【完結】教会で暮らす事になった伯爵令嬢は思いのほか長く滞在するが、幸せを掴みました。

まりぃべる

文字の大きさ
5 / 25

5. 教会の住人アンネッタ

しおりを挟む
 《アンネッタの心境》




(はぁ…どうしてこうなったのかしら…。)


 アンネッタは大きく息を吐いた。


 アンネッタは五十四歳。見た目はこの国では珍しく桃色の髪色をしており、昔よりは少し白髪も生えてきたけれど桃色と合わさり他には見かけない容姿だ。それに自ら動いて生活しているからか体も丈夫で若々しく、四十代…いや三十代と言われても頷けるほどである。

 
 人生生きていれば楽しい事も辛い事もある。まさにアンネッタの人生は波瀾万丈であったーーー。



 幼い頃、いつの間にか母親に置き去りにされた。
 けれども優しい人々に助けられ育てられたのだが、成長するにつれ他には無い珍しさと美しさに磨きがかかってしまい、とうとうアンネッタの美貌が原因とも言える事件が起き、貴族社会から交流を断ちこの教会で暮らすようにとその時の国王から言われたのだ。


 十四歳でこの教会に来た時には、初めこそ驚いたが時間がたっぷりとあったためか何でも自分で作る事は思いのほか愉快で、アンネッタの代わり映えのしない毎日に彩りを添えた。

 水を川から汲んで何度も運ぶのは限度があると台車を作ったり、薪割りも少しの力で出来るような手製の薪割り機も自ら作った。


 週に何度か、食料や、頼めば生活に必要なものをこの教会に持ってきてくれる人がおり、身の丈に合った材料や量ではあったが、アンネッタはそれで充分であった。


 しかし何年もすると荷物を届けてくれる人だけではなく、身なりの素晴らしくいい少年が度々一人で現れるようになった。ほんの僅かな時間であったが、人と話すことの少なくなったアンネッタにとって、苦痛な時間であっといえば嘘になる。そう、実にいい気分転換であった。

 いつも一人で来るその身なりのいい少年が、秘密の地下通路を通って来てるのだと知った時には驚いた。


「秘密の地下通路!?」

「あ、内緒だよ!絶対に内緒!!昔は、避難通路だったんだって。今は使われてないから、専用通路さ!」


(…だからこんなに身なりのいい少年が、お供も付けずにフラフラこんな所まで来れたのね。そこを通れば安全なのね、きっと。でも、そんなものがあったとは知らなかったわ。)


 やがてその少年は青年となり、頻度も子供の時に比べてかなり少なくなると、父親の仕事を引き継ぐのだと言って来なくなった。


 また、前のような生活に戻ると少しだけ寂しくはあったが、思えばアンネッタの人生、出会った人とは少しすると別れが付き纏っていた。


(ま、生まれ育った土地にずっと住んでいるわけでもないし、そんなものよね。)


 アンネッタはそう割り切る事で、ここでの暮らしを続けていた。

 話す回数も減り、訪ねてくる人なんてほとんどいない生活ともなれば、言葉遣いも粗野で適当になってくる。いつしか教わった丁寧な言葉遣いや所作なんかは、生活の妨げになると庶民のそれになっていく。

 稀に、王都と、この先の山道の遥か先に他国へと繋がる港町とを繋ぐ道の途中にあるこの教会に旅人が迷い込んで来る事もあるが、それも二、三日相手をすれば去って行く。


 …それが、また、何年も過ぎるとあの時の少年に面影のある子供達ーーオリーヴィア達ーーが、次々と訪れる事となった。


(なんでまた!?)


 アンネッタはその度に首を捻るが、まぁいいかと相手をする。


(面倒だわ。…どうせまた、大きくなればその内来なくなるんでしょうに。)


 そう悪態を付きながらも、またしばらくは賑やかな日々が続くのだと口角は上がる。



 そして、今。

 今度はしばらく共に住むという同居人が三人も増えたのだ。


(誰に私の事を聞いたのやら…でも、ま、そんな事どうでもいいか。)


 アンネッタの顔は、綻んでいるのだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず
恋愛
 ※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。  我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。  けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。 「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」  そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!

ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。 相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。 結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。 現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう… その時に前世の記憶を取り戻すのだった… 「悪役令嬢の兄の婚約者って…」 なんとも微妙なポジション。 しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。

お姉様。ずっと隠していたことをお伝えしますね ~私は不幸ではなく幸せですよ~

柚木ゆず
恋愛
 今日は私が、ラファオール伯爵家に嫁ぐ日。ついにハーオット子爵邸を出られる時が訪れましたので、これまで隠していたことをお伝えします。  お姉様たちは私を苦しめるために、私が苦手にしていたクロード様と政略結婚をさせましたよね?  ですがそれは大きな間違いで、私はずっとクロード様のことが――

【完結】没落寸前の貧乏令嬢、お飾りの妻が欲しかったらしい旦那様と白い結婚をしましたら

Rohdea
恋愛
婚期を逃し、没落寸前の貧乏男爵令嬢のアリスは、 ある日、父親から結婚相手を紹介される。 そのお相手は、この国の王女殿下の護衛騎士だったギルバート。 彼は最近、とある事情で王女の護衛騎士を辞めて実家の爵位を継いでいた。 そんな彼が何故、借金の肩代わりをしてまで私と結婚を……? と思ったら、 どうやら、彼は“お飾りの妻”を求めていたらしい。 (なるほど……そういう事だったのね) 彼の事情を理解した(つもり)のアリスは、その結婚を受け入れる事にした。 そうして始まった二人の“白い結婚”生活……これは思っていたよりうまくいっている? と、思ったものの、 何故かギルバートの元、主人でもあり、 彼の想い人である(はずの)王女殿下が妙な動きをし始めて……

絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので

ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。 しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。 異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。 異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。 公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。 『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。 更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。 だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。 ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。 モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて―― 奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。 異世界、魔法のある世界です。 色々ゆるゆるです。

姉と妹の常識のなさは父親譲りのようですが、似てない私は養子先で運命の人と再会できました

珠宮さくら
恋愛
スヴェーア国の子爵家の次女として生まれたシーラ・ヘイデンスタムは、母親の姉と同じ髪色をしていたことで、母親に何かと昔のことや隣国のことを話して聞かせてくれていた。 そんな最愛の母親の死後、シーラは父親に疎まれ、姉と妹から散々な目に合わされることになり、婚約者にすら誤解されて婚約を破棄することになって、居場所がなくなったシーラを助けてくれたのは、伯母のエルヴィーラだった。 同じ髪色をしている伯母夫妻の養子となってからのシーラは、姉と妹以上に実の父親がどんなに非常識だったかを知ることになるとは思いもしなかった。

【完結】偽者扱いされた令嬢は、元婚約者たちがどうなろうと知ったことではない

風見ゆうみ
恋愛
クックルー伯爵家の長女ファリミナは、家族とはうまくいっていないものの、婚約者であり、若き侯爵のメイフとはうまくいっていると思っていた。 メイフとの結婚が近づいてきたある日、彼がファリミナの前に一人の女性を連れてきた。メイフに寄り添う可憐な女性は、こう名乗った。 「わたくし、クックルー伯爵家の長女、ファリミナと申します」 この女性は平民だが、メイフの命の恩人だった。メイフは自分との結婚を望む彼女のためにファリミナの身分を与えるという暴挙に出たのだ。 家族や友人たちは買収されており、本当のファリミナを偽者だと訴える。 メイフが用意したボロ家に追いやられたファリミナだったが、メイフの世話にはならず、平民のファリとして新しい生活を送ることに決める。 ファリとして新しい生活の基盤を整えた頃、元家族はファリミナがいたことにより、自分たちの生活が楽だったことを知る。そして、メイフは自分が馬鹿だったと後悔し始め、自分を愛しているはずのファリミナに会いに行くのだが――。

幸せじゃないのは聖女が祈りを怠けたせい? でしたら、本当に怠けてみますね

柚木ゆず
恋愛
『最近俺達に不幸が多いのは、お前が祈りを怠けているからだ』  王太子レオンとその家族によって理不尽に疑われ、沢山の暴言を吐かれた上で監視をつけられてしまった聖女エリーナ。そんなエリーナとレオン達の人生は、この出来事を切っ掛けに一変することになるのでした――

処理中です...