19 / 21
レイラの謝罪
しおりを挟む
それから一日空けて来週になり、私はまた学園に向かった。あんなデートをしてしまった後なのでクラインに会うのは何となく気恥ずかしい。あの日は完全に二人きりの世界に入ってしまっていたが、学園では周囲の目もある。
そんなことを思いながら歩いていると、たまたま校門のところでクラインと出会う。
「おはよう、クライン」
「ああ、おはようカレン」
私が挨拶すると彼も少し照れているのか、ぎこちなく挨拶を返す。
それから私は口を開こうとして、ついおとといのデートのことを思い出してしまう。自然な話題と言えばデートのことだが、あのデートのことについて話すのは少し恥ずかしく、黙ってしまう。
それはクラインも同じようで、私たちは無言で並んで歩くのだった。
もっとも、その無言は心地いいものだったが。
「あの……」
私たちが校舎の方へと歩いていくと、そこで待っていた神妙な表情のレイラに声をかけられる。
彼女の姿を見て私とクラインは顔を見合わせた。今度は何を言ってくるのかと身構えてしまう。
が、レイラの口から出たのは思わぬ言葉だった。
「お兄様、カレンさん、今まですみませんでした」
そう言って彼女は深々と頭を下げる。
「えぇ!?」
レイラの口から出るとは思っていなかった言葉に私は失礼ながらも驚きの声を上げてしまう。クラインやリーアムから聞いた話から考えると、彼女は私を恨んでいると思っていたからだ。
が、私が困惑しているとレイラはなおも言葉を続ける。
「お兄様、これまでお兄様の行動を縛るような真似をしてすみませんでした」
「気にするな。むしろ僕がレイラを甘やかしたのが悪かったんだ。だってレイラは別に仮病を使っていた訳ではないんだろう?」
「それはそうですが……きっと私がお兄様の気を惹こうとしていたばかりに体調にも影響が出たのだと思います」
レイラは申し訳なさそうに言う。
「だとすれば、レイラが病気の時だけ構っていた僕が悪いんだ。それよりもレイラが謝るべき相手は僕じゃないだろう?」
クラインは優しい声色で言う。
すると彼女は少し緊張した表情でこちらを向いた。
「すみませんカレンさん、婚約者であるあなたからお兄様を奪い取るようなことをしてしまって」
「いいけど、でも何で突然?」
私としてはクラインさえ私を見てくれるのであればレイラが謝っても謝らなくてもどっちでも良かったのだが、むしろ急に心境が変わった理由が気になってしまう。
「実は、クラスメイトの男子に怒られて、それで目が覚めたんです。お前の行動はお兄様の自立を妨げているだけだって言われて。そんなことをしてもお兄様が手に入ることはないって」
「なるほど」
確かにクラインの話を聞く限り、レイラは病弱故に甘やかされ、彼女のことを本気で怒る人間が周りにいなかったのだろう。
そのせいで歪んだ育ち方をしてしまったのかもしれない。
「元々私はクラインに私を見て欲しかっただけだからレイラには何も思ってない」
「そうですか。とにかくそのことを謝らせていただきたかったのです」
レイラはほっとしたような、眼中になかったことを寂しく思うような複雑な表情を浮かべた。
クラインは私が隣にいるせいかレイラに優しい言葉をかけることはなかった。
こうして私の中でこの件は完全に決着したのだった。
そんなことを思いながら歩いていると、たまたま校門のところでクラインと出会う。
「おはよう、クライン」
「ああ、おはようカレン」
私が挨拶すると彼も少し照れているのか、ぎこちなく挨拶を返す。
それから私は口を開こうとして、ついおとといのデートのことを思い出してしまう。自然な話題と言えばデートのことだが、あのデートのことについて話すのは少し恥ずかしく、黙ってしまう。
それはクラインも同じようで、私たちは無言で並んで歩くのだった。
もっとも、その無言は心地いいものだったが。
「あの……」
私たちが校舎の方へと歩いていくと、そこで待っていた神妙な表情のレイラに声をかけられる。
彼女の姿を見て私とクラインは顔を見合わせた。今度は何を言ってくるのかと身構えてしまう。
が、レイラの口から出たのは思わぬ言葉だった。
「お兄様、カレンさん、今まですみませんでした」
そう言って彼女は深々と頭を下げる。
「えぇ!?」
レイラの口から出るとは思っていなかった言葉に私は失礼ながらも驚きの声を上げてしまう。クラインやリーアムから聞いた話から考えると、彼女は私を恨んでいると思っていたからだ。
が、私が困惑しているとレイラはなおも言葉を続ける。
「お兄様、これまでお兄様の行動を縛るような真似をしてすみませんでした」
「気にするな。むしろ僕がレイラを甘やかしたのが悪かったんだ。だってレイラは別に仮病を使っていた訳ではないんだろう?」
「それはそうですが……きっと私がお兄様の気を惹こうとしていたばかりに体調にも影響が出たのだと思います」
レイラは申し訳なさそうに言う。
「だとすれば、レイラが病気の時だけ構っていた僕が悪いんだ。それよりもレイラが謝るべき相手は僕じゃないだろう?」
クラインは優しい声色で言う。
すると彼女は少し緊張した表情でこちらを向いた。
「すみませんカレンさん、婚約者であるあなたからお兄様を奪い取るようなことをしてしまって」
「いいけど、でも何で突然?」
私としてはクラインさえ私を見てくれるのであればレイラが謝っても謝らなくてもどっちでも良かったのだが、むしろ急に心境が変わった理由が気になってしまう。
「実は、クラスメイトの男子に怒られて、それで目が覚めたんです。お前の行動はお兄様の自立を妨げているだけだって言われて。そんなことをしてもお兄様が手に入ることはないって」
「なるほど」
