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64話 「財布が軽くなりそう」
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「あー……疲れた。でも思ってたより普通の人でよかった……」
「まあ、実際かなりまともなお方だよ。領主が若干脳筋だからちょうど良いのだろう」
ギルドへと戻りひとまず休憩を取ろうと部屋で雄に腰掛ける。
領主を脳筋と言い切る親方に苦笑しつつ茶をすすり一息つく八木。
「それでお前さん仕事はどこでするつもりだ?」
「どこってここでするつもりだったけど……一応道具も揃ってるし」
「ふむ。まあそれでも構わんが、自分の事務所は持たないのか? ここは道具はあるとは言っても最低限だし、何より数が少ない。お前さん以外が使っていたらその間仕事できんぞ?」
親方の言葉に考え込む様子を見せる八木。
「事務所建てるとしたらいくらぐらいかかるんすかね……?」
「大きさにもよるが4~5人が作業できるぐらいとして……確か寝泊まりは宿で済ませてるんだったな? なら1000万もあればそれなりのが出来るぞ、道具はうちの紹介ってことにすれば安くなる。あとは土地代がいくらかかるかだが……宿の土地かなり余ってたよな、ちょっと相談してみたらどうだ?」
値段を聞いて顔をしかめる八木。
前回受けた宿の仕事の代金がほぼ手付かずで残っているが1000万にはほど遠い。さらに道具代、土地代など含めるとさらに足が出るだろう。
「……そうっすね、戻って相談してみます。当面の間はここ貸してください……」
「あいよ」
バタンと音を立て扉が閉まる。
宿へと戻った八木は受付にバクスがいないのを見ると食堂へと向かう。ここに居なければ食堂で休憩でもしているか厨房で燻製の仕込みをしているだろうと考えたのだ。
「あ、八木おかえりー早かったね」
「おう、ただいま。バクスさんいるかい?」
「バクスさんなら厨房だよー」
八木の思っていた通りバクスは厨房にいたようだ。八木がバクスに声をかけるべく厨房へ向かおうとすると、調子タイミングよくバクスが厨房から出てくる。
「呼んだか?」
「バクスさん、ナイスタイミング。ちょっと空いている土地のことで相談したいんですけど、今時間だいじょぶですか?」
「ああ、仕込みは終わったし問題ない。俺もちょうどその事で相談したかったところだしな」
そう言うと椅子に腰掛け二人の飲み物をとりに厨房に向かう加賀にすまんな、と一言声を掛ける。
「それで空き地について相談だったな……まず八木の話から聞こうか」
八木の話を聞いたバクスn
テーブルに置かれたコップを手に取り喉を潤すとふむ、と独りごち顎を触りつつ口を開く。
「俺は構わんぞ、支払いも金出来てからで良い。……ああ、届け出する書類は手伝って貰うぞ?」
「ありがとうございますバクスさん。助かります」
自分の懸念が一つなくなり安堵した表情を見せる八木。こちらも置かれたコップを手に取り喉を潤すとそれで、バクスさんの相談とは?と切り出す。
「俺の方は空いている土地に燻製小屋を作って欲しくてな……ありがたい事にガイたちに燻製が好評でな、好評すぎて作るのが追っつかなくなってきたんだ。でかい専用の小屋作って一気にやっちまわんとそのうち俺らの食う分が無くなっちまう」
「そいつは困ります」
何時になく真面目な表情二人。どちらも燻製が大好物であり、自分たちの分が無くなるのは死活問題……とまでは行かなくとも日々の楽しみが減ってしまう事になる。
「領主からの依頼はどんな感じなんだ? ずっとかかりっきりとなると燻製小屋作って貰うのも難しいが……」
「ああ、そちらはある程度時間とれそうです。こっちの仕事が終わって向こうからの反応あるまで結構時間あきそうなんですよ。月の半分ぐらいは他の事出来ると思いますよ」
「そうか……それなら領主の仕事が終わったらお願いする。……事務所と並行作業になりそうだが大丈夫か?」
「ええ、まあ恐らくは……あ、でもガイさんの仲間が来るまでにはちょっと間に合わないかも」
八木の言葉にちらりとガイたちが留まる部屋の方を見るバクス。
今宿に泊まっているのはガイたちのPTメンバーの一部に過ぎない、一月後には全員ではないが残りのメンバーが来る予定となっている。まだまだ町中にある宿は不足しており、苦肉の策で空き家を利用したりしているが整備がまるで追いついていない、ちらほらと野宿して過ごす者もいるほどだ。
「そっちは……今の内燻製量産しておく、あと燻製小屋仕様やらは考えてまとめておくから八木はまず領主の仕事に専念しておいてくれ」
「うっす」
「そろそろ終わったかな?」
いつの間にか席から居なくなっていた加賀であるが、コック服を身にまとい扉から顔をのぞかせている。
それを見たバクスがああ、と答える。
「それじゃお昼にしよっかー。うーちゃん母ちゃん呼んできてー」
うっ(まかせろー)
「もうそんな時間かあ、言われてみりゃお腹空いてきたな」
テーブルに並ぶのは煮込みハンバーグにオムレツとパスタを添えたもの。それに最近店頭に並び始めた季節の野菜と燻製肉を使ったサラダだ。
パスタはパンを今朝ガイたちに食い尽くされた為、代わりにと加賀が用意したものである。
「ん、いけるいける……そういやガイさんらはどうしたん? なんか静かだと思ったら皆いないのな」
「ガイさんたちはーダンジョンの下見にいったよん。夕方には戻るらしーよ」
ここ数日で見慣れた風景となっていた騒がしい食卓。
だが今はガイ達はダンジョンに潜っているため宿にいるのは4人と1匹のみである。
「おお、ダンジョンかー……やっぱお宝とか手に入るのかな?」
ダンジョンと聞いて目を輝かせる八木。
やはり行くのは諦めつつもやはり興味があるのだろう。
「いあー浅い階層だとほとんど出ないらしーよ? でてもそんな良いのでないんだってー」
こちらもダンジョンに興味はある加賀。ダンジョンに潜ると聞いて事前にそのあたりのことを既に聞いていたようだ。
「あーやっぱそうだよなあ」
「でも話しは色々聞かせてくれるらしーから……つまみになるの用意しようかな」
「お、いいね。がんがん飲ませようぜ」
「……ほどほどにな」
楽しげに話す二人を見て苦笑いするバクス。
ますます燻製が減っちまう……と零しながら厨房へと向かうのであった。
「まあ、実際かなりまともなお方だよ。領主が若干脳筋だからちょうど良いのだろう」
ギルドへと戻りひとまず休憩を取ろうと部屋で雄に腰掛ける。
領主を脳筋と言い切る親方に苦笑しつつ茶をすすり一息つく八木。
「それでお前さん仕事はどこでするつもりだ?」
「どこってここでするつもりだったけど……一応道具も揃ってるし」
「ふむ。まあそれでも構わんが、自分の事務所は持たないのか? ここは道具はあるとは言っても最低限だし、何より数が少ない。お前さん以外が使っていたらその間仕事できんぞ?」
親方の言葉に考え込む様子を見せる八木。
「事務所建てるとしたらいくらぐらいかかるんすかね……?」
「大きさにもよるが4~5人が作業できるぐらいとして……確か寝泊まりは宿で済ませてるんだったな? なら1000万もあればそれなりのが出来るぞ、道具はうちの紹介ってことにすれば安くなる。あとは土地代がいくらかかるかだが……宿の土地かなり余ってたよな、ちょっと相談してみたらどうだ?」
値段を聞いて顔をしかめる八木。
前回受けた宿の仕事の代金がほぼ手付かずで残っているが1000万にはほど遠い。さらに道具代、土地代など含めるとさらに足が出るだろう。
「……そうっすね、戻って相談してみます。当面の間はここ貸してください……」
「あいよ」
バタンと音を立て扉が閉まる。
宿へと戻った八木は受付にバクスがいないのを見ると食堂へと向かう。ここに居なければ食堂で休憩でもしているか厨房で燻製の仕込みをしているだろうと考えたのだ。
「あ、八木おかえりー早かったね」
「おう、ただいま。バクスさんいるかい?」
「バクスさんなら厨房だよー」
八木の思っていた通りバクスは厨房にいたようだ。八木がバクスに声をかけるべく厨房へ向かおうとすると、調子タイミングよくバクスが厨房から出てくる。
「呼んだか?」
「バクスさん、ナイスタイミング。ちょっと空いている土地のことで相談したいんですけど、今時間だいじょぶですか?」
「ああ、仕込みは終わったし問題ない。俺もちょうどその事で相談したかったところだしな」
そう言うと椅子に腰掛け二人の飲み物をとりに厨房に向かう加賀にすまんな、と一言声を掛ける。
「それで空き地について相談だったな……まず八木の話から聞こうか」
八木の話を聞いたバクスn
テーブルに置かれたコップを手に取り喉を潤すとふむ、と独りごち顎を触りつつ口を開く。
「俺は構わんぞ、支払いも金出来てからで良い。……ああ、届け出する書類は手伝って貰うぞ?」
「ありがとうございますバクスさん。助かります」
自分の懸念が一つなくなり安堵した表情を見せる八木。こちらも置かれたコップを手に取り喉を潤すとそれで、バクスさんの相談とは?と切り出す。
「俺の方は空いている土地に燻製小屋を作って欲しくてな……ありがたい事にガイたちに燻製が好評でな、好評すぎて作るのが追っつかなくなってきたんだ。でかい専用の小屋作って一気にやっちまわんとそのうち俺らの食う分が無くなっちまう」
「そいつは困ります」
何時になく真面目な表情二人。どちらも燻製が大好物であり、自分たちの分が無くなるのは死活問題……とまでは行かなくとも日々の楽しみが減ってしまう事になる。
「領主からの依頼はどんな感じなんだ? ずっとかかりっきりとなると燻製小屋作って貰うのも難しいが……」
「ああ、そちらはある程度時間とれそうです。こっちの仕事が終わって向こうからの反応あるまで結構時間あきそうなんですよ。月の半分ぐらいは他の事出来ると思いますよ」
「そうか……それなら領主の仕事が終わったらお願いする。……事務所と並行作業になりそうだが大丈夫か?」
「ええ、まあ恐らくは……あ、でもガイさんの仲間が来るまでにはちょっと間に合わないかも」
八木の言葉にちらりとガイたちが留まる部屋の方を見るバクス。
今宿に泊まっているのはガイたちのPTメンバーの一部に過ぎない、一月後には全員ではないが残りのメンバーが来る予定となっている。まだまだ町中にある宿は不足しており、苦肉の策で空き家を利用したりしているが整備がまるで追いついていない、ちらほらと野宿して過ごす者もいるほどだ。
「そっちは……今の内燻製量産しておく、あと燻製小屋仕様やらは考えてまとめておくから八木はまず領主の仕事に専念しておいてくれ」
「うっす」
「そろそろ終わったかな?」
いつの間にか席から居なくなっていた加賀であるが、コック服を身にまとい扉から顔をのぞかせている。
それを見たバクスがああ、と答える。
「それじゃお昼にしよっかー。うーちゃん母ちゃん呼んできてー」
うっ(まかせろー)
「もうそんな時間かあ、言われてみりゃお腹空いてきたな」
テーブルに並ぶのは煮込みハンバーグにオムレツとパスタを添えたもの。それに最近店頭に並び始めた季節の野菜と燻製肉を使ったサラダだ。
パスタはパンを今朝ガイたちに食い尽くされた為、代わりにと加賀が用意したものである。
「ん、いけるいける……そういやガイさんらはどうしたん? なんか静かだと思ったら皆いないのな」
「ガイさんたちはーダンジョンの下見にいったよん。夕方には戻るらしーよ」
ここ数日で見慣れた風景となっていた騒がしい食卓。
だが今はガイ達はダンジョンに潜っているため宿にいるのは4人と1匹のみである。
「おお、ダンジョンかー……やっぱお宝とか手に入るのかな?」
ダンジョンと聞いて目を輝かせる八木。
やはり行くのは諦めつつもやはり興味があるのだろう。
「いあー浅い階層だとほとんど出ないらしーよ? でてもそんな良いのでないんだってー」
こちらもダンジョンに興味はある加賀。ダンジョンに潜ると聞いて事前にそのあたりのことを既に聞いていたようだ。
「あーやっぱそうだよなあ」
「でも話しは色々聞かせてくれるらしーから……つまみになるの用意しようかな」
「お、いいね。がんがん飲ませようぜ」
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楽しげに話す二人を見て苦笑いするバクス。
ますます燻製が減っちまう……と零しながら厨房へと向かうのであった。
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