幼馴染の勇者パーティーから「無能で役立たず」と言われて追放された女性は特別な能力を持っている世界最強。

佐藤 美奈

文字の大きさ
11 / 30

第11話

しおりを挟む
幼馴染の勇者パーティーのアルスとオリバーの常識知らずの行動に、貴族の彼らがどれほど強い刺激を受けたか想像に難くない。いや、平民でも正気を疑ったに違いないだろう。気まずい沈黙ちんもくに耐えかねて、レオンがしゃべり始める。

「そ、そうだ!レベッカの付与術師の腕を見せてくれよ」
「そうだったわね!」

アメリアも同意するように言う。街を出て鍛錬たんれん場に来た理由は、レベッカの付与術師としての技量がどの程度なのか?判断してもらうためにこの場に来たことを思い出す。レベッカが突然泣き出してしまい大切なことを忘れていました。

「とりあえず全員に身体能力の強化をかけてみてくれ」
「わかりました」

レベッカは返事をして小さくうなずいた。レオンは、まず皆に身体能力の強化を頼んだ。これは付与術での基本的かつ効果的な使い方です。それに付与術師の能力を測るのにも最も適切な方法だといわれている。

「ちょっと待ってくれ!」
「なんですか?」

レベッカがみんなに付与しようとしていたら、リアムが声をあげて行動を阻止した。レベッカは不思議そうな顔をして反応する。

「悪いんだけど、全員に同時に身体能力の強化の付与をかけてほしい」
「え……?」

リアムは全員同時に付与してくれと言い出した。それは一般的観点からすると完全に無理な注文であった。レベッカは反射的に戸惑ったような声を漏らす。

「リアムなに言ってるの?」
「そんなのジョージでも出来ない事でしょ!」
「そうだぞリアム。だろう!無理なことを言われてレベッカも困ってるじゃないか」

病気の家族の世話をするために、しばらくの間は休みを伝えた彼らのパーティーの本来の付与術師の名前はジョージというらしい。その彼でも全員同時に付与することは、絶対に不可能であることをひとり残らず指摘したのである。

「……悪かった、ごめん。でもレベッカは勇者パーティーにいたから出来ると思ったんだ」
「さすがに全員同時に強化なんてあり得ない!」
「いくらなんでも限度を越えてるわ!」
「リアムお前は正座して少し反省しとけ!」

リアムは今にも泣きそうな顔でレベッカに、ぺこぺこ頭を下げてからレオンの命令に従って、地面に腰を下ろし背筋を伸ばしてお行儀よく正座するのだった。彼が素直に言う通りにした理由は、レベッカに無理難題を吹っかけたことを心から真摯しんしに反省してることに他ならない。

(全員同時に付与するだけでいいの?けど……)

リアムの無理な要求に、誰もが不服そうな顔をして彼を責めるような意見を言い合い厳しい批判を加えていたが、レベッカは内心そう思っていました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約者と仕事を失いましたが、すべて隣国でバージョンアップするようです。

鋼雅 暁
ファンタジー
聖女として働いていたアリサ。ある日突然、王子から婚約破棄を告げられる。 さらに、偽聖女と決めつけられる始末。 しかし、これ幸いと王都を出たアリサは辺境の地でのんびり暮らすことに。しかしアリサは自覚のない「魔力の塊」であったらしく、それに気付かずアリサを放り出した王国は傾き、アリサの魔力に気付いた隣国は皇太子を派遣し……捨てる国あれば拾う国あり!? 他サイトにも重複掲載中です。

クゥクーの娘

章槻雅希
ファンタジー
コシュマール侯爵家3男のブリュイアンは夜会にて高らかに宣言した。 愛しいメプリを愛人の子と蔑み醜い嫉妬で苛め抜く、傲慢なフィエリテへの婚約破棄を。 しかし、彼も彼の腕にしがみつくメプリも気づいていない。周りの冷たい視線に。 フィエリテのクゥクー公爵家がどんな家なのか、彼は何も知らなかった。貴族の常識であるのに。 そして、この夜会が一体何の夜会なのかを。 何も知らない愚かな恋人とその母は、その報いを受けることになる。知らないことは罪なのだ。 本編全24話、予約投稿済み。 『小説家になろう』『pixiv』にも投稿。

金喰い虫ですって!? 婚約破棄&追放された用済み聖女は、実は妖精の愛し子でした ~田舎に帰って妖精さんたちと幸せに暮らします~

アトハ
ファンタジー
「貴様はもう用済みだ。『聖女』などという迷信に踊らされて大損だった。どこへでも行くが良い」  突然の宣告で、国外追放。国のため、必死で毎日祈りを捧げたのに、その仕打ちはあんまりでではありませんか!  魔法技術が進んだ今、妖精への祈りという不確かな力を行使する聖女は国にとっての『金喰い虫』とのことですが。 「これから大災厄が来るのにね~」 「ばかな国だね~。自ら聖女様を手放そうなんて~」  妖精の声が聞こえる私は、知っています。  この国には、間もなく前代未聞の災厄が訪れるということを。  もう国のことなんて知りません。  追放したのはそっちです!  故郷に戻ってゆっくりさせてもらいますからね! ※ 他の小説サイト様にも投稿しています

豊穣の巫女から追放されたただの村娘。しかし彼女の正体が予想外のものだったため、村は彼女が知らないうちに崩壊する。

下菊みこと
ファンタジー
豊穣の巫女に追い出された少女のお話。 豊穣の巫女に追い出された村娘、アンナ。彼女は村人達の善意で生かされていた孤児だったため、むしろお礼を言って笑顔で村を離れた。その感謝は本物だった。なにも持たない彼女は、果たしてどこに向かうのか…。 小説家になろう様でも投稿しています。

婚約破棄され森に捨てられました。探さないで下さい。

拓海のり
ファンタジー
属性魔法が使えず、役に立たない『自然魔法』だとバカにされていたステラは、婚約者の王太子から婚約破棄された。そして身に覚えのない罪で断罪され、修道院に行く途中で襲われる。他サイトにも投稿しています。

【完結】それはダメなやつと笑われましたが、どうやら最高級だったみたいです。

まりぃべる
ファンタジー
「あなたの石、屑石じゃないの!?魔力、入ってらっしゃるの?」 ええよく言われますわ…。 でもこんな見た目でも、よく働いてくれるのですわよ。 この国では、13歳になると学校へ入学する。 そして1年生は聖なる山へ登り、石場で自分にだけ煌めいたように見える石を一つ選ぶ。その石に魔力を使ってもらって生活に役立てるのだ。 ☆この国での世界観です。

薄幸ヒロインが倍返しの指輪を手に入れました

佐崎咲
ファンタジー
義母と義妹に虐げられてきた伯爵家の長女スフィーナ。 ある日、亡くなった実母の遺品である指輪を見つけた。 それからというもの、義母にお茶をぶちまけられたら、今度は倍量のスープが義母に浴びせられる。 義妹に食事をとられると、義妹は強い空腹を感じ食べても満足できなくなる、というような倍返しが起きた。 指輪が入れられていた木箱には、実母が書いた紙きれが共に入っていた。 どうやら母は異世界から転移してきたものらしい。 異世界でも強く生きていけるようにと、女神の加護が宿った指輪を賜ったというのだ。 かくしてスフィーナは義母と義妹に意図せず倍返ししつつ、やがて母の死の真相と、父の長い間をかけた企みを知っていく。 (※黒幕については推理的な要素はありませんと小声で言っておきます)

怖いからと婚約破棄されました。後悔してももう遅い!

秋鷺 照
ファンタジー
ローゼは第3王子フレッドの幼馴染で婚約者。しかし、「怖いから」という理由で婚約破棄されてしまう。

処理中です...