【完結】教会で暮らす事になった伯爵令嬢は思いのほか長く滞在するが、幸せを掴みました。

まりぃべる

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23 ご挨拶

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「右側は客間。各国の要人は王宮の方に泊まるから、今、ここにはルクレツィア用と、あとはいつ来るかは分からないけどオリーヴィアやリッカルダだけが帰って来たら泊まるくらいかな?」


 オリーヴィアやリッカルダは他国に嫁いだ為、その伴侶とこの国にやって来る時には王宮の国賓用の客室に泊まる。そう説明され、左側は…と言われてそちらを向いたところで、後ろから声が掛かった。


「あらあら、いらっしゃい!」
「やあ、こんにちは。」


 それに振り返りながら素早く返事をするエルヴェツィオは、少し異を唱える。


「母上、父上!早くないですか?」

「そんな事無いわよ!ねぇあなた?」
「うむ。決して切り上げてきたわけではないぞ!」

「…切り上げてきたのですね。まぁ、来てしまったなら仕方ないです。
 ルクレツィア、俺の父と母だよ。」


 はーっと息を吐くエルヴェツィオは慌てて振り返ったルクレツィアへと簡単に紹介する。


「!
 ルクレツィア=コラユータと申します。本日…」

「あぁ、よいよい!堅苦しくせんでも。
 家族になるんだから。
それよりも、ずいぶんと遅くなってしまったがサフランを分けてくれた事、感謝するよ。」

「そうね!私は喘息持ちだし、あの時は本当に苦しかったの。それを助けてくれてルクレツィアちゃんありがとう!
それに、私達の家族になる決心をしてくれて嬉しいわ。
 さ、一緒にお茶しましょ?」

「い、いえ私は特には…体調が良くなってよかったです。」


 エルヴェツィオにどことなく似た優しい微笑みと共に二人に言われ、ルクレツィアは咄嗟に言葉を繋いだあとにエルヴェツィオを見た。
 確かに今日顔合わせの為に来たけれども、いきなりだったから。


「ごめん、ルクレツィア。部屋を見せてからだと思ってたんだけど、お茶にしよう。お腹も空いたよね。」


 エルヴェツィオは苦笑しながら、ルクレツィアへと声を掛ける。


「まぁ!もうお茶の時間よ?お昼食べてないの?それはいけないわ!軽食も用意させましょうね。」


 そう言って、王妃はルクレツィアへと近づき腕を取ってスタスタと歩き出した。


「母上、あまりルクレツィアを困らせないで下さいよ!」

「分かってるわよ!でもね、オリーヴィアもリッカルダも居なくなっちゃったから…ルクレツィアちゃんと仲良く出来たらなって。
 ルクレツィアちゃん、緊張してるわよね?私もそうだったもの。でもね、ここは王宮だけどよ?寛ぐ場所なの。だから難しいかもしれないけれど、そんなに固くならなくていいから、ね?」


 ルクレツィアはびっくりしたが、労うような言葉を掛けられ、王妃様も元は貴族で嫁いで来たんだった、と学んだ事を思い出しニッコリと微笑みを返した。




「天気もいいし、あっちでしましょ!」


 そう王妃に言われ、建物の裏側にある庭の四阿に連れてこられたルクレツィアは、この庭も素敵だと思った。
手前に咲いている大きな花を見てルクレツィアは口を開いた。


「素敵ですね。ダリア、ですか?」

「そうなの!アポリナーレがね、指示したらしいのよ。」


 嬉々として言う王妃に、そういえば国王の名前はアポリナーレだったと思い出し、そちらを見遣ると首を掻いて照れながら笑った。


「ハハハ。ロザリアの美しさには負けるけれどね、こう、凛としたダリアの咲く様がロザリアに似ていると思ってね。」

「もう!アポリナーレったら!」


 そんな風にお互い照れながらも嬉しそうに話す国王陛下アポリナーレ王妃殿下ロザリアの姿を見て、なんだか自分の両親みたいに仲がいいのだと感じていつの間にか緊張も解れてきたルクレツィアは、そういえばと頭に浮かんだ事を口に出した。


