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「それともまだ、音楽を聞いているかい?」
優しく、諭すように言われた言葉にルジェナは肯定をしたくなったがぐっと堪え、声を絞り出す。
「そうしたいところだけれど、せっかくだから…」
「良かった!じゃああちらに行こうか。」
エスコートし、庭へと開け放たれたテラスへと導く半歩先を歩く横顔をちらりと上目づかいで視線を向けながらルジェナは思案する。
(この方、見た事あるような気がしたけれど気のせいよね?だって、私は学院にも通っていないし知り合いなんて…)
弟ダリミルと同じ黒の髪色だから親近感が湧いたのかもしれないと思うルジェナだった。
「それにしても、まだ音楽に興味があったなんてなんだかホッとしたよ。」
そう歩きながら言われ、ルジェナは振り向かれた目線が合い慌てて逸らす。
「…え?」
まだ、とは以前に興味があったと知っているような口振りだと考え至るまでに数秒かかり、再びそちらに視線を向けた時、目の前に他の男の人が二人、彼に話し掛けていた。
「よぉルーラント!珍しいな、こんなところに来るなんて。」
「本当だな、見間違いかと思ったよルーラント!
前はすぐ帰ってもう絶対に来ないって言ってたのに…って女連れ!?」
「お前ら…悪いな、今日は大切な用があって来たんだ。またな。」
そう言ってそそくさと二人の前を通り過ぎ、ルジェナへと声を掛けた。
「ごめん、もう少し奥に行ってもいいかい?もちろん人気の無い暗がりには行かないから。」
どうやら、先ほどの二人はルジェナ達の方へ視線を向けて佇んでいるようで、それから逃れるように目の前に広がる庭園へと誘った。庭園もあまり奥まででなければ行ってもいいようになっており、近くに近衛騎士も立っている。
足元にも灯籠のような明かりとりが置かれており、今はまだ点されていないが日が沈んだら幻想的になるだろうと見てとれた。
「先ほどの方達はよろしいのですか?」
ルジェナがそう聞くと、困ったように笑って言い訳めいて呟く。
「あぁ。無粋だよね、わざわざ今、声掛けるなんてさ。
…今日は君に会いに来たんだ。」
そう言うと、近くにあったベンチに座ろうと促す。そこは生垣が陰となり、舞踏館からは姿が見えないようになっていた。
ルーラントと呼ばれた彼は、ルジェナが戸惑いながら座った隣に、少し間隔を開けて腰を下ろし、咳払いを一つしてから少しだけ前に体を動かし、ルジェナと視線が合うようにしてから再び口を開いた。
「嬉しそうに楽団の奏でる曲を聞いていた君は、まだ音楽が好きなようで安心した。」
「えっと…」
先ほどから、目の前の男性はルジェナを以前から知っているような口振りで話すがルジェナには思い出せずに首を傾げる。
けれども、やはり先ほど思った感覚は間違いではなかったとなんとなく初めて会ったようには感じず、彼を見つめる。と、次の言葉でルジェナはあっと思う。
「バイオリンの腕前はどう?
せっかくまた会えたんだし、弾いている君を見たいと思う俺は欲張りだろうか?」
「!」
そして、会場から再び聞こえてきた高音のフルートのような音色に、ルジェナはやっと思い出した。
「あなたって…昔、横笛をくれた…?」
そう呟くように口を開いたルジェナに、目の前の男性は心から嬉しそうに微笑み、頷く。
「良かった!思い出してくれた?
