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5. ある日のテレサ
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「ねぇ、お姉さま!私も出来るのよね?イロナ先生、私も花祈りが出来るの!すごいでしょ!?
だから、私にも教えて!」
何度目かの、庭でイロナと四阿に座って話していた時、今日もまた唐突にスティーナの元へ来たテレサは、イロナへと言葉を向けた。
「…テレサ。それは、本当に本気で言っているのですか?」
「はい!」
満面の笑みで答えたテレサに、イロナは少し悩んだ後に答える。
「ではまず、質問します。
テレサは読み書きが出来ますか?」
「え?…出来ません。」
少しだけ顔を曇らせたテレサ。
テレサは、学んでいる事といえば侍女のカトリから言葉遣いを少しずつ、だけであった。
スティーナは六歳になったら読み書きと簡単な足し引きを勉強し始めたのだが、テレサは、そんな事やろうとも思っていなかったし、誰からも言われた事もなかったのでそのままにしていた。
勉強しなくて済むのであれば、自分に自由な遊びの時間が削られなくて済む為にテレサから言い出す事もなかったのだ。
「足し引きは?」
「……出来ません。
でも!花に祈りを込めるのに、それは必要ないですよね!?」
半ば力むように両手で拳を握りながら言葉を発したテレサは、なぜ花に祈りを
込めるだけなのに読み書きが必要なのか分からなかった。
花祈りの詳しいやり方は知らないテレサだったのだが、興味があった為に侍女からなんとなく聞いていた。その為、試しにその辺りに咲いている綺麗な花でなんとなくやってみたらスティーナや皆が喜ぶ為、自分にも特別な力があるのだと思い込んでいたのだ。
「テレサ。それは違います。まず、読み書きは必須です。書物を読む場合もありますよ。足し引きもです。いろいろとありますからね。」
花祈りにはまず、願いに合った花を選ぶ事から始まる。
それは、この花の国ウプサラ以外の国では花言葉とも言うらしい。
それを知らなければ、その辺りの花に適当に願いを込めただけでは祈りは通じないのだ。
花言葉が載っている書物を調べる場合もある。その事を言いたかったのだが、イロナは詳しくは話さない。花祈りは、悪い事に使えば世界が滅びるとまで言い伝えられている為、詳しい事を外部に漏らさないように言われてもいるのだ。
まぁ、花言葉くらいは少し調べれば誰でも分かる為に教えてはいけないという決まりは無かったのだが。
それだけではなく、師の教えに反論するようでは教授出来る訳が無く、まだテレサには早いと思っているのだ。
…最も、テレサに本当に素質があるのかさえ疑っている。だが、イロナは敢えてそれを言葉にはしなかった。
「うー…じゃ、じゃあ!それは大きくなったらやります!」
「テレサ、物事には順序があります。
まずは読み書き。それと簡単な足し引きは基本となりますから、覚えてから言いなさい。
覚えて、それでもまだ気持ちが変わらないのであれば、私に言いなさい。いいですね?」
そう言ったイロナは、テレサがとても悲しそうな目をしたのには見ない振りをした。そして、スティーナへと優しく言葉を掛けた。
「さ、今日は書物から花祈りを学ぶのでしたね。スティーナ、書庫へ参りましょう。」
「え?ええっと…」
スティーナは、悲しい目をした可愛い妹をそこに置き去りにしていいものか迷ってしまった。その為即答が出来なかった。
その返事を聞いたイロナは、スティーナが罪悪感を持たないように言葉を伝える。
「スティーナ。時間は無限にはありませんよ。これはテレサの為でもあるのです。基本はどんな場面でも必要ですからね。さぁ。」
そう言って、イロナは立ち上がりスティーナの手を優しく取って、屋敷にある書庫へと向かった。
だから、私にも教えて!」
何度目かの、庭でイロナと四阿に座って話していた時、今日もまた唐突にスティーナの元へ来たテレサは、イロナへと言葉を向けた。
「…テレサ。それは、本当に本気で言っているのですか?」
「はい!」
満面の笑みで答えたテレサに、イロナは少し悩んだ後に答える。
「ではまず、質問します。
テレサは読み書きが出来ますか?」
「え?…出来ません。」
少しだけ顔を曇らせたテレサ。
テレサは、学んでいる事といえば侍女のカトリから言葉遣いを少しずつ、だけであった。
スティーナは六歳になったら読み書きと簡単な足し引きを勉強し始めたのだが、テレサは、そんな事やろうとも思っていなかったし、誰からも言われた事もなかったのでそのままにしていた。
勉強しなくて済むのであれば、自分に自由な遊びの時間が削られなくて済む為にテレサから言い出す事もなかったのだ。
「足し引きは?」
「……出来ません。
でも!花に祈りを込めるのに、それは必要ないですよね!?」
半ば力むように両手で拳を握りながら言葉を発したテレサは、なぜ花に祈りを
込めるだけなのに読み書きが必要なのか分からなかった。
花祈りの詳しいやり方は知らないテレサだったのだが、興味があった為に侍女からなんとなく聞いていた。その為、試しにその辺りに咲いている綺麗な花でなんとなくやってみたらスティーナや皆が喜ぶ為、自分にも特別な力があるのだと思い込んでいたのだ。
「テレサ。それは違います。まず、読み書きは必須です。書物を読む場合もありますよ。足し引きもです。いろいろとありますからね。」
花祈りにはまず、願いに合った花を選ぶ事から始まる。
それは、この花の国ウプサラ以外の国では花言葉とも言うらしい。
それを知らなければ、その辺りの花に適当に願いを込めただけでは祈りは通じないのだ。
花言葉が載っている書物を調べる場合もある。その事を言いたかったのだが、イロナは詳しくは話さない。花祈りは、悪い事に使えば世界が滅びるとまで言い伝えられている為、詳しい事を外部に漏らさないように言われてもいるのだ。
まぁ、花言葉くらいは少し調べれば誰でも分かる為に教えてはいけないという決まりは無かったのだが。
それだけではなく、師の教えに反論するようでは教授出来る訳が無く、まだテレサには早いと思っているのだ。
…最も、テレサに本当に素質があるのかさえ疑っている。だが、イロナは敢えてそれを言葉にはしなかった。
「うー…じゃ、じゃあ!それは大きくなったらやります!」
「テレサ、物事には順序があります。
まずは読み書き。それと簡単な足し引きは基本となりますから、覚えてから言いなさい。
覚えて、それでもまだ気持ちが変わらないのであれば、私に言いなさい。いいですね?」
そう言ったイロナは、テレサがとても悲しそうな目をしたのには見ない振りをした。そして、スティーナへと優しく言葉を掛けた。
「さ、今日は書物から花祈りを学ぶのでしたね。スティーナ、書庫へ参りましょう。」
「え?ええっと…」
スティーナは、悲しい目をした可愛い妹をそこに置き去りにしていいものか迷ってしまった。その為即答が出来なかった。
その返事を聞いたイロナは、スティーナが罪悪感を持たないように言葉を伝える。
「スティーナ。時間は無限にはありませんよ。これはテレサの為でもあるのです。基本はどんな場面でも必要ですからね。さぁ。」
そう言って、イロナは立ち上がりスティーナの手を優しく取って、屋敷にある書庫へと向かった。
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