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第1章 魔犬
18.令嬢ミシェル
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初めて会うドルナー侯爵夫人は姉であるサニーに全く似ていなかった
動物で例えるとしたら鶏だろう
痩せた体に何段もの段がついたド派手なドレスを着て、大きな羽根のついた帽子を被り、とかく落ち着き無く右へ左へと首を動かしながら声高に話し続ける
ユウトは完全に気迫に押されていた
「姉のサニーもあまり里帰りしませんので、本当寂しいですのよ?リオルドとユウト様がこちらに住むならまめにお会いして交流したいですわ!」
「叔母様、それが私はあまりこちらに居られないのです」
「まぁ!そうなの?リオルドは忙しいものね!仕方がないのかしら。じゃあ、私がユウト様に…もう身内だからユウトって読んでいいかしら?」
「えぇ、是非。妻も喜びます」
「あら、そう?じゃあ、私がユウトにドルナー侯爵家の仕来たりを教えるのがいいわね!」
ーーー困ったことになった。妃教育が終わったと思ったのに今度はドルナー侯爵家のことを学ばなければいけないのだろうか?リオルドも余計なことを言う
参ったなぁとドルナー侯爵婦人を見ると横にいるドルナー侯爵と目があった
ドルナー侯爵は整髪料を撫で付けて、灰色の髪を7:3に分けた大人しそうな男性だ。眼鏡の奥の灰色の目をうっすら細めると、興奮して話し続ける夫人を落ち着かせるように優しく声をかけた
「セリーヌ、ユウト様はお妃だからドルナー家の事は学ばなくて大丈夫だよ。王家の事を学んでいらっしゃる」
「あら…それもそうですわね」
「うん、社交界の事ならマグドー侯爵家で充分学んでいらっしゃるだろうし、心配いらないよ」
「マグドー、あぁ…そうでしたわ!私ったら失礼なことを…!」
驚くことに、このうるさい夫人をドルナー侯爵は上手く操縦出来るのだ。だからこそ、先代侯爵もこの男を婿に招き入れたのだろう
「妻が申し訳ないね、悪気はないんだ。二人の事をとても喜んでいて、少し心配性なものだから言い過ぎてしまった」
「本当にそうですわ。私ったらいつもこうなの…ユウト、懲りずに仲良くしてくれると嬉しいわ」
嘘のように大人しくなった夫人はユウトに手を差し出してきた
ーーー心根は優しい人なんだ
ユウトは手を握り返し「こちらこそ宜しくお願いします」と頭を下げた
ベルナー侯爵夫妻は素敵な夫婦だった
少し空回りしているけれどおせっかいで良く話す妻に、落ち着いていて優しい夫。見ているだけで夫婦の仲睦まじさが伝わってくる
問題は先ほどからユウトの首をすごい目で睨み続けている、甘やかし過ぎちゃったんですと紹介された二人の娘ミシェルだろう
昨日の夜、ディナーから寝室に戻るとリオルドに言われた
「明日は従姉妹のミシェルもくる。だからこれからユウトの首にキスマークをつける」
「え、意味がわからない」
リオルドの話を要約すると
・ミシェルはユウトと同い年の17歳
・昔からリオルドの事が好きで迫っている
・王子はルーツを持つものと結婚すると言っても諦めない
・リオルドに寄ってくる女性に昔から嫌がらせを繰り返してきた
・クリスには何故か何もしなかった
・従姉妹なのであまり冷たくしたくない
これを加味した結果、ユウトの首に明らかにキスマークがあれば純情なミシェルは諦めるだろう
と言うのである
クリスに何もしなかったのはやはりレティに劇似だったからなんだろうな、などど全く別の事を考えていたユウトはリオルドの考えた対策に驚愕した
