6 / 25
6. 昼食
しおりを挟む
昼食になりました。
食堂へ行くと、三歳上のお兄様とお父様もすでに座っておられました。
「遅くなりまして、すみません。」
私は、遅くなってしまったと思って謝罪を口にしました。
「いや?アイネルが目覚めて嬉しくて、仕事を早く切り上げたんだ。問題ないよ。辛くないか?辛かったら部屋に移動しようか?」
お父様、そんな言葉まで言ってくれます。
が、私の体は思ったよりも頑丈だったみたいで、十日も寝ていたというのに、それほど疲れていません。はじめこそちょっと体が硬い?と思いましたがいつの間にか普通に動かせました。
長い夢の中でも普通に生活していたからでしょうか?
「ありがとうございます、お父様。けれど、せっかくならご一緒したいのです。」
そう言って、お父様へニッコリと笑いかけた。心配ないですよ、という意味を込めて。
「そうかそうか。可愛い事を言ってくれるなぁ。」
お父様は、うんうんと頷きながらニコニコとしている。
「僕も知らせを聞いたから、休みをもらって帰って来て良かった。アイネルの元気な姿を見られて安心したよ。一時はどうなる事かと思ったからね。」
と、お兄様も言ってくれました。確か、十三歳になった今年から騎士団に入団して、精進しておられるのですよね。
「まぁ!カイヴィンもいると思ったら、休みをもらってきたの?騎士団は大丈夫ですの?」
お母様はそう言うと、心配そうにお兄様を見ました。
「ああ。大丈夫だよ。それだけ僕は普段はしっかり勤めているという事だからね。」
と、お兄様は言われました。
お兄様は普段家では怠惰な面を表に出すような、『練習なんて面倒だし疲れるから嫌だ』と木の陰で昼寝をしたりする人でしたのに、そんな言葉を聞くなんて驚きですわ。
「お兄様、ご心配をお掛けしましてすみません。お父様も、お母様も、すみませんでした。」
今朝私が目覚めた時も、お父様なんて慌てふためいていたし、お母様も言葉にはしないけれど、午前中ずっと傍にいてくれたもの。きっと心配を掛けてしまったのよね。
「あら、アイネルがこんなに元気なんだもの。気にしないで。それでね、とっても素晴らしい夢を見ていたのですって。昨年長雨で穀物があまり取れなかったじゃない?そのせいでうちの領地、昨年もギリギリで、今年もどうなるのか怪しいのでしょ?でもね、アイネルのその夢のおかげで、活路を見出せるかもしれないわよ!」
お母様はそう言ってくれ、お父様とお兄様の顔を順番に見て行った。
お父様とお兄様は二人共不思議そうに顔を見合わせ、お母様と私を見た。
「どういう事だ?子供の前で言う事ではないが、確かに今年はどうなるか怪しい。昨年はどうにか乗り切ったがな。それが、明るい兆しが見えると?それに、アイネル、長い夢を見たのか?それで、その…体は大丈夫なのか?」
「?体ですか?はい。ちょっと起きたすぐは長く寝ていたからか体が硬くて動かしにくく感じましたし、記憶も朧気でしたがだんだんと思い出しました。」
「そうか…それは本当に良かった!ずいぶんと前だがな。お神の戯れに遭った男に会った事があってな。そいつは世迷い言を常に言うようになり、周りから気が触れたと思われてな…最期は、自分から命を絶ったんだ。だから、」
「あなた!病み上がりのアイネルに言わないでちょうだい!あれは、あの人がいけないのよ!アイネルとは違うわ!」
「ああ、済まない。分かっている。アイネルはアイネルだ!だからこそ我々家族でアイネルを守っていこうじゃないか!」
「当たり前です。アイネル、何かあったらすぐに僕に言うんだよ。ユリウスの事も、僕がコテンパンにして黙らせておいたからね!」
「あら、なんでそこで第二王子の名前が出てくるの?」
「ユリウスがアイネルを突き飛ばしたから、お神の戯れに遭ったのかなと。」
「それは違う!確かに、王族に関連している事例が多い事は事実らしいが、むやみに憶測で物を言ってはいかんぞ。ユリウス様に何を言った?場合によってはカイヴィン、お前が不敬罪にされかねんぞ。」
「そんな事ないさ。ロイルもイザベラも加勢してくれたんだ。いざとなればロイルが見方してくれるさ。」
お父様は、頭を抱えだした。
「お前は何をしておるんだ…。ロイル様は第一王子として弟に活を入れただけかもしれんのだぞ。イザベラ様だって自分の兄の愚行に怒っただけで、それを一伯爵家のカイヴィンが一緒になってとは…。」
「非公式だし、ウェンディもいたから大丈夫だよ。こっちは被害者なわけだし。」
「ウェンディって、ロイル第一王子の婚約者の?」
ゆったりとした口調でお母様が話に加わりました。
「ああそうだよ、ウェンディ=ケラリス侯爵令嬢ね。あの時のメンバーで話していただけさ。心配ないよ。それよりも早く食べようよ。アイネルのその活路を後で教えてくれるかい?訓練してきたからお腹すいているんだ。」
食堂へ行くと、三歳上のお兄様とお父様もすでに座っておられました。
「遅くなりまして、すみません。」
私は、遅くなってしまったと思って謝罪を口にしました。
「いや?アイネルが目覚めて嬉しくて、仕事を早く切り上げたんだ。問題ないよ。辛くないか?辛かったら部屋に移動しようか?」
お父様、そんな言葉まで言ってくれます。
が、私の体は思ったよりも頑丈だったみたいで、十日も寝ていたというのに、それほど疲れていません。はじめこそちょっと体が硬い?と思いましたがいつの間にか普通に動かせました。
長い夢の中でも普通に生活していたからでしょうか?
「ありがとうございます、お父様。けれど、せっかくならご一緒したいのです。」
そう言って、お父様へニッコリと笑いかけた。心配ないですよ、という意味を込めて。
「そうかそうか。可愛い事を言ってくれるなぁ。」
お父様は、うんうんと頷きながらニコニコとしている。
「僕も知らせを聞いたから、休みをもらって帰って来て良かった。アイネルの元気な姿を見られて安心したよ。一時はどうなる事かと思ったからね。」
と、お兄様も言ってくれました。確か、十三歳になった今年から騎士団に入団して、精進しておられるのですよね。
「まぁ!カイヴィンもいると思ったら、休みをもらってきたの?騎士団は大丈夫ですの?」
お母様はそう言うと、心配そうにお兄様を見ました。
「ああ。大丈夫だよ。それだけ僕は普段はしっかり勤めているという事だからね。」
と、お兄様は言われました。
お兄様は普段家では怠惰な面を表に出すような、『練習なんて面倒だし疲れるから嫌だ』と木の陰で昼寝をしたりする人でしたのに、そんな言葉を聞くなんて驚きですわ。
「お兄様、ご心配をお掛けしましてすみません。お父様も、お母様も、すみませんでした。」
今朝私が目覚めた時も、お父様なんて慌てふためいていたし、お母様も言葉にはしないけれど、午前中ずっと傍にいてくれたもの。きっと心配を掛けてしまったのよね。
「あら、アイネルがこんなに元気なんだもの。気にしないで。それでね、とっても素晴らしい夢を見ていたのですって。昨年長雨で穀物があまり取れなかったじゃない?そのせいでうちの領地、昨年もギリギリで、今年もどうなるのか怪しいのでしょ?でもね、アイネルのその夢のおかげで、活路を見出せるかもしれないわよ!」
お母様はそう言ってくれ、お父様とお兄様の顔を順番に見て行った。
お父様とお兄様は二人共不思議そうに顔を見合わせ、お母様と私を見た。
「どういう事だ?子供の前で言う事ではないが、確かに今年はどうなるか怪しい。昨年はどうにか乗り切ったがな。それが、明るい兆しが見えると?それに、アイネル、長い夢を見たのか?それで、その…体は大丈夫なのか?」
「?体ですか?はい。ちょっと起きたすぐは長く寝ていたからか体が硬くて動かしにくく感じましたし、記憶も朧気でしたがだんだんと思い出しました。」
「そうか…それは本当に良かった!ずいぶんと前だがな。お神の戯れに遭った男に会った事があってな。そいつは世迷い言を常に言うようになり、周りから気が触れたと思われてな…最期は、自分から命を絶ったんだ。だから、」
「あなた!病み上がりのアイネルに言わないでちょうだい!あれは、あの人がいけないのよ!アイネルとは違うわ!」
