104 / 332
102話 「神様は」
しおりを挟む
「一体感何がどうなったらそうなったんですか、八木」
「俺が知りたいっすよ……」
八木の貞操の危機から一夜明け、黒鉄の森へと向かう一同。
二日酔いが残っていることから馬車は遠慮して徒歩で向かっている。徒歩なので多少時間がかかるのと特にする事もないので会話で時間を潰す事となる。どうやら話題は昨夜の出来事のようだ。
「くっそ受けるんだけど。笑いすぎて頭いったいわ」
時折思い出したように笑い出し、二日酔いで痛む頭を押さえるヒューゴ。今朝八木から話を聞いて以来ずっとこんな様子である。
「貴族のお嬢様がだめってのをぼかして伝えたら女性がだめで……男好きと思われたと。災難だったねー……ぶふっ」
「…………」
あまり笑うのも悪いかと、できるだけ沈痛な面持ち慰めるように話しかけるシェイラであるが、最後で耐えきれず吹き出してしまう。
当の八木はと言うとどんよりした目で恨みがましくシェイラを見つめていた、その様子に気が付いたシェイラは慌てて八木へと謝罪する。
「ご、ごめんごめん……でもほら、無事で良かったよ。事情話したら特に何も無かったんでしょ?」
「…………」
「えっ、なんでそこで無言になるの。ちょっ無視しないでってば!」
シェイラの言葉をするーしすたすたと先に行く八木。
慌てて後を追うシェイラを見て一人平静を保っていたアルヴィンはやれやれと言った様子で八木へと声をかける。
「聞けばこちらに来てから女性関係であまり良くない事が続いたそうですね……神はきっと見ていてくれています、次は良い事がありますよ、八木」
アルヴィンの言葉を聞き、足をとめ今までにあったことを思い出す八木。
総合ギルドの受付嬢はあれだったし、貴族のお嬢様には皮を剥がれそうになり、今度は掘られそうになる。
さらには憧れてたエルフに至ってはゴリラである・
思い出せば出すほどろくな思い出がない、八木は涙目になりながら地面に手をつきがっくりと項垂れる。
「この世に神なんていないっ」
「おいまて、神の落とし子」
黒鉄の森との境界線。八木達が到着するとそこは既に人で溢れかえっていた。
集まった人の多くは手に斧を持っている事から恐らく木こりと呼ばれる人たちだろう。
さらには馬に曳かれた何かしら巨大な機械も見える。巨大な糸鋸のようなものが付いている事からあれも木を切るための道具なのだろう。
「八木様、お待ちしておりました……はて、何やらお疲れのご様子ですが……」
八木を出迎えたのは昨夜食事を共にした大臣の一人であった。
どうも、例の出来事はまだ耳に入ってない様子である。
八木は何でもないと言うように疲れた笑顔を浮かべ口を開く。
「大丈夫です……それで交渉は何時から始めるのでしょう? もうエルフの方は来ているんですか?」
「いえまだ来て居ません。いつも木を切り始めると様子を見にくるのでそろそろ始めましょうか……開始するよう伝えてくれ」
大臣に声を掛けられた兵士の一人が作業者に開始するよう伝えていく。
まず、斧をもった者達が木の周りに集まり、斧を叩きつけていく。鉄並みに硬い黒鉄へは中々刃が通らないようであるがそれでも徐々に傷がつき、深くなっていく。
斧を全力で振り続けるというのはかなりの重労働である。疲れて動けなくなったものは次の者へと交代し自分は休息をとる。それを交互に繰り返していく事で徐々に黒鉄に刻まれる傷が深くなっていった。
「そろそろ良いか……一旦作業者を下がらせなさい」
作業者に下がるよう指示を出し、代わりに馬に曳かせた機械を機の傍に持っていく。
機会からは煙……というよりは蒸気が上がっており。レバーを引くとゆっくりと糸鋸が前後に動きだし、やがて轟音を立てながらも凄まじい速度で動くようになった所で糸鋸を黒鉄に押し当てる。
ギャリギャリと耳障りな音が辺りに鳴り響く。糸鋸の力はかなりの物で木こりたちが切る速度の何倍もの速さで持って黒鉄を削っていく。
およそ30分ほどたった所で機械は動きをとめ木から離れていく。
それを見た八木があれ?といった表情で大臣へと話しかける。
「あれ、まだ途中ですけど……」
「これ以上やると機械が持ちませんからな、少し休ませてメンテもしなければいかんのです……それに、来たようですよ」
そう言って視線を上へと向ける大臣。それに釣られ八木も視線を上へと向ける。
視線の先には木の枝に腰かけこちらの様子をじっと見つめる人陰があった。
「それではお願いしても宜しいですかな? まずは八木様が神の落とし子である事と我々が交渉したい旨を伝えてくだされ」
「っと、了解です」
ゆっくりと警戒させないように人陰が腰かける木へを近づいていく八木。
そして十分近づいたところで、上へ向かい大きく声を上げた。
「私は神の落とし子の八木と申します。こちらの方がエルフの方達と交渉をしたいそうです、まずはお話だけでも聞いて頂けないでしょうか」
急に話掛けられた人陰がびくりと身を震わせる、まさか自分たちの言葉で話しかけてくるとは思っていなかったのだろう。
少し間をおいて枝の上から人陰が地へと飛び降りる。人陰が乗っていたのは高さ10m以上はありそうな枝である、とっさの事に驚き思わず駆け寄ろうとする八木であるが地面に降り立った人物がそっと手をあげた為ぴたりと静止する。
何事もなかったようにすっと立ち上がった人物は被っていたフードをぱさりとめくると八木へ話しかける。
「まさか神の落とし子とはな。それで交渉だったな……何してるんだお前?」
めくられたフードから現れたのは八木の中の一度は崩れ去ったエルフ像まさにそのものであった。非常に整った顔立ちに銀髪でシェイラ達より尖った耳、アーモンド型の猫科の動物を彷彿とさせる目。
そして何よりそのほっそりと慎ましい体。
八木は膝をつき両手を組み頭上を見上げると感極まった表情で声を上げる。
「神様ありがとうございます!!」
女性陣の冷たい視線が八木の背中へと突き刺さるのであった。
「俺が知りたいっすよ……」
八木の貞操の危機から一夜明け、黒鉄の森へと向かう一同。
二日酔いが残っていることから馬車は遠慮して徒歩で向かっている。徒歩なので多少時間がかかるのと特にする事もないので会話で時間を潰す事となる。どうやら話題は昨夜の出来事のようだ。
「くっそ受けるんだけど。笑いすぎて頭いったいわ」
時折思い出したように笑い出し、二日酔いで痛む頭を押さえるヒューゴ。今朝八木から話を聞いて以来ずっとこんな様子である。
「貴族のお嬢様がだめってのをぼかして伝えたら女性がだめで……男好きと思われたと。災難だったねー……ぶふっ」
「…………」
あまり笑うのも悪いかと、できるだけ沈痛な面持ち慰めるように話しかけるシェイラであるが、最後で耐えきれず吹き出してしまう。
当の八木はと言うとどんよりした目で恨みがましくシェイラを見つめていた、その様子に気が付いたシェイラは慌てて八木へと謝罪する。
「ご、ごめんごめん……でもほら、無事で良かったよ。事情話したら特に何も無かったんでしょ?」
「…………」
「えっ、なんでそこで無言になるの。ちょっ無視しないでってば!」
シェイラの言葉をするーしすたすたと先に行く八木。
慌てて後を追うシェイラを見て一人平静を保っていたアルヴィンはやれやれと言った様子で八木へと声をかける。
「聞けばこちらに来てから女性関係であまり良くない事が続いたそうですね……神はきっと見ていてくれています、次は良い事がありますよ、八木」
アルヴィンの言葉を聞き、足をとめ今までにあったことを思い出す八木。
総合ギルドの受付嬢はあれだったし、貴族のお嬢様には皮を剥がれそうになり、今度は掘られそうになる。
さらには憧れてたエルフに至ってはゴリラである・
思い出せば出すほどろくな思い出がない、八木は涙目になりながら地面に手をつきがっくりと項垂れる。
「この世に神なんていないっ」
「おいまて、神の落とし子」
黒鉄の森との境界線。八木達が到着するとそこは既に人で溢れかえっていた。
集まった人の多くは手に斧を持っている事から恐らく木こりと呼ばれる人たちだろう。
さらには馬に曳かれた何かしら巨大な機械も見える。巨大な糸鋸のようなものが付いている事からあれも木を切るための道具なのだろう。
「八木様、お待ちしておりました……はて、何やらお疲れのご様子ですが……」
八木を出迎えたのは昨夜食事を共にした大臣の一人であった。
どうも、例の出来事はまだ耳に入ってない様子である。
八木は何でもないと言うように疲れた笑顔を浮かべ口を開く。
「大丈夫です……それで交渉は何時から始めるのでしょう? もうエルフの方は来ているんですか?」
「いえまだ来て居ません。いつも木を切り始めると様子を見にくるのでそろそろ始めましょうか……開始するよう伝えてくれ」
大臣に声を掛けられた兵士の一人が作業者に開始するよう伝えていく。
まず、斧をもった者達が木の周りに集まり、斧を叩きつけていく。鉄並みに硬い黒鉄へは中々刃が通らないようであるがそれでも徐々に傷がつき、深くなっていく。
斧を全力で振り続けるというのはかなりの重労働である。疲れて動けなくなったものは次の者へと交代し自分は休息をとる。それを交互に繰り返していく事で徐々に黒鉄に刻まれる傷が深くなっていった。
「そろそろ良いか……一旦作業者を下がらせなさい」
作業者に下がるよう指示を出し、代わりに馬に曳かせた機械を機の傍に持っていく。
機会からは煙……というよりは蒸気が上がっており。レバーを引くとゆっくりと糸鋸が前後に動きだし、やがて轟音を立てながらも凄まじい速度で動くようになった所で糸鋸を黒鉄に押し当てる。
ギャリギャリと耳障りな音が辺りに鳴り響く。糸鋸の力はかなりの物で木こりたちが切る速度の何倍もの速さで持って黒鉄を削っていく。
およそ30分ほどたった所で機械は動きをとめ木から離れていく。
それを見た八木があれ?といった表情で大臣へと話しかける。
「あれ、まだ途中ですけど……」
「これ以上やると機械が持ちませんからな、少し休ませてメンテもしなければいかんのです……それに、来たようですよ」
そう言って視線を上へと向ける大臣。それに釣られ八木も視線を上へと向ける。
視線の先には木の枝に腰かけこちらの様子をじっと見つめる人陰があった。
「それではお願いしても宜しいですかな? まずは八木様が神の落とし子である事と我々が交渉したい旨を伝えてくだされ」
「っと、了解です」
ゆっくりと警戒させないように人陰が腰かける木へを近づいていく八木。
そして十分近づいたところで、上へ向かい大きく声を上げた。
「私は神の落とし子の八木と申します。こちらの方がエルフの方達と交渉をしたいそうです、まずはお話だけでも聞いて頂けないでしょうか」
急に話掛けられた人陰がびくりと身を震わせる、まさか自分たちの言葉で話しかけてくるとは思っていなかったのだろう。
少し間をおいて枝の上から人陰が地へと飛び降りる。人陰が乗っていたのは高さ10m以上はありそうな枝である、とっさの事に驚き思わず駆け寄ろうとする八木であるが地面に降り立った人物がそっと手をあげた為ぴたりと静止する。
何事もなかったようにすっと立ち上がった人物は被っていたフードをぱさりとめくると八木へ話しかける。
「まさか神の落とし子とはな。それで交渉だったな……何してるんだお前?」
めくられたフードから現れたのは八木の中の一度は崩れ去ったエルフ像まさにそのものであった。非常に整った顔立ちに銀髪でシェイラ達より尖った耳、アーモンド型の猫科の動物を彷彿とさせる目。
そして何よりそのほっそりと慎ましい体。
八木は膝をつき両手を組み頭上を見上げると感極まった表情で声を上げる。
「神様ありがとうございます!!」
女性陣の冷たい視線が八木の背中へと突き刺さるのであった。
11
あなたにおすすめの小説
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転生小説家の華麗なる円満離婚計画
鈴木かなえ
ファンタジー
キルステン伯爵家の令嬢として生を受けたクラリッサには、日本人だった前世の記憶がある。
両親と弟には疎まれているクラリッサだが、異母妹マリアンネとその兄エルヴィンと三人で仲良く育ち、前世の記憶を利用して小説家として密かに活躍していた。
ある時、夜会に連れ出されたクラリッサは、弟にハメられて見知らぬ男に襲われそうになる。
その男を返り討ちにして、逃げ出そうとしたところで美貌の貴公子ヘンリックと出会った。
逞しく想像力豊かなクラリッサと、その家族三人の物語です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる