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Ⅰ
エマ
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「どうだった? 何か返事はあったか?」
翌日の放課後、教室の外で私はアルフと落ち合う。シルヴィアに出した手紙には特に期限は定めていなかったけど、今日一日彼女は私と視線を合わせようとすらしなかったし、何かを迷っている素振りもなかった。おそらく自分からこれまでのことを白状しようという意志はないのだろう。
「なかった。多分彼女は自分から白状するつもりはないと思う」
「そうか、それは残念だな」
私の言葉にアルフは肩を落とす。
「だから決めてあった通り、終業式にたくさんの生徒が見ている中魔力を奪還するしかないと思う。でも、それで今後の調査は大丈夫?」
私が少し不安だったのはシルヴィアに復讐することが出来ても、呪いの出どころが分からないまま終わってしまうことだった。
復讐出来るのは嬉しいが、それだけでは苦労して呪いを取り出すという選択をした意味がない。
「今のところシルヴィアは特に不自然な動きを見せていないが、今の状況にご満悦なようだ。だからもし大きな屈辱を受ければもう一度呪いを渡して来た人物と接触して更なる力を得ようとするかもしれない。それを押さえる」
「なるほど」
確かにシルヴィアの心を動揺させれば黒幕とまた接触するかもしれない。それを聞いて私は自分の復讐に意味がありそうなことに気づき、少し安堵する。
「分かった。じゃあ……」
私がそう言った時だった。
ふと視界の端でミラが何人かの女子生徒に連れられてどこかに向かうのが見える。その中にはこの前私に突っかかってきた女、エマも混ざっていた。それを見て私は体が凍り付く。もしや私の呪いを解くのを手伝ったことがばれて嫌がらせをされているのだろうか。
後で原因は別だと知るのだが、この時の私はいても立ってもいられなくなった。
私の横にいたアルフはすぐに私の視線の先にあるものに気づく。
「……またあいつらか」
「アルフ、どうにかならない?」
私は思わずアルフにすがるような言い方をしてしまう。それを聞いてアルフは一瞬考えこむ。しかしやがて、私の真剣な表情を見て頷いた。
「……そうだな、さすがに彼女たちを見過ごすことは出来ない。かといって、この場に割って入ってもこの場はどうにか出来ても隠れていじめが続くだけだろう」
ちなみに私に対してはあの日以来、アルフが分かりやすく護衛するような態度をとってくれたおかげで、遠巻きに陰口をたたかれるぐらいで済んでいた。
アルフは常に私からつかず離れずの距離にいてこちらをじっと見守ってくれているのである。私が悪口を言われているのをすぐ近くで聞いていても何も言わなかったオルクとは雲泥の差だ。
とはいえ私とミラの両方にそうする訳にはいかない。
「どうにか出来ないかな?」
アルフは本来の調査任務もあり、その上私の護衛もしてくれている。これ以上を望むのは厳しいだろうか。
が、アルフはしばらく考えて頷いてくれる。
「そうだな。本来の職務からは多少逸脱するが、あのような行いを野放しにしておくことは出来ない。行こう」
「ありがとう」
アルフの言葉に私はほっと胸を撫で下ろす。自分が標的ではなくなったからといって、他の女子がいじめられているのを傍観するのはさすがに嫌だった。
こっそりエマたちについていくと、彼女たちは学園の校舎裏に向かった。そこは普段はあまり人がいない裏庭になっている。そこにやってきたエマたち女子十人ほどはミラを取り囲んでいる。この前の私の時より人数が増えていて、気の弱いミラは早くも泣きそうにしている。
「この前のシルヴィアさんのパーティー、どうして来なかったの?」
エマは強い口調で尋ねる。どうもミラが絡まれているのは私の件とは関係なかったらしいことが分かり、少し安堵する。
「……だって、私シルヴィアさんとは全然仲が良くなかったので、行っても邪魔になるだけだって思って」
ミラは震える声で答えるが、すぐにエマたちは強い口調で言い返してくる。
「それでもいいから来てって言ったよね?」
「大体仲が良くないなら自分から歩み寄るのが筋ってものじゃないの?」
「それともシルヴィアさんのことが嫌い?」
女子たちは次々とミラに言葉を投げつける。それを聞いて落ち込んでいたミラだったが、やがて急に毅然とした表情に変わる。
「皆さん、シルヴィアはレミリアさんの魔力を盗み取ったの! おかしいと思わない? あんなに急に魔力が増えるなんて! それなのにみんながシルヴィアばかりちやほやしているのはおかしいと思う!」
耐え切れなくなったのか、ミラはそう叫んでしまう。
その瞬間、周囲の空気が凍り付いた。エマたちもミラがシルヴィアを良く思っていないと知りつつも、まさかそこまで踏み込んだことを言われるとは思っていなかったのだろう。
が、やがてエマが顔を真っ赤にしてミラの襟首をつかむ。
「何言ってるの? 言っていいことと悪いことがあるわ! 大体それが本当だっていう証拠は何かあるの!?」
それを言うなら、そもそも私が不正をしたっていう証拠もなかった訳だけど。
「わ、私は聖女見習いだから分かる! あれはレミリアさんへの呪い!」
「黙れ!」
エマが叫んで拳を振り上げた時だった。
「レミリアはここで待っていてくれ。ここは僕一人で片をつける」
「う、うん」
そう言ってアルフはエマの前へ走っていく。
「ちょっと待った!」
翌日の放課後、教室の外で私はアルフと落ち合う。シルヴィアに出した手紙には特に期限は定めていなかったけど、今日一日彼女は私と視線を合わせようとすらしなかったし、何かを迷っている素振りもなかった。おそらく自分からこれまでのことを白状しようという意志はないのだろう。
「なかった。多分彼女は自分から白状するつもりはないと思う」
「そうか、それは残念だな」
私の言葉にアルフは肩を落とす。
「だから決めてあった通り、終業式にたくさんの生徒が見ている中魔力を奪還するしかないと思う。でも、それで今後の調査は大丈夫?」
私が少し不安だったのはシルヴィアに復讐することが出来ても、呪いの出どころが分からないまま終わってしまうことだった。
復讐出来るのは嬉しいが、それだけでは苦労して呪いを取り出すという選択をした意味がない。
「今のところシルヴィアは特に不自然な動きを見せていないが、今の状況にご満悦なようだ。だからもし大きな屈辱を受ければもう一度呪いを渡して来た人物と接触して更なる力を得ようとするかもしれない。それを押さえる」
「なるほど」
確かにシルヴィアの心を動揺させれば黒幕とまた接触するかもしれない。それを聞いて私は自分の復讐に意味がありそうなことに気づき、少し安堵する。
「分かった。じゃあ……」
私がそう言った時だった。
ふと視界の端でミラが何人かの女子生徒に連れられてどこかに向かうのが見える。その中にはこの前私に突っかかってきた女、エマも混ざっていた。それを見て私は体が凍り付く。もしや私の呪いを解くのを手伝ったことがばれて嫌がらせをされているのだろうか。
後で原因は別だと知るのだが、この時の私はいても立ってもいられなくなった。
私の横にいたアルフはすぐに私の視線の先にあるものに気づく。
「……またあいつらか」
「アルフ、どうにかならない?」
私は思わずアルフにすがるような言い方をしてしまう。それを聞いてアルフは一瞬考えこむ。しかしやがて、私の真剣な表情を見て頷いた。
「……そうだな、さすがに彼女たちを見過ごすことは出来ない。かといって、この場に割って入ってもこの場はどうにか出来ても隠れていじめが続くだけだろう」
ちなみに私に対してはあの日以来、アルフが分かりやすく護衛するような態度をとってくれたおかげで、遠巻きに陰口をたたかれるぐらいで済んでいた。
アルフは常に私からつかず離れずの距離にいてこちらをじっと見守ってくれているのである。私が悪口を言われているのをすぐ近くで聞いていても何も言わなかったオルクとは雲泥の差だ。
とはいえ私とミラの両方にそうする訳にはいかない。
「どうにか出来ないかな?」
アルフは本来の調査任務もあり、その上私の護衛もしてくれている。これ以上を望むのは厳しいだろうか。
が、アルフはしばらく考えて頷いてくれる。
「そうだな。本来の職務からは多少逸脱するが、あのような行いを野放しにしておくことは出来ない。行こう」
「ありがとう」
アルフの言葉に私はほっと胸を撫で下ろす。自分が標的ではなくなったからといって、他の女子がいじめられているのを傍観するのはさすがに嫌だった。
こっそりエマたちについていくと、彼女たちは学園の校舎裏に向かった。そこは普段はあまり人がいない裏庭になっている。そこにやってきたエマたち女子十人ほどはミラを取り囲んでいる。この前の私の時より人数が増えていて、気の弱いミラは早くも泣きそうにしている。
「この前のシルヴィアさんのパーティー、どうして来なかったの?」
エマは強い口調で尋ねる。どうもミラが絡まれているのは私の件とは関係なかったらしいことが分かり、少し安堵する。
「……だって、私シルヴィアさんとは全然仲が良くなかったので、行っても邪魔になるだけだって思って」
ミラは震える声で答えるが、すぐにエマたちは強い口調で言い返してくる。
「それでもいいから来てって言ったよね?」
「大体仲が良くないなら自分から歩み寄るのが筋ってものじゃないの?」
「それともシルヴィアさんのことが嫌い?」
女子たちは次々とミラに言葉を投げつける。それを聞いて落ち込んでいたミラだったが、やがて急に毅然とした表情に変わる。
「皆さん、シルヴィアはレミリアさんの魔力を盗み取ったの! おかしいと思わない? あんなに急に魔力が増えるなんて! それなのにみんながシルヴィアばかりちやほやしているのはおかしいと思う!」
耐え切れなくなったのか、ミラはそう叫んでしまう。
その瞬間、周囲の空気が凍り付いた。エマたちもミラがシルヴィアを良く思っていないと知りつつも、まさかそこまで踏み込んだことを言われるとは思っていなかったのだろう。
が、やがてエマが顔を真っ赤にしてミラの襟首をつかむ。
「何言ってるの? 言っていいことと悪いことがあるわ! 大体それが本当だっていう証拠は何かあるの!?」
それを言うなら、そもそも私が不正をしたっていう証拠もなかった訳だけど。
「わ、私は聖女見習いだから分かる! あれはレミリアさんへの呪い!」
「黙れ!」
エマが叫んで拳を振り上げた時だった。
「レミリアはここで待っていてくれ。ここは僕一人で片をつける」
「う、うん」
そう言ってアルフはエマの前へ走っていく。
「ちょっと待った!」
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