2 / 25
2 お使いとは名ばかり
しおりを挟む
「…ロミーナ、どういう事?」
ルクレツィアは、先ほどアンネッタが言った言葉を反芻し、それでもやはり理解が及ばずにロミーナへと問いかける。
「ルクレツィア様…」
悲痛な面持ちで、ルクレツィアを見つめるロミーナはどう話そうかと口を開けずにいると、努めて明るく出された声が掛かる。
「こんな町はずれの教会へようこそ!
とりあえずお二人、こちらへ座りなさいな。」
先ほど紹介された、オリーヴィアにそう言われ、等間隔で並んでいる長椅子の、手で促された方へとロミーナとルクレツィアは座った。
「ルクレツィア、と言ったわね?」
近くで見れば、薄暗くても三人ともとても綺麗な顔立ちをしていると思ったルクレツィアは、はい、と呟くように声を出す。そして、三人ともなんとなく顔立ちが似ているようだ、とも思った。
「私はオリーヴィア。十四歳よ、よろしくね?」
「はい、私はルクレツィア=コラユータと申します。七歳です。よろしくお願いします。」
そう言って、深々と頭を下げる。ルクレツィアには、未だ理解が追いついていないが、自己紹介されたからにはと最近教わった言葉遣いを噛まないように伝える。
「そう…。」
そう言うと、オリーヴィアはルクレツィアの両手をまるで力を分け与えるようにギュッと握って言葉を掛ける。
「ルクレツィア、あなたはこれからここに住むと言われていたわね?」
「はい…」
改めて確認され、ルクレツィアは涙がこみ上げてきた。
なぜ手紙を届けるというお使いをしに来ただけだと思っていたのに自分はここで暮らすのか。コラユータ領に帰れないのか、どうしてロミーナはなにも教えてくれないのかと眉を下げる。
「でも、考えてみて?それって楽しそうよ?」
「え…?」
「だって、アンネッタってばちょっと…いいえ、ずいぶん変わってるのよ?此処にいるときっと飽きないわ!
ああ見えて、アンネッタは五十…何歳だっけ?忘れちゃったけど、そこらの大人のようにいろいろ言ってこないの!」
「まぁ、確かにそうだな!
アンネッタはその辺の大人とは…だいぶ違う。だから俺も羽を伸ばしにここに来たくなる。」
「そうね、息抜きしたくなる時に来れば、本当心が軽くなるわよね!」
オリーヴィアの言葉に、エルヴェツィオとリッカルダも声を合わせる。
「俺は十二歳だけど、周りの大人って本当に口煩いんだ。まだ十二歳って言ったり、もう十二歳って言ったりどっちなんだよ!ってさー!」
「エルヴェツィオは大変だもんねー!
ルクレツィア、私は十一歳よ。何か困った事があったらいつでも私に言ってね!ここで暮らすなら顔を合わせる事も多いものね!」
明るい感じで話す三人に、ルクレツィアは少し気持ちが落ち着いてきたのか顔を上げて質問をする。
「…皆さんもここで暮らしてるのですか?」
「いや?」
「違うわ。」
「そうであったらどんなにいいか…。」
ルクレツィアの何気ない問いに、エルヴェツィオもリッカルダもオリーヴィアも、首が折れたかのように下を向き項垂れたので、三人の家はそんなに辛いところなのかと想像し、慌ててルクレツィアは言葉を繋ぐ。
「あ、でも!じゃあよくここの教会に来るって事ですか?」
「そうね…教会というより、アンネッタに会いにね!
ここは、アンネッタの家なの。けど時には神に祈りたくなったらたまには祈ればいい…って失礼な言い方かもしれないけど、アンネッタの暮らす家の中に礼拝堂があるって感じかしら。
…あら?それってとても贅沢よね?」
そうオリーヴィアが答えると、エルヴェツィオもリッカルダも補足する。
「ま、どっちでもいいだろ?
さっきもアンネッタが言ってたけど、ここは身分も年齢も関係なく過ごせるんだから、意外と快適なんだよ。」
「少なくとも、私達にとっては、でしょう?」
「まぁ…そうともいうわね。
でも、コラユータ伯爵の娘であるあなたも、これからはそういう立場なんじゃない?
きっと、ここで暮らすという事はしばらくは伯爵家の事は心の中だけに閉まっておくべきなんだと思うわ。生活がガラリと変わるだろうし。
ねぇ?そこの…ロミーナ?」
「は、え…は、はい!」
「ロミーナ…あなたもそうよ?いい?あなたの立場でもそうよ?ここでは、地位なんて関係ないのよ。言いたい事、分かるわね?」
「は、はい!いえ、ですが…あの…」
「ロミーナ?」
いつもキビキビとしているロミーナが、口ごもっているのを聞き、どうしたのかとルクレツィアはロミーナの顔を覗き込むと、オリーヴィアは微笑み言葉を繋ぐ。
「うふふ…仕方ないわよね。でも、ここはそういうところよ。だから、そう堅苦しくなくていいのよ、ゆっくり慣れなさいね?」
「はい、承知いた…分かりました。」
先ほどから言われているが、ここは地位も関係ないということ。だから言葉遣いもそれほど畏まったものでもなくていい、と言われたのだからとロミーナは言い直した。
だが、一使用人であるロミーナには違和感しかなく、そのような言葉遣いでいいものかと悩みながら口にする。
「まぁ、妥協点ね。
…あ、アンネッタが帰ってきたわよ?」
ルクレツィアは、先ほどアンネッタが言った言葉を反芻し、それでもやはり理解が及ばずにロミーナへと問いかける。
「ルクレツィア様…」
悲痛な面持ちで、ルクレツィアを見つめるロミーナはどう話そうかと口を開けずにいると、努めて明るく出された声が掛かる。
「こんな町はずれの教会へようこそ!
