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第9話
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「そんな人間味をまったく感じさせない顔で睨まないでくれよ……」
思わず力負けしてしまったハリーは、困惑したように視線をそらして唇を結んでいた。そしてゆっくり顔を上げて、イリスを見つめたまま弱々しいほどの声で言った。
「何を言ってるのか聞こえないけど?」
イリスは変わらず鋭い視線を続けながら、いつもの穏やかな口調が影を潜め、噛みつくような言葉を浴びせる。
ハリーは今にも泣き出しそうな情けない顔で、泉のような深い涙を浮かべている。言いすぎたかな?その顔を見たイリスは、自分の喧嘩ごしの態度をちょっと反省した。
「反省してハリーは謝りたいのかな?」
その時、突然イリスは脳裏にひらめいた。高ぶった気持ちを抑えるように、しみじみと小さな声でこうつぶやいた。
エレナを新婚旅行に連れてきたことに対して、ハリーは後悔する気持ちでイリスに謝罪の言葉を伝えたいのだと思ったのです。
心の片隅で純粋にまだハリーを愛しているイリスは、甘いかもしれないけど真摯な姿勢でちゃんと謝ってくれたら、今ならやり直せるから許そうと考えをめぐらせる。
「これからエレナと外をぶらぶら歩いてくるけどイリスも一緒に来ないか?」
「え……?」
呆れたことにエレナと遊びに出かけてくると、ハリーは悪びれた風もなく、口元からこぼれる白い歯を見せて落ち着き払った調子で言う。
イリスは一瞬きょとんとした顔つきになったが、ハリーの言葉を理解した直後、目の色を変えて恐ろしい顔に変貌していた。
新婚旅行に訪れた場所は、神聖で歴史的な建築物や調和のとれた美しい街並みなどに惹かれて、多くの観光客が利用し賑わっている。
新しく建設された驚くほど高い塔があり、それにのぼって絶好の展望台から見下ろすこともイリスは楽しみにしていた。
「私は疲れているので部屋で休憩しています!」
「そう?残念だな」
ハリーは開き直っているのか?反省も誠実さのかけらもない微笑を向けられたイリスは、険しい顔色と共にいつになく厳しい口調で応じた。
つくづく救えない男だ。胸の中だが甘い顔を見せてしまって、ほんの少しでも同情した自分自身に腹が立って悔しい。
「イリスじゃあ行ってくるよ」
「私行ってみたいところがあるの」
「それならエレナの行きたい場所に行こう」
「やったー!」
平気な顔をしてハリーは短く返事をすると、エレナと恋人みたいに肩を並べて歩き出す。仲良さそうに言葉を交わすのが聞こえてくる。
エレナは一度だけ振り返った後、次の瞬間、挑発するように勝ち誇った顔でニヤリと微笑み、ハリーの腰に手をまわしたまま部屋から出ていくのだった。
思わず力負けしてしまったハリーは、困惑したように視線をそらして唇を結んでいた。そしてゆっくり顔を上げて、イリスを見つめたまま弱々しいほどの声で言った。
「何を言ってるのか聞こえないけど?」
イリスは変わらず鋭い視線を続けながら、いつもの穏やかな口調が影を潜め、噛みつくような言葉を浴びせる。
ハリーは今にも泣き出しそうな情けない顔で、泉のような深い涙を浮かべている。言いすぎたかな?その顔を見たイリスは、自分の喧嘩ごしの態度をちょっと反省した。
「反省してハリーは謝りたいのかな?」
その時、突然イリスは脳裏にひらめいた。高ぶった気持ちを抑えるように、しみじみと小さな声でこうつぶやいた。
エレナを新婚旅行に連れてきたことに対して、ハリーは後悔する気持ちでイリスに謝罪の言葉を伝えたいのだと思ったのです。
心の片隅で純粋にまだハリーを愛しているイリスは、甘いかもしれないけど真摯な姿勢でちゃんと謝ってくれたら、今ならやり直せるから許そうと考えをめぐらせる。
「これからエレナと外をぶらぶら歩いてくるけどイリスも一緒に来ないか?」
「え……?」
呆れたことにエレナと遊びに出かけてくると、ハリーは悪びれた風もなく、口元からこぼれる白い歯を見せて落ち着き払った調子で言う。
イリスは一瞬きょとんとした顔つきになったが、ハリーの言葉を理解した直後、目の色を変えて恐ろしい顔に変貌していた。
新婚旅行に訪れた場所は、神聖で歴史的な建築物や調和のとれた美しい街並みなどに惹かれて、多くの観光客が利用し賑わっている。
新しく建設された驚くほど高い塔があり、それにのぼって絶好の展望台から見下ろすこともイリスは楽しみにしていた。
「私は疲れているので部屋で休憩しています!」
「そう?残念だな」
ハリーは開き直っているのか?反省も誠実さのかけらもない微笑を向けられたイリスは、険しい顔色と共にいつになく厳しい口調で応じた。
つくづく救えない男だ。胸の中だが甘い顔を見せてしまって、ほんの少しでも同情した自分自身に腹が立って悔しい。
「イリスじゃあ行ってくるよ」
「私行ってみたいところがあるの」
「それならエレナの行きたい場所に行こう」
「やったー!」
平気な顔をしてハリーは短く返事をすると、エレナと恋人みたいに肩を並べて歩き出す。仲良さそうに言葉を交わすのが聞こえてくる。
エレナは一度だけ振り返った後、次の瞬間、挑発するように勝ち誇った顔でニヤリと微笑み、ハリーの腰に手をまわしたまま部屋から出ていくのだった。
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