「いつだったかリッカルダが…あ、リッカルダ様が言ってました。」

「あら、いいのよ?公の場ではないから呼び方はいつも通りで。
 何かしら?」

「はい、分かりました。
 えっと、国王陛下は、庭で咲いている花を王妃殿下に贈られていたと。
 もしかしたら、ここの庭ですか?」

「まぁ!あの子、そんな事ルクレツィアちゃんに言っていたのね。
 そうよ。ダリアの花や、奥にはキンモクセイ、ラナンキュラスって言う花も咲いているわ。あと、デルフィニウムもあっちに咲いているの。それも頂いたわねぇ。」

「花言葉、もあるのですよね?」

「フフフ…らしいわね。
あ!花言葉といえば。ダリアの花を贈られた時は嬉しかったけれどびっくりもしたのよ?ダリアってね、華麗とか優美とかの花言葉と、裏切りって言う花言葉もあるのよ。」


 ルクレツィアを見ていたロザリアはチラリとアポリナーレの方を見ながら言うので、アポリナーレは慌てて言葉を繋いだ。


「あの時は悪かった!」

「あと…ピンクや黄色のデルフィニウムもだったかしら?移り気っていう花言葉。どういう意味!?って。」


 私を疑っているのかしら?って問い詰めたのよ、と笑ったロザリアに、アポリナーレも眉を下げ、苦笑しながら弁解するように繋ぐ。


「花言葉には、良い言葉しかないと思っていたんだがね。それ以来、花言葉をメッセージカードと添えて渡すようにしたんだよ。」


 そう言って笑い合う二人を見て、ルクレツィアはもう一度、素敵ですねと呟いた。


「へぇー、そんな事があったんだ。知らなかったよ。」


 それを聞いていたエルヴェツィオは、初めて知ったと目を見開きながら言う。


「あなたはもう少し周りに目を向けた方がいいのではなくて?オリーヴィアもリッカルダも知っている事よ。
 それより…ルクレツィアちゃん、お願いがあるのだけれど。」


 再びルクレツィアへと視線を向けたロザリアは、諭すように言葉を告げる。


「え?なんでしょう…?」


 改まって言われ、ルクレツィアは姿勢を正すと、エルヴェツィオはそれに苦言を呈す。


「ちょっと、母上?」

「あら、無理難題じゃないわよ?
 こういう場私的な場では、呼び方、変えてくれると嬉しいわ。」

「あ…はい。えっと…」

「何度も呼び方を変えるのなんて面倒でしょう?
 だから今日から義父、義母って呼んでくれると嬉しいわ!」

「そうだなぁ。結婚は一年後ではあるが、アポリナーレよりも義父、と呼ばれる方がより家族になったように感じるなぁ。
 出来れば、呼んでくれると私も嬉しい。」


 ロザリアの言葉に、アポリナーレもうんうんと頷きながら言うものだから、ルクレツィアは、確かに無理難題ではないけれどある意味難しいと思いながらもその言葉に優しい気配りを感じて応える。


「は、はい…善処します。」

「うふふ。ありがとう、呼んでくれるのを楽しみにしてるわね!
 あぁそうそう、リッカルダがいろいろと教えてたっていうし、王太子教育もそんなにしなくてもいいかもしれないから、その時は一緒にお茶でもしていろんな話を聞かせてくれると嬉しいわ。」

「母上…嫌がらせはしないで下さいよ。」

「あらエルヴェツィオったら酷いわ!嫌がらせなんてしないわよ!」


 そう言って、頬を膨らますロザリアはとても可愛く見え、ちょっと強引ではあるが優しく気遣いをしてくれる義母とうまくやっていけるといいなと思ったルクレツィアだった。
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