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17. 美術館での出来事
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アロルドから、夕食時に王宮についての話を聞いた二日後。
シェスティンは、またフレドリカの代わりに校外授業に来ていた。今日は、王都から少し離れた王立美術館である。その為、いつもよりは少し遅めに集合であった。
また、明日は学校が休みの為、近くの高級ホテルで泊まって帰る生徒もいる。
「今日は、彫刻や、版画、歴史的建造物や、コインや貨幣などが飾ってあるのでしょう?」
と、シェスティンはコーラへ問いかけた。
「らしいですねぇ。来週、王宮で歴史的なものをお披露目するそうですし、少しでも知識を持って欲しいと言う事ではないでしょうか。古い歴史的な建造物など、王都ではなく広い土地があるこの辺りの方が披露しやすいからと、わざわざ移築して飾られているものもあるそうですよ。
私は、校外学習でここに来たことありませんから。」
コーラは子爵家の娘である。基礎学校にも通っていて、今までシェスティンと行った校外授業はほとんどコーラも通っていた時に行った事があった場所ばかりであった。
しかし今回の王立美術館は、王都から少し離れている為かコーラは来た事がないのだと言った。
「ですから、私も興味がありますよ。シェスティン様の影響で、どの時代の建造物かとか考えるのが面白いと思い始めましたから。」
コーラはずいぶんと熱が入った言い方をした。
「うふふふ。コーラもそうなのね。じゃあ今日も楽しみましょうね。あ!」
馬車から降り、入り口に向かっているとシェスティンは目の前でこちらを見ている人物を見つけた。
「…!おはよう!ねぇ、今日はホテルに泊まるの?」
「?
ビルギッタ、おはよう!いいえ?帰るわよ。えと、泊まって?」
シェスティンは、ビルギッタがなんて言いかけたか分からなかったが特に聞き返す事はせずに返事をした。
シェスティンはフレドリカの代わりに来ていた為に、泊まって帰る人がいる事を知らなかったのだ。
「あぁ…いいえ、何でもないの。そうなのね、じゃあ私も帰ろうかしら。」
「やぁ、おはよう。何の話だい?」
「!」
「あらランナル。今日も早いのね。もしかして、前日入り?あなたに限ってそんな事はないか。」
「前日入りではないけれど、朝太陽が顔を出す前に出発してきたのは事実だね。」
「ま!そんなに楽しみだったの?」
「う…ま、まぁそんなところさ。それよりも、さっき帰るとかなんとか…二人共にこの辺りのホテルにでも泊まるのかと思ったよ。」
「あー…し…えーと、しょうがないのよ!フレドリカは知らなかったみたい。明日は休みだからここで一泊する人もいるって事をね!私はどちらでも対応出来るようにホテルを予約したのだけれど、フレドリカがいないのなら帰ろうかしら、と言っていたのよ。」
「あぁそうだったんだね。王都からは少し距離があるからね。だが、帰れない距離でもない。だから、ホテルに泊まらず帰る生徒もいるからね。俺も帰るし。」
「あなたはそうでしょうね。」
「枕が変わると寝られないんだよ。…冗談だよ、冗談!
あ、一緒に回ってもいいだろうか?」
「だそうよ。フレドリカ、どうする?」
「え!?…そうね、ビルギッタと二人でも楽しいでしょうけれど、ランナルも一緒でも更に楽しいかもしれないわよね。
でも、ビルギッタは?」
「あら、私はフレドリカと二人がいいに決まってるわ!でも、あなたならそう言うと思ったもの。いいわよ、三人で行きましょうか。」
「お、ありがとう!二人とも!」
そう言った三人は、入り口の受付を済ませて中に入った。ここのエントランスも、王立芸術館と同じように吹き抜けになっていた。違うのは、天井には明かり取りのようにくり抜かれた窓がたくさん付いていて、とても明るかった。
「すご…!」
ビルギッタは天井を見上げ、目をキラキラと輝かせている。
「素晴らしい…」
ランナルも、光に当たって眩しいと言わんばかりに手を顔の上に充てて光を遮っている。
「綺麗…!」
シェスティンは、しばらく天井の窓はどういう造りなのか、と考えていた。
すると、次に入り口から入ってきた人物が、声を掛けてきた。
「あれ?誰かと思ったら…ランナルじゃないか。」
「あぁ、ロルフか。なんだよ、何かあるのか。」
「あら、ロルフ。あなたも早いのねぇ。何?何かあるの?」
(この方はどなたかしら…今まで特にお話した事もなかったわ。準備学校で一緒だったのかもしれないけれど、覚えていないし…。)
青味掛かった黒色の髪を長めに伸ばした、ロルフと言われた男性を見る。ランナルより少しだけ低いが、シェスティンよりも頭二つほど高く、同じく整った顔立ちをしている。
けれど、なんとなくランナルもビルギッタも、シェスティンを庇うような形でロルフへと向き合い、刺々しい言葉を発しているように感じた。
「………いや?ふーん…。僕も、フレドリカと一緒に回りたいと思ったのだけれど、どうやら今日は止めた方が良さそうだね。
フレドリカ、また一緒に過ごそうね!」
「え?えっと…」
「ダメよ!校外授業の時には、彼女は私と過ごすのですからね!」
「ははっ!手厳しいなぁ…では来週の王宮へは行くかい?フレドリカ。」
「ええ…多分。」
「そう?じゃあそれを楽しみにしているよ!」
そう言ったロルフは、一人すたすたと先を進んで行った。
(ロルフ様、楽しみって…どういう事?)
シェスティンは首を傾げつつも、まぁいいかと思い、今日はどんな素敵な物が見えるかなとそれを考えていた。
シェスティンは、またフレドリカの代わりに校外授業に来ていた。今日は、王都から少し離れた王立美術館である。その為、いつもよりは少し遅めに集合であった。
また、明日は学校が休みの為、近くの高級ホテルで泊まって帰る生徒もいる。
「今日は、彫刻や、版画、歴史的建造物や、コインや貨幣などが飾ってあるのでしょう?」
と、シェスティンはコーラへ問いかけた。
「らしいですねぇ。来週、王宮で歴史的なものをお披露目するそうですし、少しでも知識を持って欲しいと言う事ではないでしょうか。古い歴史的な建造物など、王都ではなく広い土地があるこの辺りの方が披露しやすいからと、わざわざ移築して飾られているものもあるそうですよ。
私は、校外学習でここに来たことありませんから。」
コーラは子爵家の娘である。基礎学校にも通っていて、今までシェスティンと行った校外授業はほとんどコーラも通っていた時に行った事があった場所ばかりであった。
しかし今回の王立美術館は、王都から少し離れている為かコーラは来た事がないのだと言った。
「ですから、私も興味がありますよ。シェスティン様の影響で、どの時代の建造物かとか考えるのが面白いと思い始めましたから。」
コーラはずいぶんと熱が入った言い方をした。
「うふふふ。コーラもそうなのね。じゃあ今日も楽しみましょうね。あ!」
馬車から降り、入り口に向かっているとシェスティンは目の前でこちらを見ている人物を見つけた。
「…!おはよう!ねぇ、今日はホテルに泊まるの?」
「?
ビルギッタ、おはよう!いいえ?帰るわよ。えと、泊まって?」
シェスティンは、ビルギッタがなんて言いかけたか分からなかったが特に聞き返す事はせずに返事をした。
シェスティンはフレドリカの代わりに来ていた為に、泊まって帰る人がいる事を知らなかったのだ。
「あぁ…いいえ、何でもないの。そうなのね、じゃあ私も帰ろうかしら。」
「やぁ、おはよう。何の話だい?」
「!」
「あらランナル。今日も早いのね。もしかして、前日入り?あなたに限ってそんな事はないか。」
「前日入りではないけれど、朝太陽が顔を出す前に出発してきたのは事実だね。」
「ま!そんなに楽しみだったの?」
「う…ま、まぁそんなところさ。それよりも、さっき帰るとかなんとか…二人共にこの辺りのホテルにでも泊まるのかと思ったよ。」
「あー…し…えーと、しょうがないのよ!フレドリカは知らなかったみたい。明日は休みだからここで一泊する人もいるって事をね!私はどちらでも対応出来るようにホテルを予約したのだけれど、フレドリカがいないのなら帰ろうかしら、と言っていたのよ。」
「あぁそうだったんだね。王都からは少し距離があるからね。だが、帰れない距離でもない。だから、ホテルに泊まらず帰る生徒もいるからね。俺も帰るし。」
「あなたはそうでしょうね。」
「枕が変わると寝られないんだよ。…冗談だよ、冗談!
あ、一緒に回ってもいいだろうか?」
「だそうよ。フレドリカ、どうする?」
「え!?…そうね、ビルギッタと二人でも楽しいでしょうけれど、ランナルも一緒でも更に楽しいかもしれないわよね。
でも、ビルギッタは?」
「あら、私はフレドリカと二人がいいに決まってるわ!でも、あなたならそう言うと思ったもの。いいわよ、三人で行きましょうか。」
「お、ありがとう!二人とも!」
そう言った三人は、入り口の受付を済ませて中に入った。ここのエントランスも、王立芸術館と同じように吹き抜けになっていた。違うのは、天井には明かり取りのようにくり抜かれた窓がたくさん付いていて、とても明るかった。
「すご…!」
ビルギッタは天井を見上げ、目をキラキラと輝かせている。
「素晴らしい…」
ランナルも、光に当たって眩しいと言わんばかりに手を顔の上に充てて光を遮っている。
「綺麗…!」
シェスティンは、しばらく天井の窓はどういう造りなのか、と考えていた。
すると、次に入り口から入ってきた人物が、声を掛けてきた。
「あれ?誰かと思ったら…ランナルじゃないか。」
「あぁ、ロルフか。なんだよ、何かあるのか。」
「あら、ロルフ。あなたも早いのねぇ。何?何かあるの?」
(この方はどなたかしら…今まで特にお話した事もなかったわ。準備学校で一緒だったのかもしれないけれど、覚えていないし…。)
青味掛かった黒色の髪を長めに伸ばした、ロルフと言われた男性を見る。ランナルより少しだけ低いが、シェスティンよりも頭二つほど高く、同じく整った顔立ちをしている。
けれど、なんとなくランナルもビルギッタも、シェスティンを庇うような形でロルフへと向き合い、刺々しい言葉を発しているように感じた。
「………いや?ふーん…。僕も、フレドリカと一緒に回りたいと思ったのだけれど、どうやら今日は止めた方が良さそうだね。
フレドリカ、また一緒に過ごそうね!」
「え?えっと…」
「ダメよ!校外授業の時には、彼女は私と過ごすのですからね!」
「ははっ!手厳しいなぁ…では来週の王宮へは行くかい?フレドリカ。」
「ええ…多分。」
「そう?じゃあそれを楽しみにしているよ!」
そう言ったロルフは、一人すたすたと先を進んで行った。
(ロルフ様、楽しみって…どういう事?)
シェスティンは首を傾げつつも、まぁいいかと思い、今日はどんな素敵な物が見えるかなとそれを考えていた。
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