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ウィラード伯爵領の戦い Ⅲ
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私たちの軍勢が進んでいくと、戦いは一段と激しくなっていきました。
前線で縦横無尽に奮戦するオーウェン様でしたが、帝国軍は私たちが攻勢に出ると防御を固めてこちらの猛攻をやり過ごすことを選んだようです。
そんな中、敵も総力戦に転じたのか、後ろの方にある本陣から新たな軍勢が出てきます。その中に私はレイシャの姿があるのを見ました。遠目でしたし王宮で見た時と服装が変わっていますが、彼女の顔を見間違えるべくもありません。それに私と戦っていた時の杖も持っています。帝国と繋がっているとは聞いてましたが、この戦いに参戦していたとは。
レイシャは数人の護衛に守られながら戦場を駆けまわるオーウェン様に近づいていきます。そして杖を構えて魔法を使おうとします。彼女の杖から植物の蔦のようなものがオーウェン様に向かって伸びていくのが見えます。
その時、私は思いました。オーウェン様がレティシアなんかに負けるのは許せない、と。
もちろんこれまでもずっと味方の勝利を祈っていたのですが、奇跡を起こすほどの祈りというのはこれだけは絶対譲れない、という差し迫ったものでしか出来ないのかもしれません。そしてそれはまさに今でした。
そんな私の思いが届いたのか、突如戦場を駆けまわっていたオーウェン様の体が聖なる光に包まれます。
そしてそこに迫ったレイシャの魔法の蔦が触れると、弾き飛ばしてしまいます。突然のことに普通に戦っていたオーウェン様も一瞬ぽかんとしてしまっています。
が、なおもオーウェン様の体は光り輝いたままでした。そこへ帝国兵も矢を射かけてきますが、オーウェン様に向かう矢は全て当たる直前で叩き落されていきます。
それを見てオーウェン様は状況を理解したのか、大声で叫びます。
「見たか侵略者たちめ! これが聖女の加護だ!」
その言葉に周囲にいた味方の兵士たちも一気に奮い立ちました。
「奇跡だ! 奇跡が起きた!」
「やはりこちらには真の聖女様がついている!」
「うおおおおおおおおおっ!」
それを見て味方の軍勢は一気に奮い立ちます。
一方のレイシャは悔しそうな顔をしてさらに何発かの魔法をオーウェン様に放ちましたが、全てが防がれてしまいます。それを見て彼女は悔しそうに引き上げていきます。
他の帝国兵も奇跡を目の当たりにしたせいか、これまでの機敏な動きが鈍っていきます。
こうしてこれまで互角が続いていた形勢は一気に傾きました。
帝国軍は崩れたち、王国軍はそれを勇猛果敢に追っていきます。さらにそれに合わせて館内にいた伯爵軍も討って出ます。二方向からの猛攻を受けた帝国軍はたまらずに退却し、街を出ていきました。
「これが本物の聖女の力か」
それを隣で見ていたゲイル将軍も驚いています。
「もちろん力を疑っていた訳ではないが、普段の祈りというのは目に見えない加護をもたらすものだ。だからこうして奇跡を目の当たりにするとは思わなかったのだ」
「出来ればいつでも奇跡を起こせるようになれればいいのですが」
「はは、気にすることはない。いつでもは起こせないから奇跡なのだ」
そう言われるとそれはそうです。その言葉に私は頷くほかありません。
その後も王国軍は帝国軍を追い立てていきましたが、やがて日が暮れたので勝鬨を上げて追撃は終了します。
戦闘が終わると、本陣に意気揚々とオーウェン様が戻ってきました。先ほどまで戦っていましたが、勝利故か疲れている様子はなく、興奮した面持ちです。
「イレーネ、ありがとう。そなたの祈りのおかげで無事大勝を収めることが出来た」
「いえ、全てオーウェン様の活躍のおかげです。遠目から見ていてもはっきりとわかる獅子奮迅のご活躍でした」
「そうだ。いきなり飛び出して行ったときはひやひやしたものだ」
ゲイル将軍もそう言ってほっと息を吐きます。
「心配かけて申し訳ない。ただ、この不利な形勢を挽回するためには多少の危険を覚悟で出撃しなければならなかったんだ」
「それで敵軍はどうなった?」
ゲイル将軍が尋ねます。
「ああ、帝国軍は国境を越えて自分たちの国に戻っていった。さすがにそこまでは深追い出来なかったが、しばらくはこちらを襲ってくるような状況ではないだろう」
「それなら良かった」
「とりあえずは皆、我が館に来ていただきたい。そこで軍勢を派遣していただいたお礼と、戦勝祝いをしようではないか」
オーウェン様の言葉に同行していた貴族たちも頷きます。
こうして私たちはオーウェン様に続いて館に向かったのでした。
前線で縦横無尽に奮戦するオーウェン様でしたが、帝国軍は私たちが攻勢に出ると防御を固めてこちらの猛攻をやり過ごすことを選んだようです。
そんな中、敵も総力戦に転じたのか、後ろの方にある本陣から新たな軍勢が出てきます。その中に私はレイシャの姿があるのを見ました。遠目でしたし王宮で見た時と服装が変わっていますが、彼女の顔を見間違えるべくもありません。それに私と戦っていた時の杖も持っています。帝国と繋がっているとは聞いてましたが、この戦いに参戦していたとは。
レイシャは数人の護衛に守られながら戦場を駆けまわるオーウェン様に近づいていきます。そして杖を構えて魔法を使おうとします。彼女の杖から植物の蔦のようなものがオーウェン様に向かって伸びていくのが見えます。
その時、私は思いました。オーウェン様がレティシアなんかに負けるのは許せない、と。
もちろんこれまでもずっと味方の勝利を祈っていたのですが、奇跡を起こすほどの祈りというのはこれだけは絶対譲れない、という差し迫ったものでしか出来ないのかもしれません。そしてそれはまさに今でした。
そんな私の思いが届いたのか、突如戦場を駆けまわっていたオーウェン様の体が聖なる光に包まれます。
そしてそこに迫ったレイシャの魔法の蔦が触れると、弾き飛ばしてしまいます。突然のことに普通に戦っていたオーウェン様も一瞬ぽかんとしてしまっています。
が、なおもオーウェン様の体は光り輝いたままでした。そこへ帝国兵も矢を射かけてきますが、オーウェン様に向かう矢は全て当たる直前で叩き落されていきます。
それを見てオーウェン様は状況を理解したのか、大声で叫びます。
「見たか侵略者たちめ! これが聖女の加護だ!」
その言葉に周囲にいた味方の兵士たちも一気に奮い立ちました。
「奇跡だ! 奇跡が起きた!」
「やはりこちらには真の聖女様がついている!」
「うおおおおおおおおおっ!」
それを見て味方の軍勢は一気に奮い立ちます。
一方のレイシャは悔しそうな顔をしてさらに何発かの魔法をオーウェン様に放ちましたが、全てが防がれてしまいます。それを見て彼女は悔しそうに引き上げていきます。
他の帝国兵も奇跡を目の当たりにしたせいか、これまでの機敏な動きが鈍っていきます。
こうしてこれまで互角が続いていた形勢は一気に傾きました。
帝国軍は崩れたち、王国軍はそれを勇猛果敢に追っていきます。さらにそれに合わせて館内にいた伯爵軍も討って出ます。二方向からの猛攻を受けた帝国軍はたまらずに退却し、街を出ていきました。
「これが本物の聖女の力か」
それを隣で見ていたゲイル将軍も驚いています。
「もちろん力を疑っていた訳ではないが、普段の祈りというのは目に見えない加護をもたらすものだ。だからこうして奇跡を目の当たりにするとは思わなかったのだ」
「出来ればいつでも奇跡を起こせるようになれればいいのですが」
「はは、気にすることはない。いつでもは起こせないから奇跡なのだ」
そう言われるとそれはそうです。その言葉に私は頷くほかありません。
その後も王国軍は帝国軍を追い立てていきましたが、やがて日が暮れたので勝鬨を上げて追撃は終了します。
戦闘が終わると、本陣に意気揚々とオーウェン様が戻ってきました。先ほどまで戦っていましたが、勝利故か疲れている様子はなく、興奮した面持ちです。
「イレーネ、ありがとう。そなたの祈りのおかげで無事大勝を収めることが出来た」
「いえ、全てオーウェン様の活躍のおかげです。遠目から見ていてもはっきりとわかる獅子奮迅のご活躍でした」
「そうだ。いきなり飛び出して行ったときはひやひやしたものだ」
ゲイル将軍もそう言ってほっと息を吐きます。
「心配かけて申し訳ない。ただ、この不利な形勢を挽回するためには多少の危険を覚悟で出撃しなければならなかったんだ」
「それで敵軍はどうなった?」
ゲイル将軍が尋ねます。
「ああ、帝国軍は国境を越えて自分たちの国に戻っていった。さすがにそこまでは深追い出来なかったが、しばらくはこちらを襲ってくるような状況ではないだろう」
「それなら良かった」
「とりあえずは皆、我が館に来ていただきたい。そこで軍勢を派遣していただいたお礼と、戦勝祝いをしようではないか」
オーウェン様の言葉に同行していた貴族たちも頷きます。
こうして私たちはオーウェン様に続いて館に向かったのでした。
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