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17 聖女のお願い
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「ひどい目にあいました」
言い寄られて男性の馬に乗せてもらいましたが、クロエにいい格好を見せようとして男性がスピードを上げた。おかげでクロエがバランスを失い、悲鳴をあげて振り落とされてしまった。
ナンパのあしらいかたをよく知らないクロエには、とんでもない災難だと腹立たしく思い、男性には激しい憎しみの籠もった感情を覚える。
何故なら男性は謝りもせずにその場から逃げるように姿を消したのです。いくら義理人情に厚く心の広いクロエでもやり場のない怒りが湧いてきた。
「今日はこの辺りで休みましょうか」
「まだ街までかかります」
馬車に乗って窓から外を眺めていると日が暮れていて辺りは暗くなり始めていた。御者が言うにはまだこの辺りには泊まれるようなところはないと言う。クロエは野宿するのかと残念に思っていたら一軒の家が見えました。
「あの家のお方にお願いして一晩泊めていただきましょう」
再び声をあげたクロエは、御者に声をかけて馬車を止めさせた。近づくにつれてよく見えてきました。大きくて立派な造りの豪邸です。
それとは反対に、遠くからでは小さくて分かりませんでしたが、もう一軒家があり、そちらは外観が粗末で貧相な家というよりも小屋でした。二軒の家が向かい合うように建っていた。
「あの大きな家なら私が一晩くらいお世話になっても問題ないでしょう。今晩はあの家に泊めてもらいましょう」
クロエはそう考えを巡らせました。
「何だお前は?」
ドアを叩くといかにも金持ち風の恰幅のいい初老の紳士が、窓を開けてなにか用かと尋ねたのでした。
「急に恐れ入ります。私は旅の者でございます。この辺りは宿屋もございません。よろしければ泊めていただけませんか?」
男性はクロエを舐めるような視線で眺める。クロエの身なりが安手な衣服であまりお金を持っているようには見えなかったので肩をすくめて言いました。
「あんたを泊めることはできない。私の家は大きくて部屋もたくさんあるがどの部屋も物でいっぱいだ。それにあんたのように頼んできたのを際限なく泊めていたら私が貧乏になってしまう」
そう言うと男性はバンッ! と勢いよく窓を閉めクロエを追い払う。実は先ほど、馬に振り落とされた時に体は回復魔法でなんとかなりましたが、服がボロボロになり汚れて着替えたので、今は平民が着るような衣服を着ていたのです。
クロエは悔しい思いをしましたが、逆の方向を向き仕方なく今度は貧乏そうな家に泊めてもらえるように頼みに行きました。
クロエが今にも壊れそうなボロい戸口を叩くと、家の主人が戸を開けて姿を見せる。一瞬まぶしさを感じる程の、絶世の美男と言っていい顔立ちの男性が現れました。
その人を見た瞬間、クロエは自然に思った――素敵な人だ、と。
出会いは偶然だったが、共に日々を重ねるうちに自然と夫婦となり、
聖女の加護もあって、彼との暮らしは驚くほど穏やかで、幸福に満ちていた。
最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
この物語を、皆さまと共有できたことが何よりの幸せです。
またどこかの物語でお会いできますように。
言い寄られて男性の馬に乗せてもらいましたが、クロエにいい格好を見せようとして男性がスピードを上げた。おかげでクロエがバランスを失い、悲鳴をあげて振り落とされてしまった。
ナンパのあしらいかたをよく知らないクロエには、とんでもない災難だと腹立たしく思い、男性には激しい憎しみの籠もった感情を覚える。
何故なら男性は謝りもせずにその場から逃げるように姿を消したのです。いくら義理人情に厚く心の広いクロエでもやり場のない怒りが湧いてきた。
「今日はこの辺りで休みましょうか」
「まだ街までかかります」
馬車に乗って窓から外を眺めていると日が暮れていて辺りは暗くなり始めていた。御者が言うにはまだこの辺りには泊まれるようなところはないと言う。クロエは野宿するのかと残念に思っていたら一軒の家が見えました。
「あの家のお方にお願いして一晩泊めていただきましょう」
再び声をあげたクロエは、御者に声をかけて馬車を止めさせた。近づくにつれてよく見えてきました。大きくて立派な造りの豪邸です。
それとは反対に、遠くからでは小さくて分かりませんでしたが、もう一軒家があり、そちらは外観が粗末で貧相な家というよりも小屋でした。二軒の家が向かい合うように建っていた。
「あの大きな家なら私が一晩くらいお世話になっても問題ないでしょう。今晩はあの家に泊めてもらいましょう」
クロエはそう考えを巡らせました。
「何だお前は?」
ドアを叩くといかにも金持ち風の恰幅のいい初老の紳士が、窓を開けてなにか用かと尋ねたのでした。
「急に恐れ入ります。私は旅の者でございます。この辺りは宿屋もございません。よろしければ泊めていただけませんか?」
男性はクロエを舐めるような視線で眺める。クロエの身なりが安手な衣服であまりお金を持っているようには見えなかったので肩をすくめて言いました。
「あんたを泊めることはできない。私の家は大きくて部屋もたくさんあるがどの部屋も物でいっぱいだ。それにあんたのように頼んできたのを際限なく泊めていたら私が貧乏になってしまう」
そう言うと男性はバンッ! と勢いよく窓を閉めクロエを追い払う。実は先ほど、馬に振り落とされた時に体は回復魔法でなんとかなりましたが、服がボロボロになり汚れて着替えたので、今は平民が着るような衣服を着ていたのです。
クロエは悔しい思いをしましたが、逆の方向を向き仕方なく今度は貧乏そうな家に泊めてもらえるように頼みに行きました。
クロエが今にも壊れそうなボロい戸口を叩くと、家の主人が戸を開けて姿を見せる。一瞬まぶしさを感じる程の、絶世の美男と言っていい顔立ちの男性が現れました。
その人を見た瞬間、クロエは自然に思った――素敵な人だ、と。
出会いは偶然だったが、共に日々を重ねるうちに自然と夫婦となり、
聖女の加護もあって、彼との暮らしは驚くほど穏やかで、幸福に満ちていた。
最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
この物語を、皆さまと共有できたことが何よりの幸せです。
またどこかの物語でお会いできますように。
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