【完結】光の魔法って、最弱じゃなくて最強だったのですね!生きている価値があって良かった。

まりぃべる

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エル視点 2

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3年ほど経ち、あるとき森の手前を俺は散策していた。私兵団は気楽だがたまに一人になりたい時もある。そういう時は歩いて5分ほどの森をうろうろとする。あまり奥まで行くと、〝闇の獣〟に会ってしまう場合もあるから気を付けながら。私兵団の規律に、一人で〝闇の獣と対峙するな〟とあるんだよな。そこは守らないといけない。

すると森から何かが走ってきた。ウサギだった。まあ森なので、普通の野生動物も生息しているからそれはよくあることだからあまり気にも止めていなかった。少しして、鹿が数頭鳴きながら走ってきた。昼間に珍しいなとは思ったが、数が異常だった。鹿が家族単位でいることはあっても、群れる事はそうそうないのに。
これは森で何かがあったんだなと、帰って私兵団に知らせなければと思ったが、一歩遅く、黒い煙を帯びながら〝闇の獣〟が走ってきた。あれは恐らく猪だったもの。

ーーーあまり〝闇の獣〟ははっきりされていないが、魔力を帯びた黒い煙に飲み込まれた野生動物は、〝闇の獣〟として見た生き物全てを食らいつくすモノと変化する。森の奥の洞窟に闇が住み着いていて、そこから煙が何かの拍子に外に出て、悪さをすると言われている。もしくは、その洞窟で、〝闇の獣〟が生まれる場合もあるかもしれない。黒い煙に人間が覆われると、人間も呼吸が苦しくなりやがて死に至ると言われているので調査が出来ないのだ。だから森には普通の人はあまり近づかない。


ヤバイと思った時には、俺は【うわぁ!】と叫んでいた。そして、何か戦うものがないかと周囲を探る。木の枝が幸いにも落ちていて、それを手にし、距離を取った。
まぁ、だからと言ってこんな木の枝で一人で戦えるかといったら無理だろう。

だから、体に魔力を溜め、火を放った。森の中では範囲を広げすぎると延焼してしまう。だから標的にのみ火を放つという事を、少し集中してやらないといけないのだ。もし、標的が火だるまになってのたうち回り、周囲に火が回ってしまうといけないので、水魔法も準備する。

と、森からまだ何か駆けてくる音がし、目を凝らすと猪より大きなウサギだった。しかし目が野生動物より真っ赤に魔力を帯びているので〝闇の獣〟だろう。なぜウサギがあんな大きくなったのかよく分からないが、倒せば消えるだろう。けれど〝闇の獣〟の猪がまだ倒せていないのにあのウサギまで手に負えるのだろうか。

焦りはあったが、仕方ない。一度大型ウサギを水魔法で覆う。呼吸が出来なくなるかと思って。しかし、大型ウサギは水魔法をあっさり弾いた。俺の魔力より格上だったのだろう。【えっ!?】と思った時には、先ほどの猪が俺に突進してきていた。
寸でで水魔法を猪に向け、壁のようにしたが押しのけられ、俺は体当たりされ大きく飛ばされた。地面に叩きつけられ、息が出来なくなる。ケホッケホッと咳が出るが、体が鉛のように重く、体を起き上がられられない。
と、

「大丈夫?じゃないよね。きっと誰か来るから!」
と、女の子の声が聞こえ、
「良い子ね。こっちへおいで。大丈夫よ。ほら。」
と、その子は猪に近づいていった。

危ない!と言いたかったが俺は呼吸もしにくかったため、声にならなかった。だがその瞬間、白い明るい光が発し、猪がなぜか山へ帰っていった。

目だけでその光景を追うと、女の子は、
「よかった…もう。無理しちゃだめでしょ、エル。」
と俺に振り返り言った。

あぁ、ミーティアだったのか。ミーティアがまだ白い光を帯びていて、まるで神か何かに見えた。

大型ウサギは、その場で止まりじっと動かないで警戒しているように見えた。

「さぁ、あとはあなたね。」
と、大型ウサギに向かって言うと奴は森に逃げていく。

「あ、待って!そのままじゃ駄目よ!」
と言ってミーティアも追っかけて行った。

「ミーティア、森は危ない。」
そう言いたかったが、俺は、そのまま意識を失った。

そのあとはどうやら私兵団が魔力を感じて駆け付けてくれ、意識を取り戻した。あんなに苦しかったのが、なぜか体が軽くなっていた。背中を打ち付けたが、全く痛みはなかった。
しかしそれどころではなかったと俺が経過を報告すると、今度は森に入ったミーティアの大捜索となった。

俺は、私兵団の詰め所に戻れと言われたが、なぜか山から20匹以上のウサギが駆けてきて俺を囲み、ついてきてというように思えたからついて行った。すると、ミーティアが少し下った所で、ずり落ちたのか膝や足を擦りむき意識を失っていた。
それを見た俺は、慌てて抱えて私兵団の詰め所に運んだんだ。ミーティアがどうにかなってはと、俺は、我を忘れて叫んでいたらしい。あとで団長にいろいろ含めてこっぴどく叱られたのを覚えている。
けれど、ミーティアが意識を取り戻したと聞いた時には、叱られたのなんてどうでもよくなるほど、安堵したんだ。


ミーティアを、ティアと愛称で呼べるようになって、その辺の奴よりかは仲良くなれたと思っている。ティアは、俺をどう思っているんだろうか。
男が苦手らしいティア。スヴェンから、必要以上に気をつけろと釘を刺されている。俺だって、とても大切に思っているから、気をつけてはいるさ。だけどそろそろ、外野(特に兄上や義姉上)が相手はいないかとうるさいんだ。そろそろ、行動にうつしてもいいよな?
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