異世界宿屋の住み込み従業員

熊ごろう

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48話 「困ったときの神頼み」

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探索者ギルド内の一室で椅子に腰掛けるバクス。
さきほどのいやな予感がまだ尾を引いてるのだろう、しかめっ面のまま目をつむります腕を組んだまま動かない。

どれくらい立っただろうか、ノックの音と共に一人の男性が室内へと入ってくる。
男性はバクスをみると軽く手をあげ口を開く。

「待たせたな」

「何、忙しいとこ悪いな」

バクスの対面に座り置いてあったお茶を口にするギルマス。
ぬるいなとばそりと呟きことりとコップを置く。

「それで、何の用事だ? まあ予想は付くが」

「そうかなら話は早い。街で何が起きてる? うちの連中がちょっかいかけられたらしくてな……」

予想通りの質問だったのだろう、ギルマスは特にためらうでもなくバクスの質問へと答える。

「まあざっくり言うとだ、ダンジョンが復活した」

「…………」

何言ってるんだこいつと言わんばかりのバクスの顔を見て思わず両手を挙げ、おどけた様子を見せるギルマス。

「おいおい、そんな顔でみんでくれよ。俺だって信じられないんだからよ」

「俺たち攻略してからまだ15年だぞ、復活するまであと50年は掛かるはずだろう……よそのダンジョンコアが家出でもしたか? 確か隣国のダンジョンが攻略してから結構時間たつだろう?」

どうやらダンジョンと言うものは一度攻略して復活するようだ。そして攻略してから復活までの期間は相当に長いらしい。またダンジョンコアが家出することもある……が今回は違うようだ。ギルマスはいや、と言って軽く頭を振る。

「俺も最初はそう考えた、だが時期が合わなくてな隣国のはあと5~10年はかかる」

「だったらなぜ……」

「さっぱり分からん」

あっさり言い切るギルマスに思わず顔をしかめるバクス。
ギルマスはそんなバクスをスルーすると残っていたコップの中身を飲み干し口を開く。

「だがダンジョンが復活したのだけは確かだ」

「……まだ情報は公開してないよな?」

その言葉に公開してないと答え、だが漏れるのは時間の問題だろうと付け加えるギルマス。

「例の二人はどうすんだ?」

「……神はあいつらにそんな力は与えてないと」

「俺もそうだと思うがな、ほかの連中……他国の連中がどう思うかだな、戦う力は確かにない、でもダンジョンを復活できますってな」

ギルマスの言葉にますます苦虫をかみつぶしたような顔になるバクス。

「まずは本人たちに聞いてみたらどうだ? 本当にそんな力がないのならそれこそ神頼みでまたどうにかして貰うしかないだろう」

「……それしかないだろうな」

そう言ってがしがしと頭をかきながら起ち上がるバクス。
聞くなら早いほうが良い、すぐに戻り二人へと話しを聞くつもりなのだろう。

「まったく、本来なら嬉しい話なんだけどな」

「……まったくだ、そっちは大丈夫なのか?」

とりあえず考えがまとまり落ち着いたのだろう、ギルマスへの心配を見せるバクス。
それに対し疲れたような笑みを浮かべで答えるギルマス。

「とりあえず出来るだけ情報の拡散は防ぐ、あとはどれだけ早く衣食住を確保するかだな。今情報公開しても集まってくる連中に対応できん」

「まあ、そうだろうな」

「おいおい、そこは人ごとじゃないだろう」

食料が不足するのは確かに困るが……最悪どこかでとってくるという手段が取れるバクス、ギルマスの言葉に軽く首をかしげる。

「……お前さんの宿リニューアルオープンするんだろ? 従業員確保もうしてあるのか? 耳の早い連中はとうの昔に人手集めてるぞ」

「あっ」

思わず素になるバクス。
宿の従業員は現在加賀とバクスの二人のみ、昔のつてを頼って従業員確保する予定だったバクスであるが、人の流入……特に商人と探索者の流入が予測され、宿は間違いなく人手不足となるだろう。
不足した宿を補うため一度閉めた宿を再開……なんてところもあるかも知れない。

ギルマスの指摘に今度こそ青くなるバクスは慌てて家へと戻るのであった。


「バクスさんお帰りなさい」

「おう」

家に戻ったバクスだが、急いで帰って来たため軽く肩で息をしている。
そんなバクスの様子に気がついた八木がそっとバクスに話しかける。

「……バクスさん、何か不味いことになったんですか?」

「不味いかどうかはまだ分からん……本来なら嬉しい話しなんだがな」

そう言うと椅子に腰かけ、奥で作業している加賀の声を掛ける。
二人も席に着いたのを見て早速だがと話を切り出した。

「どうも最近変なのが多い理由だが、ダンジョンが復活してそれ目当てでも余所から人が入ってきてるらしい」

「おー?」

「へぇ、ダンジョンって復活するんすねえ」

バクスの言葉に自然な反応を返す二人、バクスはその様子を見て内心ほっと胸をなで下ろす。二人の仕業ではなさそうだと。

「本来なら復活までみっと時間が掛かるんだがな……念の為聞くが二人とも何か心当たりはないか?」

二人ともそろっていやぁっと首をかしげる、どうやら本当に何もないようだとバクスが考えたとき加賀の袖を低くうーちゃんの姿がバクスの視界に入る。

「ん、なになにどしたの?」

うー(ぬし、なんか忘れとらんかい)

「へ? …………あっ」

「テレビ……」

無言でじとっと見詰めるバクスの視線に軽く冷や汗をかきつつ実は……と以前森で出会った玉について話し始める加賀。


「……というわけです」

「…………」

加賀の話を聞いてこめかみを押さえたまま固まったままのバクス。それを見て申し訳なさそうにする加賀。

やがて考えがまとまったのかよし、と言って手を叩くバクス。視線を向ける二人に向けこう告げる。

「俺は何も聞いてない、お前たちも何も聞いてないし見てもいない。いいな?」

「え、いいんすかそれ……」

「それしかねえ、ほかにどうしろと……後は神になんとかして貰うしかない。二人とも神に連絡は取れるんだったな?」

「あ、はいできますー」

「よしそれなら……」

その後神への連絡内容を考えPCにはりつけた三人。後は神の対応を待つだけ。

文字通り神頼みとなるが、この世界の神様は実際現世に対し何かしらの行動を起こせる。
きっとどうにかしてくれるだろう、と期待と不安の混ざった気持ちで三人は朝を迎えるのであった。
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