異世界宿屋の住み込み従業員

熊ごろう

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236話 「たまにちゃんと喋ったりする」

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昼食が終わり、何時もならおやつの時間まで夕食の支度に取り掛かる忙しそうな従業員の姿が見える宿の厨房。
だが今日に関して言えばそれは当てはまらない、厨房にはまだ温かな鍋はあるが無人である。
食堂に行ってみればそこのまた無人。
では皆はどこに行ったのだろうかと言うと、それは宿にある加賀に割り当てられた部屋の中、そこから何やら話し声が聞こえてくる。

うー(ひまー)

「んー」

部屋の中には椅子に腰かけPCをいじる加賀とベッドの上で暇そうにごろごろと転がるうーちゃんが居た。

「もう仕込み終わったし、今日は特にやる事ないんだよねー」

顎に指あてそう話す加賀。
今日の夕食はシチューがメインであり、あとは夕食前に温めるのと幾つか料理を追加する程度なので夕食までの間割と暇なのだ。

うー(ひままー)

ますます転がる勢いをまし、暇をアピールするうーちゃんに加賀はどうしたものかと困った表情を浮かべている。
少し考えていた加賀であったが良い案が浮かんだのがぽんと手を叩いてうーちゃんへと声を掛ける。

「んー……そだ、八木のとこでも遊びに行ってみたらどー?」

うー(えー)

加賀達と違って八木は今日もしっかり仕事があるはず。そう思った加賀がうーちゃんに八木の元へ行くよう勧めるがあまり乗り気ではなさそうだ。

「ほりゃ、丁度おやつの時間だし。焼き菓子詰めてあげるから行ってきなー」

うー(むーん)

とは言えこのままでは暇なままである。
お菓子の詰め合わせを押し付けられる様に受け取ったうーちゃんは、ぶーたれながらも八木の元へと向かうのであった。


「ぬ……確かお前さんは宿の」

事務所にいけばそこはもぬけの空。
どうやら八木は現場に行っているらしく、うーちゃんは匂いを辿りやがて現場までたどり着く。
現場にいたモヒカンはうーちゃんの姿を見るとすぐに宿の兎だと分かったようである。

「ちょっとまっとれ。おーい八木ぃ!」

現場は人がそれなりに多く中々騒がしい。
モヒカンは大きく声を張り上げ八木を呼ぶ。

「なんすか親方?」

「ほれ、客きてっぞ」

客と聞いてモヒカンもとい親方が顎で指示したほうを向く八木であったが、そこに居た予想外の客に目をぱちくりとさせる。

「ん……んんんんっ!?」

うー(きしゃー)

気のせいかと目を何度もこする八木に対しとりあえず威嚇するうーちゃん。
親方がだいじょぶかいなこいつらといった視線を向けるがおかまいなしである。


「あの、今日は一体どうしたのです?」

うー(ひままん)

思わず敬語になる八木にごろごろと転がりながら暇である事を伝えるうーちゃん。

「ひまま……ああ、暇だから遊びにきたと……といっても仕事中だから余りかまえないんだけど……あ、見てるからいい?」

理解するまで時間が掛ったが暇であり遊びにきたのだと理解した八木であるが、ちらりと現場を振り返りぽりぽりと頭をかく。
まだ仕事中でありうーちゃんと遊んでいる暇はないのだ、それを伝えるとうーちゃんも分かっていたのかごろりと横になり八木の働きっぷりを観察しだす。

「それじゃ、仕事戻るから邪魔にならないところで見ててね」

うーちゃんに告げ、仕事へと戻る八木。
そして手前で皆へ指示を出していた親方へと声をかける。

「親方戻りやした」

「おう……もういいのか?」

八木が戻ったのを見て、後ろを振り返る親方であったがそこにはうーちゃんが横になっていたりする。
まだ帰っていないのを見てまだ話が終わってないのかと思い八木に尋ねる親方。別に少しぐらいであれば話し込んでいても問題ないと思っていたのだ。

「ええ、ちょっと見学したいそうで、あのまま置かせてやってください」

「まあ構わんよ……おい、そこお! そいつは後回しだつったろ」

そう言う事かと理解した親方、別に邪魔にならなければと理解をしめす。
うーちゃんの様に寝っ転がってと言うのは初めてだが、今までも現場を見学するものが居なかったわけではない。
街中で作業をしていると子供やらが除きにきたりする事があるのだ、最も危ないと判断すれば離れる様に指示は出すが……うーちゃんに関しては不要と判断された様だ。


「おし、そろそろ休憩いれっぞ」

「……うーちゃん、何か不満そうね」

うー(べっつにー)

休憩時間となり、八木がうーちゃんの元へと戻るとなぜか不満そうな表情をしたうーちゃんの姿があった。
何かこう笑える面白いハプニングが起こらないかと期待していたが、八木はきっちり真面目に仕事をしておりそう言ったハプニングは一切なかったのだ。

うー(普通に仕事していて安心したわ)

「はっはー、意外とまじめにやってるんよー?」

褒められているのか貶されているのかは分からないがとりあえず真面目にやっている事をアピールする八木。
だがうーちゃんは既に持ってきたお菓子を高速で食い始めている為聞いてないようだ。

「もー、うーちゃんてば……あれ?」

しょうがないなーとお菓子に手を伸ばしぺしりと叩かれる八木。
そのショックでかは分からないが、八木はふとある事に気が付く。

「う、うーちゃんさっき普通にしゃべってなかった!?」

うー(うまうま)

必死になってうーちゃんに話掛けるがお菓子に夢中なうーちゃんはまったく話を聞いていない。
食い終わるといつもの口調に戻っており、八木がもう一回!と頼み込むも耳で突かれるだけである。
結局そのまま休憩時間は終わり、八木はしぶしぶ仕事へと戻っていった。


その後、兎に必死になって話掛けるやべーやつがいると噂になったとかならなかったとか……。
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