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【王都】王宮の異変
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数日後
「大変です殿下!」
「何だ?」
早朝から部屋がノックされ、ボルグは眠い目をこすりながら返事をする。
このところ毎日のようにレイシャとお楽しみだったボルグは常に眠かった。
「それが、薬草園の薬草が枯れております」
「何だと? そんなことは僕に言われても困る。誰かが水をやり忘れたのだろう」
王宮には貴重な薬草をする薬草園があるが、ボルグの知ったことではなかった。
「殿下、あそこは神の加護だけで薬草が自生するところです。水をやる係などおりません」
「ならばなぜそれを僕に言う!」
兵士がしつこいのでボルグの苛立ちが募っていく。
「これまで枯れたことがない薬草が急に枯れるなど、やはり聖女様の交代が関係あるのかと」
「何だと!?」
兵士の言葉に驚いたボルグは傍らに寝ていたレイシャに目を向ける。このところボルグは他人から聖女の交代に対する話題を持ち出されることに敏感になっていた。
すでに彼女もボルグの隣でこの騒ぎに目を覚ましていた。
「お前のせいなのか?」
「そんなことあるはずはありません。大方誰かが殿下を貶めるためにわざと薬草を枯れさせたのでしょう」
レイシャの言葉にボルグは頷いた。残念ながらボルグには自分を貶めようとする者には何人か心当たりがあった。
ボルグが勝手に聖女を交代したのに教会からは反発が出ている。だからボルグの判断が間違っていたことにするために教会の者が仕組んだのだろう。
「違う、これは聖女交代とは何の関係もない! 誰かが薬草を枯らしたに違いない、そいつを捕まえろ!」
「そ、そんな」
報告にきた兵士からすれば、いもしない犯人を捕まえるという無理難題を押し付けられた形になって困惑するが、彼は命令を聞くことしか出来なかった。
それからさらに数日は何事もなく日が経過していった。が、さらに数日後のことである。
いつものようにボルグはレイシャと自室で政務をしていた。レイシャはボルグの仕事を親身になって手伝ってくれる上に分からないことがあれば助言をしてくれ、その一方でボルグを絶対に否定しないためボルグは彼女を大変重宝していた。
そんな時である。
突然、床が揺れた。
「うわあああっ!? おいレイシャ、椅子を揺らしたか!?」
これまで起こらなかったことに、ボルグは情けない悲鳴を上げて椅子から転げ落ちる。
「いえ、そんなことは。というよりはこれは地面が揺れています!」
「何だと!?」
これまで聖女の加護により地震が起こらなかったため、ボルグはこれが地震であることにそもそも気づかなかった。
急な地震にこれまでいつもボルグに媚びること第一だったレイシャも珍しく本気で動揺している。
「と、とりあえず隠れましょう!」
レイシャの言葉で二人は執務机の下に入ろうとする。
その時だった。近くの棚の上にあった陶器の置物が滑り落ちてボルグの頭に命中する。ゴツン、という鈍い音ともに置物は弾き飛ばされて床に落ちた。
「痛っ」
「だ、大丈夫ですか!? ヒーリング」
すぐにレイシャが治癒魔法をかけるが痛みまで消える訳ではない。ボルグは頭を押さえながら机の下に地震が収まるのを待つしかなかった。
やがて地震が収まると、被害はそれだけにとどまらなかった。ボルグの部屋は丈夫に作られていたが、窓の外を見ると王宮の古くなっていた壁にはひびが入り、城下町でも一部の建物が倒れていて、人々は動揺していた。
そしてすぐに数人の神官がボルグの部屋にやってくる。
「殿下、やはりこれは聖女交代の影響なのでは!?」
「この前も神殿の花壇が枯れておりましたし、やはり不吉なことが」
「やはりイレーネ様を呼び戻した方がよろしいのでは?」
「くそ、どいつもこいつも!」
彼らの訴えを聞いてボルグは癇癪を起こす。彼らがどいつもこいつも自分の
それを見てレイシャが心配そうに言う。
「殿下、最近殿下に物申す身の程知らずの者が増えております。本来臣下に過ぎない彼らが王族に物申すなどあってはならないこと。ここは彼らを牢に入れた方がよろしいかと」
「良くぞ言った」
レイシャの言葉にボルグはぽん、と手を打つ。
そこへちょうどボルグの身を案じた兵士たちがやってくる。
「殿下、ご無事ですか!?」
「ああ、僕は無事だ。ただ天災に紛れてこの僕に楯突く輩がいる。こいつらを牢に放り込め!」
「そ、そんな!?」
神官たちは悲鳴を上げるが兵士たちに牢へ連れていかれるのであった。
それを見てボルグはレイシャに目をやる。
「これで良かったんだな」
「はい、これで何の問題もございません」
だが、薬草が枯れたことは他人のせいに出来ても、天変地異は他人のせいには出来ない。ボルグの足元に出来た亀裂は急速に広がっていくのであった。
