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対決へ
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私とレイシャの対決をしたい、という書簡を見て最初オーウェン様は首をかしげました。
「どういうことだ? 向こうは本当にレイシャの方がイレーネよりも強いと思っているのか?」
確かに殿下は私よりもレイシャの方が魔力が高いと勘違いして私を追放しました。しかし殿下以外の人は皆私の方が魔力が高いことは分かっているはずです。特にレイシャ本人はまあまあの魔力の持ち主でしたからある程度は私の実力を把握しているでしょう。
要するに状況を理解していないのは殿下一人しかいないと言っても過言ではありません。
「殿下がレイシャの意見を聞かずに勝手に対決を持ちかけたとか?」
「確かにイレーネを勝手に追放するような男だからそういう短慮の可能性もあるが、本当にそうなのだろうか?」
「ということは向こうに勝つ秘策があるということでしょうか?」
「そうかもしれない」
もちろん私たちが王都を囲んだままであれば帝国が攻めてくるかもしれず、それは殿下にとっても不利益ではあるのですが、そこまで考えられるのであればそもそも私を追放しないのではないような気がします。
そんなことをああでもないこうでもないと話しているうちに時間が経ち、貴族たちが集まってきました。
「オーウェン様、何か状況の変化はありましたか?」
「もしなければ我ら申し訳ありませんがお暇させていただこうと思います」
貴族たちは昨日言った通り帰ろうとしています。
行動を起こすのであれば彼らが帰ってしまう前が最善です。
「オーウェン様、この誘いに裏があるかもしれませんが、考えている余裕はありません」
私は傍らのオーウェン様に小声で言います。が、オーウェン様の表情は依然として険しいままでした。
「だが、もしこれがイレーネを暗殺する策だったらどうする? やはりここは一か八か総攻撃に出た方が……」
「オーウェン様、それでは大量の犠牲が出てしまう可能性があります。私の安全性を考慮してそのような結末を辿るのは困ります」
私の真剣な言葉にオーウェン様はため息をつきました。
「まさかそなたがそこまで強情だとは思わなかった。確かにここで俺が強引に戦端を開いて大変なことになればそなたも辛いな」
「はい」
「分かった」
そう言ってオーウェン様は決然とした表情で貴族たちの方を向き、先ほどの書簡を広げてみせます。
「先ほど、ボルグ殿下からこのような書状が来た」
「何ですと!?」
それを見た貴族たちは目を白黒させます。
私とレイシャが直接対決すれば私が有利なのは貴族たちにも明白。なぜ向こうからそれを持ちかけてきたのか意図を分かりかねているようでした。
「向こうの意図は分からないが、俺はこの会談に応じてみようと思う。だから皆の者もその結果が出るまではこの地に残っていただきたい」
「分かりました。オーウェン様がそこまで覚悟されているのでしたら我らも見守らせていただきます」
こうして方針が決まったところで、オーウェン様は返事を書き、会談はとんとん拍子に進んでいきます。向こうも会談を急いでいるのか、返事はすぐに来ました。
「どうなりましたか?」
「まず我らが王都の包囲を解き、城門から五百メートルほど交代する。そして城門と我らの軍勢のちょうど真ん中で我ら四人で会談する、ということだ」
「なるほど」
とはいえ弓は良質なものであればお互いの軍勢から会談の予定地まで届きます。危ないと言えば危ないですが、逆にどちらかが不穏なことをすれば相手方を射殺することも出来るということです。
「いや、俺たちは城門から軍勢を一キロ下げ、その中間で会うことにしよう」
オーウェン様はそう条件を変えます。
「仮にレイシャや馬鹿王子がそこで何かしたとしても、俺の力があれば、二人まとめて片付けることが出来る。だから矢が届かないところの方がいい」
「ありがとうございます」
オーウェン様がその旨を記した書簡を送ると、意外にも向こうはあっさり飲みました。企みなどなくても私に勝てるということなのか、それとも他の謀略があるのか。
それは分からなかったが、こうして私たちは会談という名の直接対決に臨むことになったのです。
「どういうことだ? 向こうは本当にレイシャの方がイレーネよりも強いと思っているのか?」
確かに殿下は私よりもレイシャの方が魔力が高いと勘違いして私を追放しました。しかし殿下以外の人は皆私の方が魔力が高いことは分かっているはずです。特にレイシャ本人はまあまあの魔力の持ち主でしたからある程度は私の実力を把握しているでしょう。
要するに状況を理解していないのは殿下一人しかいないと言っても過言ではありません。
「殿下がレイシャの意見を聞かずに勝手に対決を持ちかけたとか?」
「確かにイレーネを勝手に追放するような男だからそういう短慮の可能性もあるが、本当にそうなのだろうか?」
「ということは向こうに勝つ秘策があるということでしょうか?」
「そうかもしれない」
もちろん私たちが王都を囲んだままであれば帝国が攻めてくるかもしれず、それは殿下にとっても不利益ではあるのですが、そこまで考えられるのであればそもそも私を追放しないのではないような気がします。
そんなことをああでもないこうでもないと話しているうちに時間が経ち、貴族たちが集まってきました。
「オーウェン様、何か状況の変化はありましたか?」
「もしなければ我ら申し訳ありませんがお暇させていただこうと思います」
貴族たちは昨日言った通り帰ろうとしています。
行動を起こすのであれば彼らが帰ってしまう前が最善です。
「オーウェン様、この誘いに裏があるかもしれませんが、考えている余裕はありません」
私は傍らのオーウェン様に小声で言います。が、オーウェン様の表情は依然として険しいままでした。
「だが、もしこれがイレーネを暗殺する策だったらどうする? やはりここは一か八か総攻撃に出た方が……」
「オーウェン様、それでは大量の犠牲が出てしまう可能性があります。私の安全性を考慮してそのような結末を辿るのは困ります」
私の真剣な言葉にオーウェン様はため息をつきました。
「まさかそなたがそこまで強情だとは思わなかった。確かにここで俺が強引に戦端を開いて大変なことになればそなたも辛いな」
「はい」
「分かった」
そう言ってオーウェン様は決然とした表情で貴族たちの方を向き、先ほどの書簡を広げてみせます。
「先ほど、ボルグ殿下からこのような書状が来た」
「何ですと!?」
それを見た貴族たちは目を白黒させます。
私とレイシャが直接対決すれば私が有利なのは貴族たちにも明白。なぜ向こうからそれを持ちかけてきたのか意図を分かりかねているようでした。
「向こうの意図は分からないが、俺はこの会談に応じてみようと思う。だから皆の者もその結果が出るまではこの地に残っていただきたい」
「分かりました。オーウェン様がそこまで覚悟されているのでしたら我らも見守らせていただきます」
こうして方針が決まったところで、オーウェン様は返事を書き、会談はとんとん拍子に進んでいきます。向こうも会談を急いでいるのか、返事はすぐに来ました。
「どうなりましたか?」
「まず我らが王都の包囲を解き、城門から五百メートルほど交代する。そして城門と我らの軍勢のちょうど真ん中で我ら四人で会談する、ということだ」
「なるほど」
とはいえ弓は良質なものであればお互いの軍勢から会談の予定地まで届きます。危ないと言えば危ないですが、逆にどちらかが不穏なことをすれば相手方を射殺することも出来るということです。
「いや、俺たちは城門から軍勢を一キロ下げ、その中間で会うことにしよう」
オーウェン様はそう条件を変えます。
「仮にレイシャや馬鹿王子がそこで何かしたとしても、俺の力があれば、二人まとめて片付けることが出来る。だから矢が届かないところの方がいい」
「ありがとうございます」
オーウェン様がその旨を記した書簡を送ると、意外にも向こうはあっさり飲みました。企みなどなくても私に勝てるということなのか、それとも他の謀略があるのか。
それは分からなかったが、こうして私たちは会談という名の直接対決に臨むことになったのです。
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