【完結】教会で暮らす事になった伯爵令嬢は思いのほか長く滞在するが、幸せを掴みました。

まりぃべる

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2 お使いとは名ばかり

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「…ロミーナ、どういう事?」


 ルクレツィアは、先ほどアンネッタが言った言葉を反芻し、それでもやはり理解が及ばずにロミーナへと問いかける。


「ルクレツィア様…」


 悲痛な面持ちで、ルクレツィアを見つめるロミーナはどう話そうかと口を開けずにいると、努めて明るく出された声が掛かる。


「こんな町はずれの教会へようこそ!
 とりあえずお二人、こちらへ座りなさいな。」


 先ほど紹介された、オリーヴィアにそう言われ、等間隔で並んでいる長椅子の、手で促された方へとロミーナとルクレツィアは座った。


「ルクレツィア、と言ったわね?」


 近くで見れば、薄暗くても三人ともとても綺麗な顔立ちをしていると思ったルクレツィアは、はい、と呟くように声を出す。そして、三人ともなんとなく顔立ちが似ているようだ、とも思った。


「私はオリーヴィア。十四歳よ、よろしくね?」

「はい、私はルクレツィア=コラユータと申します。七歳です。よろしくお願いします。」


 そう言って、深々と頭を下げる。ルクレツィアには、未だ理解が追いついていないが、自己紹介されたからにはと最近教わった言葉遣いを噛まないように伝える。


「そう…。」


 そう言うと、オリーヴィアはルクレツィアの両手をまるで力を分け与えるようにギュッと握って言葉を掛ける。


「ルクレツィア、あなたはこれからここに住むと言われていたわね?」

「はい…」


 改めて確認され、ルクレツィアは涙がこみ上げてきた。
 なぜ手紙を届けるというお使いをしに来ただけだと思っていたのに自分はここで暮らすのか。コラユータ領に帰れないのか、どうしてロミーナはなにも教えてくれないのかと眉を下げる。


「でも、考えてみて?それって楽しそうよ?」

「え…?」

「だって、アンネッタってばちょっと…いいえ、ずいぶん変わってるのよ?此処にいるときっと飽きないわ!
 ああ見えて、アンネッタは五十…何歳だっけ?忘れちゃったけど、そこらの大人のようにいろいろ言ってこないの!」

「まぁ、確かにそうだな!
 アンネッタはその辺の大人とは…だいぶ違う。だから俺も羽を伸ばしにここに来たくなる。」

「そうね、息抜きしたくなる時に来れば、本当心が軽くなるわよね!」


 オリーヴィアの言葉に、エルヴェツィオとリッカルダも声を合わせる。


「俺は十二歳だけど、周りの大人って本当に口煩いんだ。って言ったり、って言ったりどっちなんだよ!ってさー!」

「エルヴェツィオは大変だもんねー!
 ルクレツィア、私は十一歳よ。何か困った事があったらいつでも私に言ってね!ここで暮らすなら顔を合わせる事も多いものね!」


 明るい感じで話す三人に、ルクレツィアは少し気持ちが落ち着いてきたのか顔を上げて質問をする。


「…皆さんもここで暮らしてるのですか?」

「いや?」
「違うわ。」
「そうであったらどんなにいいか…。」


 ルクレツィアの何気ない問いに、エルヴェツィオもリッカルダもオリーヴィアも、首が折れたかのように下を向き項垂れたので、三人の家はそんなに辛いところなのかと想像し、慌ててルクレツィアは言葉を繋ぐ。


「あ、でも!じゃあよくここの教会に来るって事ですか?」

「そうね…教会というより、アンネッタに会いにね!
 ここは、アンネッタの家なの。けど時には神に祈りたくなったらたまには祈ればいい…って失礼な言い方かもしれないけど、アンネッタの暮らす家の中に礼拝堂があるって感じかしら。
 …あら?それってとても贅沢よね?」


 そうオリーヴィアが答えると、エルヴェツィオもリッカルダも補足する。


「ま、どっちでもいいだろ?
 さっきもアンネッタが言ってたけど、ここは身分も年齢も関係なく過ごせるんだから、意外と快適なんだよ。」

「少なくとも、私達にとっては、でしょう?」

「まぁ…そうともいうわね。
 でも、コラユータ伯爵の娘であるあなたも、これからはそういう立場なんじゃない?
 きっと、ここで暮らすという事はしばらくは伯爵家の事は心の中だけに閉まっておくべきなんだと思うわ。生活がガラリと変わるだろうし。
 ねぇ?そこの…ロミーナ?」

「は、え…は、はい!」

「ロミーナ…あなたもそうよ?いい?あなたの立場でもそうよ?ここでは、地位なんて関係ないのよ。言いたい事、分かるわね?」

「は、はい!いえ、ですが…あの…」

「ロミーナ?」


 いつもキビキビとしているロミーナが、口ごもっているのを聞き、どうしたのかとルクレツィアはロミーナの顔を覗き込むと、オリーヴィアは微笑み言葉を繋ぐ。


「うふふ…仕方ないわよね。でも、ここはそういうところよ。だから、そう堅苦しくなくていいのよ、ゆっくり慣れなさいね?」

「はい、承知いた…分かりました。」


 先ほどから言われているが、ここは地位も関係ないということ。だから言葉遣いもそれほど畏まったものでもなくていい、と言われたのだからとロミーナは言い直した。
 だが、一使用人であるロミーナには違和感しかなく、そのような言葉遣いでいいものかと悩みながら口にする。


「まぁ、妥協点ね。
 …あ、アンネッタが帰ってきたわよ?」
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