確かにクラインの話を聞く限り、レイラは病弱故に甘やかされ、彼女のことを本気で怒る人間が周りにいなかったのだろう。
そのせいで歪んだ育ち方をしてしまったのかもしれない。
「元々私はクラインに私を見て欲しかっただけだからレイラには何も思ってない」
「そうですか。とにかくそのことを謝らせていただきたかったのです」
レイラはほっとしたような、眼中になかったことを寂しく思うような複雑な表情を浮かべた。
クラインは私が隣にいるせいかレイラに優しい言葉をかけることはなかった。
こうして私の中でこの件は完全に決着したのだった。
579
あなたにおすすめの小説
婚約者の幼馴染って、つまりは赤の他人でしょう?そんなにその人が大切なら、自分のお金で養えよ。貴方との婚約、破棄してあげるから、他
猿喰 森繁
恋愛
完結した短編まとめました。
大体1万文字以内なので、空いた時間に気楽に読んでもらえると嬉しいです。
忖度令嬢、忖度やめて最強になる
ハートリオ
恋愛
エクアは13才の伯爵令嬢。
5才年上の婚約者アーテル侯爵令息とは上手くいっていない。
週末のお茶会を頑張ろうとは思うもののアーテルの態度はいつも上の空。
そんなある週末、エクアは自分が裏切られていることを知り――
忖度ばかりして来たエクアは忖度をやめ、思いをぶちまける。
そんなエクアをキラキラした瞳で見る人がいた。
中世風異世界でのお話です。
2話ずつ投稿していきたいですが途切れたらネット環境まごついていると思ってください。
【完結】どうかその想いが実りますように
おもち。
恋愛
婚約者が私ではない別の女性を愛しているのは知っている。お互い恋愛感情はないけど信頼関係は築けていると思っていたのは私の独りよがりだったみたい。
学園では『愛し合う恋人の仲を引き裂くお飾りの婚約者』と陰で言われているのは分かってる。
いつまでも貴方を私に縛り付けていては可哀想だわ、だから私から貴方を解放します。
貴方のその想いが実りますように……
もう私には願う事しかできないから。
※ざまぁは薄味となっております。(当社比)もしかしたらざまぁですらないかもしれません。汗
お読みいただく際ご注意くださいませ。
※完結保証。全10話+番外編1話です。
※番外編2話追加しました。
※こちらの作品は「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています。
婚約破棄されないまま正妃になってしまった令嬢
alunam
恋愛
婚約破棄はされなかった……そんな必要は無かったから。
既に愛情の無くなった結婚をしても相手は王太子。困る事は無かったから……
愛されない正妃なぞ珍しくもない、愛される側妃がいるから……
そして寵愛を受けた側妃が世継ぎを産み、正妃の座に成り代わろうとするのも珍しい事ではない……それが今、この時に訪れただけ……
これは婚約破棄される事のなかった愛されない正妃。元・辺境伯爵シェリオン家令嬢『フィアル・シェリオン』の知らない所で、周りの奴等が勝手に王家の連中に「ざまぁ!」する話。
※あらすじですらシリアスが保たない程度の内容、プロット消失からの練り直し試作品、荒唐無稽でもハッピーエンドならいいんじゃい!的なガバガバ設定
それでもよろしければご一読お願い致します。更によろしければ感想・アドバイスなんかも是非是非。全十三話+オマケ一話、一日二回更新でっす!
婚約者が実は私を嫌っていたので、全て忘れる事にしました
Kouei
恋愛
私セイシェル・メルハーフェンは、
あこがれていたルパート・プレトリア伯爵令息と婚約できて幸せだった。
ルパート様も私に歩み寄ろうとして下さっている。
けれど私は聞いてしまった。ルパート様の本音を。
『我慢するしかない』
『彼女といると疲れる』
私はルパート様に嫌われていたの?
本当は厭わしく思っていたの?
だから私は決めました。
あなたを忘れようと…
※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
〖完結〗では、婚約解消いたしましょう。
藍川みいな
恋愛
三年婚約しているオリバー殿下は、最近別の女性とばかり一緒にいる。
学園で行われる年に一度のダンスパーティーにも、私ではなくセシリー様を誘っていた。まるで二人が婚約者同士のように思える。
そのダンスパーティーで、オリバー殿下は私を責め、婚約を考え直すと言い出した。
それなら、婚約を解消いたしましょう。
そしてすぐに、婚約者に立候補したいという人が現れて……!?
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話しです。
〖完結〗もうあなたを愛する事はありません。
藍川みいな
恋愛
愛していた旦那様が、妹と口付けをしていました…。
「……旦那様、何をしているのですか?」
その光景を見ている事が出来ず、部屋の中へと入り問いかけていた。
そして妹は、
「あら、お姉様は何か勘違いをなさってますよ? 私とは口づけしかしていません。お義兄様は他の方とはもっと凄いことをなさっています。」と…
旦那様には愛人がいて、その愛人には子供が出来たようです。しかも、旦那様は愛人の子を私達2人の子として育てようとおっしゃいました。
信じていた旦那様に裏切られ、もう旦那様を信じる事が出来なくなった私は、離縁を決意し、実家に帰ります。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全8話で完結になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる