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23. マルメの祭りでの出会い
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「今年も、マルメ祭りに行くかしら?」
イロナにそう聞かれたスティーナは、悩んだ。
何度も送り合っていた手紙では、マルメの祭りの事が話題に出ていたが、マルメの祭りが近づいてきた前回の手紙では、ヴァルナルはやはり祭りには行けないと書かれてあった為、スティーナは迷ったのだ。
とはいえ、今年はヴァルナルがいないから祭りに行かない、というとヴァルナルもイロナも気にしてしまうかもしれないと思い、スティーナは行く事にした。
☆★
「やっと着いたわね。さ、一度部屋に行きましょ。…あら。」
マルメの屋敷に着いたイロナは、スティーナへと言葉を掛けるが、玄関ホールの椅子に座っていた人物を見て立ち止まる。
スティーナも、それに一瞬期待したが、髪色は同じであったが、腰まで長かったので少しだけ残念に思った。
スティーナよりも少し幼い、少女というべき年齢の見た目であった。
(誰かしら。ヴァルナルかと思ってしまった自分が恥ずかしいわ!来ないって言っていたのに。)
「こんにちは!スティーナ姉様!私はイリニヤと言うの、よろしくね!」
「こら、イリニヤ!まずは初対面なんだから真面目にやりなさい!
思ったより早く着いたのね?」
「だってぇ、私はヴァルナル兄さまから話を聞いていたのだもの、初対面の気がしないのよ?
でも、ま、そうねぇ…。スティーナ姉様、もう一度、やり直しますわ!」
そう言ったイリニヤは、椅子から立ち上がり、淑女の礼をしながら話し出した。
「改めまして。
私はこの国の王女、イリニヤと申します。よろしくお願い致します。」
それを見たスティーナも、思わず背筋が伸び、淑女の礼をして挨拶をした。
「初めまして。
私は、スティーナ=オーグレンと申します。こちらこそよろしくお願い致します。」
「さ、これでもう挨拶は終わったのだから、いいわよね?
スティーナ姉様、応接室へ行きましょう?お話がしたいわ!」
「イリニヤ、来たばかりでしょう?スティーナは疲れているわ。イリニヤ疲れてないの?」
「疲れていても、時間っていうものは限りがあるのよ?せっかくなんだもの、交流を深めたいわ!」
そんな風に言われたスティーナは、この快活な王女が好ましく思えて言葉を返す。
「私は大丈夫です。イリニヤ様こそよろしいのですか?お疲れではないのですか?」
「あら!推しに会えたんだもの、ましてや交流を深められるなんて!疲れているなんて言えないわ!
スティーナ姉様が大丈夫でしたら、行きましょう?宮殿から茶葉も持ってきたのよ?ちょっと変わった茶葉でね、外国のらしいのだけれど緑色の茶葉なのよ?口に合わなかったら変えるけれど、一度飲んで欲しいから持ってきたの!」
「イリニヤ、そんなまた押し付けたりしませんよ!」
「あら、だから口に合わないなら変えるって言ったじゃない!
大丈夫よ、私は誰かさんとは違って成長しているんだから!
ほら、おばあ様も来てね!」
そう言うと、イリニヤはスティーナの腕を取り、引っ張りながら応接室へと向かった。
「さ、座って?」
「はい。」
応接室に着くとイリニヤにそう促され、円形の木製の机に等間隔に置かれた布製のイスの一つにスティーナは座った。
「もうすぐお茶と、お菓子を持ってきてくれるわ!
おばあ様は飲んだ事あります?」
「どんなお茶かしら?楽しみね。」
少しして、イリニヤの侍女がワゴンを引いてやって来た。普段やりなれていない茶葉の入れ方に、この屋敷の侍女ではなく慣れた者が煎れているのだった。
「さ、飲んで?」
イリニヤはそう言って、目の前に置かれた緑色の茶を飲んだ。
「あー温かい。いつもの紅茶とは全く違うけれど、これはこれで美味しいと思うのよ。
でも好みは人それぞれだものね。だから、紅茶もちゃんと用意したわ。」
初めての見た目にスティーナはどんな味なのだろうと不思議に思いながら口に付ける。
と、苦味は少しあるがこれはこれで美味しいと思った。
「えぇ。紅茶とはまた違う風味で美味しいと思います。」
「本当!?」
「まぁ、別物な感じだね。確かに美味しい。」
「おばあ様も?良かった!
これはね、最近手に入ったの。宮殿に献上してくれたのよ。遥か東方にある国のお茶なのですって。」
「東方?それはまたすごいわね。」
「遠い国から、はるばる…」
「ねぇ、スティーナ姉様?…あ。
スティーナ姉様、私今十歳で、お姉さま
達より三歳年下なのだけれど、お姉様って呼んでもいいかしら?ヴァルナル兄様から話を聞いて、素敵だなって尊敬しているんです!」
「え?そ、尊敬…?」
スティーナは、いきなりそう言われ戸惑ってしまう。
「イリニヤ…どうしてあなたは気に入った人にはそうすぐにグイグイ距離を詰めるのかしら?スティーナが逃げ腰だわ。」
「え?だって、おばあ様?それは仕方のない事だと思いますわ!
