異世界宿屋の住み込み従業員

熊ごろう

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325話 「煌めくパウンドケーキ3」

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「ねーねー」

そしてその日の夕食時。
加賀はにこにこと笑みを浮かべ食事を終え酒盛りを開始した探索者達へと声をかける。

「ん? どうかしました?」

「新作のケーキあるんだけど、ちょっと味見してほしいなーって」

「新作ですか……?」

新作を味見してほしいという加賀。
普段よく見る光景ではある。だが、探索者達は加賀の笑みにひそむ何かに感づいてしまう。
探索者稼業をやっていく上でこういった感は大事なのである。

「おーおー! いいね、新作いいねえ! おっしゃ何個でも食ってやんよ! だははははっ」

「お、ありがとー! それじゃ持ってくるねー」

だが、それも酔っ払い具合によっては働かないようだ。
言質をとった加賀は厨房へと戻りお皿に盛りつけたケーキを手にし再び食堂へと戻ってくる。

「はい! レインボーケーキっていうんだよー。 どうしたの?急に真顔になっちゃって」

「あの……これ」

光るケーキを前にして一気に酔いがさめたらしい。
震える指でケーキをさすが、加賀はにこにこと笑みを浮かべたままである。

「本当ヒューゴさんが食べるって言ってくれてよかったー。 皆怖がって食べようとしなかったんだよねー……どうしたの? 食べないの?」

「あ、いや……その」

相変わらずニコニコと笑みを浮かべ、ケーキを進める加賀。
ヒューゴはしきりに辺りに視線を向けるが周りにいる者たちは皆にやにやと笑みを浮かべそのやりとりを見ているだけである。

「しょうがないにゃあ。 食べさせてあげるよ……ほら、あーんして」

「ちょ、ちょっと腹の具合が……っ!?」

誰も助けてくれそうにない、そうなれば逃げるしかないと席を立とうとしたヒューゴであったが、その肩に誰かが手をかける。そのためヒューゴは立ち上がることができなかった。

「て、てめえら裏切る気かっ!?」

「裏切るだなんてとんでもない、ほらせっかくの新作なんです……何個でも食べてあげるんでしょう?」

「ヒューゴってばやっさしー」

「毒は無いようですよ」

「はぁっ!? あ、ちょっ……まって!近づけんもぐぉっ!?」

顔だけで後ろを振り返るヒューゴ。
ヒューゴの背後には何人もの探索者達が待ち構えていた。
皆じつに楽しそうである。 酔っているせいもあるだろうが基本的に皆こういった悪ふざけが大好きらしい。

「もごー! むぅぅ、うううっ!? …………も?」

ケーキを突っ込まれたうえに口を押えられ暫くもがいていたヒューゴであるが、急におとなしくなる。
それをみてヒューゴを押さえていた手も離れていく。

「……むっちゃ美味いじゃねーか!」

見た目はあれだがやはり味はよかったらしい。
さきほどまでの抵抗はなんだったのか、手のひらを返したようにケーキをほめちぎる。
だが、なぜか周りの者はそんなヒューゴを見てざわめき、そしてじりじりと後ずさる。

「え、なにどしたん?」

まわりの様子に気付いたヒューゴが狼狽えるようにあたりを見渡すが、みんな余計に後ずさるばかりである。
そして一人すっとヒューゴの前に進んだ加賀がそっと手鏡を手渡した。

「鏡……何でだよっ!!?」

鏡をみて叫ぶヒューゴ。
鏡にうつったその顔……というか口内は虹色に煌めいていた。


翌日、ヒューゴの口内の光は消えていた。
どうやらあの光は一時的なものだったらしく、時間経過か何か飲み物を飲むと消えることが判明する。

「ふむ……」

「どうだった?」

さらには食べたヒューゴの証言により、若干の身体能力向上があることがわかる。
が、しかし酔っ払いの証言であり信頼性が低かったため、宿の皆で相談した結果一度鑑定してみることとなる。
その結果がつい先ほど出たのである。

「若干の身体能力向上と疲労回復、魔力回復速度が上がる……らしいですね」

「なんとも微妙な……ああ、いやでも副作用がないのはいいのか?」

「いえ、副作用がない訳ではないようです」

「え……うわぁ」

鑑定表の最後にしれっと書かれた副作用、それをみた探索者が顔をしかめる。
当初は探索のやくに立つかと考えていた探索者達であったが、効果がほかの魔道具と比べても少ないのと量産が無理なこと、それに副作用もあって結局はアイネとうーちゃん専用おやつとなった。




『虹光のパウンドケーキ』
元はただのパウンドケーキであったが、加護を持つものが長期間魔力を込めたことにより変質し魔道具と化したもの。
食べると以下の効果を発揮する。

・身体能力向上(小)
・疲労回復速度上昇(小)
・魔力回復速度上昇(小)

一つの魔道具で筋力上昇など単一の効果ではなく、複数の効果を発揮するのが特長であるがその効果は小さい。



なお、副作用として食べた際に口内が虹色に発光する。
う〇こが虹色に発光するなどの現象が起こる。
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