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59話 「依頼溜まってたようで」
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「お、おはようございます……」
「おはようございます、八木」
翌朝、昨日のショックから立ち直りそろそろ仕事に行こうかと玄関に向かった八木であるが、そこでアルヴィンとばったり出くわしてしまう。
それでも若干引きつりつつも何とか挨拶ををする八木にアルヴィンは少し首をかしげる。
「? 私がどうかしましたか?」
「あ、いえ、その……立派な体だなあと思って……」
「そうですか? ありがとう。八木の体もすごいと思いますよ」
体つきを褒められたアルヴィンだがかなり嬉しかったのだろうか、ここで初めて笑みを見せる。
「俺のは加護の効果なんで……エルフと言うのは皆アルヴィンさんみたいに立派な体してるんですか?」
「加護でしたか、少し羨ましいですね。先ほどの質問については答えはいいえです。種族的にエルフは人よりも力で劣ります、必然的に距離を取った戦い方が多くなります。私のように剣で戦いここまで体を鍛えるものはほとんどいないでしょう」
アルヴィンの答えにならば何故?と疑問が浮かぶ八木。
その思いがち表情にも現れていたのだろう、アルヴィンは苦笑しつつも言葉を続ける。
「私は負けず嫌いなようでして、昔はもっと体が細かったのですよ、それを馬鹿にされたことがありまして……」
気がついたらこうなっていました、と何でもないよう話すアルヴィン。
「種族的に不利なのにそこまで鍛えるなんて……その上ダンジョン攻略してるんですよね? それものすごい事なんじゃ……」
「ええ、実際すごいのですよアルヴィンは」
突然後ろから放たれた声に驚き振り返る八木。
「すみません、驚かせてしまいましたね……アルヴィンですが、剣士としても一流ですし、その上精霊魔法が使えます。とてもたよりになる前衛ですよ」
「いや、照れますね」
後ろにいたのはイクセルであった、彼は八木に謝りつつも言葉を続ける。
その言葉を聞いている途中、八木はイクセルの後ろからも誰かが来ていることに気が付く。
「あん? なんだもうお前ら集まってたのか」
「おはようございまっす!」
後ろから来たのはヒューゴとガイの二人であった、彼らに気が付いたアルヴィンが口を開く。
「ええ、アントンとチェスターはどうしました?」
「二日酔いらしいっすよ! 先行っててくれーだそうっす」
その言葉にあちゃーっといった様子で額をおさえるイクセル。
「確かに二人とも結構な量を飲んでましたからね……仕方がありません、このメンバーで行くとしましょう」
イクセルの言葉に軽く返事をしつつ外へと向かおうとする一同。
八木はどこに行くのか気になったのか、彼らの後ろにつきつつ声をかける。
「みなさん今日はどちらまでいくんで?」
「街の散策と時間あればダンジョンの下見っす!」
「まだどこに何あるかわかんねーからなあ、ギルドで大体の場所きいてあとは街一周すんのよ」
色々準備も必要だろうし、いきなり本格的にダンジョン攻略に入るわけではないのだろう、と納得し頷く八木。
そんな八木をみてガイが声をかけてくる。
「八木はどこいくっすか? やっぱダンジョン?」
「いやいやいや、建築ギルドっすよ、宿出来てから休んでたんすけどねそろそろ依頼たまってそうなんす」
「口調がうつってますよ、八木」
アルヴィンに言われ思わず苦笑いの八木。特徴的な口調はどうしてもうつるものである。
その後街の中央付近まできたところで八木は建築ギルドに向かい、アルヴィンラ一行は探索者ギルドに向かうためそこで別れる事となった。
別れて数分後、八木は建築ギルドの受付へと来ていた。
受付嬢とみられる女性が、大量の書類をテーブルに置き八木と話している。その目は絶対逃がさないという決意にあふれているようだ。
「エルザさん……まじでこんなにあるんすか」
「はい、八木さんが居ない間問い合わせが引っ切り無しに来ていまして……御覧の有様です」
「俺、もうちょっと休暇を……あ、なんでもないす」
