異世界宿屋の住み込み従業員

熊ごろう

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253話 「休日の過ごし方2」

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「今度、ですか?」

「ああ、いやこっちの話だ……」

今度と聞いて首をかしげる探索者達に向かい何でも無いと軽く手を振り口を開くバクス。
以前、今日と同じように従業員が居ない日にこうやってこっそり飯を食っていたのだ。その時も帰ってくるはずの無い者が帰ってきてこっそりしてたのがばれたのだが……。

「ちと試しに作ったソーセージが思ったより美味かったんだ。昼は食ったか? 簡単なもので良ければお前さん方も食うと良い」

「あざっす!」

あの時と違いばれたらどうしようと言う後ろめたい気持ちは無い。別にばれたらばれたで構わないのである。
バクス湯にソーセージを追加で入れると再び火に掛ける。

「茹で上がるまで時間掛かるから……これでも飲んどけ」

ソーセージが茹で上がるまでは割と時間が掛かるものだ。
バクスは宿に入るコップを追加で持ってくるとコーヒーを注ぎ探索者達へと渡す。

「コーヒーすか。何か色濃いなー」

「深煎りしたんだ。大分苦いがいけたぞ」

何時もと違うコーヒーを興味深そうに眺めるヒューゴ。
他の者は喉が渇いていたのだろう、受け取るとすぐに口を付けた。

「ふむ……ああ、味も香りも濃いですね。これはこれで良いです」

「えっ、おまっ……砂糖?」

良いと良いながら砂糖をどばどばと追加する皆を見て口をあんぐりと開け固まるヒューゴ。

「ええ、そのままだと私には苦すぎますので……貴方はそのままが好きでしたね」

コーヒーを飲むようになってから暫く経つが未だに砂糖を入れずに飲むのは少数派であった。
探索者達ではヒューゴとアントンぐらいだろう。

「おう……砂糖入れてもいいのか」

「? そりゃ良いだろうさ」

ただヒューゴに関しては加賀が悪戯で砂糖を入れずに飲ませ、それ以来コーヒーはこういう物だと思い込んでいたせいもある。
もっともずっとそのまま飲んでいたせいで今では苦いコーヒーも好きになっているようだが、それでも砂糖を入れて良いと知ってちょっとばかしショックを受けているようだ。


「そう言えばお前さん方、今日はどうしたんだ? この時間に帰ってくるとは珍しいな」

ソーセージが茹で上がるまではまだ時間が掛かる、バクスは時間を潰すがてらに探索者達に何かあったのかを尋ねる。

「あーあれっすよ。俺らのチーム、行った先々に先客が居てどうにもならんので帰ってきたんす」

「ふむ。残りの連中もか」

「ええ、何人かはそのまま昼食を取りに行くとの事で分かれましたが、その内戻ってくるでしょうね」

昼飯を食べてくるのなら例え帰ってきても夕食までそんなに量を食うことは無いだろう。バクスは燻製小屋に残っている加工肉の在庫を思い浮かべ軽く頷く。

「そうかそうか……ほれ、茹で上がったぞ」

いつの間にかソーセージは茹で上がっていたらしい。
皿に盛ったソーセージを探索者達の前に置くと、四方八方から一斉に手が伸ばされる。

「おっほ!」

「これはまた普段食べているのと大分違いますねえ……肉々しいと言うか」

「これはいかん酒が……酒は? 酒はどこかのう」

美味い飯、それも酒によくあいそうとなれば酒が欲しくなるのが自然である。
バクス自身酒を既に飲んでおり、無いとは言えない。ただの昼食が飲み会に変わるまでそう時間はかからなかった。


「そろそろ腹に貯まるのも食うか……む?」

「どもっす……あの、俺も……」

つまみを食べ、酒を飲んでいたバクスであったがそろそろがっつりしたものが食べたくなってきたようだ。
あれをやるか、とチーズとベーコンを手に取ったところで物陰から様子を窺う八木の存在に気が付く。

「安心しろ。今日はまだあるぞ。お前も酒と皿持ってくると良い……ああ、あと椅子もな」

前回と違ってまだまだ材料はある。
バクスは八木に声をかけると二人分の材料を持ち準備に取り掛かるのであった。

「おう……こりゃまた美味そうだわい」

「頂きやす!」

バクスが調理をしていると今まで見たことの無い料理と言うこともあり自然と皆の視線が集まる。
そんな中で八木はバクスからたっぷりのチーズとベーコンを挟んだBLTチーズサンドを受け取ると間髪入れずかぶりつく。

「ふほほっ……うっま! チーズとベーコンやばすぎっ」

「うまそうだなおい……って取らねえよっ」

皆の視線が自分の手元に集中していることに気が付いた八木は取られまいとパンをガードする。
その様子を眺めていたバクスは苦笑を浮かべながら次に準備に取り掛かる。

「うまいっす! これ、うまいっす!」

「これ、何で普段作らないんす?」

「そりゃ……チーズがいくらあっても足りんだろ。 お前さんそれ何個目だ?」

探索者達の為に用意された大量のBLTチーズサンドはもう残り少ない。
一つあたりに結構な量のチーズを消費するため宿のチーズの在庫はもう空である。

「んー……3個目?」

「5個目ですよ、おしくも何ともありません」

「あ、そーだっけ? 一気に食ったから忘れちまったよ」

そう言って顔を真っ赤にしてケラケラと楽しそうに笑うヒューゴ。
食った個数を忘れたのは一気に食ったからでは無く酔っ払った為に違いない。
昼食が飲み会になって結構な時間が経つ。呂律が回っているため酔ってなさそうに見える者もまともに歩けなかったり、空中に向かって話してたりとかなり酔っ払っていたりする。
酒もつまみも時間もまだまだある。その日の飲み会は中々にカオスになりそうな予感がひしひしと感じられた。
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