異世界宿屋の住み込み従業員

熊ごろう

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62話 「胃に孔があきそう?」

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街を一回りしもうすぐ宿に着くと行ったところで二人の視線が一人の人物をとらえる

「……あれ、八木かな? なんかとぼとぼ歩いてる」

「哀愁漂ってますねえ」

建築ギルドからの帰りだろう、八木がとぼとぼと歩いていた。
二人は八木と合流し……と言うよりは八木の歩みが遅かったため追いついただけであるが、後ろから声を掛ける。

「おーい、八木ー。どしたん?」

「えらく落ち込んでますねえ」

「ん……加賀とチェスターさん……」

元気の八木を引っ張りとりあえず宿へと入る一行。

「はい、どうぞー」

「あ、どうもどうも」

「ありがと、加賀」

全員分のコップをテーブルおき自分も椅子に腰掛ける加賀。
一口コップの中身を飲むと八木に向かいそれで、どうしたの?と問いかける。

「それがさ……次の依頼ここの領主さんからでさ、明日領主の館に行くことになって……むっちゃ気が重い」

「なるほどなるほど……」

「それはまた大変ですねえ」

八木の話を聞いて考え込むそぶりを見せる加賀と、相づちを打ちつつ茶をすするチェスター。
それを見て自分ものどが渇いていたのか同じく茶をすすりほっと一息つく八木。

「しかも仕事の内容がこの街の再開発の草案つくれときたもんだ……さすがに荷が重い」

「っほー……悪い話ではないんだろうけど。プレッシャーすごそうね」

「実際やばい」

ことりとコップをテーブルに置きしかし、と呟くチェスター。
八木の方を見て言葉を続ける。

「領主の依頼と言うことは断るわけにはいかないのでしょう?」

「そうなんすよね」

「でしたらチャンスと捕らえては如何です? あなた方の目的にも沿っていると思いますよ。街そのものを変えるんです、相当な人数が関わるでしょうし、宣伝にもなる。まねしようとする者や、教えを請う者も出てくるのでは?」

「うん、まあそうなんすよね……」

八木としても良い機会ではあると思っているのだろう、だが領主の依頼と聞いてどうしても尻込みしてしまうのだ。

「何の話だ?」

「あ、バクスさん」

「おう、どうした?」

話し込んでいるのを見て会話に参加してきたバクス。
椅子に腰掛けたバクスに対し加賀がざっと今までの経緯を説明する。

「ほーなるほどね、街丸ごととは大きく出たなあいつも」

「バクスさんそう言えば知り合いなんでしたっけ」

「おう、元PTメンバーだぞ。ま、変なこと言い出す奴じゃない、気軽に受けとけ。この宿自慢してやったからな大方自分も欲しくなったんだろうさ」

バクスの知り合いと言うことを思い出し、それならば……と先ほどまでに落ちこんだ雰囲気が無くなる八木。

その後は茶とお菓子をつまみつつ雑談となり、やがて話題が宿の話へと移る。

「ガイに言われて来てみたんですけどね、泊まってみるとこの宿本当に良いですよ」

「そいつは嬉しいこと言ってくれるじゃないの。参考にどのあたりが特に良かったか聞いてもいいか?」

「そうですね……飯も美味いし、布団も綺麗でふかふか……あと風呂もいいですね」

バクスに宿の良かった部分を聞かれ堪えるチェスター。風呂に言及したところで一旦言葉を句切る。

「でも、自分が一番良かったと思うのは洗濯サービスですね」

「ああ……だろうなあ」

チェスターの言葉に大いに同意するバクス。

「洗濯ものって結構な手間じゃないですか、量が多いと時間かかるし、かといって量少なくすると洗う回数増えますし……」

「洗濯は普段は自分でやってるんですかー?」

「ええ、そうですね。まあ今はこっちに来る際に不要な服をあらかた処分してきたのであまり洗うものないんですけどね」

チェスターがそう言った瞬間あらあらと声が聞こえ、ひょいと扉から咲耶が顔をのぞかせる。

「なら今持ってる服はあまりないのかしら?」

「……ええ、今着ているのともう一着ぐらいですね。せっかくなので新品を買ってしまおうかと」

「なるほど……ねえチェスターさん良ければ何ですけど、あなた向けに服を作ってみたいのだけど……一着目は無料でいいからどうかしら?」

急に現れた咲耶の提案にちらりとうーちゃんの服を見るチェスター。
振り返ると軽く笑みを浮かべる。

「ええ、ぜひお願いします」

うーちゃんの服が咲耶製であることを知っているチェスター。
その出来栄えから受けても問題ないと判断したようだ。

「ありがとう! それじゃあ早速採寸してもいいかしらー」

「へ? え、あはい。今からですか?」

「ええ、いつまでも同じ服って訳にはいかないでしょう? なるべく早く作った方がいいじゃないの」

そう言うや否や服から採寸道具を取り出し、立たせたチェスターの採寸を始める咲耶。
その後、採寸中の場面を戻ってきたヒューゴらに見つかり笑われるといったハプニングがあったものの無事採寸も終わり、上機嫌で自室へと戻る。
早速制作に取りかかるつもりなのだろう。

「おつかれさまー」

「なかなかこの手のには慣れませんねえ……はてさてどんな服が出来るのか楽しみですね」

「あまり派手なのにはしないようにって言ってあるのでー……そこまで奇抜にはならないと思いますよー」

「まあ、楽しみに待っておきましょうかね」

その後は加賀とバクスは厨房に戻り、八木は明日の準備をするため部屋へと戻り。
チェスターはヒューゴらと合流し明日以降の予定のすりあわせを行うようだ。
その後は皆で食事をし寝るだけとなり、今日も平穏な一日を終えるのであった。
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