…あの時は、酷い言葉を掛けて悪かった。後悔しているんだ。
もう一度やり直させてくれないかな。」
はにかみながら言う表情を見て、いつかの時のように胸が高鳴ったルジェナだったが、酷い言葉と言われて果たしてそうだったかと首を捻る。
だがその隙に彼は素早く腰を上げるとルジェナの足元へ膝を折り、右手を差し出しルジェナへと視線を向けて語りだす。
「私はルーラント=バルツァーレク。以前、あなたにお会いしてから忘れた事は一度たりともありませんでした。
今日再び会う事が出来、これ以上ない喜びを感じています。お許し頂けるのならば、これからもあなたにお会いする権利を頂戴出来たらと思います。
どうか、私の手を取っていただけないでしょうか。」
優しいその声に、体の奥底に語り掛けられたような気がしたルジェナはその差し出された手に、戸惑いながらも自身の手を伸ばす。熱を帯びた顔が真っ赤なのは、沈みきる前の太陽に照らされたからなのか、それだけではないとルジェナは少し恥ずかしい気持ちになる。
「ええと…はい。」
手と手が触れたその時、ルーラントはルジェナの手を優しく包むと左手をその上に添え、破顔した。
「良かった…!あの時、酷い言葉を言ってしまったから、嫌われていたらと心配したんだ。」
「酷い言葉?」
ルジェナは、手を掴まれた事で温かい温もりが伝わりこれ以上ないほど胸がうるさく高鳴っていたが、そのように覚えもない事を再び言われ、問いかける。
ルジェナにとって、あの日の思い出はヨハナにさえ詳しく伝えていないほど嬉しく秘密にしたいものだった。バイオリンの弾き方を教えてもらえ、横笛までもらった。そして、その二つの楽器を使い自分には到底出す事の出来ない素敵な音色を聴かせてくれた。その人物はその時一度見たきりで、六歳だったルジェナは残念ながら顔はすでにはっきりと覚えていなかったが、それでもルジェナの心にしっかりと刻まれた出来事だったのだ。だから、酷い言葉を言われたという記憶はすっかり薄れており覚えていなかったのだ。
ルーラントは腰を浮かせて再びベンチに腰を下ろすと、ルジェナの手を優しく離し、照れながらどう話そうかと視線を彷徨わせた。
ルジェナは、手を離され温もりを失った事で少し寂しいと思いながらも視線はルーラントへと向ける。
「あぁ…あの時の俺は腑抜けだったんだ。」
「腑抜け?」
そうだったろうか?バイオリンも横笛も、さながら有名な楽師のように軽やかに奏でていたように思っていたルジェナは、ルーラントの言葉を繰り返す事でしか返事を返せない。
「まぁ、いろいろあってね…。
でも、君に会ってから俺は変わったんだ。頑張ると言った君と同じく俺も努力しようと思った。
そして、再び君に会いたいと願った。」
「うん」
なんだか良く分からないが、ルーラントは照れながらルジェナへとそう話し、今日会えて本当に良かったと繰り返した。
「良く分からないけれど、私もあの時頂いた横笛は大切にしているの。バイオリンも横笛も、だいぶ出来るようになったのよ。だから…私もまたお会い出来て嬉しいわ。」
率直な気持ちを述べたルジェナは、それから少し遅れて自己紹介をし、ぎこちないながらもお互いの話をし出した。
ーーー
ーー
ー
「もう、終わりか。」
「えぇ、そうみたいね…。」
気付けば二人はすっかり話し込んでしまっていた。
司会と思われる人が、今夜はお開きだとアナウンスをするまで、ベンチで話し込んでいた。
この日は寒くもなく、心地よい風がゆらりと吹くだけであったので時間の経過も忘れるほどであった。辺りは日が落ちて暗くなっており足元はすでに明かりが灯され、幻想的な雰囲気となっていた。
会話の中でルーラントの領地はバルツァーレク侯爵領で、そこは楽器が名産だとルジェナは聞いた。
それに、若くしてすでに侯爵を名乗っているとも。
ルジェナもそのように書物などから学んではいたが、だから楽器がいつも近くにあり、ルーラントはそれを手にする機会が多くあったからバイオリンも横笛も奏でる事が出来るのだと言ったルーラントに尊敬の念さえ抱いた。傍にあるだけでは、あんな素晴らしく奏でる事は出来ないだろうとルジェナは思う。若くして侯爵となったのには、並々ならぬ努力をしたのだろうと想像した。
「近々、君の家に挨拶に伺ってもいいかな?」
「え!?」
会が終わるのは名残り惜しいとさえ思ってしまい、ここで別れるのは残念だと思った所で、ルーラントからのその言葉に思わずルジェナは聞き返す。
「その…これからも君に会いたいから。ご両親に、挨拶した方がいいんじゃないかと。」
「挨拶…」
「今日が終わったらこれっきり、というのは耐えられなくて。
それとも、また会いたいと願うのは俺だけかな。」
そう問われたルジェナは、じわじわと再び頬が熱くなるのを感じ、ルーラントへと無意識に視線を向けると、彼は困ったような顔をしていた。
「嫌だろうか?」
「いいえ!