とりあえずお二人、こちらへ座りなさいな。」
先ほど紹介された、オリーヴィアにそう言われ、等間隔で並んでいる長椅子の、手で促された方へとロミーナとルクレツィアは座った。
「ルクレツィア、と言ったわね?」
近くで見れば、薄暗くても三人ともとても綺麗な顔立ちをしていると思ったルクレツィアは、はい、と呟くように声を出す。そして、三人ともなんとなく顔立ちが似ているようだ、とも思った。
「私はオリーヴィア。十四歳よ、よろしくね?」
「はい、私はルクレツィア=コラユータと申します。七歳です。よろしくお願いします。」
そう言って、深々と頭を下げる。ルクレツィアには、未だ理解が追いついていないが、自己紹介されたからにはと最近教わった言葉遣いを噛まないように伝える。
「そう…。」
そう言うと、オリーヴィアはルクレツィアの両手をまるで力を分け与えるようにギュッと握って言葉を掛ける。
「ルクレツィア、あなたはこれからここに住むと言われていたわね?」
「はい…」
改めて確認され、ルクレツィアは涙がこみ上げてきた。
なぜ手紙を届けるというお使いをしに来ただけだと思っていたのに自分はここで暮らすのか。コラユータ領に帰れないのか、どうしてロミーナはなにも教えてくれないのかと眉を下げる。
「でも、考えてみて?それって楽しそうよ?」
「え…?」
「だって、アンネッタってばちょっと…いいえ、ずいぶん変わってるのよ?此処にいるときっと飽きないわ!
ああ見えて、アンネッタは五十…何歳だっけ?忘れちゃったけど、そこらの大人のようにいろいろ言ってこないの!」
「まぁ、確かにそうだな!
アンネッタはその辺の大人とは…だいぶ違う。だから俺も羽を伸ばしにここに来たくなる。」
「そうね、息抜きしたくなる時に来れば、本当心が軽くなるわよね!」
オリーヴィアの言葉に、エルヴェツィオとリッカルダも声を合わせる。
「俺は十二歳だけど、周りの大人って本当に口煩いんだ。まだ十二歳って言ったり、もう十二歳って言ったりどっちなんだよ!ってさー!」
「エルヴェツィオは大変だもんねー!
ルクレツィア、私は十一歳よ。何か困った事があったらいつでも私に言ってね!ここで暮らすなら顔を合わせる事も多いものね!」
明るい感じで話す三人に、ルクレツィアは少し気持ちが落ち着いてきたのか顔を上げて質問をする。
「…皆さんもここで暮らしてるのですか?」
「いや?」
「違うわ。」
「そうであったらどんなにいいか…。」
ルクレツィアの何気ない問いに、エルヴェツィオもリッカルダもオリーヴィアも、首が折れたかのように下を向き項垂れたので、三人の家はそんなに辛いところなのかと想像し、慌ててルクレツィアは言葉を繋ぐ。
「あ、でも!じゃあよくここの教会に来るって事ですか?」
「そうね…教会というより、アンネッタに会いにね!
ここは、アンネッタの家なの。けど時には神に祈りたくなったらたまには祈ればいい…って失礼な言い方かもしれないけど、アンネッタの暮らす家の中に礼拝堂があるって感じかしら。
…あら?それってとても贅沢よね?」
そうオリーヴィアが答えると、エルヴェツィオもリッカルダも補足する。
「ま、どっちでもいいだろ?
さっきもアンネッタが言ってたけど、ここは身分も年齢も関係なく過ごせるんだから、意外と快適なんだよ。」
「少なくとも、私達にとっては、でしょう?」
「まぁ…そうともいうわね。
でも、コラユータ伯爵の娘であるあなたも、これからはそういう立場なんじゃない?
