【完結】光の魔法って、最弱じゃなくて最強だったのですね!生きている価値があって良かった。

まりぃべる

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誕生祭当日2

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町を隅々まで見回り、片付けをする店も出始めた頃。広場で私兵団が火をくべはじめた。私とエルは、その隅で並んで火を見ていた。

まだ少し日は傾きかけているので、真っ暗ではないが、だんだんといい雰囲気になってくる。普段は日が暮れると、町は暗くなるので、ほとんどの人達は家に籠もる。
しかし今日はそれが解禁されるのだ。
子どもも大人も開放感に溢れ、すでに火の周りを男女ペアになり、囲んで踊っている人達もいた。

その中に、リズとダンを見つけた。そして、照れているのか言い合いしながら踊っている。よかった!うまくいったのね。そう思ってニヤニヤとしていると、エルが話しかけてきた。
「どうした?今年は踊りたくなったか?」

エルは、私が小さな時から一度も踊っていないのを知っている。だから冷やかして聞いてきたのだろう。
「ううん。見て。あそこにリズとダンが踊っているの。来年はダン、見習い騎士として王都へ行ってしまうでしょ?だから、うまくいってよかったわ。」
そう言うと、エルも踊っている人達の方を見ていた。

「ああ、本当だな。そうか。もうそんな年齢か…。なぁ。ティア?真面目な話していいか?俺、お前と踊りたいんだ。」
え?どうしたの!?と、私は思わずエルの方を向いた。

「エルも踊りたかったの?ごめんなさい、だったら私といてつまらなかったわよね。あっちへ行ってきていいのよ?」

そう思わず言った。
…でも言ってから、エルが他の人と踊る事を考えたら何か…イライラとした。なんでだろう。私一人になって淋しいから?

考えていたら、エルがフフッと笑って、
「…そう言いながらなんで、俺の服握ったの?」
と言った。

え!?見ると、エルの服の上着の裾を少し握っていた。無意識だった…恥ずかしい。

「ご、ごめんなさい!無意識で…。」
「無意識?なんで?」
と、エルが私の顔を、クスクスと笑いながら覗き込むから思わずそっぽを向いた。

「すごく悲しい事言われたけど、可愛いから許すね。」
と、エルが呟いた。そして、エルは私の手をそっと握って、また前を向き、火を見ながら話し出した。

「俺の兄上がさ、さすがにそろそろ婚約でもしろってうるさくて。今まで、俺がそんな事しようものなら知り合いのおっさん達が文句言ってくるやつもいたんだ。だけど、それに怯えなくていいって兄上が言ってきてね。」

と、エルはそこまで話すと、ふーっと息を吐き出した。私はどうしたのかと思ってエルの方を向いた。
何か考えているんだろう。それともどう話そうか悩んでいるのか、少し間があった。だから、私も前を向き火の方を見つめた。
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