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311話 「街外れの塔 4」
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宿の食堂へと足を踏み入れた八木であったが、一歩二歩と進んだところでピタリと足を止めてしまう。
八木の後ろに続いていた先ほどの女性であるが、どうしたのだろうかと後ろから顔を覗かせ、そして目を丸くする。
「あら、ヨハン先に来ていたのね。 手首がプラプラしてるわよ」
そうナンパ野郎に声をかけるニーナ。
加賀は屋台が終われば昼食を作るため宿へと戻る。
その際にナンパ野郎もとい吸血鬼もその場に放置するのも不味かろうと、半ば引き摺る様に連れて来ていたのだ。
「やあニーナ。 ちょっと説得するのを手伝ってくれやしないかい」
紐で縛られた手を見せてそう話すヨハン。
ちなみに出会った際にくびれてしまった手首であるが、今は両手首共にくびれていたりする。
ただ恐らくは種族的なものなのだろうか、笑いながら手首を揺らして話しかけているあたり痛みはさほど感じてはいないらしい。
「美しいお嬢さんに挨拶を……と手に口づけしようとしたのだがね、ごらんの有様だよ」
「まあ、本当クズね。 一度バラバラにされてしまえば良いのに」
「ははは!」
驚いたように手を口に当てるニーナであったが、次に口から出たのは心配する声ではなく、毒であったQ。
楽しそうに笑うヨハンであるが、ちょっぴり涙が滲んでいるのは気のせいだろうか。
そんな二人のやり取りをぽかんとした様子で見ていた周りであるが、いち早く立ち直った加賀が八木に向かい声をかける。
「八木、こちらの女性は……?」
「えっと、ニーナさんって言って、俺に用事があるみたいで……そっちの男性は?」
加賀の声を聞いて八木も立ち直ったようだ。軽くニーナについて話すと今度は警戒した様子で男性について加賀に質問をする。
「例の吸血鬼みたい」
尋ねられた加賀はと言うと特にためらう素振りもなく吸血鬼である事を八木に伝える。
吸血鬼と聞いてぎょっとした表情を浮かべヨハンを見る八木であったが、徐々に困惑した表情へと変わっていく。
「え、あれ? ニーナさんはその吸血鬼と知り合いで……え、あれ?」
「いけない私とした事が…………はい、解除しましたわ」
ヨハンとニーナを交互に見て混乱した様子を見せる八木。
ニーナは何かを思い出したように軽く手を叩くと、静かに目を閉じ何事か呟く。
「!? あ、あなたもまさか……?」
「はい、私もそこの手首を縛られているヨハンも吸血鬼です」
「まじか……」
それは認識阻害の魔法を解くための言葉だったようで、混乱していた八木はやがて落ち着きを取り戻し、ニーナが吸血鬼であると言うことを認識する。
ちなみにヨハン側のは手首がぷらんとなった際に解除されていたりする。
「それで……何の要があって二人に接触したんだ? まあ、もう予想はついてはいるが」
皆が落ち着いたところを見計らい、バクスが二人へとそうたずねた。
二人はお互いの顔を見やり、頷き合う。そのやり取りでどちらか話すか決めたのだろうか、ニーナは食堂に集まった宿の面々に向かい話し始める。
「そうですね……単刀直入に言います。 お二人の血液を少々頂きたいのです。 勿論ただとは言いません、お礼として……こちらを差し上げます」
「ネックレス……?」
ニーナは首に付けていたネックレスを外すとテーブルの上に置き、すっと押し出す。
「魔道具か」
一見ただのネックレスに見えるそれは見る人が見れば魔道具だと分かるものであった。
「はい。 普段見えている光以外も捉えることが可能になる魔道具です。 使い方はこちらに書いておきました」
「こりゃかなり良い物だが……どうする? 結構な値打ちもんだが」
説明を聞いて方眉をくいと持ち上げるバクス。
彼が値打ちもんと言うことは仮に売れば相当な額にはなるだろう。だが、かと言って血を分けていいかと言われると簡単に頷く訳にもいかない。
「え……いや、その前に噛まれたら傀儡になるんじゃ……?」
事前の情報で吸血鬼のことをある程度聞いていた二人としては、噛まれた時点で傀儡になると分かっててはい、とは言えるわけもない。
「噛むだなんてとんでもない。 今時そんな事をする者居ませんよ」
「この道具を使います」
加賀の話を聞いた吸血鬼の二人は慌てて噛むことはないと話し、そしてある道具を懐から取り出した。
「注射……」
八木と加賀の二人にとって見慣れた道具であった。
見慣れてはいるが、嫌な記憶しかないので二人揃って顔をしかめているが。
「痛みも少しチクリとするだけですし、ポーションも用意してあります」
「や、八木……?」
「う、う~ん……」
注射がどういうものか知っている二人であるが、どうにも踏ん切りがつかないでいた。
と言うのもよくよく観察してみるとその注射、どうも二人が知っているものより数段針がぶっといのである。
普通の注射がぷすっ、だとすれば。二人の前にあるそれはグッサアぐらいだろうか。
「実は……私達ここ20年ほど人の血を飲んでいないのです」
「飲まなければ死ぬと言うわけではないからね……ただあなた方のの噂を聞いて、どうにも耐えるのが辛くなってしまってね」
「一度だけで良いのです。 どうか血を恵んでは頂けないでしょうか……」
このままだと飲めなさそう、そんな予感を感じ二人を説得にはしる吸血鬼達。
必死に懇願する様子に二人も断りずらそうにしている。
「う……い、一度だけなら?」
「……そうだな、献血と思えば」
結局一度だけでいいならと引き受けることにしたのであった。
引き受けたならばあとは実際地を抜くだけ。
ニーナとヨハンは二人の袖をめくり、ロープで腕をぐいと縛るなど準備を始めていた。
「でもあの報酬貰いすぎな気がするんですけど……神の落とし子だからって特別美味しいとは限らないですよ?」
ただ待ってる間暇ではあるので加賀は疑問に思っていたことを二人へとたずねる。
加賀の感覚としては献血すればジュースが貰える……程度の認識であるので、高価な魔道具となるとどうしても貰いすぎな気がしてならないのである。
「味ではないのですよ、要は心が満たされるかどうかですので、それだけの価値が私達に取ってはあるんです。……さて、準備は出来ました。 ヨハンそちらは?」
ニーナに話を聞いて希少な血液型の場合は謝礼金が貰える、それと似たようなものかなと自分を納得させる加賀。
そうこう話しているうちに加賀の方の準備は整っていた。
「ちょっと待ってくれ。 予想以上に腕が太くて……出来たと思う」
八木も腕が太すぎて苦労していたようではあったが、こちらも準備が整ったようである。
ちなみにヨハンの手首は縄を解くとすぐに治癒が完了し、問題なく使えていたりする。
そのあたりの再生能力の高さはさすが吸血鬼といったところだろうか。
「あー……注射とか何時以来だろ」
ぶっとい注射を前に深いため息のあと呟くように話す八木。
「注射苦手?」
「得意な奴はいねーだろ……」
にひっと笑い八木に返す加賀。
ちょっと笑みが引きつっていたりするあたり実は加賀も注射が苦手なのだろう。
「この針が入っていくのがなあ……」
ぷつっと針の先端が皮膚を破り体内へとはいっていく。
その様子を血走った目でまじまじと見つめる八木をみて加賀はあきれたように息を吐いた。
「見なきゃいいのにさー」
「見ないと逆に不安になんだよ」
そんなやり取りをしている間にも血はどんどん抜かれていく。
やがて小さめのコップ一杯程度まで取れたところで針が二人の腕から抜かれる。
「……はい、これで十分です」
恍惚とした表情で真っ赤になった注射を見つめるニーナ。
ヨハンも似たようなものであるが、こっちは目が血走ってて若干怖い。
「それでは……」
「お二人に感謝して……」
注射器の中身をグラスに移し、グラスを加賀と八木の二人へとかざす。
「……」
「……」
ぐっと一口グラスの中身を口に含み、ゆっくり味わうように喉へと落としていく。
「あ、交換するのね」
おもむろにグラスを交換する二人を見てそう呟く加賀。
八木は血を見過ぎてちょっと貧血気味である。
「久しぶりの血……美味しかったです」
「ああ、満足だ」
涙ぐみながら礼を述べる二人。
「やっぱ味とか違ったんです?」
若干引きながらも気になっていたことをたずねる加賀。
ヨハンは小さく首を横に振ると口を開いた。
「いや、人と味が違うといった事は無かったよ」
「そうですね、お二人とも健康的な味……加賀さんは少々栄養不足気味で、八木さんは少し筋肉質でコッテリしていて酒精の風味を感じたので……少しだけ気を付けたほうが良いかも知れませんね」
神の落とし子特有の味ではなかったらしくそこは人と同じであったようだ。
ただ種族的なものではなく、個人の食生活などによって多少味が変わってくるらしい。
「ほへー」
「そんなん分かるんだなあ」
説明を聞いた二人は感心した様子を見せる。
「種族によっても味違ったりするんで?」
「ええ、勿論です」
種族の違いについてたずねてみる八木。
自分の好きなものについて質問されたのが嬉しかったのだろう。ニーナはニコニコと笑みを浮かべながら二人に種族による違いを説明をしだす。
「エルフの方はあっさりと、それでいて甘みが多くて、ドワーフの方は酒臭いことが多いです」
「それアル中じゃ……」
ちら、と八木を横目で見る加賀。
八木は眉をひそめて首を横にふるのであった。
「まあ何にせよ平和的な吸血鬼で助かったわい」
夕食時となり、宿へと戻った探索者らはそこで吸血鬼の二人と対面する事となった。
一触即発となりかけたが、自分達が相手を吸血鬼じゃないか? と疑えていることや、それに宿のメンバーからの説明もあって今は皆落ち着いて……はいないが、平和に夕食を取っている。
なお、吸血鬼達も普段は人とあまり変わらない食事を取っているとのことで、夕飯は一緒に食べる事としたらしい。
「そうじゃなかったら対策で大騒ぎでしたからねえ……」
「ははは! 色んな吸血鬼がいますからなあ」
話してみればちょっとあれな所もあるが、基本良い奴だと言うことですっかり馴染んでしまっているようだ。
「そう言えば皆さん、吸血鬼が街に居るとご存知だったようですけど……」
「ん? ああ。 街のそばに塔が出来てたからそれで分かったんよ。 八木がたまたま仕事で高いところに登ってさ、気付いたってわけ」
探索者達や宿の面々の反応から疑問に感じていたことを口にするニーナ。
手近にいた探索者が八木をさしながらそう話す彼女は眉を怪訝そうにひそめた。
「……私達、塔は作って無いのですけど」
翌日、探索者ギルドより塔の緊急調査隊が組まれる事となった。
八木の後ろに続いていた先ほどの女性であるが、どうしたのだろうかと後ろから顔を覗かせ、そして目を丸くする。
「あら、ヨハン先に来ていたのね。 手首がプラプラしてるわよ」
そうナンパ野郎に声をかけるニーナ。
加賀は屋台が終われば昼食を作るため宿へと戻る。
その際にナンパ野郎もとい吸血鬼もその場に放置するのも不味かろうと、半ば引き摺る様に連れて来ていたのだ。
「やあニーナ。 ちょっと説得するのを手伝ってくれやしないかい」
紐で縛られた手を見せてそう話すヨハン。
ちなみに出会った際にくびれてしまった手首であるが、今は両手首共にくびれていたりする。
ただ恐らくは種族的なものなのだろうか、笑いながら手首を揺らして話しかけているあたり痛みはさほど感じてはいないらしい。
「美しいお嬢さんに挨拶を……と手に口づけしようとしたのだがね、ごらんの有様だよ」
「まあ、本当クズね。 一度バラバラにされてしまえば良いのに」
「ははは!」
驚いたように手を口に当てるニーナであったが、次に口から出たのは心配する声ではなく、毒であったQ。
楽しそうに笑うヨハンであるが、ちょっぴり涙が滲んでいるのは気のせいだろうか。
そんな二人のやり取りをぽかんとした様子で見ていた周りであるが、いち早く立ち直った加賀が八木に向かい声をかける。
「八木、こちらの女性は……?」
「えっと、ニーナさんって言って、俺に用事があるみたいで……そっちの男性は?」
加賀の声を聞いて八木も立ち直ったようだ。軽くニーナについて話すと今度は警戒した様子で男性について加賀に質問をする。
「例の吸血鬼みたい」
尋ねられた加賀はと言うと特にためらう素振りもなく吸血鬼である事を八木に伝える。
吸血鬼と聞いてぎょっとした表情を浮かべヨハンを見る八木であったが、徐々に困惑した表情へと変わっていく。
「え、あれ? ニーナさんはその吸血鬼と知り合いで……え、あれ?」
「いけない私とした事が…………はい、解除しましたわ」
ヨハンとニーナを交互に見て混乱した様子を見せる八木。
ニーナは何かを思い出したように軽く手を叩くと、静かに目を閉じ何事か呟く。
「!? あ、あなたもまさか……?」
「はい、私もそこの手首を縛られているヨハンも吸血鬼です」
「まじか……」
それは認識阻害の魔法を解くための言葉だったようで、混乱していた八木はやがて落ち着きを取り戻し、ニーナが吸血鬼であると言うことを認識する。
ちなみにヨハン側のは手首がぷらんとなった際に解除されていたりする。
「それで……何の要があって二人に接触したんだ? まあ、もう予想はついてはいるが」
皆が落ち着いたところを見計らい、バクスが二人へとそうたずねた。
二人はお互いの顔を見やり、頷き合う。そのやり取りでどちらか話すか決めたのだろうか、ニーナは食堂に集まった宿の面々に向かい話し始める。
「そうですね……単刀直入に言います。 お二人の血液を少々頂きたいのです。 勿論ただとは言いません、お礼として……こちらを差し上げます」
「ネックレス……?」
ニーナは首に付けていたネックレスを外すとテーブルの上に置き、すっと押し出す。
「魔道具か」
一見ただのネックレスに見えるそれは見る人が見れば魔道具だと分かるものであった。
「はい。 普段見えている光以外も捉えることが可能になる魔道具です。 使い方はこちらに書いておきました」
「こりゃかなり良い物だが……どうする? 結構な値打ちもんだが」
説明を聞いて方眉をくいと持ち上げるバクス。
彼が値打ちもんと言うことは仮に売れば相当な額にはなるだろう。だが、かと言って血を分けていいかと言われると簡単に頷く訳にもいかない。
「え……いや、その前に噛まれたら傀儡になるんじゃ……?」
事前の情報で吸血鬼のことをある程度聞いていた二人としては、噛まれた時点で傀儡になると分かっててはい、とは言えるわけもない。
「噛むだなんてとんでもない。 今時そんな事をする者居ませんよ」
「この道具を使います」
加賀の話を聞いた吸血鬼の二人は慌てて噛むことはないと話し、そしてある道具を懐から取り出した。
「注射……」
八木と加賀の二人にとって見慣れた道具であった。
見慣れてはいるが、嫌な記憶しかないので二人揃って顔をしかめているが。
「痛みも少しチクリとするだけですし、ポーションも用意してあります」
「や、八木……?」
「う、う~ん……」
注射がどういうものか知っている二人であるが、どうにも踏ん切りがつかないでいた。
と言うのもよくよく観察してみるとその注射、どうも二人が知っているものより数段針がぶっといのである。
普通の注射がぷすっ、だとすれば。二人の前にあるそれはグッサアぐらいだろうか。
「実は……私達ここ20年ほど人の血を飲んでいないのです」
「飲まなければ死ぬと言うわけではないからね……ただあなた方のの噂を聞いて、どうにも耐えるのが辛くなってしまってね」
「一度だけで良いのです。 どうか血を恵んでは頂けないでしょうか……」
このままだと飲めなさそう、そんな予感を感じ二人を説得にはしる吸血鬼達。
必死に懇願する様子に二人も断りずらそうにしている。
「う……い、一度だけなら?」
「……そうだな、献血と思えば」
結局一度だけでいいならと引き受けることにしたのであった。
引き受けたならばあとは実際地を抜くだけ。
ニーナとヨハンは二人の袖をめくり、ロープで腕をぐいと縛るなど準備を始めていた。
「でもあの報酬貰いすぎな気がするんですけど……神の落とし子だからって特別美味しいとは限らないですよ?」
ただ待ってる間暇ではあるので加賀は疑問に思っていたことを二人へとたずねる。
加賀の感覚としては献血すればジュースが貰える……程度の認識であるので、高価な魔道具となるとどうしても貰いすぎな気がしてならないのである。
「味ではないのですよ、要は心が満たされるかどうかですので、それだけの価値が私達に取ってはあるんです。……さて、準備は出来ました。 ヨハンそちらは?」
ニーナに話を聞いて希少な血液型の場合は謝礼金が貰える、それと似たようなものかなと自分を納得させる加賀。
そうこう話しているうちに加賀の方の準備は整っていた。
「ちょっと待ってくれ。 予想以上に腕が太くて……出来たと思う」
八木も腕が太すぎて苦労していたようではあったが、こちらも準備が整ったようである。
ちなみにヨハンの手首は縄を解くとすぐに治癒が完了し、問題なく使えていたりする。
そのあたりの再生能力の高さはさすが吸血鬼といったところだろうか。
「あー……注射とか何時以来だろ」
ぶっとい注射を前に深いため息のあと呟くように話す八木。
「注射苦手?」
「得意な奴はいねーだろ……」
にひっと笑い八木に返す加賀。
ちょっと笑みが引きつっていたりするあたり実は加賀も注射が苦手なのだろう。
「この針が入っていくのがなあ……」
ぷつっと針の先端が皮膚を破り体内へとはいっていく。
その様子を血走った目でまじまじと見つめる八木をみて加賀はあきれたように息を吐いた。
「見なきゃいいのにさー」
「見ないと逆に不安になんだよ」
そんなやり取りをしている間にも血はどんどん抜かれていく。
やがて小さめのコップ一杯程度まで取れたところで針が二人の腕から抜かれる。
「……はい、これで十分です」
恍惚とした表情で真っ赤になった注射を見つめるニーナ。
ヨハンも似たようなものであるが、こっちは目が血走ってて若干怖い。
「それでは……」
「お二人に感謝して……」
注射器の中身をグラスに移し、グラスを加賀と八木の二人へとかざす。
「……」
「……」
ぐっと一口グラスの中身を口に含み、ゆっくり味わうように喉へと落としていく。
「あ、交換するのね」
おもむろにグラスを交換する二人を見てそう呟く加賀。
八木は血を見過ぎてちょっと貧血気味である。
「久しぶりの血……美味しかったです」
「ああ、満足だ」
涙ぐみながら礼を述べる二人。
「やっぱ味とか違ったんです?」
若干引きながらも気になっていたことをたずねる加賀。
ヨハンは小さく首を横に振ると口を開いた。
「いや、人と味が違うといった事は無かったよ」
「そうですね、お二人とも健康的な味……加賀さんは少々栄養不足気味で、八木さんは少し筋肉質でコッテリしていて酒精の風味を感じたので……少しだけ気を付けたほうが良いかも知れませんね」
神の落とし子特有の味ではなかったらしくそこは人と同じであったようだ。
ただ種族的なものではなく、個人の食生活などによって多少味が変わってくるらしい。
「ほへー」
「そんなん分かるんだなあ」
説明を聞いた二人は感心した様子を見せる。
「種族によっても味違ったりするんで?」
「ええ、勿論です」
種族の違いについてたずねてみる八木。
自分の好きなものについて質問されたのが嬉しかったのだろう。ニーナはニコニコと笑みを浮かべながら二人に種族による違いを説明をしだす。
「エルフの方はあっさりと、それでいて甘みが多くて、ドワーフの方は酒臭いことが多いです」
「それアル中じゃ……」
ちら、と八木を横目で見る加賀。
八木は眉をひそめて首を横にふるのであった。
「まあ何にせよ平和的な吸血鬼で助かったわい」
夕食時となり、宿へと戻った探索者らはそこで吸血鬼の二人と対面する事となった。
一触即発となりかけたが、自分達が相手を吸血鬼じゃないか? と疑えていることや、それに宿のメンバーからの説明もあって今は皆落ち着いて……はいないが、平和に夕食を取っている。
なお、吸血鬼達も普段は人とあまり変わらない食事を取っているとのことで、夕飯は一緒に食べる事としたらしい。
「そうじゃなかったら対策で大騒ぎでしたからねえ……」
「ははは! 色んな吸血鬼がいますからなあ」
話してみればちょっとあれな所もあるが、基本良い奴だと言うことですっかり馴染んでしまっているようだ。
「そう言えば皆さん、吸血鬼が街に居るとご存知だったようですけど……」
「ん? ああ。 街のそばに塔が出来てたからそれで分かったんよ。 八木がたまたま仕事で高いところに登ってさ、気付いたってわけ」
探索者達や宿の面々の反応から疑問に感じていたことを口にするニーナ。
手近にいた探索者が八木をさしながらそう話す彼女は眉を怪訝そうにひそめた。
「……私達、塔は作って無いのですけど」
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