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「アンネッター、居るー?」
「誰だい?私はここだよ。
…て、ルクレツィア?」
ずいぶんと久し振りに教会にやって来たルクレツィアとエルヴェツィオ。
今日は馬車ではなく、ルクレツィア念願の、秘密の地下通路から来たのだった。
「おや。この前エルヴェツィオに聞いたけど、子どもが出来たんじゃなかったのかい?
大丈夫だったの?あんな通路から来て。」
アンネッタの心配するような声に、ルクレツィアは興奮冷めやらぬというような面持ちで語る。
「お医者様が、そろそろ運動した方がいいって。
ねぇ、地下通路ってすごいのね!!」
「そうなのかい?よかったね。
…あぁ、ルクレツィア、赤ちゃんがいるんだろう?おめでとう。」
「ありがとう、アンネッタ。
あぁ、やっとアンネッタに会いに来れたわ!私、ここにいられて本当に良かったと思ってるの。」
「ふん。そう言ったって、なにも出ないよ?」
アンネッタはそう言ってルクレツィアから顔を逸らす。耳が赤いのは、気のせいじゃないだろうとルクレツィアはふふっと笑った。
「あ、サフランの粉、持ってきたの。食堂に持って行くね!」
「本当に持って来てくれたのかい?律儀だねぇ。
時間あるのなら、一緒にお茶を飲むかい?」
「あぁ。少しならね。…ん?あれは…」
エルヴェツィオがそう答えると、少し先に川がある方角から走ってくる男性が見えた。
「だ…誰だ?ア、アンネッタ…お客か…い?」
余程急いだのだろう、フゥフゥと息を切らして整う前に話し出すその人は、見覚えがあった。
「見れば分かるでしょう?オネスト!
全く、そんなに急いだら倒れちゃうでしょうに!もう若くないんだから!!」
そう言って、両膝に手を充てて息を整えるオネストの頭を、アンネッタは軽く叩く。
「だって…不審者だったらって…心配でさ…」
「ふん!こんな廃れたところに不審者なんて来るわけないでしょ!」
「分からないよ?アンネッタはいつまで経っても綺麗なんだから。」
「き…!?
も、もう!揶揄わないでちょうだい!」
そう言うと、アンネッタはくるりと向きを変えて教会の建物へとズンズンと足音が鳴るかのように歩いていく。
「待ってよ、アンネッタ!ねぇあんまり急ぐと危ないよ?」
オネストも、アンネッタの後を慌てて付いて行った。
「…ねぇ、オネストさんは生活に必要な荷物を運んで来る人だったでしょう?今もそうなの?」
「今は違うよ。アンネッタもオネストも、いい歳だからね。お互い一人でいるよりは、二人でここに住んだ方が、っていう計らいだよ。」
「?
計らい?」
「ああ。
アンネッタは…理由があってここに、昔の王命によって住まわされてた。でも、父上が新たな王命を下したんだよ。〝これからは好きに生きていい〟って。でも、四十年以上一人でここに住んでたし、今すぐはここから離れる気は無いんだって。それと共にオネストも、王命で運び屋をやっていたんだけど、同じ言葉を掛けたら、〝ではアンネッタの傍にいてもいいですよね?好きに生きていいのでしたら〟って答えを出したそうだよ。」
「そうなんだ…アンネッタもオネストさんも楽しそうね。」
「…そうだね。」
アンネッタは悪態を付きながらも、オネストとの掛け合いが嬉しいのか言葉が柔らかいようだとルクレツィアは感じた。
ルクレツィアと結婚した後、新たな王命を下す為にアポリナーレとエルヴェツィオは共にやって来て、オネストが居るときに二人へ伝えたのだ。
そうしたら、オネストが先の会話のように答えたのだ。アンネッタは驚き、『止めてよ!私は一人で住むんだから、オネストも自由になれるし無理しないでよ!』と叫び、『無理なわけない!やっとこの時が来たんだ!こんな機会を逃すわけないよ!』とオネストは言って抱き締めた。
そんな二人を見て、まぁあとはお好きに、と帰ったのだった。
帰りの地下通路のトロッコの中で、
「やっと肩の荷が下りた。私も随分と世話になったアンネッタに、もっと早くこうしてやってれば良かったのかもしれないが…」