私も、これっきりはちょっと…」
思ったよりも大きな声で否定してしまい、恥ずかしく思ったルジェナは、その後の言葉を繋ぐ事が出来ず、尻すぼみとなる。
「良かった!じゃあ、近い内に。
そろそろ行こうか。君も、迎えが来るよね?」
「ええ。
…あのね、また会えるのならお願いがあるの。」
「なに?」
「君、じゃなくて名前で呼んで欲しいの。」
ルジェナは終始、気遣いを見せるルーラントに次もあるならと思い切って伝える。
「!
そ、そうだよね。ル、ルジェナ嬢。」
そう言われたルジェナは、無意識に唇を尖らせる。それを見たルーラントは、そんな仕草も可愛いと思い、口角を上げてから言い直す。
「…ルジェナって呼んでも?」
「ええ、呼んで欲しいわ!」
ルジェナはさも嬉しそうに頬を緩める。それに気を良くしたルーラントも、じゃあと付け加える。
「俺も名前で呼んでくれる?」
「…ルーラント様?」
ルーラントもまた破顔し、足元の灯籠に照らされたお互いの頬は真っ赤になっていたのだった。
優しく、諭すように言われた言葉にルジェナは肯定をしたくなったがぐっと堪え、声を絞り出す。
「そうしたいところだけれど、せっかくだから…」
「良かった!じゃああちらに行こうか。」
エスコートし、庭へと開け放たれたテラスへと導く半歩先を歩く横顔をちらりと上目づかいで視線を向けながらルジェナは思案する。
(この方、見た事あるような気がしたけれど気のせいよね?だって、私は学院にも通っていないし知り合いなんて…)
弟ダリミルと同じ黒の髪色だから親近感が湧いたのかもしれないと思うルジェナだった。
「それにしても、まだ音楽に興味があったなんてなんだかホッとしたよ。」
そう歩きながら言われ、ルジェナは振り向かれた目線が合い慌てて逸らす。
「…え?」
まだ、とは以前に興味があったと知っているような口振りだと考え至るまでに数秒かかり、再びそちらに視線を向けた時、目の前に他の男の人が二人、彼に話し掛けていた。
「よぉルーラント!珍しいな、こんなところに来るなんて。」
「本当だな、見間違いかと思ったよルーラント!