きっと、ここで暮らすという事はしばらくは伯爵家の事は心の中だけに閉まっておくべきなんだと思うわ。生活がガラリと変わるだろうし。
ねぇ?そこの…ロミーナ?」
「は、え…は、はい!」
「ロミーナ…あなたもそうよ?いい?あなたの立場でもそうよ?ここでは、地位なんて関係ないのよ。言いたい事、分かるわね?」
「は、はい!いえ、ですが…あの…」
「ロミーナ?」
いつもキビキビとしているロミーナが、口ごもっているのを聞き、どうしたのかとルクレツィアはロミーナの顔を覗き込むと、オリーヴィアは微笑み言葉を繋ぐ。
「うふふ…仕方ないわよね。でも、ここはそういうところよ。だから、そう堅苦しくなくていいのよ、ゆっくり慣れなさいね?」
「はい、承知いた…分かりました。」
先ほどから言われているが、ここは地位も関係ないということ。だから言葉遣いもそれほど畏まったものでもなくていい、と言われたのだからとロミーナは言い直した。
だが、一使用人であるロミーナには違和感しかなく、そのような言葉遣いでいいものかと悩みながら口にする。
「まぁ、妥協点ね。
…あ、アンネッタが帰ってきたわよ?」
228
あなたにおすすめの小説
前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします
柚木ゆず
恋愛
※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。
我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。
けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。
「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」
そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。
乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!
ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。
相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。
結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。
現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう…
その時に前世の記憶を取り戻すのだった…
「悪役令嬢の兄の婚約者って…」
なんとも微妙なポジション。
しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。
お姉様。ずっと隠していたことをお伝えしますね ~私は不幸ではなく幸せですよ~
柚木ゆず
恋愛
今日は私が、ラファオール伯爵家に嫁ぐ日。ついにハーオット子爵邸を出られる時が訪れましたので、これまで隠していたことをお伝えします。
お姉様たちは私を苦しめるために、私が苦手にしていたクロード様と政略結婚をさせましたよね?
ですがそれは大きな間違いで、私はずっとクロード様のことが――
【完結】没落寸前の貧乏令嬢、お飾りの妻が欲しかったらしい旦那様と白い結婚をしましたら
Rohdea
恋愛
婚期を逃し、没落寸前の貧乏男爵令嬢のアリスは、
ある日、父親から結婚相手を紹介される。
そのお相手は、この国の王女殿下の護衛騎士だったギルバート。
彼は最近、とある事情で王女の護衛騎士を辞めて実家の爵位を継いでいた。
そんな彼が何故、借金の肩代わりをしてまで私と結婚を……?
と思ったら、
どうやら、彼は“お飾りの妻”を求めていたらしい。
(なるほど……そういう事だったのね)
彼の事情を理解した(つもり)のアリスは、その結婚を受け入れる事にした。
そうして始まった二人の“白い結婚”生活……これは思っていたよりうまくいっている?
と、思ったものの、
何故かギルバートの元、主人でもあり、
彼の想い人である(はずの)王女殿下が妙な動きをし始めて……
絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので
ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。
しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。
異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。
異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。
公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。
『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。
更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。
だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。
ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。
モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて――
奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。
異世界、魔法のある世界です。
色々ゆるゆるです。
姉と妹の常識のなさは父親譲りのようですが、似てない私は養子先で運命の人と再会できました
珠宮さくら
恋愛
スヴェーア国の子爵家の次女として生まれたシーラ・ヘイデンスタムは、母親の姉と同じ髪色をしていたことで、母親に何かと昔のことや隣国のことを話して聞かせてくれていた。
そんな最愛の母親の死後、シーラは父親に疎まれ、姉と妹から散々な目に合わされることになり、婚約者にすら誤解されて婚約を破棄することになって、居場所がなくなったシーラを助けてくれたのは、伯母のエルヴィーラだった。
同じ髪色をしている伯母夫妻の養子となってからのシーラは、姉と妹以上に実の父親がどんなに非常識だったかを知ることになるとは思いもしなかった。
【完結】偽者扱いされた令嬢は、元婚約者たちがどうなろうと知ったことではない
風見ゆうみ
恋愛
クックルー伯爵家の長女ファリミナは、家族とはうまくいっていないものの、婚約者であり、若き侯爵のメイフとはうまくいっていると思っていた。
メイフとの結婚が近づいてきたある日、彼がファリミナの前に一人の女性を連れてきた。メイフに寄り添う可憐な女性は、こう名乗った。
「わたくし、クックルー伯爵家の長女、ファリミナと申します」
この女性は平民だが、メイフの命の恩人だった。メイフは自分との結婚を望む彼女のためにファリミナの身分を与えるという暴挙に出たのだ。
家族や友人たちは買収されており、本当のファリミナを偽者だと訴える。
メイフが用意したボロ家に追いやられたファリミナだったが、メイフの世話にはならず、平民のファリとして新しい生活を送ることに決める。
ファリとして新しい生活の基盤を整えた頃、元家族はファリミナがいたことにより、自分たちの生活が楽だったことを知る。そして、メイフは自分が馬鹿だったと後悔し始め、自分を愛しているはずのファリミナに会いに行くのだが――。
幸せじゃないのは聖女が祈りを怠けたせい? でしたら、本当に怠けてみますね
柚木ゆず
恋愛
『最近俺達に不幸が多いのは、お前が祈りを怠けているからだ』
王太子レオンとその家族によって理不尽に疑われ、沢山の暴言を吐かれた上で監視をつけられてしまった聖女エリーナ。そんなエリーナとレオン達の人生は、この出来事を切っ掛けに一変することになるのでした――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる