婚約者が選んだのは私から魔力を盗んだ妹でした

今川幸乃

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困惑する我が家

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「おい、一体何があったんだ」

 そんな騒ぎを聞きつけて父上が慌てた様子で私の元へやってきます。
 何があったんだと訊かれても私も状況はいまいち呑み込めていません。
 仕方がないので、目の前で起こったことを説明します。

「実は、パーシーが私がリリーを虐めていると言って、婚約破棄を宣言した後にリリーを抱えて行ってしまったのです」
「……は? 何を滅茶苦茶なことを言っているんだ?」

 起こったことを説明しただけなのに父上にそう言われてしまいます。
 私だって理解出来ていない状況を他人に説明するのは無理があるのでしょう。

「いえ、本当にそうだったのです。パーシーはどうも私がリリーを虐めていると思っているようで……」
「一体なぜそうなるんだ。お前はパーシーの婚約者だろう。何でそんな疑念を持たれるようなことになったんだ」
「さあ……」

 リリーの差し金です、と言おうとしましたが下手なことをしていると本当に私が悪者になってしまうのでそこは言葉を濁します。
 父上だってリリーが裏でそんな腹黒いことを企んでいると言われても信じないでしょう。

「全く、お前がもう少ししっかりしていれば……しかしパーシーは何でリリーを攫っていったんだ? 虐められているとはいえ普通そうはならないだろう」
「そう言われましても」

 そこでようやく父上もパーシーが常軌を逸した判断をしたことに気づきます。
 婚約破棄されたと聞いて最初は私に落ち度があったのではないかと思っていた父上も、異常なパーシーの行動にその認識を改めたようです。

「もしかしてパーシーはずっとリリーのことが好きだったのか?」
「仲はいいようでしたが、異性として好きだったかは私には何とも」
「それはそうか。何にせよとりあえずパーシーに質問状を書き、とりあえずリリーだけは返してもらわなければ」

 困惑しつつも父上はそう言って自室に戻っていきます。
 状況が呑み込めないながらもするべきことは思いついたようで、とりあえずそれをこなすようです。



 再び一人残された私は途方に暮れます。
 婚約者が突然訳の分からないことを言いだして妹を攫っていった場合どうしたらいいのでしょうか。恐らくこれまでになかったことなので私には分かりません。

 が、そこで私はリリーから精霊を取り返そうと思っていたことを思い出します。
 リリーは普段自室に精霊を保管しているので、不意打ちのようなパーシーの誘拐により精霊を持ち出せないまま連れていかれたのでしょう。

 もしあの場面で「精霊を部屋に置き忘れた」などと言えば私が「あの精霊は私のです」と主張し、パーシーに真相がばれると思って言い出せなかったのかもしれません。

 しかも屋敷の中は今のパーシーの人攫いまがいの行為で大騒ぎになっており、不在になったリリーの部屋に入ったところで誰も気にしないでしょう。
 ということは今は絶好のチャンスです。そう思い至った私は早速リリーの部屋に向かったのでした。
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