前はすぐ帰ってもう絶対に来ないって言ってたのに…って女連れ!?」
「お前ら…悪いな、今日は大切な用があって来たんだ。またな。」
そう言ってそそくさと二人の前を通り過ぎ、ルジェナへと声を掛けた。
「ごめん、もう少し奥に行ってもいいかい?もちろん人気の無い暗がりには行かないから。」
どうやら、先ほどの二人はルジェナ達の方へ視線を向けて佇んでいるようで、それから逃れるように目の前に広がる庭園へと誘った。庭園もあまり奥まででなければ行ってもいいようになっており、近くに近衛騎士も立っている。
足元にも灯籠のような明かりとりが置かれており、今はまだ点されていないが日が沈んだら幻想的になるだろうと見てとれた。
「先ほどの方達はよろしいのですか?」
ルジェナがそう聞くと、困ったように笑って言い訳めいて呟く。
「あぁ。無粋だよね、わざわざ今、声掛けるなんてさ。
…今日は君に会いに来たんだ。」
そう言うと、近くにあったベンチに座ろうと促す。そこは生垣が陰となり、舞踏館からは姿が見えないようになっていた。
ルーラントと呼ばれた彼は、ルジェナが戸惑いながら座った隣に、少し間隔を開けて腰を下ろし、咳払いを一つしてから少しだけ前に体を動かし、ルジェナと視線が合うようにしてから再び口を開いた。
「嬉しそうに楽団の奏でる曲を聞いていた君は、まだ音楽が好きなようで安心した。」
「えっと…」
先ほどから、目の前の男性はルジェナを以前から知っているような口振りで話すがルジェナには思い出せずに首を傾げる。
けれども、やはり先ほど思った感覚は間違いではなかったとなんとなく初めて会ったようには感じず、彼を見つめる。と、次の言葉でルジェナはあっと思う。
「バイオリンの腕前はどう?
せっかくまた会えたんだし、弾いている君を見たいと思う俺は欲張りだろうか?」
「!」
そして、会場から再び聞こえてきた高音のフルートのような音色に、ルジェナはやっと思い出した。
「あなたって…昔、横笛をくれた…?」
そう呟くように口を開いたルジェナに、目の前の男性は心から嬉しそうに微笑み、頷く。
「良かった!思い出してくれた?
…あの時は、酷い言葉を掛けて悪かった。後悔しているんだ。
もう一度やり直させてくれないかな。」
はにかみながら言う表情を見て、いつかの時のように胸が高鳴ったルジェナだったが、酷い言葉と言われて果たしてそうだったかと首を捻る。
だがその隙に彼は素早く腰を上げるとルジェナの足元へ膝を折り、右手を差し出しルジェナへと視線を向けて語りだす。
「私はルーラント=バルツァーレク。以前、あなたにお会いしてから忘れた事は一度たりともありませんでした。
今日再び会う事が出来、これ以上ない喜びを感じています。お許し頂けるのならば、これからもあなたにお会いする権利を頂戴出来たらと思います。
どうか、私の手を取っていただけないでしょうか。」
優しいその声に、体の奥底に語り掛けられたような気がしたルジェナはその差し出された手に、戸惑いながらも自身の手を伸ばす。熱を帯びた顔が真っ赤なのは、沈みきる前の太陽に照らされたからなのか、それだけではないとルジェナは少し恥ずかしい気持ちになる。
「ええと…はい。」
手と手が触れたその時、ルーラントはルジェナの手を優しく包むと左手をその上に添え、破顔した。
「良かった…!あの時、酷い言葉を言ってしまったから、嫌われていたらと心配したんだ。」
「酷い言葉?」
ルジェナは、手を掴まれた事で温かい温もりが伝わりこれ以上ないほど胸がうるさく高鳴っていたが、そのように覚えもない事を再び言われ、問いかける。
ルジェナにとって、あの日の思い出はヨハナにさえ詳しく伝えていないほど嬉しく秘密にしたいものだった。バイオリンの弾き方を教えてもらえ、横笛までもらった。そして、その二つの楽器を使い自分には到底出す事の出来ない素敵な音色を聴かせてくれた。その人物はその時一度見たきりで、六歳だったルジェナは残念ながら顔はすでにはっきりと覚えていなかったが、それでもルジェナの心にしっかりと刻まれた出来事だったのだ。だから、酷い言葉を言われたという記憶はすっかり薄れており覚えていなかったのだ。