「大変です殿下!」
「何だ?」
早朝から部屋がノックされ、ボルグは眠い目をこすりながら返事をする。
このところ毎日のようにレイシャとお楽しみだったボルグは常に眠かった。
「それが、薬草園の薬草が枯れております」
「何だと? そんなことは僕に言われても困る。誰かが水をやり忘れたのだろう」
王宮には貴重な薬草をする薬草園があるが、ボルグの知ったことではなかった。
「殿下、あそこは神の加護だけで薬草が自生するところです。水をやる係などおりません」
「ならばなぜそれを僕に言う!」
兵士がしつこいのでボルグの苛立ちが募っていく。
「これまで枯れたことがない薬草が急に枯れるなど、やはり聖女様の交代が関係あるのかと」
「何だと!?」
兵士の言葉に驚いたボルグは傍らに寝ていたレイシャに目を向ける。このところボルグは他人から聖女の交代に対する話題を持ち出されることに敏感になっていた。
すでに彼女もボルグの隣でこの騒ぎに目を覚ましていた。
「お前のせいなのか?」
「そんなことあるはずはありません。大方誰かが殿下を貶めるためにわざと薬草を枯れさせたのでしょう」
レイシャの言葉にボルグは頷いた。残念ながらボルグには自分を貶めようとする者には何人か心当たりがあった。
ボルグが勝手に聖女を交代したのに教会からは反発が出ている。だからボルグの判断が間違っていたことにするために教会の者が仕組んだのだろう。
「違う、これは聖女交代とは何の関係もない! 誰かが薬草を枯らしたに違いない、そいつを捕まえろ!」
「そ、そんな」
報告にきた兵士からすれば、いもしない犯人を捕まえるという無理難題を押し付けられた形になって困惑するが、彼は命令を聞くことしか出来なかった。
それからさらに数日は何事もなく日が経過していった。が、さらに数日後のことである。
いつものようにボルグはレイシャと自室で政務をしていた。レイシャはボルグの仕事を親身になって手伝ってくれる上に分からないことがあれば助言をしてくれ、その一方でボルグを絶対に否定しないためボルグは彼女を大変重宝していた。
そんな時である。
突然、床が揺れた。
「うわあああっ!? おいレイシャ、椅子を揺らしたか!?」
これまで起こらなかったことに、ボルグは情けない悲鳴を上げて椅子から転げ落ちる。
「いえ、そんなことは。というよりはこれは地面が揺れています!」
「何だと!?」
これまで聖女の加護により地震が起こらなかったため、ボルグはこれが地震であることにそもそも気づかなかった。
急な地震にこれまでいつもボルグに媚びること第一だったレイシャも珍しく本気で動揺している。
「と、とりあえず隠れましょう!」
レイシャの言葉で二人は執務机の下に入ろうとする。
その時だった。近くの棚の上にあった陶器の置物が滑り落ちてボルグの頭に命中する。ゴツン、という鈍い音ともに置物は弾き飛ばされて床に落ちた。
「痛っ」
「だ、大丈夫ですか!? ヒーリング」
すぐにレイシャが治癒魔法をかけるが痛みまで消える訳ではない。ボルグは頭を押さえながら机の下に地震が収まるのを待つしかなかった。
やがて地震が収まると、被害はそれだけにとどまらなかった。ボルグの部屋は丈夫に作られていたが、窓の外を見ると王宮の古くなっていた壁にはひびが入り、城下町でも一部の建物が倒れていて、人々は動揺していた。
そしてすぐに数人の神官がボルグの部屋にやってくる。
「殿下、やはりこれは聖女交代の影響なのでは!?」
「この前も神殿の花壇が枯れておりましたし、やはり不吉なことが」
「やはりイレーネ様を呼び戻した方がよろしいのでは?」
「くそ、どいつもこいつも!」
彼らの訴えを聞いてボルグは癇癪を起こす。彼らがどいつもこいつも自分の
それを見てレイシャが心配そうに言う。
「殿下、最近殿下に物申す身の程知らずの者が増えております。本来臣下に過ぎない彼らが王族に物申すなどあってはならないこと。ここは彼らを牢に入れた方がよろしいかと」
「良くぞ言った」
レイシャの言葉にボルグはぽん、と手を打つ。
そこへちょうどボルグの身を案じた兵士たちがやってくる。
「殿下、ご無事ですか!?」
「ああ、僕は無事だ。ただ天災に紛れてこの僕に楯突く輩がいる。こいつらを牢に放り込め!」
「そ、そんな!?」
神官たちは悲鳴を上げるが兵士たちに牢へ連れていかれるのであった。
それを見てボルグはレイシャに目をやる。
「これで良かったんだな」
「はい、これで何の問題もございません」
だが、薬草が枯れたことは他人のせいに出来ても、天変地異は他人のせいには出来ない。ボルグの足元に出来た亀裂は急速に広がっていくのであった。
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