婚約者の家に行ったら幼馴染がいた。彼と親密すぎて婚約破棄したい。

第42話

「エリザベス僕が悪かったから、そんな顔しないでくれよ」

エリザベスのご機嫌とりに、一苦労することになっているジャック。ここ数日は喧嘩もなくなりましたが、エリザベスのほうから話しかけてこないで不満げに頬を膨らませていた。

その生活に疑問を抱くようになり、ジャックが尋ねたところ信じられない言葉が返ってきたのである。

「私はジャックのことは、お墓に入ったと思って生活するようにしたからね！」
「僕はまだ生きてるだろう？」

この世を去ってしまったと思うようにすると答えるエリザベスに対して、ジャックは強いショックを受けてしまい、両手で頭を抱えて体を縮めた。

「でも私はそう思うことでジャックに腹が立たなくなったの。だから最近はぐっすり眠れる」
「なんでだよ？」

爽やかな表情でエリザベスは言う。迷わず自分の気持ちを解放したら、苛立ちが消えていき心地良く眠れるようになった。

ちょっと戸惑った顔をして、そのままに受け入れることができなかったらしく、小首をかしげ不思議そうにエリザベスを見ている。

「母子家庭なんだから私が頑張らなきゃって感じもするし」
「いや、あの……」

エリザべスの家は世界でも屈指の大富豪なので、生活に不安があるわけでもないがジャックが死んでるものと考えると、子供のためにやるぞという心意気が生まれるという。

ジャックは目に涙を浮かべ、声を詰まらせながら自分の不利な立場を感じていた。

「実は……」

最初はジャックへの怒りが我慢できなくなると、病気になったり事故にあったことを想像して許せたらしい。

でも慣れてきたら、それだけだと熱気が高まった感情がなかなか静まらなくなった。だが本当に夫のジャックが生涯を終えたと考えれば、健全な精神を取り戻すことができたのです。

「なんだよそれ……エリザベスあんまりじゃないか！」
「でも今この方法で私たちの家庭は上手くいってるでしょ？」

ジャックは大いに不満を述べたが、エリザベスは平気な様子で眉一つ動かさず淡々と続ける。ジャックとしては自分の死を願われてるようで、落ち着かない気分を拭えなかった。

妻をそこまで追い込んだのはお前だろ？先日、同僚と酒を飲んだ時に言われた言葉を思い出したジャックは、エリザスごめん……と自身の罪を強く認識し深く反省した。