異世界宿屋の住み込み従業員

熊ごろう

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180話 「しょうがないよね?」

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「なんで私何ですか……」

急に加賀と八木に呼ばれたかと思えば、先ほどの話を振られるはめになったチェスター、普段糸目な大きく見開き後退る。

後退るチェスターににじり寄る加賀。逃がす気は無いようだ。

「シェイラさんとよくPT組んでますしー」

「他にもいるじゃないですか……」

「んー……」

他にもいると言われ顔に指あて考える仕草を見せる加賀、だが視線はチェスターを見たままである。

「ヒューゴさんは煽りそうだし」

「……まあ、はい」

加賀の言葉を聞いてチェスターの脳裏にはシェイラの周りを飛び跳ね煽りまくりぶん殴られるヒューゴの姿がはっきりと思い浮かぶ。納得するしかない。

「アルヴィンさんは毒吐きそうだし」

「……えぇ、まあ」

これまた脳裏に光景がはっきりと浮かぶ。
真顔でさらっと毒を吐くアルヴィン、そして怒り出すシェリア。

「アントンさんはお腹が……イクセルさん割と変な人だし」

「……」

「チェスターさんしかいない」

太鼓っぱらのアントンは除外するとして、ぱっと見ものすごくまともそうなイクセルであるが割とダメな人だ。まかせるには不安が付きまとう。

「分かりました……一応話しては見ますけど期待はしないでくださいね?」

そうなると残るのは自分だけ、チェスターは額を押さえ軽く息を吐くと諦めたようにそう加賀に告げるのであった。


「っと、そろそろ仕事いかんと……」

「そうだった。モヒカンが迎えに来る前にいくといいよー」

「おう、いってくる」

チェスターがシェイラに話しかけるのを眺めていた二人であったが、八木が仕事の時間が迫っている事を思い出し、加賀に一言残して席を立つ。

「……ん?」

「加賀っち、私に用ってなーに?」

「……え」

そして視線を再びチェスターとシェイラの方へと向ける加賀であったが、なぜか目の前にシェイラが立っていた。
そして視線をシェイラからずらすと顔の前で手を合わせ謝る仕草を見せるチェスターの姿があった。
そして呼び止める間もなく食堂からひゅっと居なくなってしまう。

「えぇぇ~……っと、とりあえずこっちに……」

シェイラの手を引きとりあえず周りから見えない所に連れて行く加賀。

「なになに、内緒のおはなし?」

「えーと……内緒といえば内緒かなあ」

「ふーん?」

きょとんと首を傾げるシェイラを見て言いにくそうに顔を反らす加賀。
が、いつまでも言わないでこのままと言う訳には行かない、加賀は意を決してシェイラに向かい口を開く。


「……いやー」

加賀の言葉を聞いて気まずそうに視線を横にそらすシェイラ。
どうも自覚はあったらしい。

「まあ、お腹周り気になってはいたんだけどさー……ごはんおいしくて」

「……」

「気が付いたらこの様よー……」

そう言って涙目でお腹をぷにっとつまむシェイラ。
とりあえず自覚はあった事に安心しつつ、お腹から目をそらし気になっていた事を尋ねる事にした加賀、再びシェイラへ話しかける。

「あ、でもイーナさんは体型変わってないですよね? 食べてるものあまり変わらないはずなんですけど……」

加賀の言葉を聞いて今度は視線だけではなく顔ごと反らすシェイラ。

「……つまみ食いしました?」

「してないっ」

ジト目で尋ねる加賀に思わず叫ぶシェイラ。そして気まずそうにぼそぼそと白状しだす。

「イーナは……週に二日ぐらいしかダンジョン休んでないから……私は」

「私は?」

「……三日ぐらい……ダンジョン行ってる」

三日と聞いてあまり変わらないと一瞬思った加賀であったがそうではなかったらしい。
ようは週に四日休んでいると言う事である。

「なるほど……アルヴィンさんに相談しますか」

「加賀っちー!? やめてぇー!」

アルヴィンに相談といって食堂に向かおうとした加賀をがしっと押さえるシェイラ。

「だって、お昼とか夜に出ない料理いっぱいだし! おやつとかもそうだしっ」

「……さっきから騒がしいですよ、シェイラ」

「うげっ」

加賀をがくがくと揺さぶり必死に訴えていたシェイラであるがちょっと声がでかすぎたらしい。
音を煩わしく思ったアルヴィンに現場をばっちり見られてしまう。

明日以降シェイラの休みは週二日までと決定する。



「まあ、昼飯は確かに夕食と違うのだしてるしなあ……おやつも試作品やら多いし、気持ちは分からんでもない」

死んだ目でパンをもそもそと食べるシェイラに少し気の毒そうな視線を向けるバクス。
彼自身、昼に出てくる料理は楽しみにしてただけに彼女の気持ちも分かるのだろう。

「でも、鎧とか着れなくなるとさすがに不味いですもんねー……そういやバクスさんは体型変わらないですよね?」

そう言ってバクスを見る加賀。
ぱっと見バクスの体型は初めてあった時から変わっていない様に見える。

「俺はたまにウォーボア狩りに行ったりしてるからな」

「へー…………あっ」

得意げに話すバクス。
それに感心した様にしていた加賀であるが、何気なくすっと手をバクスの方へと伸ばす。

「…………」

「…………」

ほんの冗談のつもりではあった。だがバクスのお腹に延ばされた加賀の手はバクスのお腹をぷにっとつまんでしまっていた。
やっべえといった表情が加賀の顔にありありと浮び、そして死んだ目で空を見つめるバクス。
明日以降ダイエットに励むものが一人増えそうである。
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