【完結】教会で暮らす事になった伯爵令嬢は思いのほか長く滞在するが、幸せを掴みました。

まりぃべる

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14. 結果

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《サフランをルクレツィアからもらった時に少し戻ります》




「スパーノ、これを父上と母上に飲ますように指示してくれ!
 …いや、俺が直々に飲ますから、今から行こう。」


 “息抜き”から帰って来たエルヴェツィオが、そこで待っていたスパーノへと告げるとスタスタと歩き出した。


「ええと、エルヴェツィオ様。は何でしょうか?」


 スパーノは“息抜き”にはついて行ってないから、エルヴェツィオが見せた小瓶に何が入っているのかが見当も付かずそう返す。どういう経緯で誰にもらった物なのか不明で、少ない情報で精査しなければならないと頭を巡らす。


「あぁ、これはサフランらしい。
 これを茶にして父上と母上に飲ます。朝晩一度ずつだな。
 何でそれを思い付かなかったんだろうな。早くやっていればもしかしたら…」


 最後の言葉は、自分に対して言ったのかブツブツと呟くよう言葉をはき出したエルヴェツィオ。


「…それをすると?」

「症状が緩和されるかもしれん。」

「…承知しました。けれど、それはその…大丈夫ですか?」


 王太子であるエルヴェツィオは十二歳の割にかなりしっかりしている。今も陛下の代理として国政を宰相と共に行っているので、物事を見極める力も兼ね備えているし迂闊に情に流されたり、騙される事は無いと思っている。
 それでも、エルヴェツィオの父と母は、国王陛下と王妃という事で、ただでさえ今床に伏しているのにこれ以上体調が悪くなり最悪の場合を迎えてしまったらと確認せずにはいられなかった。


「ルクレツィアがくれた。コラユータ領で使っていたそうだ。お前もコラユータ領のサフランは上質だと聞いたのだろう?
 効能は俺が証明する。」


 確かに、エルヴェツィオは“息抜き”に出掛ける前よりもかなりすっきりとした顔付きになっている。普段も、帰ってくるとやけに顔付きは良くなり元気になって帰ってきていた。
 それは、飲んできたからなのか、それともルクレツィア嬢に会っていたからなのかは判断が付かない。
 そこでスパーノは妥協案を出す。


「…では、お出しになる前に私が飲んでも?」


 スパーノが、コラユータ領の状況を確認しに行った時確かに目の前に広がるサフランの畑も見たし、それで伯爵とその弟との騒動があったのも使用人から聴取した。だが、あとは次兄のバルトロに引き継いだし、その瓶の中身が本当にコラユータ産のサフランなのかも分からないのだ。


「…毒見か。まぁ、そうなるか…王族ってのは本当に面倒だ。だが仕方ない。茶の準備をさせてくれ、事を急ぐから父上の部屋でな。」


 飲んでから数時間様子を見たいとは思ったが、小瓶の中身は見た目毒々しさは感じられない。瓶を開けた時に臭いを嗅げば何かあれば分かるかもしれないと考え、もし本当にそれで国王夫妻が元気になるのなら早くやって差し上げたいと思うのはもっともだとスパーノは頷いた。




☆★

 結果。

 飲んだスパーノも少しすっきりとした気分になった。普段から頭痛持ちで、忙しい日に限ってこめかみ辺りがズキズキと痛くなる。最近は国王夫妻が伏せっている為に公務を皆で振り分けている為、側近のスパーノにもしわ寄せがきており毎日痛みを感じていた。それが若干ではあるが緩和されたように感じたのだ。


 国王夫妻にも飲ませると、即効性は無いのだろう見た目には著しく変わりは無いようにみられたがそれでも何処となく呼吸が穏やかになったように思えた。


「飲み過ぎは逆効果となりますから、朝晩一度ずつ飲んで下さい。」


 と、エルヴェツィオは両親に告げた。



 それから。
 日ごとに症状が緩和されたのか、ベッドから起き上がり部屋を歩くまでに回復したのだ。その報告を夕方公務の終わりに聞いたエルヴェツィオは、顔を綻ばせる。


「やったぜ!!スパーノ、これで父上も母上も元気を取り戻したな!
 よし、ルクレツィアに礼を言ってくる!!」

「あ!お礼の品は……!」


 スパーノの声はエルヴェツィオには届かず、一刻も早く伝えたいと飛び出して行った。

(お礼に、と手土産でも持って行けばいいのに。今までは“息抜き”に行く時は手ぶらだったのに最近はお菓子を作らせていたんだから分かりやすい。
 ま、用意させるにも時間は掛かるし、それよりも早く行きたかった、のか…?)


 最近“息抜き”に行ったあとはとても機嫌が良い主に気づかないスパーノではなかった。


(コラユータ領の事も、自分の事のように胸を痛めて怒りを露わにしてたもんな…)


 そう。あれから、コラユータ領にはスパーノの兄、次男バルトロが滞在し、暗躍している。

 初めに診た医者も悪い医者では無かったが、コラユータ領の領民も診る医者でもあり屋敷にずっと滞在してもらう訳にはいかなかった為、王宮から派遣して屋敷に滞在させた。今ではベルトランドは意識が回復し、だか頭を打ったのと庇ったのか手首と足が骨折してしまっている為ベッドの上で療養中である。
 そのため、初めはビアッジョを騎士団へと突き出す事も使用人達は考えたが、ベルトランドはそれを躊躇っていた。腐っても弟だと、心優しいベルトランドは切り捨てる事が出来ないと迷っていた。
 そんな報告を受けたエルヴェツィオは、ビアッジョは伯爵家当主となりたかったんだよなと悪い笑みを浮かべながら仕事をさせる事を指示させたのだ。

『やれるものならやってみろ。そんなに甘いものではない。』

 もちろん、難しいものをいきなりやらせてはすぐに破綻してしまい、コラユータ領の領民にしわ寄せがいってはいけないと、全て任せる事はせず、選別をして簡単な数字の計算や敢えて面倒な書類を混ぜ込んでビアッジョの居座っている執務室へと持って行かせた。
 ベルトランドと執事、バルトロがその辺りはうまくやっている。

 そして早々にも根を上げているそうだ。


「なぜこの俺様が領民の元に出向き、生産量を確認せねばならんのだ!!」
「こんな面倒な計算、お前たちがやれ!!」
「俺様はサフランがいかにイイモノか誰よりも知ってるんだぞ!商人を呼べ!今までよりももっと高値で売り付けてやる!!」


 日々騒いでいるそうだが、世の中何でも自分の思い通りにいくわけが無い。うまく取りなされて今も尚執務室の椅子で寝起きし、生活している。


『いかに貴族の仕事が大変なのか、身をもって知らせてやれ。だが、それだけでは足りんからな。ルクレツィアの悲しみの分、上乗せしてあとで存分に味わわせてる。
 …あ、奴が壊した物は一つも漏らさず計上させろよ。それもきっちり返済してもらわないとな。』


(あとで、とは?エルヴェツィオ様は何を考えておられるのやら。しかし確かに、 悪い事をしたら罪は償わねばならないからな。)


 エルヴェツィオを敵に回すのだけは絶対に避けたいと思うスパーノであった。


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