【完結】身分に見合う振る舞いをしていただけですが…ではもう止めますからどうか平穏に暮らさせて下さい。

まりぃべる

文字の大きさ
5 / 21

5. 思案

しおりを挟む
 あれから、感謝の会が終わるまでゆっくり休憩をしようとしていた御者に、屋敷に帰る旨を伝えると、慌てて馬車の用意をしてくれ、すぐに帰った。

 屋敷でも、私がすぐに帰ってきたので皆驚いていた。

 とりあえず部屋に戻ると私は言うと、オルガが手を貸してくれた。

「足、怪我をされたのですか!?とりあえず部屋にいきましょうね。ゆっくり歩いて下さいませ。」


 部屋に戻ると、衣装部屋へは行かず、すぐにドレスを脱いで、ドレッサーの傍のスツールに座った。
衣装部屋は続きの間だから行けばいいのだが、なんだかどっと疲れたのもあるし、足がジクジクと痛み出しているからだ。

 オルガは多分、聞きたい事がたくさんあったと思うがただ黙って、ゆったりとしたワンピースの着替えを持って来てくれた。

「ソファに座りますか?」

「いいえ。ベッドに入るわ。」

「体調も良くありませんか?」

「大丈夫よ。そうね、甘いミルクティーを持ってきてちょうだい。」

「畏まりました。少しお待ち下さいませ。」


 オルガが部屋を出て行き、部屋に一人になると先ほどまでの出来事がまた、頭に浮かんできた。

 私はこれからどうすればいいのかしら。

 ゲオルク様は、婚約破棄と言った。そうすると、私が王妃にならないということ。きっと、隣にいたジャネットの肩を抱いていたから、結婚相手にしたいのかもしれない。

 そういえばジャネット、私と同じような高級な生地のドレスだったわ。
しかも、ゲオルク様の瞳の色と髪色に合わせたような、青い布地に金糸のドレス。
ジャネットは赤い髪色だから、他のドレスの色の方が似合うだろうにと、その不自然な姿が目に焼き付いてしまっていた。

 ゲオルク様が先ほどもジャネットにベタベタと触っていたのを思い出して、なぜか不快に思った。

 別に、ゲオルク様が好きだったから嫌な気持ちになったわけではない。

 ジャネットが王妃教育をしっかり学び、無事に王妃になれるのかと考えた所で、なれないだろうと思ったからだ。
なんせ、ジャネットは侍女見習いの作法も覚えなかったほどだ。
王妃教育なんて、それより遥かに学ぶ量が多い。それを学ばずして、国母になってほしくなかった。
私が今までしてきた努力を、ジャネットが取って代わって果たして出来るのか。

 サンダイズ王国は、まだまだ貧しい人もたくさんいる。

 そういう人達を見て見ぬ振りをして、国が栄えたと言っていいのだろうかと思っていたし、貴族の限られた人だけ煌びやかな生活をしていいのかと疑問に思っていた。

 だからこそ私は、公爵令嬢として、国母となる身で出来る事をしていこうと思っていたのに。

 …でも婚約破棄された今は、もう、国母としては無理である。

 なら、違う道で生活水準を上げられないか?
私は今まで公爵令嬢としての責務を果たしてきた。うちは裕福でお金がある。だから、慈善事業に寄付をしてきた。

 だけれど、きっと、破棄された女に婚約を申し込む人はいないだろう。

 これからは、お金ではなく、今まで得た私の知識を必要とする人達に提供すれば、国の為にもなるでしょう。

 そこまで考えると、私は卒業したら修道院へ行こうという結論に至った。
あんな、人目を集めてしまった今、貴族社会へ出れば笑われると思った。
それよりも、併設されている孤児院や近所の人達に、知識の提供をし、国の貧しい人達の為に生涯を捧げましょう。
そうすれば、公爵令嬢としての振る舞いも、もうしなくて済むものね。

 私の考えがそのようにまとまった所で、オルガがノックして部屋に入ってきた。
しおりを挟む
感想 130

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約破棄はしたいけれど傍にいてほしいなんて言われましても、私は貴方の母親ではありません

すだもみぢ
恋愛
「彼女は私のことを好きなんだって。だから君とは婚約解消しようと思う」 他の女性に言い寄られて舞い上がり、10年続いた婚約を一方的に解消してきた王太子。 今まで婚約者だと思うからこそ、彼のフォローもアドバイスもしていたけれど、まだそれを当たり前のように求めてくる彼に驚けば。 「君とは結婚しないけれど、ずっと私の側にいて助けてくれるんだろう?」 貴方は私を母親だとでも思っているのでしょうか。正直気持ち悪いんですけれど。 王妃様も「あの子のためを思って我慢して」としか言わないし。 あんな男となんてもう結婚したくないから我慢するのも嫌だし、非難されるのもイヤ。なんとかうまいこと立ち回って幸せになるんだから!

