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10. それから八年後
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十五歳になる年。
フレドリカは最終学年になり、二週間ほど経ったある夜のこと。
「シェスティン、あなた明日、私の代わりに学校行っていいわよ。」
「!」
「あら!フレドリカ、優しいじゃない!」
それまで結局、一度も代わりに学校へ行っていいとは言わなかったのに、最終学年になっていきなりフレドリカは言ってきた為にシェスティンは驚いてフォークを落としそうになるのを慌てて力を込めた。
「えと…明日?」
フレドリカが何か言う時はいつも急だなと思ったシェスティンは、フレドリカへと疑問を投げかける。
「ええ。明日。ちょうどいい事に、明日は制服を着なくても良いから行きやすいでしょ?シェスティン、予定はもちろん無いわよね?」
フレドリカは、さも当然のようにそうシェスティンへと告げる。シェスティンは学校へも行かず毎日好きな事をして怠けていると思っているのだ。
「ま、まぁ…」
シェスティンはと言えば、学校こそ通っていないが毎日忙しくこなしていた。
バルプロからフレンスブルグ語を習っていたし、王都へ行っては街の人達の生活を見学したり、教会へ行って孤児院の手伝いをしていた。
書籍店の店主とはすでに顔なじみになり、いつでも来ていいと言われ、立ち読みも少しなら許可をされてもいた。そのお礼にと、シェスティンがお菓子を持参するので可愛がってくれているのかもしれないとコーラとディックは思っている。
(明日は王都へ行こうかと思っていたのだけれど仕方ないわね。)
「じゃあ決まりね!明日、よろしくね!私、何しようかしら!」
「あら。じゃあ明日、たまには私と一緒に過ごしましょうよ、フレドリカ!」
「え?お母様、よろしいの?じゃあ午後からお願いします!午前中はゆっくりしたいの。」
「うふふふ。いいわよ。楽しみね!」
(…でも、そんなに上手くいくのかしら。)
☆★
夕食が終わったシェスティンは、コーラへと早速確認する。フレドリカに学校の事を聞こうと思ったのだが、早々に部屋に戻ると言われ、明日は授業じゃないから大丈夫と念を押されたからだ。
「ねぇ、コーラ。授業じゃないから大丈夫ってどういう事かしら?」
「そうですねぇ…私にも分かり兼ねますから、ロリに聞いて参ります。」
「ええ。お願いするわ。私は本を読んでいるから、分かったら教えてくれる?」
「承知致しました。」
部屋へと帰ってきたコーラは早速、シェスティンへと報告をした。
「明日は、鑑賞会だそうです。最終学年になると、教養を身につける為に文化や芸術に触れる校外授業をやるそうで、どうやらフレドリカ様は苦手であり面倒だからシェスティン様に行ってもらおうとしたのだそうですよ。
休む事も考えたそうですが、鑑賞会に出席する事は、卒業にも関わるそうで休めないとの事です。」
「まぁ!楽しそうだわ!フレドリカは、そんな楽しそうなものに行きたくないなんて勿体ないわね!」
「鑑賞会は眠くなりそうだと言っていたそうですよ。
今日は珍しく、早く一人になりたいと言ってロリもエッベも部屋から下がったそうです。」
「そうなの?でも、入れ替わりがばれてしまって怒られやしないかしら。」
「どうでしょうか。大丈夫ではないですかね。ドレスアップをして会場に直接向かい、現地解散ですから、そこまで気負わなくてもよさそうですよ。ドレスアップするのですから、普段の制服で通う雰囲気とは違っていても違和感ないでしょう。」
「そう…それもそうね!それで、明日は何の鑑賞会なの?」
「それが…侍女は学校の中に入れませんから、授業内容までは知らされていないそうで……。家族宛てにお便りがあるそうなのですが、フレドリカ様は自分に関係ないからと紛失してしまったようです。」
「え!?そんな…。」
「あ、でも明日は王都のオペラハウスだそうですから、オペラですね。授業なので今公演されているのと同じ内容なのかまでは分かりませんが、子供への授業の一環なのでそこまで難しいものではないと思いますよ。」
「まぁそうでしょうけれど…でも、あぁいうのって、どんな服装で行けば良いのかしら?」
「そうですね。ドレスでしょうか。
どちらにしましょうね。授業でありますから、あまり派手ではないものを着ていったような…でも私が通っていた時とは年数が経っていますけれど、学生ですからね…尤も、シェスティン様は派手なものはありませんから、どちらでも良さそうですけれども。」
「あ、そういえばコーラも学校に通っていたの?」
「はい。一応学ばせてもらいました。その時と演目が同じでしたら、私の時は恋愛の物語でしたが、どうでしょうね。」
「そうだったのね!じゃあコーラに任せるわ。」
「承知致しました。そろそろお休みになられますか?明日は疲れるかもしれませんよ。」
「そう?そうね。オペラなんて、普通なら大人になってから行く場所だもの。緊張するものね!」
シェスティンはワクワクしながら明日を楽しみにしていた。
フレドリカは最終学年になり、二週間ほど経ったある夜のこと。
「シェスティン、あなた明日、私の代わりに学校行っていいわよ。」
「!」
「あら!フレドリカ、優しいじゃない!」
それまで結局、一度も代わりに学校へ行っていいとは言わなかったのに、最終学年になっていきなりフレドリカは言ってきた為にシェスティンは驚いてフォークを落としそうになるのを慌てて力を込めた。
「えと…明日?」
フレドリカが何か言う時はいつも急だなと思ったシェスティンは、フレドリカへと疑問を投げかける。
「ええ。明日。ちょうどいい事に、明日は制服を着なくても良いから行きやすいでしょ?シェスティン、予定はもちろん無いわよね?」
フレドリカは、さも当然のようにそうシェスティンへと告げる。シェスティンは学校へも行かず毎日好きな事をして怠けていると思っているのだ。
「ま、まぁ…」
シェスティンはと言えば、学校こそ通っていないが毎日忙しくこなしていた。
バルプロからフレンスブルグ語を習っていたし、王都へ行っては街の人達の生活を見学したり、教会へ行って孤児院の手伝いをしていた。
書籍店の店主とはすでに顔なじみになり、いつでも来ていいと言われ、立ち読みも少しなら許可をされてもいた。そのお礼にと、シェスティンがお菓子を持参するので可愛がってくれているのかもしれないとコーラとディックは思っている。
(明日は王都へ行こうかと思っていたのだけれど仕方ないわね。)
「じゃあ決まりね!明日、よろしくね!私、何しようかしら!」
「あら。じゃあ明日、たまには私と一緒に過ごしましょうよ、フレドリカ!」
「え?お母様、よろしいの?じゃあ午後からお願いします!午前中はゆっくりしたいの。」
「うふふふ。いいわよ。楽しみね!」
(…でも、そんなに上手くいくのかしら。)
☆★
夕食が終わったシェスティンは、コーラへと早速確認する。フレドリカに学校の事を聞こうと思ったのだが、早々に部屋に戻ると言われ、明日は授業じゃないから大丈夫と念を押されたからだ。
「ねぇ、コーラ。授業じゃないから大丈夫ってどういう事かしら?」
「そうですねぇ…私にも分かり兼ねますから、ロリに聞いて参ります。」
「ええ。お願いするわ。私は本を読んでいるから、分かったら教えてくれる?」
「承知致しました。」
部屋へと帰ってきたコーラは早速、シェスティンへと報告をした。
「明日は、鑑賞会だそうです。最終学年になると、教養を身につける為に文化や芸術に触れる校外授業をやるそうで、どうやらフレドリカ様は苦手であり面倒だからシェスティン様に行ってもらおうとしたのだそうですよ。
休む事も考えたそうですが、鑑賞会に出席する事は、卒業にも関わるそうで休めないとの事です。」
「まぁ!楽しそうだわ!フレドリカは、そんな楽しそうなものに行きたくないなんて勿体ないわね!」
「鑑賞会は眠くなりそうだと言っていたそうですよ。
今日は珍しく、早く一人になりたいと言ってロリもエッベも部屋から下がったそうです。」
「そうなの?でも、入れ替わりがばれてしまって怒られやしないかしら。」
「どうでしょうか。大丈夫ではないですかね。ドレスアップをして会場に直接向かい、現地解散ですから、そこまで気負わなくてもよさそうですよ。ドレスアップするのですから、普段の制服で通う雰囲気とは違っていても違和感ないでしょう。」
「そう…それもそうね!それで、明日は何の鑑賞会なの?」
「それが…侍女は学校の中に入れませんから、授業内容までは知らされていないそうで……。家族宛てにお便りがあるそうなのですが、フレドリカ様は自分に関係ないからと紛失してしまったようです。」
「え!?そんな…。」
「あ、でも明日は王都のオペラハウスだそうですから、オペラですね。授業なので今公演されているのと同じ内容なのかまでは分かりませんが、子供への授業の一環なのでそこまで難しいものではないと思いますよ。」
「まぁそうでしょうけれど…でも、あぁいうのって、どんな服装で行けば良いのかしら?」
「そうですね。ドレスでしょうか。
どちらにしましょうね。授業でありますから、あまり派手ではないものを着ていったような…でも私が通っていた時とは年数が経っていますけれど、学生ですからね…尤も、シェスティン様は派手なものはありませんから、どちらでも良さそうですけれども。」
「あ、そういえばコーラも学校に通っていたの?」
「はい。一応学ばせてもらいました。その時と演目が同じでしたら、私の時は恋愛の物語でしたが、どうでしょうね。」
「そうだったのね!じゃあコーラに任せるわ。」
「承知致しました。そろそろお休みになられますか?明日は疲れるかもしれませんよ。」
「そう?そうね。オペラなんて、普通なら大人になってから行く場所だもの。緊張するものね!」
シェスティンはワクワクしながら明日を楽しみにしていた。
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