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28. 自分の気持ちと、イリニヤ王女からの発言
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「ヴァルナル、私も…。」
「え?」
思ったよりもか細い声になってしまったスティーナに、ヴァルナルは聞き直す。
「わ、私もヴァルナルと家族になりたい。」
すると、軽く五秒はヴァルナルの思考が停止したようで目を開いたまま表情も変えずに一言も発しなかった。
何も言葉を返してくれないヴァルナルに、心配になったスティーナは呟く。
「ヴァルナル…?」
「やった!やったぜー!!」
「!」
スティーナが呟いた事でヴァルナルはやっと動き出し、大きな声で叫んだ。それはヴァルナルにとったらかなり珍しく、周りにいるしっかりと礼儀作法を学んだ宮殿の使用人がビクリと肩を動かすほどだった。
スティーナも、そんなに大声を出して喜んでくれるとは思っておらず、思わず体をビクリと振るわせる程に驚いた。
「スティーナ、良かった!その言葉、撤回させないから。俺とこれから一緒に未来を進むんだからね!
はーオリヤンにはやきもきさせられたから、本当に良かった!」
「や、やきもき?」
「そうだよ!顔を合わせる度にオリヤン、すぐ煽ってくるんだ!
スティーナとどんなに仲が良いかを話してきてさ、その度に胸が苦しくなったよ。」
「オリヤンと私そんなに仲良くなかったけれど…?」
確かに、あの屋敷でたまにオリヤンとは会ったけれどいつも一緒に過ごしていた訳では無い。
基本的にオリヤンは力仕事や、子供達と外遊びをしていた。対してスティーナは、子供達には室内で絵本を読んだり、庭に出て咲いている花を教えたりしていた。
たまの休憩の時に話す事はあっても、オリヤンは遠慮していたのかスティーナとは絶対に二人きりにはならないようにしていたのだ。
「そっか!でもいい!これからは俺が、スティーナと仲良くなってやるんだからな!!」
ヴァルナルが本当に嬉しそうにそう言っているのを見て、スティーナもまた嬉しく思い胸が温かくなるのを感じた。
ヴァルナルはテーブルの指輪を取ると、スティーナの傍へ行って跪き、左の指にゆっくりと嵌め、それを満足そうにその姿勢のまま眺めている。
スティーナは恥ずかし気に、左手を上に上げ、嵌めてもらった指輪をじっくりと眺める。
「あー!こんな所でスティーナ姉さまを独占していたのね!!ヴァルナル兄さま、ずるいわ!」
と、少しだけ空いた扉を開けた人物がそう大声を上げた。
指輪を眺めていたスティーナが驚いてそちらを向くと、イリニヤ王女であった。手を腰に当て、どうやら怒っている様子で部屋へ入ってきた。
「ヴァルナル兄さま!私だってスティーナ姉さまとはなしを…え?ちょっと、聞いている?」
スティーナの近くで跪いているヴァルナルの前まで行ったイリニヤだったが、未だそこからスティーナの方を見ているヴァルナルを目にして、怒気を弱めて手のひらを顔の前でヒラヒラと動かした。
「あ?あぁ、イリニヤ。どうした?」
そこで初めて気づいたとでも言わんばかりのヴァルナルの様子に、呆れたように、でもすぐに何かに思い当たったようで口を開いたイリニヤ。
「あぁ、分かったわ。ヴァルナル兄さま、やっと気持ちを伝えたのね?で、そんなニヤニヤとした表情を浮かべているのね?」
「はぁ!?…イリニヤ。そんな事は無い。」
そう言いながらやっと、ヴァルナルは先ほどまで座っていた自分の席に戻った。
「もう!取り繕わなくてもいいわよ!
そんなにいつもと違うヴァルナル兄さまなんだもの、何かあったと思うに決まってるわ。それに、ヴァルナル兄さま付きの使用人達だってなんだか戸惑っているわよ。いつもの澄ましたお兄様じゃないって。」
「そ、そうか…?」
「それよりも!私はヴァルナル兄さまに用があったんじゃないの。スティーナ姉さまと話がしたかったのに、独占してずるいわ!」
「いや、だってやっとスティーナと会えるようになったんだからいいだろう?」
「そんな事言ったら、これからずっと会えるヴァルナル兄さまなんだから私に譲ってくれてもいいでしょう?私、もうすぐ出発なんですもの。」
「ぐっ…な、なら明日は譲ってやる。
今日は仕方ないだろ?王太子任命があるんだから、スティーナの気持ちを確かめたかったんだ!」
「そうねぇ…分かったわ、許します。
では明日は譲ってね、絶対よ!
スティーナ姉さま、明日は私と一緒に過ごしてくれる?」
「え、ええ。でも、イリニヤ王女、出発って…?」
「あぁ、私、結婚が決まったのよ。アールンダ国のバート王子がお相手なの。彼は今日もこれから国の代表として、王太子任命式には出席するみたい。
バート王子が帰る時に、私も嫁ぐ為に一緒に出発するわ。だからこれからはすぐには会えなくなってしまうの。」
「そ…え?」
スティーナは初めて聞くその話に、驚いた。自分が求婚された事でも驚いていたのに、年下のイリニヤも結婚が決まり嫁いでしまうという事に頭が追いつかない。
「この前会った時にはまだ本決まりじゃなかったのよ、だからスティーナ姉さまには教える事が出来なかったのよね、ごめんなさい。
でも、前々から言っていたでしょう?私はいつかは王族の義務として、どこかに嫁がないといけないって。それが今、なのね。」
「イリニヤ王女…。」
「あら!哀しそうな顔をしないで!だってハンサムなのよ、それに一度お会いしたのだけれど、お優しい方だったの。だからきっとうまくいくわ!
二人に負けない夫婦になってやるんだから!」
「イリニヤ王女…おめでとうございます。」
「フフフ、ありがとう。スティーナ姉さまもまずはおめでとう!
じゃ、そろそろ行くわ。明日、一緒にお茶しましょうね!」
「ありがとうございます。
ええ、楽しみです。」
そう言って、イリニヤはスティーナと約束を取り付けたからかウキウキとした足取りで部屋から出て行った。
「え?」
思ったよりもか細い声になってしまったスティーナに、ヴァルナルは聞き直す。
「わ、私もヴァルナルと家族になりたい。」
すると、軽く五秒はヴァルナルの思考が停止したようで目を開いたまま表情も変えずに一言も発しなかった。
何も言葉を返してくれないヴァルナルに、心配になったスティーナは呟く。
「ヴァルナル…?」
「やった!やったぜー!!」
「!」
スティーナが呟いた事でヴァルナルはやっと動き出し、大きな声で叫んだ。それはヴァルナルにとったらかなり珍しく、周りにいるしっかりと礼儀作法を学んだ宮殿の使用人がビクリと肩を動かすほどだった。
スティーナも、そんなに大声を出して喜んでくれるとは思っておらず、思わず体をビクリと振るわせる程に驚いた。
「スティーナ、良かった!その言葉、撤回させないから。俺とこれから一緒に未来を進むんだからね!
はーオリヤンにはやきもきさせられたから、本当に良かった!」
「や、やきもき?」
「そうだよ!顔を合わせる度にオリヤン、すぐ煽ってくるんだ!
