聞き分けよくしていたら婚約者が妹にばかり構うので、困らせてみることにした

今川幸乃

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レイラの謝罪

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 それから一日空けて来週になり、私はまた学園に向かった。あんなデートをしてしまった後なのでクラインに会うのは何となく気恥ずかしい。あの日は完全に二人きりの世界に入ってしまっていたが、学園では周囲の目もある。
 そんなことを思いながら歩いていると、たまたま校門のところでクラインと出会う。

「おはよう、クライン」
「ああ、おはようカレン」

 私が挨拶すると彼も少し照れているのか、ぎこちなく挨拶を返す。
 それから私は口を開こうとして、ついおとといのデートのことを思い出してしまう。自然な話題と言えばデートのことだが、あのデートのことについて話すのは少し恥ずかしく、黙ってしまう。

 それはクラインも同じようで、私たちは無言で並んで歩くのだった。
 もっとも、その無言は心地いいものだったが。

「あの……」

 私たちが校舎の方へと歩いていくと、そこで待っていた神妙な表情のレイラに声をかけられる。
 彼女の姿を見て私とクラインは顔を見合わせた。今度は何を言ってくるのかと身構えてしまう。

 が、レイラの口から出たのは思わぬ言葉だった。

「お兄様、カレンさん、今まですみませんでした」

 そう言って彼女は深々と頭を下げる。

「えぇ!?」

 レイラの口から出るとは思っていなかった言葉に私は失礼ながらも驚きの声を上げてしまう。クラインやリーアムから聞いた話から考えると、彼女は私を恨んでいると思っていたからだ。
 が、私が困惑しているとレイラはなおも言葉を続ける。

「お兄様、これまでお兄様の行動を縛るような真似をしてすみませんでした」
「気にするな。むしろ僕がレイラを甘やかしたのが悪かったんだ。だってレイラは別に仮病を使っていた訳ではないんだろう?」
「それはそうですが……きっと私がお兄様の気を惹こうとしていたばかりに体調にも影響が出たのだと思います」

 レイラは申し訳なさそうに言う。

「だとすれば、レイラが病気の時だけ構っていた僕が悪いんだ。それよりもレイラが謝るべき相手は僕じゃないだろう?」

 クラインは優しい声色で言う。
 すると彼女は少し緊張した表情でこちらを向いた。

「すみませんカレンさん、婚約者であるあなたからお兄様を奪い取るようなことをしてしまって」
「いいけど、でも何で突然?」

 私としてはクラインさえ私を見てくれるのであればレイラが謝っても謝らなくてもどっちでも良かったのだが、むしろ急に心境が変わった理由が気になってしまう。

「実は、クラスメイトの男子に怒られて、それで目が覚めたんです。お前の行動はお兄様の自立を妨げているだけだって言われて。そんなことをしてもお兄様が手に入ることはないって」
「なるほど」

 確かにクラインの話を聞く限り、レイラは病弱故に甘やかされ、彼女のことを本気で怒る人間が周りにいなかったのだろう。
 そのせいで歪んだ育ち方をしてしまったのかもしれない。

「元々私はクラインに私を見て欲しかっただけだからレイラには何も思ってない」
「そうですか。とにかくそのことを謝らせていただきたかったのです」

 レイラはほっとしたような、眼中になかったことを寂しく思うような複雑な表情を浮かべた。
 クラインは私が隣にいるせいかレイラに優しい言葉をかけることはなかった。

 こうして私の中でこの件は完全に決着したのだった。
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