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176話 「洗う=洗濯と言う認識」
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狼の死体を埋め終わる頃には日が昇りはじめ辺りが薄らと明るくなり始めていた。討伐自体にはさほど時間は掛かっていなかったが埋めるための穴を掘るのに結構な時間を要したのである。
「戻るゾ」
片付けが終わったので皆に声を掛け養鶏場へと戻るラヴィ。その足取りはスキップしそうなぐらい軽い。
討伐を終えた彼は養鶏場の人へあるお願い事をするつもりである。依頼が出てから一日足らずで怪我人を一切出さずに50を越える狼の討伐をやって見せたのだ、養鶏場の人は間違いなく喜ぶはず……恐らく自分の願願いも聞いてくれるのでは。そう思うと自然と足取りが軽くなるというものだ。
「…………っ」
ソファの上でうーちゃんに埋もれたまま寝ていた加賀であるが、急にがたがたと鳴り出した扉の音でビクリと身を竦ませ目を覚ます。
「見てくる、そのまま座ってて」
身を起こそうとした加賀にそう一言残して扉の方へと向かうアイネ。外から開けようとしているのがラヴィ達であることを確認し扉の閂を外しラヴィ達を迎え入れようとして、ラヴィだけ外で待たせる。
「加賀、お湯の用意お願いできる?」
「う? ……あー、了解ちょっと待っててー」
アイネに言われラヴィの姿を見て納得したようにお湯を用意しに奥へと引っ込む加賀。ラヴィはあれだけ派手に戦闘したので当然と言えば当然なのだが全身に返り血等を浴びており、なかなか凄惨な姿へとなってしまっていたのだ。
「精霊さんこっそりお湯出してー」
周りに人が居ないのを確認し精霊にお湯を出して貰う加賀。
「ありがと、この仕事終わったらご飯用意するからそれまで待っててねー……よっと」
お湯の張ったタライを持ってラヴィの元へと向かう加賀。
他の皆が建物の中に入った中一人だけ外というのも可哀想である、ラヴィを見て悲鳴をあげてた養鶏場の人から布切れを受け取ると、ラヴィへとタライ事手渡す。
「結構時間かかったけど、やっぱ大変だった?」
「いやあ、討伐自体はそうでもないんだけどさ、片付けるのに手間取っちゃって」
「あ、そういうことね……なかなか汚れとれないね」
ラヴィの体についた返り血やらなんやらは渇いてこびり付いてしまっているようで、ラヴィが布でこすっても中々落ちない様だ。
「んー……アイネさん、まわりに人いるー?」
「ちょっと待って……いないね、みんな建物の中」
「どうしよ、精霊さんにお願いして洗ってもらう?」
ぬぅ、と唸って自分の体を見渡すラヴィ。まだまだ体のあちこちに赤ぐらい染みが大量についておりこのままでは全部落とす前に風邪をひきかねない。
「お願いしてもいいかなあ?」
「ほいよー、精霊さんラヴィをあらってあげてー」
「助かるよー……ちょっとまって」
加賀の言葉に反応してぼこりぼこりと音を立て地面から水が沸き立ってくる、それはあっと言う間に巨大な水球となり、ちょっとした家ぐらいの大きさになるとはじける様に水が零れラヴィを濁流が飲み込んでいった。
「ラヴィー!」
ぐわあああと言う叫び声と共に流されていくラヴィ。よく見ると流れた濁流は渦を作りその中心でラヴィがぐるぐると回っているのが見える。濁流に飲まれたときは焦った加賀であるが、どうやらちゃんと洗ってくれているようだと分かりそのまま見守る事にする。
「おー、ぴかぴか」
「…………」
精霊はきっちりラヴィを洗い切ったようだ。
ぴかぴかになったラヴィの体、それとは対照的に死んだ目で加賀を見つめるラヴィの視線から顔をそらす加賀。
「綺麗になったようでなにより、寒いし入ったら?」
「そだねー、戻ろ戻ろ」
ラヴィが死んだ目をしているのに気づいているのか居ないのか、あっさりと言ったアイネの言葉に便乗しささっと建物に入る加賀。
その後ろを少し涙目になったラヴィがついて行く。もう下手なお願いするのは止めておこうと心に誓いつつ。
「皆さん、本日はありがとうございました。おかげで安心して仕事を再開できます」
討伐隊の面々に頭を下げ礼を言う養鶏場の人。報酬はギルドに戻って受け取る事となる、なので各自解散次第ギルドへと向かって行く。
「加賀ちゃんちょっといい?」
「うん?」
だが、ラヴィは養鶏場の人へ頼みごとがある為その場に留まっていた、そして通訳をお願いするため加賀を手招きする。
「通訳すればいいのね、いいよ」
ラヴィのお願いを承諾しラヴィが耳打ちした言葉を養鶏場の人に伝える加賀。
内容はいたってシンプルで、要はこれから仕事を再開する養鶏場が、再び卵を安定供給出来るようになるまでの間、優先的にハンズのお店に降ろして欲しいと言う話である。
「あんたのおかげで皆怪我もしなかったんだし……まあ、それぐらいならいいよ。さすがに全部回せってのは無理だけど」
わりとあっさりと承諾した養鶏場の人。ラヴィは先ほどまでの死んだ目が嘘のように大喜びではしゃいでいる。
「それじゃまたー!」
養鶏場の人に向かい大きく手を振り叫ぶラヴィ。