その書類の量に思わず逃げ出したくなった八木であるが、エルザの視線が一瞬ゴミを見るような目に変わり諦めざる終えなかったようだ。
「はー……まあ、仕事ないよりだいぶましだわな。それで優先して受ける仕事はどれかな」
「一番優先すべきは領主からの依頼ですね、なんでも街そのものを変えて行こうとか言うお話です」
「街って……それはちょっと荷が重すぎる仕事だなあ」
街そのものと聞いて尻込みする八木に対しエルザはそうですか、と一言呟くと一枚の書類を渡してくる。
「これは?」
「北西にある他国からの招待状です。そこの領主の建物の設計をお願いしたいそうなんですけど。ぜひ本人も来てほしいとの事ですね」
「いや、それ絶対受けちゃだめやつじゃん。帰れるか分からないしょ……」
思いっきりいやな顔をする八木に対し、エルザはではこちらをと言い書類を何枚も渡してくる。
「……エルザさん、どれも似たような内容なんですが、私の気のせいなのでしょうか? ねえ気のせいですよね」
「気のせいじゃないです。受けたくなかったらうちの領主の受けてください、それなら他を断る理由にもできまし……ごまかすにも限界があるんです」
「わかりました、うちの領主のを受けます。色々と手間かけさせちゃった見たいで申し訳ないです……」
恐らく色々と問い合わせとかめんどくさい事の対応をやってくれたんだろうなと思う八木。
素直に頭を下げる。
「いえ、お仕事ですから……では、こちらの書類をもって親方衆の所に向かってください。領主の所には彼らも同行することになってますので」
「はい、わかりました。……お礼と言っちゃなんですけど、今度一緒に飯でもどうです?」
「あら、それそれは。では今度暇な時にでもお願いしますね」
八木としては割と本気で誘ったのだが、エルザの答えは冗談と思われたのか割とそっけなく感じた。
(……まあでも準備だけはしておこう。加賀に頼んで何か昼飯でも……弁当頼んでもいいかもな?)
とは言え八木のほうは本当に礼をと考えていたので、その時に備えて加賀に話だけはしておくつもりのようだ。これから待ち構えている仕事から目をそらすようにあれこれと考えを巡らせるのであった。
「おはようございます、八木」
翌朝、昨日のショックから立ち直りそろそろ仕事に行こうかと玄関に向かった八木であるが、そこでアルヴィンとばったり出くわしてしまう。
それでも若干引きつりつつも何とか挨拶ををする八木にアルヴィンは少し首をかしげる。
「? 私がどうかしましたか?」
「あ、いえ、その……立派な体だなあと思って……」
「そうですか? ありがとう。八木の体もすごいと思いますよ」
体つきを褒められたアルヴィンだがかなり嬉しかったのだろうか、ここで初めて笑みを見せる。
「俺のは加護の効果なんで……エルフと言うのは皆アルヴィンさんみたいに立派な体してるんですか?」
「加護でしたか、少し羨ましいですね。先ほどの質問については答えはいいえです。種族的にエルフは人よりも力で劣ります、必然的に距離を取った戦い方が多くなります。私のように剣で戦いここまで体を鍛えるものはほとんどいないでしょう」
アルヴィンの答えにならば何故?と疑問が浮かぶ八木。
その思いがち表情にも現れていたのだろう、アルヴィンは苦笑しつつも言葉を続ける。
「私は負けず嫌いなようでして、昔はもっと体が細かったのですよ、それを馬鹿にされたことがありまして……」
気がついたらこうなっていました、と何でもないよう話すアルヴィン。
「種族的に不利なのにそこまで鍛えるなんて……その上ダンジョン攻略してるんですよね? それものすごい事なんじゃ……」
「ええ、実際すごいのですよアルヴィンは」
突然後ろから放たれた声に驚き振り返る八木。
「すみません、驚かせてしまいましたね……アルヴィンですが、剣士としても一流ですし、その上精霊魔法が使えます。とてもたよりになる前衛ですよ」
「いや、照れますね」
後ろにいたのはイクセルであった、彼は八木に謝りつつも言葉を続ける。
その言葉を聞いている途中、八木はイクセルの後ろからも誰かが来ていることに気が付く。
「あん? なんだもうお前ら集まってたのか」
「おはようございまっす!」
後ろから来たのはヒューゴとガイの二人であった、彼らに気が付いたアルヴィンが口を開く。
「ええ、アントンとチェスターはどうしました?」
「二日酔いらしいっすよ! 先行っててくれーだそうっす」
その言葉にあちゃーっといった様子で額をおさえるイクセル。
「確かに二人とも結構な量を飲んでましたからね……仕方がありません、このメンバーで行くとしましょう」
イクセルの言葉に軽く返事をしつつ外へと向かおうとする一同。
八木はどこに行くのか気になったのか、彼らの後ろにつきつつ声をかける。
「みなさん今日はどちらまでいくんで?」
「街の散策と時間あればダンジョンの下見っす!」
「まだどこに何あるかわかんねーからなあ、ギルドで大体の場所きいてあとは街一周すんのよ」
色々準備も必要だろうし、いきなり本格的にダンジョン攻略に入るわけではないのだろう、と納得し頷く八木。
そんな八木をみてガイが声をかけてくる。
「八木はどこいくっすか? やっぱダンジョン?」
「いやいやいや、建築ギルドっすよ、宿出来てから休んでたんすけどねそろそろ依頼たまってそうなんす」
「口調がうつってますよ、八木」
アルヴィンに言われ思わず苦笑いの八木。特徴的な口調はどうしてもうつるものである。
その後街の中央付近まできたところで八木は建築ギルドに向かい、アルヴィンラ一行は探索者ギルドに向かうためそこで別れる事となった。
別れて数分後、八木は建築ギルドの受付へと来ていた。
受付嬢とみられる女性が、大量の書類をテーブルに置き八木と話している。その目は絶対逃がさないという決意にあふれているようだ。
「エルザさん……まじでこんなにあるんすか」
「はい、八木さんが居ない間問い合わせが引っ切り無しに来ていまして……御覧の有様です」
「俺、もうちょっと休暇を……あ、なんでもないす」
その書類の量に思わず逃げ出したくなった八木であるが、エルザの視線が一瞬ゴミを見るような目に変わり諦めざる終えなかったようだ。
「はー……まあ、仕事ないよりだいぶましだわな。それで優先して受ける仕事はどれかな」
「一番優先すべきは領主からの依頼ですね、なんでも街そのものを変えて行こうとか言うお話です」
「街って……それはちょっと荷が重すぎる仕事だなあ」
街そのものと聞いて尻込みする八木に対しエルザはそうですか、と一言呟くと一枚の書類を渡してくる。
「これは?」
「北西にある他国からの招待状です。そこの領主の建物の設計をお願いしたいそうなんですけど。ぜひ本人も来てほしいとの事ですね」
「いや、それ絶対受けちゃだめやつじゃん。帰れるか分からないしょ……」
思いっきりいやな顔をする八木に対し、エルザはではこちらをと言い書類を何枚も渡してくる。
「……エルザさん、どれも似たような内容なんですが、私の気のせいなのでしょうか? ねえ気のせいですよね」
「気のせいじゃないです。受けたくなかったらうちの領主の受けてください、それなら他を断る理由にもできまし……ごまかすにも限界があるんです」
「わかりました、うちの領主のを受けます。色々と手間かけさせちゃった見たいで申し訳ないです……」
恐らく色々と問い合わせとかめんどくさい事の対応をやってくれたんだろうなと思う八木。
素直に頭を下げる。
「いえ、お仕事ですから……では、こちらの書類をもって親方衆の所に向かってください。領主の所には彼らも同行することになってますので」
「はい、わかりました。……お礼と言っちゃなんですけど、今度一緒に飯でもどうです?」
「あら、それそれは。では今度暇な時にでもお願いしますね」
八木としては割と本気で誘ったのだが、エルザの答えは冗談と思われたのか割とそっけなく感じた。
(……まあでも準備だけはしておこう。加賀に頼んで何か昼飯でも……弁当頼んでもいいかもな?)
とは言え八木のほうは本当に礼をと考えていたので、その時に備えて加賀に話だけはしておくつもりのようだ。これから待ち構えている仕事から目をそらすようにあれこれと考えを巡らせるのであった。
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