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20. 訪ねて来た人は
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「バリウェリーで動物の理髪師をしていたのはあなた!?」
そう言って、胸元まで伸びた金髪をクルクルと巻いた目鼻立ちが整った綺麗な女性が、仁王立ちで扉を開けたすぐの所で立っていた。
レナはびっくりして、その迫力に叱られたり、何か小言を言われるんじゃないかと思いながら答える。
「は、はい。そうですけど…。」
「ちょっと!入っていいかしら!?」
と、その女性にもう一度言われたレナは、
(もうすでに、扉を開けて入っていると思うんだけど…一応許可を求めているのかな?)
と思ったが言葉には出さず、
「どうぞ…」
と言った。
けれど、どうぞと言ったもののこの部屋の中には自分以外の人と話す為に座る場所と言えばレナがいる窓際のソファしかない。
その女性はツカツカと部屋の中央まで入って来て立ち止まり、座る場所がそこしかないと知ると、
「そこ、座るわよ?」
と聞いた。
(初めの勢いはとても怖い人に見えたけど、実はいい人なのかな?)
とレナは思い、
「はい。」
と伝えて、隣同士に座るとすぐに、体をレナの方に向け女性は話し出した。
「で、あたなが私のオーリスの事を切ったわけね!?」
「え?えと…」
オーリスと言われても、レナには何の事だか分からなかったが、きっとレナが今まで毛を切ってきたネコかイヌのどれかの事だろうと思い、これはしっかりとした態度で話さないとと背筋を伸ばす。
以前、お客さんでもいたのだ。
カットする前に飼い主さんとどのような感じに切るかはしっかりと話はするのだが、そういうのをせずにすぐに預け、カットした後に文句を言ってきたお客さんが。
(気に入っていた子だったのかな?勝手に切ったから文句を言いに来たのかな。だったら、もっと家の中で飼うとか、管理をしっかりして欲しいなぁ。って、この世界では、飼うなんてしないのか。でも私が毛を切ったのはどうしようもなさそうな子ばかりよ。自分の毛が伸び過ぎて前が見えなくなってる子とか、毛が伸び過ぎて地面を擦ってる子とか。)
レナは、すうっと息を吸って話し出そうとすると、開け放たれた扉から紅茶セットが乗ったワゴンを引いたサーザが、戻ってきたようで声を上げた。
「え!?アルバータ様!?何故こちらへ…?」
「え?あなた…サーザ?まぁ、いいわ。それよりもねぇ、どうして切ってしまったの!?まぁ、でも切っても可愛いから許してあげるわ。バリウェリーで迷子になって長らく帰って来なかったから、再び会えて驚いたのよ!タウンハウスに帰ってきたの!自分でよ?もう本当に嬉しくて!前よりも元気に飛び回ってるの。お礼を言うわ!」
アルバータと呼ばれた女性はそう言って、レナの右手を掴んで握手をすると上下にぶんぶんと振り、喜びの顔を見せてくる。
(えっと…これは喜んでくれている?)
レナはそう思いながら、左手でアルバータの手を掴んでやんわりと離すように促す。
「あの。アルバータさん、わた」
「アルバータさん!?私は、あなたにまだ名乗ってないわ!勝手に人の名前を呼ばないでちょうだい!!しかも、なによ、さんって。様よ、様!」
「あ、す、すみません…では何とお呼びすれば…?」
「もう!…私はアルバータ=グリフィスよ。いい?相手に名乗られたら、初めて名前を呼ぶ事が出来るのよ?全く…」
「あ、そうとは知らず申し訳ありません。名乗って下さりありがとうございます。あ、アルバータ様それでですね、」
「あなたは?名乗られたら、名乗りなさいよ!」
「すみません、わ」
「申し訳ありません、でしょう!?」
「も、申し訳ありません…私は、レナ=オオハシと申します。」
(ちょっと勢いがあるけれど、礼儀を教えてくれているのかな?)