【完結】離婚しましょうね。だって貴方は貴族ですから

すだもみぢ
恋愛
伯爵のトーマスは「貴族なのだから」が口癖の夫。 伯爵家に嫁いできた、子爵家の娘のローデリアは結婚してから彼から貴族の心得なるものをみっちりと教わった。 「貴族の妻として夫を支えて、家のために働きなさい」 「貴族の妻として慎みある行動をとりなさい」 しかし俺は男だから何をしても許されると、彼自身は趣味に明け暮れ、いつしか滅多に帰ってこなくなる。 微笑んで、全てを受け入れて従ってきたローデリア。 ある日帰ってきた夫に、貞淑な妻はいつもの笑顔で切りだした。 「貴族ですから離婚しましょう。貴族ですから受け入れますよね?」 彼の望み通りに動いているはずの妻の無意識で無邪気な逆襲が始まる。 ※意図的なスカッはありません。あくまでも本人は無意識でやってます。

覚えてないけど婚約者に嫌われて首を吊ってたみたいです。

kieiku
恋愛
いやいやいやいや、死ぬ前に婚約破棄! 婚約破棄しよう!

誤解なんですが。~とある婚約破棄の場で~

舘野寧依
恋愛
「王太子デニス・ハイランダーは、罪人メリッサ・モスカートとの婚約を破棄し、新たにキャロルと婚約する!」 わたくしはメリッサ、ここマーベリン王国の未来の王妃と目されている者です。 ところが、この国の貴族どころか、各国のお偉方が招待された立太式にて、馬鹿四人と見たこともない少女がとんでもないことをやらかしてくれました。 驚きすぎて声も出ないか? はい、本当にびっくりしました。あなた達が馬鹿すぎて。 ※話自体は三人称で進みます。

とある令嬢の勘違いに巻き込まれて、想いを寄せていた子息と婚約を解消することになったのですが、そこにも勘違いが潜んでいたようです

珠宮さくら
恋愛
ジュリア・レオミュールは、想いを寄せている子息と婚約したことを両親に聞いたはずが、その子息と婚約したと触れ回っている令嬢がいて混乱することになった。 令嬢の勘違いだと誰もが思っていたが、その勘違いの始まりが最近ではなかったことに気づいたのは、ジュリアだけだった。

【完結】私から全てを奪った妹は、地獄を見るようです。

凛 伊緒
恋愛
「サリーエ。すまないが、君との婚約を破棄させてもらう!」 リデイトリア公爵家が開催した、パーティー。 その最中、私の婚約者ガイディアス・リデイトリア様が他の貴族の方々の前でそう宣言した。 当然、注目は私達に向く。 ガイディアス様の隣には、私の実の妹がいた── 「私はシファナと共にありたい。」 「分かりました……どうぞお幸せに。私は先に帰らせていただきますわ。…失礼致します。」 (私からどれだけ奪えば、気が済むのだろう……。) 妹に宝石類を、服を、婚約者を……全てを奪われたサリーエ。 しかし彼女は、妹を最後まで責めなかった。 そんな地獄のような日々を送ってきたサリーエは、とある人との出会いにより、運命が大きく変わっていく。 それとは逆に、妹は── ※全11話構成です。 ※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、ネタバレの嫌な方はコメント欄を見ないようにしていただければと思います……。

熱烈な恋がしたいなら、勝手にしてください。私は、堅実に生きさせてもらいますので。

木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるアルネアには、婚約者がいた。 しかし、ある日その彼から婚約破棄を告げられてしまう。なんでも、アルネアの妹と婚約したいらしいのだ。 「熱烈な恋がしたいなら、勝手にしてください」 身勝手な恋愛をする二人に対して、アルネアは呆れていた。 堅実に生きたい彼女にとって、二人の行いは信じられないものだったのである。 数日後、アルネアの元にある知らせが届いた。 妹と元婚約者の間で、何か事件が起こったらしいのだ。

【完結】婚約破棄したのに殿下が何かと絡んでくる

冬月光輝
恋愛
「お前とは婚約破棄したけど友達でいたい」 第三王子のカールと五歳の頃から婚約していた公爵令嬢のシーラ。 しかし、カールは妖艶で美しいと評判の子爵家の次女マリーナに夢中になり強引に婚約破棄して、彼女を新たな婚約者にした。 カールとシーラは幼いときより交流があるので気心の知れた関係でカールは彼女に何でも相談していた。 カールは婚約破棄した後も当然のようにシーラを相談があると毎日のように訪ねる。

処理中です...