異世界宿屋の住み込み従業員

熊ごろう

文字の大きさ
284 / 332

281話 「縄張り争い3」

しおりを挟む
とにかく今は助けることを優先すべきと、救助に向かうメンバー……アイネとうーちゃんの二人は早速現場へ向かうべく支度を始めていた。

「加賀も行くの?」

支度が終わり玄関から宿の外に出たアイネとうーちゃん。
そして二人を追って加賀も宿の外へと出ていた。

「通訳たぶん必要でしょー? あ、アイネさんからは絶対離れないからっ」

ただ助けて終わりとなれば良いが、話し合いが必要になる可能性もある。
アイネも自分から離れないのであれば大丈夫かと思いコクリと頷く。

うー(いくどー)

「わぷっ」

出発しようとしているうーちゃんに近寄った加賀をアイネがひょいと抱きかかえる。

「落ちないように掴まってて……ん、いいよ」

うー(ごー)

そして空いた手でうーちゃんの肩に掴まり、合図を出す。
合図を受けたうーちゃんは地面を、空を蹴りすっ飛んでいく。
加賀の体にぐっとGが掛かるが、一応加減はしてくれているらしく耐えきれない程ではない。
そのまま加速を続け、今度は減速によるGが加賀に掛かる。
時間にして1分も掛から3人は汽水湖へと到着していた。


「も、もうついたの……」

アイネの腕から解放されよろよろと地面を歩く加賀。
こんなに早く着くのなら留守番でも良かったかなと思わなくも無いが着いてきてしまったものは仕方が無い。
辺りを見渡しドラゴンに姿を探し始める。

「……まだ無事のようね」

アイネの言葉に視線を向ける加賀。
ドラゴンは1対2と言いう不利な状況でも未だ健在であった。


(随分と若い個体だな……)

空を飛ぶ2匹の竜と対峙しながらそんなことを考えるドラゴン。
始めは1対2と絶望的な状況でそんな考える余裕など無かったが、戦っているにつれ対峙している竜がかなり若い個体であると分かってきた。

(独り立ちしてすぐ番となり子育てをする安定した環境が欲しい、といった所か……確かにここは外敵も居なく、食糧も豊富。中央の島を住処とすれば子育てするには持って来いの環境だろう)

ブレスも貧弱、空を飛ぶのも安定感が無い。
力も弱く鱗も柔い、それにスタミナもそこまで無い様だ。
不利だった状況は徐々にドラゴンの優勢へと変わっていった。

(だが、ここは我が輩も気に入っているのでな……そう易々とは――)

「あ、ドラゴンさんこっち気が付いたね」

ドラゴンが加賀達の存在に気が付いた様だ。
一瞬ビクリと身を竦ませた為、その瞬間を攻撃され慌てて回避しげいる。

「……残りの2匹も気が付いた様ね」

ドラゴンの様子がおかしかった事に2匹の気が付いた様で、その原因である加賀達へ時折チラチラと視線を向ける様になる。

「……んー。ドラゴンさんが優勢?」

「そうね」

「1対2なのに……ドラゴンさん強かったんだ」

始めは状況次第ではすぐさま助けに入るつもりであったアイネとうーちゃんであるが、思っていたよりもドラゴンが余裕をもって戦えているのを見てその戦闘を見守るだけにしている。

「うーちゃんが暇そうだ……」

うーちゃんは張り切って来た分反動がでかかった様で、今は地面に仰向けに寝そべりお腹をポリポリとかいている。

「張り切って来たのにね……!」

寝そべるうーちゃんを見て少し笑みを浮かべていたアイネであったが急に険しい表情を浮かべたかと思うと上空を睨みつける。

「ふっ!?」

アイネに釣られて上空へと視線を向けた加賀の口から声が漏れる。
暢気に会話している加賀達が気に障ったのだろうか、上空では加賀達へ方向きブレスを吐こうとしている飛竜の姿があった。

うっ(てい)

だがうーちゃんが居る状態でブレスを吐ける訳もなく。
いつの間にか背後に回っていたうーちゃんが尻尾を掴むと、そのまま地面へと向かい振り下ろす。
勢いに負けて千切れた尻尾を残して飛竜は地面へと勢い良く叩きつけられた。
そして残りの1匹もすぐに同じ運命を辿る事となる。
しおりを挟む
感想 27

あなたにおすすめの小説

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生小説家の華麗なる円満離婚計画

鈴木かなえ
ファンタジー
キルステン伯爵家の令嬢として生を受けたクラリッサには、日本人だった前世の記憶がある。 両親と弟には疎まれているクラリッサだが、異母妹マリアンネとその兄エルヴィンと三人で仲良く育ち、前世の記憶を利用して小説家として密かに活躍していた。 ある時、夜会に連れ出されたクラリッサは、弟にハメられて見知らぬ男に襲われそうになる。 その男を返り討ちにして、逃げ出そうとしたところで美貌の貴公子ヘンリックと出会った。 逞しく想像力豊かなクラリッサと、その家族三人の物語です。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

処理中です...