と、若干引きながらもレナは思う。ただ、
(近くにいるのにそんなにギャンギャンと吠えるように言わなくてもいいのになぁ。)
とも少しだけため息をつきながら思った。
対して、サーザはハラハラとしている。口に出してアルバータを戒めようかとも思ったが、何故会いに来たのかが分からない。昨日来たばかりのレナに、何故会いにくる事が出来るのか。主であるウィンフォードが教えたのかと思ってもいる。それだったら咎めてもいけないと思ったのだ。
「そう。レナ。ありがとう。オーリスはね、私とバリウェリーに一緒に馬車で買い物に行ったのよ、もうずいぶんと前にね。馬車で留守番させてたはずなのに…馬車に戻ったらいなくなっていたのよ。どこへ行ったのかわからなくて。」
「そうでしたか。ええと、オーリス様は、ヨークシャーテリアの子ですか?」
「よー…なに?」
「あ、いいえ…申し訳ありません、名前を呼ばれてもどの子か分かりませんが、私が毛を切って体を洗ってあげたのは衛生的に良くない子達ばかりです。目に自身の毛が覆い被さって前が見えず歩きにくくなっていた子や、地面に毛が当たってモップのように引きずっている子などです。汚れていると、病気を運んだりしてしまいますから。」
「そうなの…オーリスは、私の子供と変わらないの。だから、帰ってきてくれて本当に嬉しかった!オーリス、歩きにくかっただけなのね。だから、前が見えるようになって良く動くようになったのね!」
「毛は、ある程度長くなったら切らないといけないのですよ。」
「知らなかったわ。伸ばしたら可愛いから伸ばしてたのだけど、ダメなのね。」
「ダメですよ、ご自分が可愛いと思うからって人間目線ではいけません!イヌ目線で考えて下さい!目に毛があると、前が見えにくいですよね?オーリス様も迷惑してたと思いますよ!」
「…そうね。分かったわ。これから気を付けるわ。」
迷惑してた、と聞き、アルバータはとても悲しそうな表情になる。
レナもそれを見てはたと口を止め、一呼吸置いてからまた話し出した。
「そうしてあげて下さい。だって、わざわざアルバータ様の家まで帰ったのですよね?また、アルバータ様と一緒に過ごしたかったのですよ。」
「そう…そうかしら?そうね、きっと!!私、帰るわ。急に来てごめんなさいね、」
アルバータは、レナの心のこもった気遣いを聞き、急に嬉しく思うと早くオーリスの元へ帰りたくなり、ソファから立ち上がると、急いで部屋を出て行った。
そう言って、胸元まで伸びた金髪をクルクルと巻いた目鼻立ちが整った綺麗な女性が、仁王立ちで扉を開けたすぐの所で立っていた。
レナはびっくりして、その迫力に叱られたり、何か小言を言われるんじゃないかと思いながら答える。
「は、はい。そうですけど…。」
「ちょっと!入っていいかしら!?」
と、その女性にもう一度言われたレナは、
(もうすでに、扉を開けて入っていると思うんだけど…一応許可を求めているのかな?)
と思ったが言葉には出さず、
「どうぞ…」
と言った。
けれど、どうぞと言ったもののこの部屋の中には自分以外の人と話す為に座る場所と言えばレナがいる窓際のソファしかない。
その女性はツカツカと部屋の中央まで入って来て立ち止まり、座る場所がそこしかないと知ると、
「そこ、座るわよ?」
と聞いた。
(初めの勢いはとても怖い人に見えたけど、実はいい人なのかな?)
とレナは思い、
「はい。」
と伝えて、隣同士に座るとすぐに、体をレナの方に向け女性は話し出した。
「で、あたなが私のオーリスの事を切ったわけね!?」
「え?えと…」
オーリスと言われても、レナには何の事だか分からなかったが、きっとレナが今まで毛を切ってきたネコかイヌのどれかの事だろうと思い、これはしっかりとした態度で話さないとと背筋を伸ばす。
以前、お客さんでもいたのだ。
カットする前に飼い主さんとどのような感じに切るかはしっかりと話はするのだが、そういうのをせずにすぐに預け、カットした後に文句を言ってきたお客さんが。
(気に入っていた子だったのかな?勝手に切ったから文句を言いに来たのかな。だったら、もっと家の中で飼うとか、管理をしっかりして欲しいなぁ。って、この世界では、飼うなんてしないのか。でも私が毛を切ったのはどうしようもなさそうな子ばかりよ。自分の毛が伸び過ぎて前が見えなくなってる子とか、毛が伸び過ぎて地面を擦ってる子とか。)
レナは、すうっと息を吸って話し出そうとすると、開け放たれた扉から紅茶セットが乗ったワゴンを引いたサーザが、戻ってきたようで声を上げた。
「え!?アルバータ様!?何故こちらへ…?」
「え?あなた…サーザ?まぁ、いいわ。それよりもねぇ、どうして切ってしまったの!?まぁ、でも切っても可愛いから許してあげるわ。バリウェリーで迷子になって長らく帰って来なかったから、再び会えて驚いたのよ!タウンハウスに帰ってきたの!自分でよ?もう本当に嬉しくて!前よりも元気に飛び回ってるの。お礼を言うわ!」
アルバータと呼ばれた女性はそう言って、レナの右手を掴んで握手をすると上下にぶんぶんと振り、喜びの顔を見せてくる。
(えっと…これは喜んでくれている?)