「父上。俺は知りませんが、アンネッタも、償いの為だったのでしょう?四十年以上なんて長かったかもしれませんが、アンネッタはあれで楽しくやられてました。
俺だって、あの場所があったからルクレツィアに会えました。これがきっと、最善だったのでしょう。」
「…ありがとう。」
と親子で語り合ったのだった。
「エルヴェツィオ?」
「…あぁ、ごめん。行こうか。」
少し前の事を思い出していたエルヴェツィオは、慌ててルクレツィアの方を向き、教会へと足を進めようとする。
「ねぇ、エルヴェツィオ。」
「…なに?」
「連れて来てくれて、ありがとう。」
「いや?また来ような。」
「うん…エルヴェツィオが居てくれて良かった。」
「え?」
「大好き!」
そう言って、自身の腕をエルヴェツィオの腕に絡めるように掴んだ。
ルクレツィアもまた、ここに来た当初の事を思い出していたのだ。
そして、その日エルヴェツィオに会ったからこのような幸せな日々が送れているのだと実感し、改めてエルヴェツィオに気持ちを伝えた。
「おお、どうした?ま、俺もルクレツィアの事、大大大好きだけどな?」
「もう!…ありがと。」
「さ、ゆっくり歩こう。
もちろん、君の事も大切だからね!」
そう言って、エルヴェツィオはルクレツィアのお腹を、もう片方の空いた手で優しく撫でたのだった。
☆★
これで終わりです。
しおりを挟んでくれた方、お気に入り登録してくれた方、ありがとうございました。とても励みになりました!
読んで下さり、本当に本当に、ありがとうございました!!
「誰だい?私はここだよ。
…て、ルクレツィア?」
ずいぶんと久し振りに教会にやって来たルクレツィアとエルヴェツィオ。
今日は馬車ではなく、ルクレツィア念願の、秘密の地下通路から来たのだった。
「おや。この前エルヴェツィオに聞いたけど、子どもが出来たんじゃなかったのかい?
大丈夫だったの?あんな通路から来て。」
アンネッタの心配するような声に、ルクレツィアは興奮冷めやらぬというような面持ちで語る。
「お医者様が、そろそろ運動した方がいいって。
ねぇ、地下通路ってすごいのね!!」
「そうなのかい?よかったね。
…あぁ、ルクレツィア、赤ちゃんがいるんだろう?おめでとう。」
「ありがとう、アンネッタ。
あぁ、やっとアンネッタに会いに来れたわ!私、ここにいられて本当に良かったと思ってるの。」
「ふん。そう言ったって、なにも出ないよ?」
アンネッタはそう言ってルクレツィアから顔を逸らす。耳が赤いのは、気のせいじゃないだろうとルクレツィアはふふっと笑った。
「あ、サフランの粉、持ってきたの。食堂に持って行くね!」
「本当に持って来てくれたのかい?律儀だねぇ。
時間あるのなら、一緒にお茶を飲むかい?」
「あぁ。少しならね。…ん?あれは…」
エルヴェツィオがそう答えると、少し先に川がある方角から走ってくる男性が見えた。
「だ…誰だ?ア、アンネッタ…お客か…い?」
余程急いだのだろう、フゥフゥと息を切らして整う前に話し出すその人は、見覚えがあった。
「見れば分かるでしょう?オネスト!
全く、そんなに急いだら倒れちゃうでしょうに!もう若くないんだから!!」
そう言って、両膝に手を充てて息を整えるオネストの頭を、アンネッタは軽く叩く。
「だって…不審者だったらって…心配でさ…」
「ふん!こんな廃れたところに不審者なんて来るわけないでしょ!」
「分からないよ?アンネッタはいつまで経っても綺麗なんだから。」
「き…!?
も、もう!揶揄わないでちょうだい!」
そう言うと、アンネッタはくるりと向きを変えて教会の建物へとズンズンと足音が鳴るかのように歩いていく。
「待ってよ、アンネッタ!ねぇあんまり急ぐと危ないよ?」
オネストも、アンネッタの後を慌てて付いて行った。
「…ねぇ、オネストさんは生活に必要な荷物を運んで来る人だったでしょう?今もそうなの?」
「今は違うよ。アンネッタもオネストも、いい歳だからね。お互い一人でいるよりは、二人でここに住んだ方が、っていう計らいだよ。」
「?