リオルドが女たらしなのは有名な話だ
妃のキスマークくらいで諦めるわけないだろう
そもそも僕を巻き込まないでほしい
ユウトがそう返すとリオルドは実力行使に出た
ユウトの両腕を掴み首筋を舐め始めたのだ
ピチャピチャと耳の近くで水音がして、厚いザラザラした舌がユウトの肌を繰り返し舐める
抵抗してもディナーの時の話を持ち出してきて、言葉遣いがどうだとか正されて、気付くとまた首筋を舐められている
リオルドはユウトの白い肌を舐め終わると、次は音を出しながら場所をかえ啄み始めた
「もうやめてよぉ…」耐えられなくなったユウトが訴えると、啄むのをやめ、口を開けて首筋に唇をつけジュルルルと一気に吸い上げる
ユウトの首筋は熱くなり全身が電気が駆け抜ける感覚に襲われ僅かに震えた
長い時間をかけてユウトの白い肌を吸い上げたリオルドは、唇を離すと大きく口を開け今度は齧りつき柔らかい肌に歯を食い込ませた
「痛いっ…」ユウトの言葉も聞かず顎に力をいれ歯を深く食い込ませるとようやく首から顔を離し「終わったぞ」とユウトの髪を撫でた
甘噛みにしては強かったのだろうか…
今、ユウトの首にはキスマークとくっきり歯形がついていて中々見た目は痛々しい
朝会った時メイは「ひいっ」と悲鳴を上げたし、ジョルジュは「やっぱりD…V…なの…か?」とヨロヨロとどこかに行ってしまった
こんな姿で侯爵夫妻の前に出るのは嫌だったが「見せなければ意味が無いんだ」と言われ渋々そのまま出てきた
首の右側につけられたその痕を、対面してユウトの右側に座ったミシェルがずっと無言で睨み続けていてずっと気まずい
「ミシェル今日は静かだな?」
突然リオルドに声をかけられたミシェルは凝視していたユウトの首からやっと目を離した
金髪の縦ロールをした彼女はキツそうだがきれいな顔立ちをしている
「ううん。元気よ!ねぇ、リオルド私今度王都に行くの。街を案内してほしいわ」
「へぇ、ミシェルが?いつくるんだ?」
「再来週の金曜日よ!いい仕立屋があってね、オーダーメイドだから頼みに行くのよ。勿論、従者を連れていくから安全よ!」
「金曜日なら大丈夫だ、一緒にランチでもするかい?」
ーーーあんなに警戒していた割には随分と仲がいいじゃないか。僕の首の負傷はどうしてくれる
ユウトはまだ痛む傷跡を軽く撫でた
「ディナーがいいわ。その日は泊まるもの、ねぇ、いいでしょう?」
「ディナー?」
いくら従姉妹といえど未婚の女性と二人きりでディナーを取ることはあまり好ましくない
まして、ミシェルはリオルドに明らかに気があり、それを隠すつもりもない
街の民が見れば、リオルドは自分に気のある女性とディナーを取っているとすぐにわかってしまうだろう
「それは、ちょっとだめよ」
横槍を入れたのはドルナー侯爵夫人だった
「リオルドにはユウトがいるのだし、ミシェルだって変な噂が立てば良い縁談が無くなってしまうわ」
普段父母から怒られたことのないミシェルは顔を真っ赤にして激怒した
表情は醜く歪み、握った拳は震えている
「縁談なんて受けないわ!私には私の計画があるの!ユウト、別にいいでしょ!?私達は昔から仲の良い従姉妹同士よ?あとから来たのはあなたなの!ね、私達ディナーに行くわ!いいでしょ!?」
「えっと…」
ユウトはどう答えてもミシェルに言い負かされる自信があった。…というか、二人で決めれば良い
元々僕はクリスの身代わり妃で街では笑い者みたいなものだ。今更それにミシェルの噂がついたところで何ということもない
どうぞと口を開きかけた時、リオルドがユウトの左手に自分の手を重ねてきた
ーーーえ、なに?
「ユウト、そんなに悲しそうな顔をしないでくれ」
「え…?」
「あぁ、分かった分かった」
そういうとリオルドはユウトを抱き締め、自分の胸にユウトの顔を強く押し付け話せないようにした
ーーーく、苦しい
「ミシェルすまない。妃に悲しい顔をさせるわけにはいかないから、金曜日のディナーは城で食べよう。王妃やレイルも喜ぶよ。あぁ、クリスもね」
「クリス…はぁ…わかったわ、ランチにする。その代わりに美味しいお店にしてね」
「そうか?分かった。ミシェルの為に美味しい店を手配するよ」
やっとリオルドの胸から解放されて楽に呼吸が出来るようになると、ミシェルの嬉しそうな顔が目に入った
ーーー本当にリオルドを好きなんだろうな。でも自分でもクリスには叶わないのを良く分かっているんだろう。それでも希望を捨てきれずに…可哀想に……僕と同じだ……ん?僕は違うか。
「じゃあそろそろ失礼するか」
ドルナー侯爵が言うと夫人も「そうね」と立ち上がる
リオルドと次の約束が出来たミシェルは嬉しそうだ
玄関まで行くとドルナー侯爵夫人が「あれ、あなたここにいるの?」とお見送りに並んでいたイリスに声をかけた
「はい奥様、今はこちらにお世話になっております」
とイリスが誇らしげに返事を返す
「そう…ユウトのお世話ちゃんと頼んだわよ」
「えぇ、はい、分かっております」
ーーー夫人に言われても快諾できないくらいイリスは僕を嫌いなんだな。何をした記憶も無いんだけど…
「ママ!早く帰るわよ!」
ミシェルが声を張り上げて、ドルナー伯爵家の人々は馬車に乗り手を振りながら帰って行った
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ちょっと!今日はおかしいよ?」
ベッドの中でリオルドに抱き締められながらユウトは叫んだ
「なんで、こうなるの?」
リオルドはユウトの耳元で吐息がかかるように優しく話す
「昨日がキスマークだっただろう?じゃあ、ハグなんてもう終った段階だと思わないか?」
一理ある。でも一昨日までは60cm離れて寝ていた訳で、急にこれは飛びすぎじゃないか?
「明日になれば俺は居なくなるんだ。しばらくは帰ってこれない。今日くらいいいだろう?」
そうか明日からリオルドはいないのか
そう思うと胸のあたりがチクリとして、今日くらいはいいのかもしれない
「き、今日だけ特別だよ」
「ふふっ、わかった、特別な。ところで何か困ったことは無いか?」
「困ったこと?」
出ていけと書かれた紙のことを思い出すが、イタズラかもしれないし、あまり心配もさせたくない
「特にないよ」
「そうか、ならいい。もっとこっちにこい」
強く引き寄せられて、リオルドの柔らかな髪が頬に触れくすぐったい
裸のリオルドに抱き寄せられてドキドキして眠れない!と思ったものの、あまりの疲れとリオルドの体温に包まれてユウトはあっという間に夢の中に落ちていった
動物で例えるとしたら鶏だろう
痩せた体に何段もの段がついたド派手なドレスを着て、大きな羽根のついた帽子を被り、とかく落ち着き無く右へ左へと首を動かしながら声高に話し続ける
ユウトは完全に気迫に押されていた
「姉のサニーもあまり里帰りしませんので、本当寂しいですのよ?リオルドとユウト様がこちらに住むならまめにお会いして交流したいですわ!」
「叔母様、それが私はあまりこちらに居られないのです」
「まぁ!そうなの?リオルドは忙しいものね!仕方がないのかしら。じゃあ、私がユウト様に…もう身内だからユウトって読んでいいかしら?」
「えぇ、是非。妻も喜びます」
「あら、そう?じゃあ、私がユウトにドルナー侯爵家の仕来たりを教えるのがいいわね!」
ーーー困ったことになった。妃教育が終わったと思ったのに今度はドルナー侯爵家のことを学ばなければいけないのだろうか?リオルドも余計なことを言う
参ったなぁとドルナー侯爵婦人を見ると横にいるドルナー侯爵と目があった
ドルナー侯爵は整髪料を撫で付けて、灰色の髪を7:3に分けた大人しそうな男性だ。眼鏡の奥の灰色の目をうっすら細めると、興奮して話し続ける夫人を落ち着かせるように優しく声をかけた
「セリーヌ、ユウト様はお妃だからドルナー家の事は学ばなくて大丈夫だよ。王家の事を学んでいらっしゃる」
「あら…それもそうですわね」
「うん、社交界の事ならマグドー侯爵家で充分学んでいらっしゃるだろうし、心配いらないよ」
「マグドー、あぁ…そうでしたわ!私ったら失礼なことを…!」
驚くことに、このうるさい夫人をドルナー侯爵は上手く操縦出来るのだ。だからこそ、先代侯爵もこの男を婿に招き入れたのだろう
「妻が申し訳ないね、悪気はないんだ。二人の事をとても喜んでいて、少し心配性なものだから言い過ぎてしまった」
「本当にそうですわ。私ったらいつもこうなの…ユウト、懲りずに仲良くしてくれると嬉しいわ」
嘘のように大人しくなった夫人はユウトに手を差し出してきた
ーーー心根は優しい人なんだ
ユウトは手を握り返し「こちらこそ宜しくお願いします」と頭を下げた
ベルナー侯爵夫妻は素敵な夫婦だった
少し空回りしているけれどおせっかいで良く話す妻に、落ち着いていて優しい夫。見ているだけで夫婦の仲睦まじさが伝わってくる
問題は先ほどからユウトの首をすごい目で睨み続けている、甘やかし過ぎちゃったんですと紹介された二人の娘ミシェルだろう
昨日の夜、ディナーから寝室に戻るとリオルドに言われた
「明日は従姉妹のミシェルもくる。だからこれからユウトの首にキスマークをつける」
「え、意味がわからない」
リオルドの話を要約すると
・ミシェルはユウトと同い年の17歳
・昔からリオルドの事が好きで迫っている
・王子はルーツを持つものと結婚すると言っても諦めない
・リオルドに寄ってくる女性に昔から嫌がらせを繰り返してきた
・クリスには何故か何もしなかった
・従姉妹なのであまり冷たくしたくない
これを加味した結果、ユウトの首に明らかにキスマークがあれば純情なミシェルは諦めるだろう
と言うのである
クリスに何もしなかったのはやはりレティに劇似だったからなんだろうな、などど全く別の事を考えていたユウトはリオルドの考えた対策に驚愕した
リオルドが女たらしなのは有名な話だ
妃のキスマークくらいで諦めるわけないだろう
そもそも僕を巻き込まないでほしい
ユウトがそう返すとリオルドは実力行使に出た
ユウトの両腕を掴み首筋を舐め始めたのだ
ピチャピチャと耳の近くで水音がして、厚いザラザラした舌がユウトの肌を繰り返し舐める
抵抗してもディナーの時の話を持ち出してきて、言葉遣いがどうだとか正されて、気付くとまた首筋を舐められている
リオルドはユウトの白い肌を舐め終わると、次は音を出しながら場所をかえ啄み始めた
「もうやめてよぉ…」耐えられなくなったユウトが訴えると、啄むのをやめ、口を開けて首筋に唇をつけジュルルルと一気に吸い上げる
ユウトの首筋は熱くなり全身が電気が駆け抜ける感覚に襲われ僅かに震えた
長い時間をかけてユウトの白い肌を吸い上げたリオルドは、唇を離すと大きく口を開け今度は齧りつき柔らかい肌に歯を食い込ませた
「痛いっ…」ユウトの言葉も聞かず顎に力をいれ歯を深く食い込ませるとようやく首から顔を離し「終わったぞ」とユウトの髪を撫でた
甘噛みにしては強かったのだろうか…
今、ユウトの首にはキスマークとくっきり歯形がついていて中々見た目は痛々しい
朝会った時メイは「ひいっ」と悲鳴を上げたし、ジョルジュは「やっぱりD…V…なの…か?」とヨロヨロとどこかに行ってしまった
こんな姿で侯爵夫妻の前に出るのは嫌だったが「見せなければ意味が無いんだ」と言われ渋々そのまま出てきた
首の右側につけられたその痕を、対面してユウトの右側に座ったミシェルがずっと無言で睨み続けていてずっと気まずい
「ミシェル今日は静かだな?」
突然リオルドに声をかけられたミシェルは凝視していたユウトの首からやっと目を離した
金髪の縦ロールをした彼女はキツそうだがきれいな顔立ちをしている
「ううん。元気よ!ねぇ、リオルド私今度王都に行くの。街を案内してほしいわ」
「へぇ、ミシェルが?いつくるんだ?」
「再来週の金曜日よ!いい仕立屋があってね、オーダーメイドだから頼みに行くのよ。勿論、従者を連れていくから安全よ!」
「金曜日なら大丈夫だ、一緒にランチでもするかい?」
ーーーあんなに警戒していた割には随分と仲がいいじゃないか。僕の首の負傷はどうしてくれる
ユウトはまだ痛む傷跡を軽く撫でた
「ディナーがいいわ。その日は泊まるもの、ねぇ、いいでしょう?」
「ディナー?」
いくら従姉妹といえど未婚の女性と二人きりでディナーを取ることはあまり好ましくない
まして、ミシェルはリオルドに明らかに気があり、それを隠すつもりもない
街の民が見れば、リオルドは自分に気のある女性とディナーを取っているとすぐにわかってしまうだろう
「それは、ちょっとだめよ」
横槍を入れたのはドルナー侯爵夫人だった
「リオルドにはユウトがいるのだし、ミシェルだって変な噂が立てば良い縁談が無くなってしまうわ」
普段父母から怒られたことのないミシェルは顔を真っ赤にして激怒した
表情は醜く歪み、握った拳は震えている
「縁談なんて受けないわ!私には私の計画があるの!ユウト、別にいいでしょ!?私達は昔から仲の良い従姉妹同士よ?あとから来たのはあなたなの!ね、私達ディナーに行くわ!いいでしょ!?」
「えっと…」
ユウトはどう答えてもミシェルに言い負かされる自信があった。…というか、二人で決めれば良い
元々僕はクリスの身代わり妃で街では笑い者みたいなものだ。今更それにミシェルの噂がついたところで何ということもない
どうぞと口を開きかけた時、リオルドがユウトの左手に自分の手を重ねてきた
ーーーえ、なに?
「ユウト、そんなに悲しそうな顔をしないでくれ」
「え…?」
「あぁ、分かった分かった」
そういうとリオルドはユウトを抱き締め、自分の胸にユウトの顔を強く押し付け話せないようにした
ーーーく、苦しい
「ミシェルすまない。妃に悲しい顔をさせるわけにはいかないから、金曜日のディナーは城で食べよう。王妃やレイルも喜ぶよ。あぁ、クリスもね」
「クリス…はぁ…わかったわ、ランチにする。その代わりに美味しいお店にしてね」
「そうか?分かった。ミシェルの為に美味しい店を手配するよ」
やっとリオルドの胸から解放されて楽に呼吸が出来るようになると、ミシェルの嬉しそうな顔が目に入った
ーーー本当にリオルドを好きなんだろうな。でも自分でもクリスには叶わないのを良く分かっているんだろう。それでも希望を捨てきれずに…可哀想に……僕と同じだ……ん?僕は違うか。
「じゃあそろそろ失礼するか」
ドルナー侯爵が言うと夫人も「そうね」と立ち上がる
リオルドと次の約束が出来たミシェルは嬉しそうだ
玄関まで行くとドルナー侯爵夫人が「あれ、あなたここにいるの?」とお見送りに並んでいたイリスに声をかけた
「はい奥様、今はこちらにお世話になっております」
とイリスが誇らしげに返事を返す
「そう…ユウトのお世話ちゃんと頼んだわよ」
「えぇ、はい、分かっております」
ーーー夫人に言われても快諾できないくらいイリスは僕を嫌いなんだな。何をした記憶も無いんだけど…
「ママ!早く帰るわよ!」
ミシェルが声を張り上げて、ドルナー伯爵家の人々は馬車に乗り手を振りながら帰って行った
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ちょっと!今日はおかしいよ?」
ベッドの中でリオルドに抱き締められながらユウトは叫んだ
「なんで、こうなるの?」
リオルドはユウトの耳元で吐息がかかるように優しく話す
「昨日がキスマークだっただろう?じゃあ、ハグなんてもう終った段階だと思わないか?」
一理ある。でも一昨日までは60cm離れて寝ていた訳で、急にこれは飛びすぎじゃないか?
「明日になれば俺は居なくなるんだ。しばらくは帰ってこれない。今日くらいいいだろう?」
そうか明日からリオルドはいないのか
そう思うと胸のあたりがチクリとして、今日くらいはいいのかもしれない
「き、今日だけ特別だよ」
「ふふっ、わかった、特別な。ところで何か困ったことは無いか?」
「困ったこと?」
出ていけと書かれた紙のことを思い出すが、イタズラかもしれないし、あまり心配もさせたくない
「特にないよ」
「そうか、ならいい。もっとこっちにこい」
強く引き寄せられて、リオルドの柔らかな髪が頬に触れくすぐったい
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