ルーラントは腰を浮かせて再びベンチに腰を下ろすと、ルジェナの手を優しく離し、照れながらどう話そうかと視線を彷徨わせた。
ルジェナは、手を離され温もりを失った事で少し寂しいと思いながらも視線はルーラントへと向ける。
「あぁ…あの時の俺は腑抜けだったんだ。」
「腑抜け?」
そうだったろうか?バイオリンも横笛も、さながら有名な楽師のように軽やかに奏でていたように思っていたルジェナは、ルーラントの言葉を繰り返す事でしか返事を返せない。
「まぁ、いろいろあってね…。
でも、君に会ってから俺は変わったんだ。頑張ると言った君と同じく俺も努力しようと思った。
そして、再び君に会いたいと願った。」
「うん」
なんだか良く分からないが、ルーラントは照れながらルジェナへとそう話し、今日会えて本当に良かったと繰り返した。
「良く分からないけれど、私もあの時頂いた横笛は大切にしているの。バイオリンも横笛も、だいぶ出来るようになったのよ。だから…私もまたお会い出来て嬉しいわ。」
率直な気持ちを述べたルジェナは、それから少し遅れて自己紹介をし、ぎこちないながらもお互いの話をし出した。
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「もう、終わりか。」
「えぇ、そうみたいね…。」
気付けば二人はすっかり話し込んでしまっていた。
司会と思われる人が、今夜はお開きだとアナウンスをするまで、ベンチで話し込んでいた。
この日は寒くもなく、心地よい風がゆらりと吹くだけであったので時間の経過も忘れるほどであった。辺りは日が落ちて暗くなっており足元はすでに明かりが灯され、幻想的な雰囲気となっていた。
会話の中でルーラントの領地はバルツァーレク侯爵領で、そこは楽器が名産だとルジェナは聞いた。
それに、若くしてすでに侯爵を名乗っているとも。
ルジェナもそのように書物などから学んではいたが、だから楽器がいつも近くにあり、ルーラントはそれを手にする機会が多くあったからバイオリンも横笛も奏でる事が出来るのだと言ったルーラントに尊敬の念さえ抱いた。傍にあるだけでは、あんな素晴らしく奏でる事は出来ないだろうとルジェナは思う。若くして侯爵となったのには、並々ならぬ努力をしたのだろうと想像した。
「近々、君の家に挨拶に伺ってもいいかな?」
「え!?」
会が終わるのは名残り惜しいとさえ思ってしまい、ここで別れるのは残念だと思った所で、ルーラントからのその言葉に思わずルジェナは聞き返す。
「その…これからも君に会いたいから。ご両親に、挨拶した方がいいんじゃないかと。」
「挨拶…」
「今日が終わったらこれっきり、というのは耐えられなくて。
それとも、また会いたいと願うのは俺だけかな。」
そう問われたルジェナは、じわじわと再び頬が熱くなるのを感じ、ルーラントへと無意識に視線を向けると、彼は困ったような顔をしていた。
「嫌だろうか?」
「いいえ!
私も、これっきりはちょっと…」
思ったよりも大きな声で否定してしまい、恥ずかしく思ったルジェナは、その後の言葉を繋ぐ事が出来ず、尻すぼみとなる。
「良かった!じゃあ、近い内に。
そろそろ行こうか。君も、迎えが来るよね?」
「ええ。
…あのね、また会えるのならお願いがあるの。」
「なに?」
「君、じゃなくて名前で呼んで欲しいの。」
ルジェナは終始、気遣いを見せるルーラントに次もあるならと思い切って伝える。
「!
そ、そうだよね。ル、ルジェナ嬢。」
そう言われたルジェナは、無意識に唇を尖らせる。それを見たルーラントは、そんな仕草も可愛いと思い、口角を上げてから言い直す。
「…ルジェナって呼んでも?」
「ええ、呼んで欲しいわ!」
ルジェナはさも嬉しそうに頬を緩める。それに気を良くしたルーラントも、じゃあと付け加える。
「俺も名前で呼んでくれる?」
「…ルーラント様?」
ルーラントもまた破顔し、足元の灯籠に照らされたお互いの頬は真っ赤になっていたのだった。
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