計らい?」
「ああ。
アンネッタは…理由があってここに、昔の王命によって住まわされてた。でも、父上が新たな王命を下したんだよ。〝これからは好きに生きていい〟って。でも、四十年以上一人でここに住んでたし、今すぐはここから離れる気は無いんだって。それと共にオネストも、王命で運び屋をやっていたんだけど、同じ言葉を掛けたら、〝ではアンネッタの傍にいてもいいですよね?好きに生きていいのでしたら〟って答えを出したそうだよ。」
「そうなんだ…アンネッタもオネストさんも楽しそうね。」
「…そうだね。」
アンネッタは悪態を付きながらも、オネストとの掛け合いが嬉しいのか言葉が柔らかいようだとルクレツィアは感じた。
ルクレツィアと結婚した後、新たな王命を下す為にアポリナーレとエルヴェツィオは共にやって来て、オネストが居るときに二人へ伝えたのだ。
そうしたら、オネストが先の会話のように答えたのだ。アンネッタは驚き、『止めてよ!私は一人で住むんだから、オネストも自由になれるし無理しないでよ!』と叫び、『無理なわけない!やっとこの時が来たんだ!こんな機会を逃すわけないよ!』とオネストは言って抱き締めた。
そんな二人を見て、まぁあとはお好きに、と帰ったのだった。
帰りの地下通路のトロッコの中で、
「やっと肩の荷が下りた。私も随分と世話になったアンネッタに、もっと早くこうしてやってれば良かったのかもしれないが…」
「父上。俺は知りませんが、アンネッタも、償いの為だったのでしょう?四十年以上なんて長かったかもしれませんが、アンネッタはあれで楽しくやられてました。
俺だって、あの場所があったからルクレツィアに会えました。これがきっと、最善だったのでしょう。」
「…ありがとう。」
と親子で語り合ったのだった。
「エルヴェツィオ?」
「…あぁ、ごめん。行こうか。」
少し前の事を思い出していたエルヴェツィオは、慌ててルクレツィアの方を向き、教会へと足を進めようとする。
「ねぇ、エルヴェツィオ。」
「…なに?」
「連れて来てくれて、ありがとう。」
「いや?また来ような。」
「うん…エルヴェツィオが居てくれて良かった。」
「え?」
「大好き!」
そう言って、自身の腕をエルヴェツィオの腕に絡めるように掴んだ。
ルクレツィアもまた、ここに来た当初の事を思い出していたのだ。
そして、その日エルヴェツィオに会ったからこのような幸せな日々が送れているのだと実感し、改めてエルヴェツィオに気持ちを伝えた。
「おお、どうした?ま、俺もルクレツィアの事、大大大好きだけどな?」
「もう!…ありがと。」
「さ、ゆっくり歩こう。
もちろん、君の事も大切だからね!」
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TW nabe様、感想ありがとうございます(^▽^)
とても嬉しいお言葉、励みになります!しかも、過去作まで…(^-^)有り難いです♪
労いのお言葉も、心に染みました(>_<)
最後まで読んで下さいましてありがとうございましたヘ(^o^)/
cana様、感想ありがとうございます(^O^)
前作を見に行って下さるとの事、有難いです(^o^)けれどすみません、残念ながら、トロッコや男の子は出てきません(>_<)一応メインは、この教会に来るまでがほとんどでございますm(_ _)m
トロッコは、今作で出てきているように有事の避難経路のためでございましたので…そのため、廃れた教会は王家の所有物とでももうしましょうか…けれども優先順位が低かったため、教会の建物は放置されておりました(^^;)
それでも、前作も興味を持っていただけて有難いです(^-^)
今作も、最後までお読みいただき、また温かいお言葉をかけていただきまして本当にありがとうございます(o^^o)励みになります!
はい、次回作も取りかかってはおりますがなかなか時間が取れず…(T_T)まだ少し先にはなりますが、投稿した際にはまた手に取っていただけると幸いです(^^)/
ありがとうございました(^_^)b