あいにくと彼らには何を言っているかは分からないがとりあえず挨拶している事は分かるのだろう、手を振りラヴィを見送ってくれている。
今度こそスキップしながら進んでいくラヴィ。その手元には卵が大量に入った籠が抱えられていた。
「戻るゾ」
片付けが終わったので皆に声を掛け養鶏場へと戻るラヴィ。その足取りはスキップしそうなぐらい軽い。
討伐を終えた彼は養鶏場の人へあるお願い事をするつもりである。依頼が出てから一日足らずで怪我人を一切出さずに50を越える狼の討伐をやって見せたのだ、養鶏場の人は間違いなく喜ぶはず……恐らく自分の願願いも聞いてくれるのでは。そう思うと自然と足取りが軽くなるというものだ。
「…………っ」
ソファの上でうーちゃんに埋もれたまま寝ていた加賀であるが、急にがたがたと鳴り出した扉の音でビクリと身を竦ませ目を覚ます。
「見てくる、そのまま座ってて」
身を起こそうとした加賀にそう一言残して扉の方へと向かうアイネ。外から開けようとしているのがラヴィ達であることを確認し扉の閂を外しラヴィ達を迎え入れようとして、ラヴィだけ外で待たせる。
「加賀、お湯の用意お願いできる?」
「う? ……あー、了解ちょっと待っててー」
アイネに言われラヴィの姿を見て納得したようにお湯を用意しに奥へと引っ込む加賀。ラヴィはあれだけ派手に戦闘したので当然と言えば当然なのだが全身に返り血等を浴びており、なかなか凄惨な姿へとなってしまっていたのだ。
「精霊さんこっそりお湯出してー」
周りに人が居ないのを確認し精霊にお湯を出して貰う加賀。
「ありがと、この仕事終わったらご飯用意するからそれまで待っててねー……よっと」
お湯の張ったタライを持ってラヴィの元へと向かう加賀。
他の皆が建物の中に入った中一人だけ外というのも可哀想である、ラヴィを見て悲鳴をあげてた養鶏場の人から布切れを受け取ると、ラヴィへとタライ事手渡す。
「結構時間かかったけど、やっぱ大変だった?」
「いやあ、討伐自体はそうでもないんだけどさ、片付けるのに手間取っちゃって」
「あ、そういうことね……なかなか汚れとれないね」
ラヴィの体についた返り血やらなんやらは渇いてこびり付いてしまっているようで、ラヴィが布でこすっても中々落ちない様だ。
「んー……アイネさん、まわりに人いるー?」
「ちょっと待って……いないね、みんな建物の中」
「どうしよ、精霊さんにお願いして洗ってもらう?」
ぬぅ、と唸って自分の体を見渡すラヴィ。まだまだ体のあちこちに赤ぐらい染みが大量についておりこのままでは全部落とす前に風邪をひきかねない。
「お願いしてもいいかなあ?」
「ほいよー、精霊さんラヴィをあらってあげてー」
「助かるよー……ちょっとまって」
加賀の言葉に反応してぼこりぼこりと音を立て地面から水が沸き立ってくる、それはあっと言う間に巨大な水球となり、ちょっとした家ぐらいの大きさになるとはじける様に水が零れラヴィを濁流が飲み込んでいった。
「ラヴィー!」
ぐわあああと言う叫び声と共に流されていくラヴィ。よく見ると流れた濁流は渦を作りその中心でラヴィがぐるぐると回っているのが見える。濁流に飲まれたときは焦った加賀であるが、どうやらちゃんと洗ってくれているようだと分かりそのまま見守る事にする。
「おー、ぴかぴか」
「…………」
精霊はきっちりラヴィを洗い切ったようだ。
ぴかぴかになったラヴィの体、それとは対照的に死んだ目で加賀を見つめるラヴィの視線から顔をそらす加賀。
「綺麗になったようでなにより、寒いし入ったら?」
「そだねー、戻ろ戻ろ」
ラヴィが死んだ目をしているのに気づいているのか居ないのか、あっさりと言ったアイネの言葉に便乗しささっと建物に入る加賀。
その後ろを少し涙目になったラヴィがついて行く。もう下手なお願いするのは止めておこうと心に誓いつつ。
「皆さん、本日はありがとうございました。おかげで安心して仕事を再開できます」
討伐隊の面々に頭を下げ礼を言う養鶏場の人。報酬はギルドに戻って受け取る事となる、なので各自解散次第ギルドへと向かって行く。
「加賀ちゃんちょっといい?」
「うん?」
だが、ラヴィは養鶏場の人へ頼みごとがある為その場に留まっていた、そして通訳をお願いするため加賀を手招きする。
「通訳すればいいのね、いいよ」
ラヴィのお願いを承諾しラヴィが耳打ちした言葉を養鶏場の人に伝える加賀。
内容はいたってシンプルで、要はこれから仕事を再開する養鶏場が、再び卵を安定供給出来るようになるまでの間、優先的にハンズのお店に降ろして欲しいと言う話である。
「あんたのおかげで皆怪我もしなかったんだし……まあ、それぐらいならいいよ。さすがに全部回せってのは無理だけど」
わりとあっさりと承諾した養鶏場の人。ラヴィは先ほどまでの死んだ目が嘘のように大喜びではしゃいでいる。
「それじゃまたー!」
養鶏場の人に向かい大きく手を振り叫ぶラヴィ。
あいにくと彼らには何を言っているかは分からないがとりあえず挨拶している事は分かるのだろう、手を振りラヴィを見送ってくれている。
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