私よりも年上なのに、尊敬出来ない人もいるんですよ!
尊敬出来る人に惹かれ、もっと知りたくなるのは至極当然の事ですわ!」
「それでもね、知りたくてもゆっくりと距離を縮めていくものでしょう。」
「おばあ様?私は王族です。いつ、どこかの殿方と婚約させられて嫁ぐか分からないのですよ?ゆっくり距離を縮めていたら、仲良くなる前に『明日、嫁げ!』なんて言われるかも知れないでしょう?」
(!!
イリニヤ様は十歳と言われていたわよね。それなのに、しっかりとご自分の立場をわきまえておられるのだわ。その為に、未来も考えつつ行動されているなんて!さすが王女様なのね。)
スティーナは、年下であるイリニヤがしっかりと自分の思いを言ったその言葉を聞いて、一見ぐいぐいとくる積極的な性格だと思ったイリニヤの行動には、理由がはっきりとあったのだと関心した。
「本当にそんな深いところまで考えているなら素晴らしいけれど、あまりグイグイ距離を詰め過ぎるんじゃないわ。相手の思いを汲まなければダメよ。」
「分かっているわ、おばあ様!
…スティーナ姉様?」
イリニヤは、スティーナが黙っているので顔を覗き込んで声を掛ける。
「あ、ごめんなさい!
イリニヤ様のお考えに感動していました。
えぇ、お好きにお呼びください。けれど、私そんな尊敬されるような人物ではないのですけれど。」
「何を言っているの!?素晴らしいに決まっているわ!
だってなにより、おばあ様といつも一緒に過ごしていられるのだもの。尊敬以外言葉が無いわ。こんな口うるさい人とずっと過ごせるのだもの。」
「何か言った?イリニヤ。」
「いいえ!
あぁ、良かった!スティーナ姉様、私では物足りないかもしれませんが、お祭りも一緒に行って下さいませね?」
「い、いいのですか?」
「もちろんですわ!あぁ、護衛の事でしたら安心なさって?選りすぐりが私についているのですから。
午後から、早速出掛けません?」
「スティーナ、大丈夫?無理なら遠慮しないで断っていいのよ。」
「はい、お気遣いありがとうございます、イロナ様。大丈夫です。」
「やった!じゃあ、昼食は今から少し食べて午後、早めに行きましょう!屋台でも食べたいわ!」
「はい。楽しみですね。」
こうして、スティーナは想像していなかった楽しく賑やかな時間を過ごしていった。
イロナにそう聞かれたスティーナは、悩んだ。
何度も送り合っていた手紙では、マルメの祭りの事が話題に出ていたが、マルメの祭りが近づいてきた前回の手紙では、ヴァルナルはやはり祭りには行けないと書かれてあった為、スティーナは迷ったのだ。
とはいえ、今年はヴァルナルがいないから祭りに行かない、というとヴァルナルもイロナも気にしてしまうかもしれないと思い、スティーナは行く事にした。
☆★
「やっと着いたわね。さ、一度部屋に行きましょ。…あら。」
マルメの屋敷に着いたイロナは、スティーナへと言葉を掛けるが、玄関ホールの椅子に座っていた人物を見て立ち止まる。
スティーナも、それに一瞬期待したが、髪色は同じであったが、腰まで長かったので少しだけ残念に思った。
スティーナよりも少し幼い、少女というべき年齢の見た目であった。
(誰かしら。ヴァルナルかと思ってしまった自分が恥ずかしいわ!来ないって言っていたのに。)
「こんにちは!スティーナ姉様!私はイリニヤと言うの、よろしくね!」
「こら、イリニヤ!まずは初対面なんだから真面目にやりなさい!
思ったより早く着いたのね?」
「だってぇ、私はヴァルナル兄さまから話を聞いていたのだもの、初対面の気がしないのよ?
でも、ま、そうねぇ…。スティーナ姉様、もう一度、やり直しますわ!」
そう言ったイリニヤは、椅子から立ち上がり、淑女の礼をしながら話し出した。
「改めまして。
私はこの国の王女、イリニヤと申します。よろしくお願い致します。」
それを見たスティーナも、思わず背筋が伸び、淑女の礼をして挨拶をした。
「初めまして。
私は、スティーナ=オーグレンと申します。こちらこそよろしくお願い致します。」
「さ、これでもう挨拶は終わったのだから、いいわよね?
スティーナ姉様、応接室へ行きましょう?お話がしたいわ!」
「イリニヤ、来たばかりでしょう?スティーナは疲れているわ。イリニヤ疲れてないの?」
「疲れていても、時間っていうものは限りがあるのよ?せっかくなんだもの、交流を深めたいわ!」
そんな風に言われたスティーナは、この快活な王女が好ましく思えて言葉を返す。
「私は大丈夫です。イリニヤ様こそよろしいのですか?お疲れではないのですか?」
「あら!推しに会えたんだもの、ましてや交流を深められるなんて!疲れているなんて言えないわ!
