婚約者が選んだのは私から魔力を盗んだ妹でした

今川幸乃

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もやもや

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 その後私は精霊を奪還すると何食わぬ顔で自室にいて魔術の本を読んでいました。
 それからしばらくして、ドアがノックされ、メイドが「ご主人様がお呼びです」と伝えてくれます。

 それを聞いて私は父上に部屋に向かいました。
 すると、そこで父上は頭を抱えて待っています。隣には母上もしかめっつらで待っていました。

「これはまずいことになった。とりあえずテイラー伯爵に今回のことがどういうつもりか問い合わせたのだが、『事態を確認中』などという時間稼ぎのような答えが返ってきた。きっと向こうとしても息子がこんなことをしてしまった以上どうすれば一番ダメージが小さくなるのかを考えているのだろう」
「なるほど」

 確かに私だって急に息子が「助けてきました」と他家のご令嬢を誘拐してきたらどうしたらいいか分からないでしょう。もちろん本当のことを言って謝るべきとは思いますが、テイラー伯爵はどうにか言い訳を探しているのかもしれません。

「だが、それとは別に突然ミアとリリーの仲を訊いてきてな……そう言えばパーシーはお前がリリーを虐めていると言っていたから、それが本当なのかが知りたいのだろう」
「そんなことは全く」
「本当にそう?」

 私が答えると、母上が間髪入れずに反論してきます。

「え?」
「あなたは時々リリーに精霊を返すよう迫っていたと聞くし、本当はリリーを裏で脅していたんじゃないの?」
「そ、そんなことはしていません」

 否定しますが、父上は途端に私を疑惑の目で見つめてきます。

「そうはいっても、火のないところに煙は立たぬと言うし、何かはあったんじゃないか? そうでなければいくら何でもパーシーがあんなことをするはずがないだろう?」
「そ、それは……」

 確かに常識的に考えればそうなのかもしれませんが、そうでないことを説明するにはパーシーが常識が全く通じない人物であることを説明しないといけません。とはいえ私はパーシーとは婚約者ではあっても、儀礼的な付き合いしかしていないので彼の本当の性格まではよく分かりません。
 まさかパーシーの奇行がこんな形で私に不利になるとは思っていませんでした。

「ほら、お前がそうと思っていなくてもリリーがそれを怖がっていて、それがパーシーに変な風に伝わったのかもしれない」
「確かにリリーに精霊を返して欲しいとは何度か話しましたが……」
「またその件か」

 それを聞いて父上は母上はちらっと見ると、溜め息をつきます。明言してはいませんでしたが、父上もさすがにこのままずっとリリーが精霊を借りたままというのはどうかと思っている節があるようですが、母上の手前言い出すことが出来ないようです。

「とにかく、ミアがそれを謝るのよ」
「ええ……」

 私はこの件に関しては悪いことをしたつもりはありませんが。
 が、それを聞いて母上は声を荒げます。

「ええ、じゃないの! そんなこと言ってリリーが帰ってこなかったらどうするの!?」
「それは、単にパーシーが悪いのでは……」

 そもそも、ここからリリーが帰ってきたら精霊のことはどうなるのでしょうか。
 そんな思いも脳裏をよぎります。

「確かにうちのリリーを攫うなんて許せないわ! でもそれもあなたの婚約者なんだからあなたにも責任があるんじゃないの!?」

 個人的には不服ですが、言われてみれば婚約者の不始末は私にも一割ぐらいは責任があるかもしれません。

「確かに、パーシーに文句を言うのはリリーを取り返してからでも出来るからな。それに先に謝っておけば、世間への心証もいいだろう」

 心証も何も完全に向こうの先走りだと思いますが、確かにそう言われたらそうかもしれません。

「分かりました、そういうことならテイラー伯爵に釈明の手紙を書きます。それでいいでしょうか?」
「何よその態度、あなたのせいで……」
「まあまあ」

 母上はなおも不満なようですが、父上が間に入ってくれて事なきをえます。こうして私は不承不承ながら手紙を書くことになったのでした。とはいえ、やってはないことを誤ってまでリリーに帰ってきて欲しいとは全く思いません。そのためそこまで謝る気のない手紙が完成したのでした。
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