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エピローグⅠ
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戦いが終わった翌日のことでした。帝国軍の中から白旗を掲げた使者がやってきます。二度の敗北によりさすがの帝国も諦めたということでしょう。
「誰だ?」
「それが、どうも敵の大将グラッド将軍のようです」
「何と。すぐに会見しよう」
敵の大将直々にやってくるということは私たちだけでなく、対外的にも敗北を認めたも同然です。
オーウェン様やゲイル将軍に劣らぬ貫禄があるグラッドが頭を下げて低姿勢で歩いて来る様子に、誰もが改めて帝国に勝利したんだ、ということを実感させたのでした。
オーウェン様他主だった人々がいる部屋に一人でやってきた彼は恭しく頭を下げて用件を切り出します。
「このたびは帝国の敗戦が明らかになった。そちらの国としては色々言いたいこともあるだろうが、帝国が貴国に賠償金を出す形で終戦としたい」
「こちらとしてもそれで異存はない。問題は金額だ」
王国が優勢になったとはいえ、帝国内に攻め込むのであれば遠征費がかかりますし、敵地で戦えば思わぬ敗北があるかもしれません。また王国としては政治がまだ混乱しているため、さっさと戦いを終わらせたいというところでした。
とはいえ戦いを仕掛けてきた帝国が敗れた以上、何もなく兵を退くことは出来ません。そのため、賠償金というのが適当な落としどころになる訳です。
その後二人の間で具体的な金額についての交渉が始まります。私には全く相場が分かりませんが、議論はさすがに紛糾します。
とはいえ一時間ほどの議論の後、最初にお互いが提示した金額の中間ほどの金額でまとまりました。
「和睦を受け入れていただいたこと、誠に感謝する」
そう言ってグラッド将軍は帰っていきました。
それを見てオーウェン様はほっと一息つきます。
「今度こそ本当に戦いが終わったな」
「はい、本当にお疲れ様でした」
とはいえ、これから王都でまだ残っているごたごたをどうにかするという仕事は残っていますが。特に王子が敵国に走って討ちとられるという前代未聞の事件が起こったので後継者も決め直さなければなりません。
そして私も荒れた国の復興が少しでも早くなるよう神様に祈りを捧げなければなりません。
やがて他の貴族将軍たちは領地へ戻る準備をしに解散していき、部屋には私とオーウェン様の二人が取り残されます。
「イレーネ」
「な、何でしょう」
いつもと違う、少し強張ったオーウェン様の言い方に私は少し緊張します。もう戦いも終わったというのに一体何でしょうか。私の胸の中にとある期待が芽生えます。
そんな私をオーウェン様はまっすぐに見つめました。
「王都に戻った後、俺と結婚してくれないか」
直球の告白に私の心臓はどくんと大きく跳ね上がります。オーウェン様の言葉は内心私が期待していたこと、いやそれ以上のことでした。
正直、初めて会った時からオーウェン様には伯爵家の跡継ぎとして以上に、一人の男性としての魅力を感じてきました。
このたびの遠征についてきたのも、王国の勝利を祈るためというのはありましたが、オーウェン様を守りたい、もしくは助けになりたいという気持ちがあったからというのが本当のところです。
そのため私としてもオーウェン様の告白は非常に嬉しいものでした。
「はい、喜んで」
私がそう答えると、オーウェン様は戦いに勝利したときよりも安堵した表情に変わります。
「良かった。もし断られたらどうしようと思っていました」
「実は私もオーウェン様のことをずっと慕っていました。ですから非常に嬉しいです」
とはいえ聖女でなくなった私と違い、オーウェン様は伯爵家の跡継ぎ。明らかに身分不釣り合いでした。聖女に戻って一番嬉しかったのはある意味、オーウェン様と結ばれるにふさわしい身分に戻ったことかもしれません。
「俺もそれは感じ取っていたのだが、俺がイレーネを好きだからそう思えてしまっているだけなのかもしれない、と不安だったのだ。でもそれも今日で終わりだな」
「はい」
「ではこの後王都に戻ったら正式にこのことを取り決めようと思う。それまで少しだけ待っていてくれ」
「もちろんです」
こうして私は王都に戻る楽しみが一つ増えたのでした。
「誰だ?」
「それが、どうも敵の大将グラッド将軍のようです」
「何と。すぐに会見しよう」
敵の大将直々にやってくるということは私たちだけでなく、対外的にも敗北を認めたも同然です。
オーウェン様やゲイル将軍に劣らぬ貫禄があるグラッドが頭を下げて低姿勢で歩いて来る様子に、誰もが改めて帝国に勝利したんだ、ということを実感させたのでした。
オーウェン様他主だった人々がいる部屋に一人でやってきた彼は恭しく頭を下げて用件を切り出します。
「このたびは帝国の敗戦が明らかになった。そちらの国としては色々言いたいこともあるだろうが、帝国が貴国に賠償金を出す形で終戦としたい」
「こちらとしてもそれで異存はない。問題は金額だ」
王国が優勢になったとはいえ、帝国内に攻め込むのであれば遠征費がかかりますし、敵地で戦えば思わぬ敗北があるかもしれません。また王国としては政治がまだ混乱しているため、さっさと戦いを終わらせたいというところでした。
とはいえ戦いを仕掛けてきた帝国が敗れた以上、何もなく兵を退くことは出来ません。そのため、賠償金というのが適当な落としどころになる訳です。
その後二人の間で具体的な金額についての交渉が始まります。私には全く相場が分かりませんが、議論はさすがに紛糾します。
とはいえ一時間ほどの議論の後、最初にお互いが提示した金額の中間ほどの金額でまとまりました。
「和睦を受け入れていただいたこと、誠に感謝する」
そう言ってグラッド将軍は帰っていきました。
それを見てオーウェン様はほっと一息つきます。
「今度こそ本当に戦いが終わったな」
「はい、本当にお疲れ様でした」
とはいえ、これから王都でまだ残っているごたごたをどうにかするという仕事は残っていますが。特に王子が敵国に走って討ちとられるという前代未聞の事件が起こったので後継者も決め直さなければなりません。
そして私も荒れた国の復興が少しでも早くなるよう神様に祈りを捧げなければなりません。
やがて他の貴族将軍たちは領地へ戻る準備をしに解散していき、部屋には私とオーウェン様の二人が取り残されます。
「イレーネ」
「な、何でしょう」
いつもと違う、少し強張ったオーウェン様の言い方に私は少し緊張します。もう戦いも終わったというのに一体何でしょうか。私の胸の中にとある期待が芽生えます。
そんな私をオーウェン様はまっすぐに見つめました。
「王都に戻った後、俺と結婚してくれないか」
直球の告白に私の心臓はどくんと大きく跳ね上がります。オーウェン様の言葉は内心私が期待していたこと、いやそれ以上のことでした。
正直、初めて会った時からオーウェン様には伯爵家の跡継ぎとして以上に、一人の男性としての魅力を感じてきました。
このたびの遠征についてきたのも、王国の勝利を祈るためというのはありましたが、オーウェン様を守りたい、もしくは助けになりたいという気持ちがあったからというのが本当のところです。
そのため私としてもオーウェン様の告白は非常に嬉しいものでした。
「はい、喜んで」
私がそう答えると、オーウェン様は戦いに勝利したときよりも安堵した表情に変わります。
「良かった。もし断られたらどうしようと思っていました」
「実は私もオーウェン様のことをずっと慕っていました。ですから非常に嬉しいです」
とはいえ聖女でなくなった私と違い、オーウェン様は伯爵家の跡継ぎ。明らかに身分不釣り合いでした。聖女に戻って一番嬉しかったのはある意味、オーウェン様と結ばれるにふさわしい身分に戻ったことかもしれません。
「俺もそれは感じ取っていたのだが、俺がイレーネを好きだからそう思えてしまっているだけなのかもしれない、と不安だったのだ。でもそれも今日で終わりだな」
「はい」
「ではこの後王都に戻ったら正式にこのことを取り決めようと思う。それまで少しだけ待っていてくれ」
「もちろんです」
こうして私は王都に戻る楽しみが一つ増えたのでした。
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