【完結】教会で暮らす事になった伯爵令嬢は思いのほか長く滞在するが、幸せを掴みました。

まりぃべる

文字の大きさ
21 / 25

21 これからの事

しおりを挟む
 気分を変えようとベルトランドは使用人にお茶を淹れさせた。その間に、外が俄に騒がしくなり、騎士団が到着したようだとエルヴェツィオは言った。


「バルトロがやってくれる。あいつに任せておこう。」


 エルヴェツィオはそう言って、淹れてもらったお茶を飲んだ。それをみて、皆も一息入れようとお茶を口に含んでいると、バルトロが部屋に戻って来た。


「無事、引き渡しが終わりました。」

「バルトロ、ありがとう。」

「とんでもない、私の仕事でございます。
 …で?まだ次の話題にはなっておりませんか?」

「…あぁ。今からだ。」

「そうでしたか、先走りまして。
 …ああ、ありがとうございます。」


 バルトロにもお茶が出され、喉を潤すと再びエルヴェツィオを見てどうぞ、と促すように手を添えた。
 エルヴェツィオは咳払いを一つし、姿勢を正すと正面に座るベルトランドへと口を開いた。


「では。
 ここからは、これからのコラユータ領の話となります。
 ベルトランド伯爵…いえ、ベルトランド=コラユータ殿。私、エルヴェツィオはご息女であられるルクレツィア様を愛しております。どうか、私の妻とさせていただく事をお許し頂けませんか。」

「!」


 ルクレツィアは隣で聞いていて、今さらながら驚いた。叔父の事が片付けば、次は自分の事であったのだと思い出したのだ。そして、エルヴェツィオの言葉を聞いて嬉しくもあり、だが父がどのように返答をするのか不安でもあった。


「頭をお上げ下さい!王太子…いえ、エルヴェツィオ様。
 聞けば、我が娘のルクレツィアを、教会へ避難させた頃より支えて下さっていたと。本当に有り難く思っております。
 避難生活が想像したよりもずっと長くなってしまい、不安ではありましたがルクレツィアは卑屈にもならず会いに行けば笑顔を見せてくれていたのは、教会の方だけでなく王家の皆様のおかげだと…」

「とんでもない!
こちらこそ、私の両親を助けて頂き、私や姉妹の心の支えにもなって頂き、ルクレツィアには感謝しております。」

「ありがとうございます。
 ルクレツィア、どうだい?ルクレツィアの気持ちを聞かせてくれるか?」


 優しく、そう問い掛けるベルトランドに、ルクレツィアは一度俯いてどう答えるべきか迷ったが、正直な気持ちを伝えようと顔を上げてベルトランドの目を見つめて答える。


「私…私もエルヴェツィオが好き。一緒にいたいの。」

「そうか。良かったな、ルクレツィア。ご迷惑かけるんじゃないよ。」
「そうね…良かったわね。」


 ベルトランドの隣にいるテレーザも、目を潤ませて嬉しそうに声を掛ける。


「認めて下さり、ありがとうございます。迷惑なんて、掛かる事はありませんのでご安心下さい。
 ではそうなりますと、その後のコラユータ領の話をさせて頂きたいのですが。」

「それですが、私が、伯爵代行としてこの地を正式に守らせて頂く手続きを進めさせて頂こうかと思っておりますが如何でしょうか。」


 と、バルトロは手を挙げて口を挟む。
それにルクレツィアは、バルトロの方を向いて尋ねる。


「えっと、それ…」

「ルクレツィア様、勘違いしないで頂きたい。
 私はセノフォンテ侯爵家の次男で、跡継ぎではありませんけれども、王宮に仕えている者としての誇りを持っております。故にコラユータ伯爵家を、乗っ取ろうとしているわけではございません。あくまで代行として、でございます。
 どうしてそれが必要かと申しますと、エルヴェツィオ様の奥様つまり王太子妃、ゆくゆくは王妃になられるルクレツィア様は、コラユータ領を治めるには大変かと存じます。それ故、本来であればルクレツィア様が治めるべきこの地を、お生まれになられるお子様が大きくなるまでもしくは王妃を引退された時まで、私が代わりに治めるだけでございます。」

「そうなったのか、バルトロ。」


 側近とともにさまざまな策を考えていたエルヴェツィオは、バルトロからその言葉を聞き、頷きながら話す。
 そうであればいいとは思っていても、バルトロの人生を自分の我が儘一人娘を娶る事で押し付けるようなものであり、最後まで悩んでいた事であったから、答えが出なければベルトランドとともに考えようと思っていた。


「はい。その方が新たに他に人を雇うよりも円滑であると思われますので。」

「そうか…ありがとう。」


 ほっと息を吐くようにエルヴェツィオが言うと、深々と頭を下げるバルトロ。
 それを見て、ベルトランドも言葉を繋ぐ。


「バルトロ殿が治めて下されば、八年ここで培ってきた人脈も生かせます。
 だからねルクレツィア、コラユータ領の事は気にしないでいいんだよ。」

「ごめんなさいね、ルクレツィア。お父様は、疲れちゃったのですって。だから早めに引退したいそうなのよ。だからそれでもいいかしら?」


 ベルトランドの隣から、微笑みながらテレーザが援護をする。


「いいの…?私のワガママじゃなくて…?」

「ルクレツィア様、それはワガママとは言いません。
 皆で、様々な選択肢を踏まえた上で考えた結果なだけでございます。
正直に申し上げますと、ここのサフラン茶が妙に体に合いまして。離れがたいと思っております。ですので、お話を伺った際私から手を挙げさせて頂いたのですよ?」


 バルトロは気安く片目を瞑ってルクレツィアにそう言って、両肩を上げる。
ルクレツィアが気に病まないよう、軽口を叩いてくれたのだとルクレツィアは顔を綻ばせて答える。


「ありがとうございます、バルトロ様。
 お父様もお母様も、ありがとう。」

「良かった!ルクレツィア、納得してくれた?
 ここコラユータ領は、しばらくバルトロに任せよう。何人生まれるか分からないが俺達の子供に任せるか、そのまま代行が続くかはまだ分からないけど、もしかしたらルクレツィアに兄弟が出来るかもしれないし?」


 そうエルヴェツィオが伯爵夫妻へと視線を向ける。ルクレツィアはそれに驚きの声をあげ、両親を見ると確かに昔のまま仲は良さそうで。


「ええ!?」

「おほん!まぁ、あり得なくはない…か。」
「やだわ、ここでは言えません!」


 先ほどとは違い、皆、穏やかな雰囲気でしばらく話を続けていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず
恋愛
 ※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。  我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。  けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。 「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」  そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!

ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。 相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。 結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。 現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう… その時に前世の記憶を取り戻すのだった… 「悪役令嬢の兄の婚約者って…」 なんとも微妙なポジション。 しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。

お姉様。ずっと隠していたことをお伝えしますね ~私は不幸ではなく幸せですよ~

柚木ゆず
恋愛
 今日は私が、ラファオール伯爵家に嫁ぐ日。ついにハーオット子爵邸を出られる時が訪れましたので、これまで隠していたことをお伝えします。  お姉様たちは私を苦しめるために、私が苦手にしていたクロード様と政略結婚をさせましたよね?  ですがそれは大きな間違いで、私はずっとクロード様のことが――

【完結】没落寸前の貧乏令嬢、お飾りの妻が欲しかったらしい旦那様と白い結婚をしましたら

Rohdea
恋愛
婚期を逃し、没落寸前の貧乏男爵令嬢のアリスは、 ある日、父親から結婚相手を紹介される。 そのお相手は、この国の王女殿下の護衛騎士だったギルバート。 彼は最近、とある事情で王女の護衛騎士を辞めて実家の爵位を継いでいた。 そんな彼が何故、借金の肩代わりをしてまで私と結婚を……? と思ったら、 どうやら、彼は“お飾りの妻”を求めていたらしい。 (なるほど……そういう事だったのね) 彼の事情を理解した(つもり)のアリスは、その結婚を受け入れる事にした。 そうして始まった二人の“白い結婚”生活……これは思っていたよりうまくいっている? と、思ったものの、 何故かギルバートの元、主人でもあり、 彼の想い人である(はずの)王女殿下が妙な動きをし始めて……

絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので

ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。 しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。 異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。 異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。 公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。 『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。 更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。 だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。 ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。 モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて―― 奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。 異世界、魔法のある世界です。 色々ゆるゆるです。

姉と妹の常識のなさは父親譲りのようですが、似てない私は養子先で運命の人と再会できました

珠宮さくら
恋愛
スヴェーア国の子爵家の次女として生まれたシーラ・ヘイデンスタムは、母親の姉と同じ髪色をしていたことで、母親に何かと昔のことや隣国のことを話して聞かせてくれていた。 そんな最愛の母親の死後、シーラは父親に疎まれ、姉と妹から散々な目に合わされることになり、婚約者にすら誤解されて婚約を破棄することになって、居場所がなくなったシーラを助けてくれたのは、伯母のエルヴィーラだった。 同じ髪色をしている伯母夫妻の養子となってからのシーラは、姉と妹以上に実の父親がどんなに非常識だったかを知ることになるとは思いもしなかった。

【完結】偽者扱いされた令嬢は、元婚約者たちがどうなろうと知ったことではない

風見ゆうみ
恋愛
クックルー伯爵家の長女ファリミナは、家族とはうまくいっていないものの、婚約者であり、若き侯爵のメイフとはうまくいっていると思っていた。 メイフとの結婚が近づいてきたある日、彼がファリミナの前に一人の女性を連れてきた。メイフに寄り添う可憐な女性は、こう名乗った。 「わたくし、クックルー伯爵家の長女、ファリミナと申します」 この女性は平民だが、メイフの命の恩人だった。メイフは自分との結婚を望む彼女のためにファリミナの身分を与えるという暴挙に出たのだ。 家族や友人たちは買収されており、本当のファリミナを偽者だと訴える。 メイフが用意したボロ家に追いやられたファリミナだったが、メイフの世話にはならず、平民のファリとして新しい生活を送ることに決める。 ファリとして新しい生活の基盤を整えた頃、元家族はファリミナがいたことにより、自分たちの生活が楽だったことを知る。そして、メイフは自分が馬鹿だったと後悔し始め、自分を愛しているはずのファリミナに会いに行くのだが――。

幸せじゃないのは聖女が祈りを怠けたせい? でしたら、本当に怠けてみますね

柚木ゆず
恋愛
『最近俺達に不幸が多いのは、お前が祈りを怠けているからだ』  王太子レオンとその家族によって理不尽に疑われ、沢山の暴言を吐かれた上で監視をつけられてしまった聖女エリーナ。そんなエリーナとレオン達の人生は、この出来事を切っ掛けに一変することになるのでした――

処理中です...