある日、ハクトはエリーに土下座して婚約破棄を申し出た。 ショックではあったが、ハクトの事情を聞いて婚約破棄を受け入れるエリー。 空元気で過ごす中、エリーはハクトの弟のジャックと出会う。 ジャックは遊び人として有名だったが、ハクトのことで親身に話を聞いて慰めてくれる。 ジャックと良い雰囲気になってきたところで、幼馴染みに騙されていたとハクトにエリーは復縁を迫られるが……。

お認めください、あなたは彼に選ばれなかったのです

・めぐめぐ・
恋愛
騎士である夫アルバートは、幼馴染みであり上官であるレナータにいつも呼び出され、妻であるナディアはあまり夫婦の時間がとれていなかった。 さらにレナータは、王命で結婚したナディアとアルバートを可哀想だと言い、自分と夫がどれだけ一緒にいたか、ナディアの知らない小さい頃の彼を知っているかなどを自慢げに話してくる。 しかしナディアは全く気にしていなかった。 何故なら、どれだけアルバートがレナータに呼び出されても、必ず彼はナディアの元に戻ってくるのだから―― 偽物サバサバ女が、ちょっと天然な本物のサバサバ女にやられる話。 ※頭からっぽで ※思いつきで書き始めたので、つたない設定等はご容赦ください。 ※夫婦仲は良いです ※私がイメージするサバ女子です(笑) ※第18回恋愛小説大賞で奨励賞頂きました! 応援いただいた皆さま、お読みいただいた皆さま、ありがとうございました♪

【完結】そんなに好きならもっと早く言って下さい! 今更、遅いです! と口にした後、婚約者から逃げてみまして

Rohdea
恋愛
──婚約者の王太子殿下に暴言?を吐いた後、彼から逃げ出す事にしたのですが。 公爵令嬢のリスティは、幼い頃からこの国の王子、ルフェルウス殿下の婚約者となるに違いない。 周囲にそう期待されて育って来た。 だけど、当のリスティは王族に関するとある不満からそんなのは嫌だ! と常々思っていた。 そんなある日、 殿下の婚約者候補となる令嬢達を集めたお茶会で初めてルフェルウス殿下と出会うリスティ。 決して良い出会いでは無かったのに、リスティはそのまま婚約者に選ばれてしまう── 婚約後、殿下から向けられる態度や行動の意味が分からず困惑する日々を送っていたリスティは、どうにか殿下と婚約破棄は出来ないかと模索するも、気づけば婚約して1年が経っていた。 しかし、ちょうどその頃に入学した学園で、ピンク色の髪の毛が特徴の男爵令嬢が現れた事で、 リスティの気持ちも運命も大きく変わる事に…… ※先日、完結した、 『そんなに嫌いなら婚約破棄して下さい! と口にした後、婚約者が記憶喪失になりまして』 に出て来た王太子殿下と、その婚約者のお話です。

いつまでも変わらない愛情を与えてもらえるのだと思っていた

奏千歌
恋愛
 [ディエム家の双子姉妹]  どうして、こんな事になってしまったのか。  妻から向けられる愛情を、どうして疎ましいと思ってしまっていたのか。

すれ違う思い、私と貴方の恋の行方…

アズやっこ
恋愛
私には婚約者がいる。 婚約者には役目がある。 例え、私との時間が取れなくても、 例え、一人で夜会に行く事になっても、 例え、貴方が彼女を愛していても、 私は貴方を愛してる。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 女性視点、男性視点があります。  ❈ ふんわりとした設定なので温かい目でお願いします。

【完結】要らないと言っていたのに今更好きだったなんて言うんですか?

星野真弓
恋愛
 十五歳で第一王子のフロイデンと婚約した公爵令嬢のイルメラは、彼のためなら何でもするつもりで生活して来た。  だが三年が経った今では冷たい態度ばかり取るフロイデンに対する恋心はほとんど冷めてしまっていた。  そんなある日、フロイデンが「イルメラなんて要らない」と男友達と話しているところを目撃してしまい、彼女の中に残っていた恋心は消え失せ、とっとと別れることに決める。  しかし、どういうわけかフロイデンは慌てた様子で引き留め始めて――

【完結】貴方の後悔など、聞きたくありません。

なか
恋愛
学園に特待生として入学したリディアであったが、平民である彼女は貴族家の者には目障りだった。 追い出すようなイジメを受けていた彼女を救ってくれたのはグレアルフという伯爵家の青年。 優しく、明るいグレアルフは屈託のない笑顔でリディアと接する。 誰にも明かさずに会う内に恋仲となった二人であったが、 リディアは知ってしまう、グレアルフの本性を……。 全てを知り、死を考えた彼女であったが、 とある出会いにより自分の価値を知った時、再び立ち上がる事を選択する。 後悔の言葉など全て無視する決意と共に、生きていく。

処理中です...