【完結】教会で暮らす事になった伯爵令嬢は思いのほか長く滞在するが、幸せを掴みました。

まりぃべる

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 話していると、入り口扉が開く音がしてそちらを見やる。扉は、建て付けが良くないのか少し力を入れないと開けにくいからか大きく音がする。
 扉から入った明かりで、アンネッタの髪色は薄い桃色なのだと知ったルクレツィアは珍しくて綺麗な色だと思った。


「そういう事だからよろしく。
 …あぁ、まだいたのかい?三人とも、時間は大丈夫?まぁ怒られたとしても私には関係ないからいいんだけどね。」


 そう言うと、エルヴェツィオは勢いよく立ち上がる。


「あ!やべっ…!」
「あらー、エルヴェツィオはヤバいよね~遅刻したら。」
「本当。エルヴェツィオ、お疲れさま~!」

「くっそ…!
 あ、ルクレツィア、また来るよ!
 あのさ…いろいろあるだろうけど、その中にも楽しい事ってたくさん埋まってるからさ!それを見つけるのって案外面白いぜ?…面白いから、ね?
 おい、二人もほどほどにしろよ?」

「はいはーい、頑張ってねー。」
「いってらっしゃーい。」


 エルヴェツィオは、オリーヴィアとリッカルダがヒラヒラと手を振るのを後目に礼拝堂から素早く出て行った。


「さ、リッカルダ。私達も帰る?日も出て来たし。」
「そうね、オリーヴィア行きましょう。
 ではルクレツィア、気を確かに持つのよ?」
「ルクレツィア、苦しい時こそ楽しみを見つけるのよ!」
「「じゃあ、アンネッタまたねー。」」

「はいはい。道中気をつけなさいよ!
 別に来なくてもいいんだけどねぇ…。」


 オリーヴィアとリッカルダもまた、扉から出て行ったのでそこにはアンネッタと、コラユータ領からやって来た三人が残った。


「とりあえずここじゃ何だから、あっちへ行きましょう。ついておいで。」


 アンネッタは、三人に改めてそう言うと奥へと続く扉の方へと礼拝堂の中を進み始める。居住スペースへと向かうのだった。




「ここが食堂兼厨房。いつもは一人きりだし私が作ってここで食べてるよ。
 でも今日はいきなり増えたから量が少なくて悪いけど、昨日の残りを今温めるからそこに座ってちょうだい。」

「あ、それなのですが…」


 アンネッタがそう言うと、ロミーナが慌てて口を開きアデルモも持っていた手荷物から小さめの麻袋を取り出し、目の前の作業台へと順に中身を出した。


「こちら、持って参りました。昨日のですのでちょっと固くはなってますが、そちらのスープに浸せば充分食べられると思います。
 あと、こちらも。」


 ロミーナが出した食材を説明する。少し固くなりかけた大麦パンと、野菜、あとは小瓶に入っている幾つかの調味料や茶葉。
 それらの一つ、赤く細長いものが入った小瓶を見てアンネッタは聞く。


「ん?これは?」

「こちら、サフランです。コラユータ領の特産物でございます。こちらはまだ乾燥させてないものですが、こちらの瓶に入っているものは乾燥させておりますので、お茶にしても食材に合わせて炒めてもお使いできます。」


 そう言って、ロミーナは小瓶を順に指した。


「ふーん…サフランはどう使えばいいのか知らないね。食べた事はあるけど、これは調理に使った事なくてねぇ。
 だから、ロミーナがこれを使って見せてくれる?分からないから教えてちょうだい。」

「承知しました。では、差し当たってお湯を沸かしてもよろしいですか?サフラン茶をご用意します。と言いますか私が…」

「ちょ、ちょっと待ってよ!
 …ロミーナ、さっきも言ったけど、ここでは地位は皆平等!だからそんなご丁寧な言葉遣いやめて!」

「し、失礼しました!あ、すみません…いえ、ごめんなさい!!」


 先ほども注意されて答えてはいたが、両親もコラユータ伯爵領の使用人で、生まれた頃より伯爵家の使用人棟で育ち物心ついた頃より使用人として仕えてきていたためなかなか慣れないロミーナである。


「ロミーナ…あんたいくつ?」

「あ…私は、十五歳でござ…十五歳です。」

「ふーん…まだまだ子どもだ。だからって孫とは言わせないよ?
 でも、まぁじゃあ私を今からお母さんと思えばいい。いいかい?分かった?」

「ええ!?」

「そっちのアデルモもだよ。あんたもロミーナと同じくらいか?それとももう少し年上なの?」

「はい、二十歳でございます。」

「だから!!もう少し砕けてよ!
 …ここは私の家!だから私に従ってもらうよ!いい?
 ロミーナもアデルモも今から私の子ども!親に向かって…あぁ、そんなご丁寧な言葉遣いする家族もいるんだっけ…。
 でもまぁここはそんな崇高な場所じゃないし。ロミーナもアデルモも、仕事以外では友達とか家族と会話するだろ?私は堅苦しい事は嫌いだから、普段は普通に話す事。これは絶対。いい?」

「「は、はい!」」

「うーん、まぁいきなりは仕方ないか。でもそのうち慣れてよ?
 ルクレツィアは…ここでの生活は大変かもしれないけれど、いろんな事を学ぶ事は人生において何事も必要なの。
 分かるかい?」

「はい。」

「うん、良い返事だね!
 あんたは、これからどうなるか分からないけど…てか、誰でもそう!人生ってどこでどうなるかって誰にも分からないんだよ?今日まで貴族だった人がいきなり平民になったり、その逆もあるもんさ!
 だからね、どうなってもいいように日々勉強していくの。分かる?」

「うん…?」

「まぁ、今は難しいか。
 とりあえずルクレツィアに言える事は、普段は平民の言葉遣いをすればいいけど、貴族の振る舞いも忘れない事!
 これから、ここでの生活は大変だから一緒にやってもらうけど、貴族のお勉強もやっておいて損はないだろうからね。」

「はい。」

「よし、詳しい事は後!
 お腹空いてるだろ?ルクレツィアちょっと待っていておくれよ。
 ロミーナ、手伝って。アデルモは火を付けて。」


 そう言って、アンネッタはいそいそと食事の準備をし始める。
 ルクレツィアは、厨房の前の大きな作業台を囲むように置かれた木製の手作りの椅子に座り、三人が動く姿を見つめていた。
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