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Ⅲ
発表
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さて、そんなことはありましたが、時間になると参加者は広間に集まり式典は粛々と始まります。
王宮で一番広い大広間に貴族やその一族、さらには軍人や役人の上位の者たちが所せましと集まっている光景は壮観です。
最初に陛下の側近が開会の挨拶を述べ、現在王国を動かしているような大貴族たちが次々と登壇しては挨拶を述べていき、最後に陛下が登壇します。
私はこれまで国王陛下を直にみたことはありませんでしたが、私が想像していた威風堂々とした外見ではなく、まだ三十前なのに苦労人のような姿を印象を受けました。ここ十年、王国に様々なことがあったせいでしょう。
そんな彼がここ十年の感謝や苦労を述べましたが、ここまでは言うなれば社交辞令であり、話の中身自体は特に意味のないものばかりです。
そして陛下の言葉が終わると、進行を務めていた陛下の側近が告げます。
「それでは次に、陛下から即位十周年を記念して、特別王家や王国に功があった家や人物への行賞を行います」
その言葉に広間はざわめきます。
特にこの十年で何か功績があったと思う方々は皆自分が恩賞をもらえるのではないかと期待している様子が見えました。
そして壇上の陛下が名前を呼び、呼ばれた貴族は嬉しそうに壇上へ上がっていきます。そして陛下はどのような功績があったのかを告げ、賞金や領地、爵位などを与えていきました。そのたびに拍手が起こり、祝賀や嫉妬の声が周囲から洩れます。
そしてそんな行賞も終わりに近づいたころです。
「……それでは最後になるが、アーノルド男爵」
「はいっ!」
突然名前を呼ばれたにも関わらず、男爵はよく通る声で返事して立ち上がります。
それまで名前が挙がっていた人物はもっと有名な、高位の貴族家が多かったため、周囲からは大きなどよめきが上がります。
が、そんな中を男爵は堂々と壇上へ歩いていきました。
男爵が陛下の前まで来ると、陛下は賞状を手渡しながら言います。
「そなたはわしが即位するとき、財政が苦しい中即位式の費用を献上した。王家が苦しい時に忠義を示すのは誠の忠臣である。そのため、その功績を称えてウェーバー港の行政官に任じよう」
陛下の言葉に周囲から、特に隣にいるブラッドや男爵夫人から大きなどよめきが漏れます。
ウェーバー港というのはここアークライト王国随一の貿易港であり、他国との交易船がひっきりなしに出入りして賑わっている港です。
基本的に行政官は税収から一定の割合を給与としてもらい受けることになりますが、ウェーバー港の行政官であればかなりの収入になるでしょう。
行政官自体はあまり高位の貴族が就く役職ではなく、またその土地自体が与えられる訳ではないので爵位や土地の授与に比べて恩賞としてのランクは低いです。陛下なりに露骨な贔屓にならないようにしつつ男爵の恩に報いる方法を考えたのでしょう。
「まことにありがとうございます」
そう言って男爵は頭を下げます。
そして大事そうに賞状を抱えて戻って来た男爵はとても晴れ晴れとした表情をしていました。
「良かった、これでようやく我が家は貧乏貴族を脱することが出来る」
「おめでとうございます、父上」
「あの時のあなたの行為は無駄ではなかったのね、あなた」
「ああ、ようやく十年の我慢が報われたのだ」
ブラッドと夫人も感極まって涙ぐんでいます。
こうして、式典は我が家にとって思わぬ吉事があって終わったのでした。
王宮で一番広い大広間に貴族やその一族、さらには軍人や役人の上位の者たちが所せましと集まっている光景は壮観です。
最初に陛下の側近が開会の挨拶を述べ、現在王国を動かしているような大貴族たちが次々と登壇しては挨拶を述べていき、最後に陛下が登壇します。
私はこれまで国王陛下を直にみたことはありませんでしたが、私が想像していた威風堂々とした外見ではなく、まだ三十前なのに苦労人のような姿を印象を受けました。ここ十年、王国に様々なことがあったせいでしょう。
そんな彼がここ十年の感謝や苦労を述べましたが、ここまでは言うなれば社交辞令であり、話の中身自体は特に意味のないものばかりです。
そして陛下の言葉が終わると、進行を務めていた陛下の側近が告げます。
「それでは次に、陛下から即位十周年を記念して、特別王家や王国に功があった家や人物への行賞を行います」
その言葉に広間はざわめきます。
特にこの十年で何か功績があったと思う方々は皆自分が恩賞をもらえるのではないかと期待している様子が見えました。
そして壇上の陛下が名前を呼び、呼ばれた貴族は嬉しそうに壇上へ上がっていきます。そして陛下はどのような功績があったのかを告げ、賞金や領地、爵位などを与えていきました。そのたびに拍手が起こり、祝賀や嫉妬の声が周囲から洩れます。
そしてそんな行賞も終わりに近づいたころです。
「……それでは最後になるが、アーノルド男爵」
「はいっ!」
突然名前を呼ばれたにも関わらず、男爵はよく通る声で返事して立ち上がります。
それまで名前が挙がっていた人物はもっと有名な、高位の貴族家が多かったため、周囲からは大きなどよめきが上がります。
が、そんな中を男爵は堂々と壇上へ歩いていきました。
男爵が陛下の前まで来ると、陛下は賞状を手渡しながら言います。
「そなたはわしが即位するとき、財政が苦しい中即位式の費用を献上した。王家が苦しい時に忠義を示すのは誠の忠臣である。そのため、その功績を称えてウェーバー港の行政官に任じよう」
陛下の言葉に周囲から、特に隣にいるブラッドや男爵夫人から大きなどよめきが漏れます。
ウェーバー港というのはここアークライト王国随一の貿易港であり、他国との交易船がひっきりなしに出入りして賑わっている港です。
基本的に行政官は税収から一定の割合を給与としてもらい受けることになりますが、ウェーバー港の行政官であればかなりの収入になるでしょう。
行政官自体はあまり高位の貴族が就く役職ではなく、またその土地自体が与えられる訳ではないので爵位や土地の授与に比べて恩賞としてのランクは低いです。陛下なりに露骨な贔屓にならないようにしつつ男爵の恩に報いる方法を考えたのでしょう。
「まことにありがとうございます」
そう言って男爵は頭を下げます。
そして大事そうに賞状を抱えて戻って来た男爵はとても晴れ晴れとした表情をしていました。
「良かった、これでようやく我が家は貧乏貴族を脱することが出来る」
「おめでとうございます、父上」
「あの時のあなたの行為は無駄ではなかったのね、あなた」
「ああ、ようやく十年の我慢が報われたのだ」
ブラッドと夫人も感極まって涙ぐんでいます。
こうして、式典は我が家にとって思わぬ吉事があって終わったのでした。
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