婚約者が選んだのは私から魔力を盗んだ妹でした

今川幸乃

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テイラー伯爵との会談 Ⅱ

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「あくまでパーシーが悪くないと主張するのであれば私としてもパーシーの手紙を公開する用意があります」

 そう言って私はじっと伯爵を睨みつけます。
 本当はそんなものはありませんが、伯爵にはないという確証はないはずです。いくらパーシーが「そんな不用意なことはしていない」と言ったとしても、パーシーの言うことに信憑性があるとは思えません。

 ですからここで私が本当のように言えば伯爵は信じざるを得ないはずです。
 最初伯爵は疑わし気に私を見返してきましたが、私の堂々とした視線にたじろいだ様子を見せます。

「……ほ、本当か?」

 見つめ合った末、伯爵は予想通り動揺の表情を見せました。

「はい。しかし私としてもテイラー伯爵家とこれ以上事を荒立てたくはありません。ですから出来れば使わずに済めばいいと思っています」
「だが、パーシーが血迷って婚約者の妹を攫ってきたなどという話が広まるのを許す訳にはいかない!」

 それはそれで勝手な理屈ですが、パーシーのおかげで私に精霊が返ってきたところもあるので、今回はパーシーの断罪よりは自分の今後の人生を良くすることを優先しようと思います。

「分かりました。でしたらパーシーがリリーを攫ったのはそういう理由で構いません。ただ、仮にどういう事情があれいきなり他家の令嬢を攫うのは許されないことです。そのため、反省の意をこめて婚約を取り消してくださるというのでいかがでしょう」

 パーシーの悪行を広めようとすればテイラー伯爵はどんな強硬手段で妨害してくるか分かりません。私としては婚約だけ取り消してもらえれば構わないので落としどころを用意します。

 そんな私の言葉に伯爵は考えこみました。
 そしてやがて、重々しく頷きます。

「それは確かに……分かった、そういうことであればその話は飲もう」
「受けていただきありがとうございます」
「はあ、さすがに婚約を押し通すのは無理か。ここで婚約を破棄されてしまえばもう二度とあれをもらってくれる者は現れないというのに……」

 そんな人を私に押し付けようとしていたとは。それを思うと背中から嫌な汗が噴き出しました。そういうことは本人の前では言わないで欲しいのですが。とはいえ、せっかく話がまとまったので私は今の言葉は聞かなかったことにして隣の父上を見ます。
 すると父上は咳払いして言いました。

「こほん、と言う訳で婚約破棄とリリーさえ返してもらえればパーシーについてはそれ以上不名誉になることは言わないことを約束しましょう」
「分かった」

 そう言ってテイラー伯爵は羊皮紙を取り出すと、契約を書面にしたため始めます。それを見て私は自分の出る幕はもう終わった、とほっと一息つくのでした。
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