レナはそう思いながら、左手でアルバータの手を掴んでやんわりと離すように促す。
「あの。アルバータさん、わた」
「アルバータさん!?私は、あなたにまだ名乗ってないわ!勝手に人の名前を呼ばないでちょうだい!!しかも、なによ、さんって。様よ、様!」
「あ、す、すみません…では何とお呼びすれば…?」
「もう!…私はアルバータ=グリフィスよ。いい?相手に名乗られたら、初めて名前を呼ぶ事が出来るのよ?全く…」
「あ、そうとは知らず申し訳ありません。名乗って下さりありがとうございます。あ、アルバータ様それでですね、」
「あなたは?名乗られたら、名乗りなさいよ!」
「すみません、わ」
「申し訳ありません、でしょう!?」
「も、申し訳ありません…私は、レナ=オオハシと申します。」
(ちょっと勢いがあるけれど、礼儀を教えてくれているのかな?)
と、若干引きながらもレナは思う。ただ、
(近くにいるのにそんなにギャンギャンと吠えるように言わなくてもいいのになぁ。)
とも少しだけため息をつきながら思った。
対して、サーザはハラハラとしている。口に出してアルバータを戒めようかとも思ったが、何故会いに来たのかが分からない。昨日来たばかりのレナに、何故会いにくる事が出来るのか。主であるウィンフォードが教えたのかと思ってもいる。それだったら咎めてもいけないと思ったのだ。
「そう。レナ。ありがとう。オーリスはね、私とバリウェリーに一緒に馬車で買い物に行ったのよ、もうずいぶんと前にね。馬車で留守番させてたはずなのに…馬車に戻ったらいなくなっていたのよ。どこへ行ったのかわからなくて。」
「そうでしたか。ええと、オーリス様は、ヨークシャーテリアの子ですか?」
「よー…なに?」
「あ、いいえ…申し訳ありません、名前を呼ばれてもどの子か分かりませんが、私が毛を切って体を洗ってあげたのは衛生的に良くない子達ばかりです。目に自身の毛が覆い被さって前が見えず歩きにくくなっていた子や、地面に毛が当たってモップのように引きずっている子などです。汚れていると、病気を運んだりしてしまいますから。」
「そうなの…オーリスは、私の子供と変わらないの。だから、帰ってきてくれて本当に嬉しかった!オーリス、歩きにくかっただけなのね。だから、前が見えるようになって良く動くようになったのね!」
「毛は、ある程度長くなったら切らないといけないのですよ。」
「知らなかったわ。伸ばしたら可愛いから伸ばしてたのだけど、ダメなのね。」
「ダメですよ、ご自分が可愛いと思うからって人間目線ではいけません!イヌ目線で考えて下さい!目に毛があると、前が見えにくいですよね?オーリス様も迷惑してたと思いますよ!」
「…そうね。分かったわ。これから気を付けるわ。」
迷惑してた、と聞き、アルバータはとても悲しそうな表情になる。
レナもそれを見てはたと口を止め、一呼吸置いてからまた話し出した。
「そうしてあげて下さい。だって、わざわざアルバータ様の家まで帰ったのですよね?また、アルバータ様と一緒に過ごしたかったのですよ。」
「そう…そうかしら?そうね、きっと!!私、帰るわ。急に来てごめんなさいね、」
アルバータは、レナの心のこもった気遣いを聞き、急に嬉しく思うと早くオーリスの元へ帰りたくなり、ソファから立ち上がると、急いで部屋を出て行った。
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