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エピローグⅡ
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それから私はアルフが待っている部屋へと戻っていきました。
アルフは私が父上にアルフを婚約者にしたいと言ったということも知らずに私が部屋を出た時と同じ表情で待っていました。
「どうだった?」
「特には。普通に見送ってきた」
私は緊張しながら答えます。
「そっか。なら良かった」
先ほどは父上にあれほど強く言えたのに、アルフの顔を見ているとなぜか言葉がうまく出てきません。もしアルフに断られたら。色々助けはしたけど別にそういうつもりではなかった、とか、あんなことがあった直後に婚約者のことを考えるとかありえない、などと言われてしまったら。
そんなことを考えるとどうしても尻込みしてしまいます。
「どうした?」
そんな私の態度に気づいたのか、アルフは怪訝そうに尋ねます。
「い、いや、ちょっと言いたいことがあって」
「言いたいこと?」
私は一度息を吸って呼吸を整えます。
「あの、私の婚約者になって欲しい」
「え!?」
私の言葉を聞いてアルフは予想だにしなかった、という風に驚きました。
まさか先ほどまであれだけごたごたしていたのに直後にこんなことを言われるなんて思いもしなかったでしょう。
「ええ、もちろん急にこんなことを言われても困るというのは分かっているし、私たちの一存では決められないのは分かってる。だけど私の気持ちだけでも伝えておこうと思って」
「た、確かに僕は婚約者はまだ決まっていなかったけど……」
私の言葉を聞いたアルフは母上や父上に対する毅然とした態度とは打って変わって動揺しています。
「もちろん今すぐに返事が欲しいとも言わない。でもさっきアルフが私に好意を、もちろん純粋な好意だと思うけど、そういうのを抱いてくれていると知って私は嬉しかった。それに今回の件でアルフだったらどんなことがあっても自分が正しいと思うことが出来る人だと思う」
「そうか……そんな風に言われると照れるな」
私の言葉にアルフはそう言って頭をかきます。
「それが言いたかっただけ。突然こんなことを言ってごめん」
そう言って私はこの話題を収めようとします。
が、アルフは意外にもすぐに反論してきました。
「いや、そんな風に言わないでくれ」
「え?」
「僕もミアさんのことは素敵な人物だと思っている。だから、もちろん僕の好き嫌いだけで決められる訳じゃないとはいえ、出来るなら婚約者にはミアさんのような人を選べたらいいなとは思っていたんだ」
「本当?」
私はアルフの言葉に心から安心しました。
そう言ってもらえるととても嬉しいです。
するとアルフは私の目をしっかりと見つめて頷きました。
「ああ、そうだ」
「良かった、実は先ほど父上にも私の婚約者がアルフであったらいいなということを言ったの」
「そうだったのか! まさかそこまで行動が早いとはな」
「ごめん、アルフの意志を確認するより先に」
こればかりは我ながら少し衝動的だったなと思います。きっと、無意識のうちにアルフの気持ちを確認するのは怖いから後回しにしようと思ってしまったのでしょう。
もっとも、婚約を決めるには父上の同意が必要だからあながち間違いではないとも言えますが。
「そうだったのか。それで反応は?」
「悪くなかったと思う。だからアルフももし同意してくれるならノーランド侯爵に伝えて欲しい」
「分かった、父上はリリーに不信感を抱いているからミアさんにもそのイメージがあるかもしれないが、伝えてみるよ」
「ありがとう」
こうして私たちはお互いの気持ちを確認しあったのでした。
アルフは私が父上にアルフを婚約者にしたいと言ったということも知らずに私が部屋を出た時と同じ表情で待っていました。
「どうだった?」
「特には。普通に見送ってきた」
私は緊張しながら答えます。
「そっか。なら良かった」
先ほどは父上にあれほど強く言えたのに、アルフの顔を見ているとなぜか言葉がうまく出てきません。もしアルフに断られたら。色々助けはしたけど別にそういうつもりではなかった、とか、あんなことがあった直後に婚約者のことを考えるとかありえない、などと言われてしまったら。
そんなことを考えるとどうしても尻込みしてしまいます。
「どうした?」
そんな私の態度に気づいたのか、アルフは怪訝そうに尋ねます。
「い、いや、ちょっと言いたいことがあって」
「言いたいこと?」
私は一度息を吸って呼吸を整えます。
「あの、私の婚約者になって欲しい」
「え!?」
私の言葉を聞いてアルフは予想だにしなかった、という風に驚きました。
まさか先ほどまであれだけごたごたしていたのに直後にこんなことを言われるなんて思いもしなかったでしょう。
「ええ、もちろん急にこんなことを言われても困るというのは分かっているし、私たちの一存では決められないのは分かってる。だけど私の気持ちだけでも伝えておこうと思って」
「た、確かに僕は婚約者はまだ決まっていなかったけど……」
私の言葉を聞いたアルフは母上や父上に対する毅然とした態度とは打って変わって動揺しています。
「もちろん今すぐに返事が欲しいとも言わない。でもさっきアルフが私に好意を、もちろん純粋な好意だと思うけど、そういうのを抱いてくれていると知って私は嬉しかった。それに今回の件でアルフだったらどんなことがあっても自分が正しいと思うことが出来る人だと思う」
「そうか……そんな風に言われると照れるな」
私の言葉にアルフはそう言って頭をかきます。
「それが言いたかっただけ。突然こんなことを言ってごめん」
そう言って私はこの話題を収めようとします。
が、アルフは意外にもすぐに反論してきました。
「いや、そんな風に言わないでくれ」
「え?」
「僕もミアさんのことは素敵な人物だと思っている。だから、もちろん僕の好き嫌いだけで決められる訳じゃないとはいえ、出来るなら婚約者にはミアさんのような人を選べたらいいなとは思っていたんだ」
「本当?」
私はアルフの言葉に心から安心しました。
そう言ってもらえるととても嬉しいです。
するとアルフは私の目をしっかりと見つめて頷きました。
「ああ、そうだ」
「良かった、実は先ほど父上にも私の婚約者がアルフであったらいいなということを言ったの」
「そうだったのか! まさかそこまで行動が早いとはな」
「ごめん、アルフの意志を確認するより先に」
こればかりは我ながら少し衝動的だったなと思います。きっと、無意識のうちにアルフの気持ちを確認するのは怖いから後回しにしようと思ってしまったのでしょう。
もっとも、婚約を決めるには父上の同意が必要だからあながち間違いではないとも言えますが。
「そうだったのか。それで反応は?」
「悪くなかったと思う。だからアルフももし同意してくれるならノーランド侯爵に伝えて欲しい」
「分かった、父上はリリーに不信感を抱いているからミアさんにもそのイメージがあるかもしれないが、伝えてみるよ」
「ありがとう」
こうして私たちはお互いの気持ちを確認しあったのでした。
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