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25. スティーナの引っ越し
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ガシャーン!!
「もう!どうしてそうなの!?おかしいじゃない!あなた、ちゃんと学んでいるの!?身についていないんじゃないの!?」
スティーナは、床に転がって粉々に割れてしまったティーカップを見て、胸が痛んだ。いや、リンネアにそのように罵倒されて心傷つけられたのかもしれない。
(あーあ…また割れてしまったわ。とても素敵なカップだったのにもったいない…。)
けれどもスティーナは、そのように敢えて思い込むようにして、母に罵倒された言葉は気に止めないようにした。イロナからもヤーナからも、そのように言われていたからだ。
リンネアは心の病であるから、娘に平気で悲しい言葉を浴びせてくる。だが、リンネアにしたらそれが悪い事だと思っていない。それが病のせいであるからなのだから。
けれども、さすがにそう何度も何度も浴びせられてはスティーナまで心を壊してしまうとヤーナからイロナへ相談を持ち掛けたのだ。
イロナも、本当はそうするべきだったのではないかと薄々思っていた。だが、スティーナを母親と引き離していいものかと迷ってもいた。
だがヤーナから現状を聞きさすがにそろそろかと重い腰を上げ、自分の住む屋敷へ来ないかとスティーナへ話をする。
しかしスティーナの返事といえば、俯き否定の言葉を呟いた。
「え!…いえ……私は大丈夫です。」
それに承諾をしてしまえば、スティーナはなんだかリンネアを突き放すようでなかなか決断出来なかったのだ。
母と初めてお茶を共にしてから、六年。
スティーナは今では忙しく花祈りの勉強をしながら地方へも行ったりしていた為に、そんなに母と顔を合わす事もなかった。
だが、その分、お茶に誘われた時にお茶をゆっくりと楽しむ間もなく激しく感情をぶつけられる事が増えたのだ。
いつものようにリンネアが床へ放り投げたティーカップであったが、思いのほか勢いがあったようで割れた破片がスティーナに飛んできて、顔を擦り、傷を負ってしまった。
それを見たシエルとヤーナは顔色を変え、だがシエルは手を震わせながらもリンネアをいつものように寝室へと連れて行く。
ヤーナは素早くスティーナへと傍に寄り、目に涙を溜めながら部屋へ戻りましょうと促した。
そして、スティーナの自室へ戻り頬の擦った傷の手当てをしたヤーナは、スティーナの手を握り、涙を流しながら懇願した。
「スティーナ様、お願いですからイロナ様のご厚意をお受け下さい。スティーナ様がこれ以上傷つけられては、私ヤーナは…!」
「ヤーナ…ありがとう。私の事をそんなに想ってくれるのはきっとヤーナしか居ないわ。そうね…考えてみるわ。」
「ありがとうございます…ようございます……」
スティーナはさすがに今日ばかりは自分も少しだけ怖いと感じてしまった。その為、イロナが言った言葉をもう一度良く考えてみようと思った。そして、次にイロナが来た時に相談してみようと決心したのだった。
☆★
スティーナは、イロナが来た時にその事を相談してみると、対面に座っていたイロナは立ち上がりスティーナの隣へ座り直し、頭を引き寄せた。
「スティーナ…私はね、スティーナのいいようにすればいいと思っていたのよ、後悔のないようにね。
だけれど、さすがに口を挟ませてもらうわ。あぁ…ここね。うん、でも大丈夫、これならそのうち消える傷よ。でも、心に受けた傷はまた別なのよね。」
イロナは、スティーナの顔を覗き込み傷つけられた箇所を確認すると安心させるようにそう言った。
「スティーナが寂しいのなら、ヤーナも一緒に来る事。
ヤーナ、問題あるかしら?」
「いいえ!私もご一緒してよろしいのであれば是非に!」
「もちろんよ。私からモンスに言っておくから安心なさい。
さぁ!
そうと決まれば準備をしてくれる?事は早い方がいいわ。今日から一緒に行きましょうね。」
「え、今日?」
「どうしたの?怖じ気づいた?」
「いえ。イロナ様こそよろしいのですか?
ではお母様にご挨拶に…」
「私は常々考えていたもの。いつスティーナが来てくれても問題ないわ。
でもねぇ…リンネアへの挨拶は、スティーナがどうしてもしたいなら止めないわ。でもね、しない方がいい時もあるの。自己満足で挨拶するのかしら?
リンネアは、スティーナがなぜこの屋敷から去るのか全く理解出来ないはずよ。私は止めておいた方がいいと思うの。」
「それは…!
……そうですね。」
(自己満足だと言われたらそうかもしれないわ。だってお母様の気持ちを考えていなかったもの。)
「挨拶しなくてもリンネアは大して気にも止めないわ。テレサは挨拶していったの?」
「…どうだったのかしら。私は分からないわ。ヤーナ、知ってる?」
「いえ…私の知る限りでは、挨拶されてはいません。」
「そうでしょうね。
だいたい、親子とはいえすっかり回復したわけではないリンネアと一緒にお茶をする事も危険といえば危険だったのよ。
リンネアの心が穏やかになれば、その時に改めて話をすればいいの。ね?」
「分かりました。
あ!ではお母様にせめて、花祈りした花を残していってはいけませんか?」
「あぁ、本当にスティーナは優しい心の持ち主だわ!
でも、効くかは分からないわ。祈られた花を大切に出来ない者には、力も正常に働かないからね。」
「はい。」
そうして、庭に咲いていたクローバーを入念に祈ってシエルからリンネアへと渡るようにしてもらった。幸せに、という祈りを込めたのだった。
☆★
それからは、スティーナはイロナの住んでいるノルデーン家が所有する内の一つの屋敷に滞在して過ごしていく。
そこは、別荘のような感じで余生を過ごすにはもってこいの、湖が近くにある自然豊かな場所であった為にスティーナも居心地が良く、のんびりとした時間が流れる中、生活をしていった。
「もう!どうしてそうなの!?おかしいじゃない!あなた、ちゃんと学んでいるの!?身についていないんじゃないの!?」
スティーナは、床に転がって粉々に割れてしまったティーカップを見て、胸が痛んだ。いや、リンネアにそのように罵倒されて心傷つけられたのかもしれない。
(あーあ…また割れてしまったわ。とても素敵なカップだったのにもったいない…。)
けれどもスティーナは、そのように敢えて思い込むようにして、母に罵倒された言葉は気に止めないようにした。イロナからもヤーナからも、そのように言われていたからだ。
リンネアは心の病であるから、娘に平気で悲しい言葉を浴びせてくる。だが、リンネアにしたらそれが悪い事だと思っていない。それが病のせいであるからなのだから。
けれども、さすがにそう何度も何度も浴びせられてはスティーナまで心を壊してしまうとヤーナからイロナへ相談を持ち掛けたのだ。
イロナも、本当はそうするべきだったのではないかと薄々思っていた。だが、スティーナを母親と引き離していいものかと迷ってもいた。
だがヤーナから現状を聞きさすがにそろそろかと重い腰を上げ、自分の住む屋敷へ来ないかとスティーナへ話をする。
しかしスティーナの返事といえば、俯き否定の言葉を呟いた。
「え!…いえ……私は大丈夫です。」
それに承諾をしてしまえば、スティーナはなんだかリンネアを突き放すようでなかなか決断出来なかったのだ。
母と初めてお茶を共にしてから、六年。
スティーナは今では忙しく花祈りの勉強をしながら地方へも行ったりしていた為に、そんなに母と顔を合わす事もなかった。
だが、その分、お茶に誘われた時にお茶をゆっくりと楽しむ間もなく激しく感情をぶつけられる事が増えたのだ。
いつものようにリンネアが床へ放り投げたティーカップであったが、思いのほか勢いがあったようで割れた破片がスティーナに飛んできて、顔を擦り、傷を負ってしまった。
それを見たシエルとヤーナは顔色を変え、だがシエルは手を震わせながらもリンネアをいつものように寝室へと連れて行く。
ヤーナは素早くスティーナへと傍に寄り、目に涙を溜めながら部屋へ戻りましょうと促した。
そして、スティーナの自室へ戻り頬の擦った傷の手当てをしたヤーナは、スティーナの手を握り、涙を流しながら懇願した。
「スティーナ様、お願いですからイロナ様のご厚意をお受け下さい。スティーナ様がこれ以上傷つけられては、私ヤーナは…!」
「ヤーナ…ありがとう。私の事をそんなに想ってくれるのはきっとヤーナしか居ないわ。そうね…考えてみるわ。」
「ありがとうございます…ようございます……」
スティーナはさすがに今日ばかりは自分も少しだけ怖いと感じてしまった。その為、イロナが言った言葉をもう一度良く考えてみようと思った。そして、次にイロナが来た時に相談してみようと決心したのだった。
☆★
スティーナは、イロナが来た時にその事を相談してみると、対面に座っていたイロナは立ち上がりスティーナの隣へ座り直し、頭を引き寄せた。
「スティーナ…私はね、スティーナのいいようにすればいいと思っていたのよ、後悔のないようにね。
だけれど、さすがに口を挟ませてもらうわ。あぁ…ここね。うん、でも大丈夫、これならそのうち消える傷よ。でも、心に受けた傷はまた別なのよね。」
イロナは、スティーナの顔を覗き込み傷つけられた箇所を確認すると安心させるようにそう言った。
「スティーナが寂しいのなら、ヤーナも一緒に来る事。
ヤーナ、問題あるかしら?」
「いいえ!私もご一緒してよろしいのであれば是非に!」
「もちろんよ。私からモンスに言っておくから安心なさい。
さぁ!
そうと決まれば準備をしてくれる?事は早い方がいいわ。今日から一緒に行きましょうね。」
「え、今日?」
「どうしたの?怖じ気づいた?」
「いえ。イロナ様こそよろしいのですか?
ではお母様にご挨拶に…」
「私は常々考えていたもの。いつスティーナが来てくれても問題ないわ。
でもねぇ…リンネアへの挨拶は、スティーナがどうしてもしたいなら止めないわ。でもね、しない方がいい時もあるの。自己満足で挨拶するのかしら?
リンネアは、スティーナがなぜこの屋敷から去るのか全く理解出来ないはずよ。私は止めておいた方がいいと思うの。」
「それは…!
……そうですね。」
(自己満足だと言われたらそうかもしれないわ。だってお母様の気持ちを考えていなかったもの。)
「挨拶しなくてもリンネアは大して気にも止めないわ。テレサは挨拶していったの?」
「…どうだったのかしら。私は分からないわ。ヤーナ、知ってる?」
「いえ…私の知る限りでは、挨拶されてはいません。」
「そうでしょうね。
だいたい、親子とはいえすっかり回復したわけではないリンネアと一緒にお茶をする事も危険といえば危険だったのよ。
リンネアの心が穏やかになれば、その時に改めて話をすればいいの。ね?」
「分かりました。
あ!ではお母様にせめて、花祈りした花を残していってはいけませんか?」
「あぁ、本当にスティーナは優しい心の持ち主だわ!
でも、効くかは分からないわ。祈られた花を大切に出来ない者には、力も正常に働かないからね。」
「はい。」
そうして、庭に咲いていたクローバーを入念に祈ってシエルからリンネアへと渡るようにしてもらった。幸せに、という祈りを込めたのだった。
☆★
それからは、スティーナはイロナの住んでいるノルデーン家が所有する内の一つの屋敷に滞在して過ごしていく。
そこは、別荘のような感じで余生を過ごすにはもってこいの、湖が近くにある自然豊かな場所であった為にスティーナも居心地が良く、のんびりとした時間が流れる中、生活をしていった。
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