スティーナとどんなに仲が良いかを話してきてさ、その度に胸が苦しくなったよ。」
「オリヤンと私そんなに仲良くなかったけれど…?」
確かに、あの屋敷でたまにオリヤンとは会ったけれどいつも一緒に過ごしていた訳では無い。
基本的にオリヤンは力仕事や、子供達と外遊びをしていた。対してスティーナは、子供達には室内で絵本を読んだり、庭に出て咲いている花を教えたりしていた。
たまの休憩の時に話す事はあっても、オリヤンは遠慮していたのかスティーナとは絶対に二人きりにはならないようにしていたのだ。
「そっか!でもいい!これからは俺が、スティーナと仲良くなってやるんだからな!!」
ヴァルナルが本当に嬉しそうにそう言っているのを見て、スティーナもまた嬉しく思い胸が温かくなるのを感じた。
ヴァルナルはテーブルの指輪を取ると、スティーナの傍へ行って跪き、左の指にゆっくりと嵌め、それを満足そうにその姿勢のまま眺めている。
スティーナは恥ずかし気に、左手を上に上げ、嵌めてもらった指輪をじっくりと眺める。
「あー!こんな所でスティーナ姉さまを独占していたのね!!ヴァルナル兄さま、ずるいわ!」
と、少しだけ空いた扉を開けた人物がそう大声を上げた。
指輪を眺めていたスティーナが驚いてそちらを向くと、イリニヤ王女であった。手を腰に当て、どうやら怒っている様子で部屋へ入ってきた。
「ヴァルナル兄さま!私だってスティーナ姉さまとはなしを…え?ちょっと、聞いている?」
スティーナの近くで跪いているヴァルナルの前まで行ったイリニヤだったが、未だそこからスティーナの方を見ているヴァルナルを目にして、怒気を弱めて手のひらを顔の前でヒラヒラと動かした。
「あ?あぁ、イリニヤ。どうした?」
そこで初めて気づいたとでも言わんばかりのヴァルナルの様子に、呆れたように、でもすぐに何かに思い当たったようで口を開いたイリニヤ。
「あぁ、分かったわ。ヴァルナル兄さま、やっと気持ちを伝えたのね?で、そんなニヤニヤとした表情を浮かべているのね?」
「はぁ!?…イリニヤ。そんな事は無い。」
そう言いながらやっと、ヴァルナルは先ほどまで座っていた自分の席に戻った。
「もう!取り繕わなくてもいいわよ!
そんなにいつもと違うヴァルナル兄さまなんだもの、何かあったと思うに決まってるわ。それに、ヴァルナル兄さま付きの使用人達だってなんだか戸惑っているわよ。いつもの澄ましたお兄様じゃないって。」
「そ、そうか…?」
「それよりも!私はヴァルナル兄さまに用があったんじゃないの。スティーナ姉さまと話がしたかったのに、独占してずるいわ!」
「いや、だってやっとスティーナと会えるようになったんだからいいだろう?」
「そんな事言ったら、これからずっと会えるヴァルナル兄さまなんだから私に譲ってくれてもいいでしょう?私、もうすぐ出発なんですもの。」
「ぐっ…な、なら明日は譲ってやる。
今日は仕方ないだろ?王太子任命があるんだから、スティーナの気持ちを確かめたかったんだ!」
「そうねぇ…分かったわ、許します。
では明日は譲ってね、絶対よ!
スティーナ姉さま、明日は私と一緒に過ごしてくれる?」
「え、ええ。でも、イリニヤ王女、出発って…?」
「あぁ、私、結婚が決まったのよ。アールンダ国のバート王子がお相手なの。彼は今日もこれから国の代表として、王太子任命式には出席するみたい。
バート王子が帰る時に、私も嫁ぐ為に一緒に出発するわ。だからこれからはすぐには会えなくなってしまうの。」
「そ…え?」
スティーナは初めて聞くその話に、驚いた。自分が求婚された事でも驚いていたのに、年下のイリニヤも結婚が決まり嫁いでしまうという事に頭が追いつかない。
「この前会った時にはまだ本決まりじゃなかったのよ、だからスティーナ姉さまには教える事が出来なかったのよね、ごめんなさい。
でも、前々から言っていたでしょう?私はいつかは王族の義務として、どこかに嫁がないといけないって。それが今、なのね。」
「イリニヤ王女…。」
「あら!哀しそうな顔をしないで!だってハンサムなのよ、それに一度お会いしたのだけれど、お優しい方だったの。だからきっとうまくいくわ!
二人に負けない夫婦になってやるんだから!」
「イリニヤ王女…おめでとうございます。」
「フフフ、ありがとう。スティーナ姉さまもまずはおめでとう!
じゃ、そろそろ行くわ。明日、一緒にお茶しましょうね!」
「ありがとうございます。
ええ、楽しみです。」
そう言って、イリニヤはスティーナと約束を取り付けたからかウキウキとした足取りで部屋から出て行った。
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