「ああ、済まない。分かっている。アイネルはアイネルだ!だからこそ我々家族でアイネルを守っていこうじゃないか!」
「当たり前です。アイネル、何かあったらすぐに僕に言うんだよ。ユリウスの事も、僕がコテンパンにして黙らせておいたからね!」
「あら、なんでそこで第二王子の名前が出てくるの?」
「ユリウスがアイネルを突き飛ばしたから、お神の戯れに遭ったのかなと。」
「それは違う!確かに、王族に関連している事例が多い事は事実らしいが、むやみに憶測で物を言ってはいかんぞ。ユリウス様に何を言った?場合によってはカイヴィン、お前が不敬罪にされかねんぞ。」
「そんな事ないさ。ロイルもイザベラも加勢してくれたんだ。いざとなればロイルが見方してくれるさ。」
お父様は、頭を抱えだした。
「お前は何をしておるんだ…。ロイル様は第一王子として弟に活を入れただけかもしれんのだぞ。イザベラ様だって自分の兄の愚行に怒っただけで、それを一伯爵家のカイヴィンが一緒になってとは…。」
「非公式だし、ウェンディもいたから大丈夫だよ。こっちは被害者なわけだし。」
「ウェンディって、ロイル第一王子の婚約者の?」
ゆったりとした口調でお母様が話に加わりました。
「ああそうだよ、ウェンディ=ケラリス侯爵令嬢ね。あの時のメンバーで話していただけさ。心配ないよ。それよりも早く食べようよ。アイネルのその活路を後で教えてくれるかい?訓練してきたからお腹すいているんだ。」
50
あなたにおすすめの小説
婚約者に嫌われた伯爵令嬢は努力を怠らなかった
有川カナデ
恋愛
オリヴィア・ブレイジャー伯爵令嬢は、未来の公爵夫人を夢見て日々努力を重ねていた。その努力の方向が若干捻れていた頃、最愛の婚約者の口から拒絶の言葉を聞く。
何もかもが無駄だったと嘆く彼女の前に現れた、平民のルーカス。彼の助言のもと、彼女は変わる決意をする。
諸々ご都合主義、気軽に読んでください。数話で完結予定です。
公爵令嬢は運命の相手を間違える
あおくん
恋愛
エリーナ公爵令嬢は、幼い頃に決められた婚約者であるアルベルト王子殿下と仲睦まじく過ごしていた。
だが、学園へ通うようになるとアルベルト王子に一人の令嬢が近づくようになる。
アルベルト王子を誑し込もうとする令嬢と、そんな令嬢を許すアルベルト王子にエリーナは自分の心が離れていくのを感じた。
だがエリーナは既に次期王妃の座が確約している状態。
今更婚約を解消することなど出来るはずもなく、そんなエリーナは女に現を抜かすアルベルト王子の代わりに帝王学を学び始める。
そんなエリーナの前に一人の男性が現れた。
そんな感じのお話です。
なんでも思い通りにしないと気が済まない妹から逃げ出したい
木崎優
恋愛
「君には大変申し訳なく思っている」
私の婚約者はそう言って、心苦しそうに顔を歪めた。「私が悪いの」と言いながら瞳を潤ませている、私の妹アニエスの肩を抱きながら。
アニエスはいつだって私の前に立ちはだかった。
これまで何ひとつとして、私の思い通りになったことはない。すべてアニエスが決めて、両親はアニエスが言うことならと頷いた。
だからきっと、この婚約者の入れ替えも両親は快諾するのだろう。アニエスが決めたのなら間違いないからと。
もういい加減、妹から離れたい。
そう思った私は、魔術師の弟子ノエルに結婚を前提としたお付き合いを申し込んだ。互いに利のある契約として。
だけど弟子だと思ってたその人は実は魔術師で、しかも私を好きだったらしい。
婚約破棄ですか、では死にますね【完結】
砂礫レキ
恋愛
自分を物語の主役だと思い込んでいる夢見がちな妹、アンジェラの社交界デビューの日。
私伯爵令嬢エレオノーラはなぜか婚約者のギースに絶縁宣言をされていた。
場所は舞踏会場、周囲が困惑する中芝居がかった喋りでギースはどんどん墓穴を掘っていく。
氷の女である私より花の妖精のようなアンジェラと永遠の愛を誓いたいと。
そして肝心のアンジェラはうっとりと得意げな顔をしていた。まるで王子に愛を誓われる姫君のように。
私が冷たいのではなく二人の脳みそが茹っているだけでは?
婚約破棄は承ります。但し、今夜の主役は奪わせて貰うわよアンジェラ。
【完結】溺愛される意味が分かりません!?
もわゆぬ
恋愛
正義感強め、口調も強め、見た目はクールな侯爵令嬢
ルルーシュア=メライーブス
王太子の婚約者でありながら、何故か何年も王太子には会えていない。
学園に通い、それが終われば王妃教育という淡々とした毎日。
趣味はといえば可愛らしい淑女を観察する事位だ。
有るきっかけと共に王太子が再び私の前に現れ、彼は私を「愛しいルルーシュア」と言う。
正直、意味が分からない。
さっぱり系令嬢と腹黒王太子は無事に結ばれる事が出来るのか?
☆カダール王国シリーズ 短編☆
婚約者を義妹に奪われましたが貧しい方々への奉仕活動を怠らなかったおかげで、世界一大きな国の王子様と結婚できました
青空あかな
恋愛
アトリス王国の有名貴族ガーデニー家長女の私、ロミリアは亡きお母様の教えを守り、回復魔法で貧しい人を治療する日々を送っている。
しかしある日突然、この国の王子で婚約者のルドウェン様に婚約破棄された。
「ロミリア、君との婚約を破棄することにした。本当に申し訳ないと思っている」
そう言う(元)婚約者が新しく選んだ相手は、私の<義妹>ダーリー。さらには失意のどん底にいた私に、実家からの追放という仕打ちが襲い掛かる。
実家に別れを告げ、国境目指してトボトボ歩いていた私は、崖から足を踏み外してしまう。
落ちそうな私を助けてくれたのは、以前ケガを治した旅人で、彼はなんと世界一の超大国ハイデルベルク王国の王子だった。そのままの勢いで求婚され、私は彼と結婚することに。
一方、私がいなくなったガーデニー家やルドウェン様の評判はガタ落ちになる。そして、召使いがいなくなったガーデニー家に怪しい影が……。
※『小説家になろう』様と『カクヨム』様でも掲載しております
婚約破棄された令嬢が呆然としてる間に、周囲の人達が王子を論破してくれました
マーサ
恋愛
国王在位15年を祝うパーティの場で、第1王子であるアルベールから婚約破棄を宣告された侯爵令嬢オルタンス。
真意を問いただそうとした瞬間、隣国の王太子や第2王子、学友たちまでアルベールに反論し始め、オルタンスが一言も話さないまま事態は収束に向かっていく…。
生まれたことが間違いとまで言っておいて、今更擦り寄ろうなんて許される訳ないではありませんか。
木山楽斗
恋愛
伯父である子爵の元で、ルシェーラは苦しい生活を送っていた。
父親が不明の子ということもあって、彼女は伯母やいとこの令嬢から虐げられて、生きてきたのだ。
ルシェーラの唯一の味方は、子爵令息であるロナードだけだった。彼は家族の非道に心を痛めており、ルシェーラのことを気遣っていた。
そんな彼が子爵家を継ぐまで、自身の生活は変わらない。ルシェーラはずっとそう思っていた。
しかしある時、彼女が亡き王弟の娘であることが判明する。王位継承戦において負けて命を落とした彼は、ルシェーラを忘れ形見として残していたのだ。
王家の方針が当時とは変わったこともあって、ルシェーラは王族の一員として認められることになった。
すると彼女の周りで変化が起こった。今まで自分を虐げていた伯父や伯母やいとこの令嬢が、態度を一変させたのである。
それはルシェーラにとって、到底許せることではなかった。彼女は王家に子爵家であった今までのことを告げて、然るべき罰を与えるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる