【完結】身分に見合う振る舞いをしていただけですが…ではもう止めますからどうか平穏に暮らさせて下さい。

まりぃべる

文字の大きさ
14 / 21

14. 贈り物

しおりを挟む
「オリーフィア様、お花が届きましたよ。」

 ゲオルク様がやってきた日の夕方。

 オルガが、そう言って私の部屋にやってきました。
オルガは両手に抱え切れないほどのとても綺麗な花束。

「ありがとう。どなたから?」

「ライナス様からです。」

「まぁ!」

 それは、淡い青色を基調とした、数種類のカンパニュラの花束だった。

「懐かしいですわね。」

「オルガ、覚えているの?」

「はい。カンパニュラは、ライナス様の領地にたくさん自生されているのですよね?それで、オリーフィア様が小さい頃遊びに行った時に何度もいただいて。」

「そうよ。最後に、ライナス様が言って下さったの。公爵令嬢としてしっかりとした振る舞いをしていきなさいと。」

「ライナス様は、きっと覚えていらっしゃるのですね。昔の、オリーフィア様の無邪気だった頃の事も。」

「やめて。…でも、嬉しいわ。飾っておいてね。」

「もちろんです。カンパニュラの花言葉は、誠実な愛ですよ。」

「そ、そう…。ライナス様がご存じかなんて…」

「意味も無く贈り物をされるでしょうかね。ま、それでも嬉しい事には変わりませんね。では、生けて参りますね。」

 オルガは部屋を去って行った。

 本当、懐かしいわ。あの時…。

ーーーー

 何度も行っているライナス様の領地。その日遊びに行くのは、前々から決まっていた。

 でもその数日前に、私の婚約の話を聞かされて沈んだ気持ちのまま、向かった。
案の定、両親にもこの領地へ来るのはこれで最後だと言われた。
婚約者がいる身で、他の男性の領地へ泊まりがけで遊びに行くなんて例え家族ぐるみでも世間体が悪いですものね。

 ライナス様は、私の婚約の話を知っていた。知っていて、私が一人でいる時に話しかけにきてくれた。
まぁ、正確には、拗ねて庭園から動かなかった私を探して、連れ戻しに来てくれたみたい。

「どうした?」

「私、王太子のゲオルク様と婚約するの。」

「なんだ。嫌なのか。」

「私、ライナス様が良かった。以前言ってくれたじゃない。笑いながら、お前俺と結婚するかって。約束したじゃない。それなのにゲオルク様と結婚なんて…。でも、仕方ないのよね…。」

「………。」

「分かっているの。自分が公爵令嬢であり、国を支えていかなければならない事も。でも…。」

「…そうだぞ!国を支えている、偉い連中が未来の王妃はオリーフィアであるべきだと決めたんだ。もっと自分を誇れ!」

「分かってるわ…。分かって…」

「公爵令嬢が人前で泣くな。公爵令嬢とはいついかなる時も毅然としていなければ模範とならない。ゲオルクもお前が支えてやるんだ。…俺も公爵家の一員だ。国を支えるべき立場にある。俺も、オリーフィアの力になれるよう、ゲオルクの側近になってやる。ほら、見てみろ。この花はカンパニュラというんだ。清楚で凛とした雰囲気はオリーフィアにそっくりだ。これをお前にやるから、泣きやめ。立場は違うが共に国を支えていこう。」

ーーーーー

 そうね。あの時から私は、公爵令嬢として国を支えていこうと決めたんだったわ。
でも、もうそれもしなくていいって事だものね。

 あぁ、このカンパニュラを見ているとライナス様のお屋敷の庭園を思い出すわ。
あの頃は良かった…。
何も考えず、お兄様とライナス様の後を追っかけて遊び回っていた日々。

 私はどうすればいいのか。その花を見つめながら、自分の気持ちに正直になろうかどうしようか、いつまでも考えていた。
しおりを挟む
感想 130

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約破棄はしたいけれど傍にいてほしいなんて言われましても、私は貴方の母親ではありません

すだもみぢ
恋愛
「彼女は私のことを好きなんだって。だから君とは婚約解消しようと思う」 他の女性に言い寄られて舞い上がり、10年続いた婚約を一方的に解消してきた王太子。 今まで婚約者だと思うからこそ、彼のフォローもアドバイスもしていたけれど、まだそれを当たり前のように求めてくる彼に驚けば。 「君とは結婚しないけれど、ずっと私の側にいて助けてくれるんだろう?」 貴方は私を母親だとでも思っているのでしょうか。正直気持ち悪いんですけれど。 王妃様も「あの子のためを思って我慢して」としか言わないし。 あんな男となんてもう結婚したくないから我慢するのも嫌だし、非難されるのもイヤ。なんとかうまいこと立ち回って幸せになるんだから!

【完結】離婚しましょうね。だって貴方は貴族ですから

すだもみぢ
恋愛
伯爵のトーマスは「貴族なのだから」が口癖の夫。 伯爵家に嫁いできた、子爵家の娘のローデリアは結婚してから彼から貴族の心得なるものをみっちりと教わった。 「貴族の妻として夫を支えて、家のために働きなさい」 「貴族の妻として慎みある行動をとりなさい」 しかし俺は男だから何をしても許されると、彼自身は趣味に明け暮れ、いつしか滅多に帰ってこなくなる。 微笑んで、全てを受け入れて従ってきたローデリア。 ある日帰ってきた夫に、貞淑な妻はいつもの笑顔で切りだした。 「貴族ですから離婚しましょう。貴族ですから受け入れますよね?」 彼の望み通りに動いているはずの妻の無意識で無邪気な逆襲が始まる。 ※意図的なスカッはありません。あくまでも本人は無意識でやってます。

覚えてないけど婚約者に嫌われて首を吊ってたみたいです。

kieiku
恋愛
いやいやいやいや、死ぬ前に婚約破棄! 婚約破棄しよう!

誤解なんですが。~とある婚約破棄の場で~

舘野寧依
恋愛
「王太子デニス・ハイランダーは、罪人メリッサ・モスカートとの婚約を破棄し、新たにキャロルと婚約する!」 わたくしはメリッサ、ここマーベリン王国の未来の王妃と目されている者です。 ところが、この国の貴族どころか、各国のお偉方が招待された立太式にて、馬鹿四人と見たこともない少女がとんでもないことをやらかしてくれました。 驚きすぎて声も出ないか? はい、本当にびっくりしました。あなた達が馬鹿すぎて。 ※話自体は三人称で進みます。

とある令嬢の勘違いに巻き込まれて、想いを寄せていた子息と婚約を解消することになったのですが、そこにも勘違いが潜んでいたようです

珠宮さくら
恋愛
ジュリア・レオミュールは、想いを寄せている子息と婚約したことを両親に聞いたはずが、その子息と婚約したと触れ回っている令嬢がいて混乱することになった。 令嬢の勘違いだと誰もが思っていたが、その勘違いの始まりが最近ではなかったことに気づいたのは、ジュリアだけだった。

【完結】私から全てを奪った妹は、地獄を見るようです。

凛 伊緒
恋愛
「サリーエ。すまないが、君との婚約を破棄させてもらう!」 リデイトリア公爵家が開催した、パーティー。 その最中、私の婚約者ガイディアス・リデイトリア様が他の貴族の方々の前でそう宣言した。 当然、注目は私達に向く。 ガイディアス様の隣には、私の実の妹がいた── 「私はシファナと共にありたい。」 「分かりました……どうぞお幸せに。私は先に帰らせていただきますわ。…失礼致します。」 (私からどれだけ奪えば、気が済むのだろう……。) 妹に宝石類を、服を、婚約者を……全てを奪われたサリーエ。 しかし彼女は、妹を最後まで責めなかった。 そんな地獄のような日々を送ってきたサリーエは、とある人との出会いにより、運命が大きく変わっていく。 それとは逆に、妹は── ※全11話構成です。 ※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、ネタバレの嫌な方はコメント欄を見ないようにしていただければと思います……。

熱烈な恋がしたいなら、勝手にしてください。私は、堅実に生きさせてもらいますので。

木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるアルネアには、婚約者がいた。 しかし、ある日その彼から婚約破棄を告げられてしまう。なんでも、アルネアの妹と婚約したいらしいのだ。 「熱烈な恋がしたいなら、勝手にしてください」 身勝手な恋愛をする二人に対して、アルネアは呆れていた。 堅実に生きたい彼女にとって、二人の行いは信じられないものだったのである。 数日後、アルネアの元にある知らせが届いた。 妹と元婚約者の間で、何か事件が起こったらしいのだ。

【完結】婚約破棄したのに殿下が何かと絡んでくる

冬月光輝
恋愛
「お前とは婚約破棄したけど友達でいたい」 第三王子のカールと五歳の頃から婚約していた公爵令嬢のシーラ。 しかし、カールは妖艶で美しいと評判の子爵家の次女マリーナに夢中になり強引に婚約破棄して、彼女を新たな婚約者にした。 カールとシーラは幼いときより交流があるので気心の知れた関係でカールは彼女に何でも相談していた。 カールは婚約破棄した後も当然のようにシーラを相談があると毎日のように訪ねる。

処理中です...