スティーナ姉様が大丈夫でしたら、行きましょう?宮殿から茶葉も持ってきたのよ?ちょっと変わった茶葉でね、外国のらしいのだけれど緑色の茶葉なのよ?口に合わなかったら変えるけれど、一度飲んで欲しいから持ってきたの!」
「イリニヤ、そんなまた押し付けたりしませんよ!」
「あら、だから口に合わないなら変えるって言ったじゃない!
大丈夫よ、私は誰かさんとは違って成長しているんだから!
ほら、おばあ様も来てね!」
そう言うと、イリニヤはスティーナの腕を取り、引っ張りながら応接室へと向かった。
「さ、座って?」
「はい。」
応接室に着くとイリニヤにそう促され、円形の木製の机に等間隔に置かれた布製のイスの一つにスティーナは座った。
「もうすぐお茶と、お菓子を持ってきてくれるわ!
おばあ様は飲んだ事あります?」
「どんなお茶かしら?楽しみね。」
少しして、イリニヤの侍女がワゴンを引いてやって来た。普段やりなれていない茶葉の入れ方に、この屋敷の侍女ではなく慣れた者が煎れているのだった。
「さ、飲んで?」
イリニヤはそう言って、目の前に置かれた緑色の茶を飲んだ。
「あー温かい。いつもの紅茶とは全く違うけれど、これはこれで美味しいと思うのよ。
でも好みは人それぞれだものね。だから、紅茶もちゃんと用意したわ。」
初めての見た目にスティーナはどんな味なのだろうと不思議に思いながら口に付ける。
と、苦味は少しあるがこれはこれで美味しいと思った。
「えぇ。紅茶とはまた違う風味で美味しいと思います。」
「本当!?」
「まぁ、別物な感じだね。確かに美味しい。」
「おばあ様も?良かった!
これはね、最近手に入ったの。宮殿に献上してくれたのよ。遥か東方にある国のお茶なのですって。」
「東方?それはまたすごいわね。」
「遠い国から、はるばる…」
「ねぇ、スティーナ姉様?…あ。
スティーナ姉様、私今十歳で、お姉さま
達より三歳年下なのだけれど、お姉様って呼んでもいいかしら?ヴァルナル兄様から話を聞いて、素敵だなって尊敬しているんです!」
「え?そ、尊敬…?」
スティーナは、いきなりそう言われ戸惑ってしまう。
「イリニヤ…どうしてあなたは気に入った人にはそうすぐにグイグイ距離を詰めるのかしら?スティーナが逃げ腰だわ。」
「え?だって、おばあ様?それは仕方のない事だと思いますわ!
私よりも年上なのに、尊敬出来ない人もいるんですよ!
尊敬出来る人に惹かれ、もっと知りたくなるのは至極当然の事ですわ!」
「それでもね、知りたくてもゆっくりと距離を縮めていくものでしょう。」
「おばあ様?私は王族です。いつ、どこかの殿方と婚約させられて嫁ぐか分からないのですよ?ゆっくり距離を縮めていたら、仲良くなる前に『明日、嫁げ!』なんて言われるかも知れないでしょう?」
(!!
イリニヤ様は十歳と言われていたわよね。それなのに、しっかりとご自分の立場をわきまえておられるのだわ。その為に、未来も考えつつ行動されているなんて!さすが王女様なのね。)
スティーナは、年下であるイリニヤがしっかりと自分の思いを言ったその言葉を聞いて、一見ぐいぐいとくる積極的な性格だと思ったイリニヤの行動には、理由がはっきりとあったのだと関心した。
「本当にそんな深いところまで考えているなら素晴らしいけれど、あまりグイグイ距離を詰め過ぎるんじゃないわ。相手の思いを汲まなければダメよ。」
「分かっているわ、おばあ様!
…スティーナ姉様?」
イリニヤは、スティーナが黙っているので顔を覗き込んで声を掛ける。
「あ、ごめんなさい!
イリニヤ様のお考えに感動していました。
えぇ、お好きにお呼びください。けれど、私そんな尊敬されるような人物ではないのですけれど。」
「何を言っているの!?素晴らしいに決まっているわ!
だってなにより、おばあ様といつも一緒に過ごしていられるのだもの。尊敬以外言葉が無いわ。こんな口うるさい人とずっと過ごせるのだもの。」
「何か言った?イリニヤ。」
「いいえ!
あぁ、良かった!スティーナ姉様、私では物足りないかもしれませんが、お祭りも一緒に行って下さいませね?」
「い、いいのですか?」
「もちろんですわ!あぁ、護衛の事でしたら安心なさって?選りすぐりが私についているのですから。
午後から、早速出掛けません?」
「スティーナ、大丈夫?無理なら遠慮しないで断っていいのよ。」
「はい、お気遣いありがとうございます、イロナ様。大丈夫です。」
「やった!じゃあ、昼食は今から少し食べて午後、早めに行きましょう!屋台でも食べたいわ!」
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こうして、スティーナは想像していなかった楽しく賑やかな時間を過ごしていった。
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